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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)18号 判決 1958年9月09日

主文

原判決を破棄する。

本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人吉岡秀四郎、同寺田四郎の上告理由第三点について。

原審の確定するところによれば、被上告人秋田県知事は昭和二三年一月訴外佐々木市亮所有の本件土地につき買収令書を発したが、その後約三年四箇月を経過した昭和二六年五月二一日右買収令書を全部取り消した、取消の理由は、買収目的地のうちに宅地約二百坪(全買収地の一〇分の一にも足りない面積)が含まれているのに、これを一括して農地として買収したことは違法であるというにあり、なお、上告人は、買収地のうち農地部分につき売渡を受くべき地位にあつた、というのである。以上の事実関係の下では、特段の事情のない限り買収農地の売渡を受くべき上告人の利益を犠牲に供してもなおかつ買収令書の全部(農地に関する部分を含む)を取り消さなければならない公益上の必要があるとは解されないから、右特段の事情がない限り、本件取消処分は、違法の瑕疵を帯びるものと解すべきである。そして、本訴請求は、右取消処分の無効確認を求めるというのであるが、本件記録によれば、上告人が本訴を提起したのは昭和二六年六月四日であつて、これが取消訴訟の出訴期間内に提起されたものであることは明らかであるから、本件無効確認請求のうちには取消請求を含むものと解するのが相当である。してみると、原審が、本件取消処分の全部の取消を必要とする特段の事情につき何等説示することなく漫然本件取消処分を適法としたことは、法律の解釈を誤り、その結果審理不尽の違法に陥つたものというべきであつて、この点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

よつて、その他の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 石坂修一)

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