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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(オ)980号 判決 1955年11月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点及び第二点について。

所論は、被上告人宮野村長は、本訴について地方自治法九六条一項一〇号による授権がないから、民訴五三条の定める授権を欠くことに帰し、従つて原審被上告代理人弁護士水町新三に対する訴訟委任は無効であり、原判決はこの点において法令違反があると主張する。しかし地方自治法九六条一項一〇号によつて議会の議決を要するのは地方公共団体が公法人として訴訟当事者となる場合であつて、本件のように村長が行政事件訴訟特例法三条にいう「処分をした行政庁」として当事者となつている場合はこれに当らない。そして本件においては訴訟係属中村長の変更があつたが、前村長の適法にした訴訟委任は、その変更によつて効力を失うものではない。所論は理由がない。(なお原判決は、村が被告として訴えられた場合は被告たることを免れないのであるから、議会の議決の有無は、村の応訴行為の有効にかかわりがないと附加しているが、このことは本件においては、不必要な判示であつて、別の問題である。)

同第三点第四点第六点及び第七点について。

所論第三点は、上告人は原審において、昭和二八年七月一三日附被控訴人の変更及び訴の変更申立書を提出し、被控訴人(被告)に国を加え、これに伴わない訴も変更しているのに、同日の口頭弁論調書には「……被控訴人の変更及び訴の変更申立書同日附訴訟救助の申立書は何れも陳述しないと述べ」と記載してあることは、上告人の陳述と相反し、このような調書は民訴一四四条に違反すると主張する。しかし上告人はこの点について民訴一四六条により調書の読聞かせ又は閲覧の申立をした形跡もなく、また異議を述べた形跡もない。のみならず記録上上告人の主張事実を是認するに足る証拠資料はなんら見当らないのであるから、それでもなお調書記載のような陳述がなかつたと断ずることはとうていできないことである。所論は採用できない。また所論第四点は、国が被告となつていることを前提として、原審は国に対し呼出状の送達をしない違法があると主張するが、第三点に説示したように所論のような変更申立は陳述されなかつたのであるから、変更のあつたことを前提とする所論の理由がないことはいうをまたない。所論第六点は、民訴一八六条違反の主張、同第七点は、憲法三二条違反の主張であるが、いずれも被告に国が加えられていることを前提とし、またはこの部分について村長に対する訴が取下げられたことを前提とする主張であるから、第三点説示のようにその前提たる事実を認められない以上所論の理由のないこともおのずから明らかである。

同第五点及び第八点について。

所論第五点は、原判決は訴訟が未だ全く裁判をなすに熟していなかつたという理由をもつて、民訴一八二条に違反すると主張し、また所論第八点は、原判決は自由心証主義に反した裁判であり、民訴一八五条に違反すると主張する。しかし記録を調べてみると、原審は上告人の主張立証について十分に審理の上判決をしていることが認められ、ことさらに上告人の訴訟行為を制限したり、また無理な進行を図つたりしたような形跡は全く認められない。所論は独自のいわれなき非難にすぎない。そしてまた原判決が所論の趣旨において自由心証主義に反してなされたと認められるような形跡は記録上全く存在せず、所論はすべて独自の見解に立つていわれなく原判決を非難するに帰する。いずれの所論も採用のかぎりでない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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