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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2090号 判決 1955年1月11日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人大山忠市の上告趣意第一点について。

論旨は、原審で主張、判断のなかった事項に関する主張であるのみならず、公務所の印章と記号とを区別する標準は、その使用の目的物の如何にあるもので、文書に押捺して証明の用に供するものは公務所の印章であり、産物、商品等に押捺するものはその記号であることは、つとに大審院の判例(昭和一一年(れ)九五五号同年七月二日第一刑事部判決、刑集一五巻九二四頁、大正三年(れ)一八九〇号同年一一月四日第三刑事部判決、刑録二〇輯二〇〇八頁)としたところであって、いま右大審院判決の見解と異なる見解をとる必要は認められない。そして、原判決の是認した第一審判決の確定した事実によれば、被告人は第一審相被告人井上清美外一名と共謀の上、選挙運動用のポスターを多数作成することを企て、行使の目的をもって、昭和二五年五月二八日頃東京都中央区西銀座八丁目所在の参議院議員候補者由本清一選挙事務所二階において、右井上が同候補者の選挙運動のために使用するポスター約千五百枚に偽造にかかる全国選挙管理委員会の検印をそれぞれ押捺し、もって公務所である同委員会の印章を偽造したというのであって、右全国選挙管理委員会の検印は、同委員会が、選挙運動のために使用する文書であるポスターが法定の枚数内であり、規格の制限に違反していないことを確認した上、これに押捺するものであるから、刑法一六五条一項にいわゆる公務所の印章に該当するものというべきである。されば、原判決には所論のような違法はなく、所論の判例は本件に適切でない。

同第二点は法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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