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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)34号 判決 1950年2月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由は末尾添附別紙記載の通りでありこれに対する当裁判所の判断は次ぎの如くである。

上告理由第一点について

判決の理由には原告が請求原因として陳述した事実が自白証拠等各資料によつて認められるか否か、認められるとすれば被告が抗弁として述べた事実が同様資料によつて認められるか否か、及び認められた事実に対して法を適用した結果どうなるかを示せば足るものである。そして原審は本件にあらわれた各種の資料について審査した結果、原告たる上告人に有利な資料もあるが、反対に又不利な資料もある。その不利な資料と対照して見ると有利な方の資料はその侭に受取ることは出来ず結局上告人主張の債権はこれを認めるに足る資料なしとして、上告人の請求を棄却したのであつて判決の理由として欠くる処はない、論旨は原判決に示された各理由が合理的である所以が説明されなければならないというのであるが判決にはそこ迄説明する必要はないものである、固より判決に示された理由が実験則に反し論旨の所謂得手勝手なものであればそれはいけないけれども原判決の理由にそういう処は見当らない、従つて論旨は理由がない。

第二点について

所論刑事判決において本件六、〇〇〇円の債権が存在するものと認められたからといつて民事判決においてそれと反対の事実を認定することは固より妨げない。原審は右刑事判決で右債権が存在するものと認定したことを認めたけれども、真実該債権が存在するものと認めたことはない。刑事判決で存在するものと認められたということはただその判決をした裁判官がそう思つたというだけのことで、果して真実に存在したかどうかは別問題である、それ故原審が刑事判決で存在せるものと認定されたことを認めながら、本件において実際には存在しないものと認定したからといつて理由に齟齬あるものということは出来ない。又書証の成立を認めるということはただ其書証の作成名義人が真実作成したもので偽造のものではないということを認めるだけで、その書証に書いてあることが客観的に真実であるという事実を認めることではない。それ故原審が所論各号証の成立を認めながら、その内容と異る事実を認定したからといつて理由に齟齬あるものとはいえない。原判決の理由の趣旨は第一点について書いた通り上告人に有利な証拠もあるが、他の証拠と対照して見ると右有利な証拠はその侭には受取ることが出来ないというのであるから、原判決理由の中に上告人に有利な証拠が出て居るからといつて、理由に齟齬ありということも出来ない。原判決の理由は単純に甲第一号証は真正に成立したものとは認められない、上告人主張の債権の存在を認めることが出来ないというだけで少しも齟齬などはない。それ故原判決理由に齟齬あるものと主張する論旨は採用に価しない。

よつて上告を理由なしとし民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条に従つて主文の如く判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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