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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)338号 判決 1954年4月20日

東京都北多摩郡国分寺町国分寺四七四番地

上告人

中川邦芳

右訴訟代理人弁護士

高橋義次

保坂治喜

被上告人

右代表者法務大臣

犬養健

右当事者間の部分林台帳誤記削除等請求事件について、仙台高等裁判所が昭和二四年一一月二五日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人中川邦芳の上告理由は後記書面のとおりである。

同第一点について。

所論は複雑詳細にわたつているが、要するに本件訴は、上告人の本件杉立木の権利が本来一万本であることは法律上不動であり、なお残数七千二百十六本に対する権利の存在するという主張を前提として、部分林台帳の記載の誤記削除を求めるのを主とし、併せて従として原告名義に書替を求めるのであるから、原判決が上告人の請求を名義書替が主で誤記削除が従であると解し、前訴の既判力を理由として上告人の控訴を棄却したのは憲法及び判例に違反すると主張するのである。そこで原判決が被上告人の既判力の抗弁について採用した前訴判決(秋田地方裁判所昭和四年(ワ)第一二号引渡未済部分林区域確認並に部分木引渡請求事件)につき判示するところによると、前訴訟における原告(本件上告人以下同じ)の請求原因の要旨は、石川伝太が明治三二年法律第九九号国有土地森林原野下戻法により、明治三二年五月六日秋田県山本郡檜山町母体官林大滝沢の内鼻コクリ沢古道下山林反別二十五町歩の杉立木合計一万本につき、三官七民の部分林に引直方申請し、明治三五年三月三一日指令第六一一八号を以て農商務大臣より之を聞届けられ、其の下戻区域に付ては秋田大林区署長の指揮を受くべき旨命ぜられ、一方同大臣より秋田大林区署に対し林第六一一八号を以て右下戻申請につき聞届の上指命したから引渡方取計うべき旨命じたのであるが、被告(本件被上告人以下同じ)は右一万本の下戻区域を指揮せず、明治三五年五月二五日右一万本の内僅かに二千七百八十四本此の材積二万五百三十九尺〆九分一毛の下戻区域を指揮したのみで、その余の七千二百十六本の部分林残木の存在を否定し、未だ前記聞届及び命令書の趣旨を果さない。右石川伝太から右部分林の権利を譲受けた畠山雄三からさらに昭和四年二月六日その権利を譲受けた原告は、被告に対し同年三月一二日名義書替を求めたがいわれなく書替をしないので、被告に対し右農商務省指令第六一一八号を以て農商務大臣より石川伝太に下戻した部分林杉立木は一万本で同部分林残木残は七千二百十六本であることを確認の上該部分林台帳名義人畠山雄三とあるのを原告名義に書替すべき旨の判決を求めるというのであつて、これに対し秋田地方裁判所は、右部分林引直方聞届けられた杉立木は申請にかかる杉立木全部で且之に止まるものであるが、一万本というのは目算による概数であつてその七民分は既に明治三五年中全部引渡済で残木はない旨、従つて原告が畠山雄三より譲受けたと主張する部分林の権利は、当時既に客体たる残木なく右部分林の権利は存在しないものであるとし、原告の請求を棄却する旨の判決を言渡し、その判決は第一審かぎりで確定したことをいずれも認めるに十分であるという趣旨である。そして本件原判決は、確定した前訴判決によつて既判力を生ずる主文に包含される範囲は、上告人が農商務省指令第六一一八号による下戻の部分林一万本の残七千二百十六本につき、畠山雄三から譲受けたことを原因とする之に対する部分林の権利は存在しないことが確定され、且同部分林台帳を上告人名義に書替手続をする請求権がないとする点にあることは右認定事実により明らかであるとし、右確定された法律関係の範囲において、裁判所においてこれと異る裁判をすることができない既判力を生じ、この既判力の効果として当事者は後の訴訟においてこれに反する主張を有効にすることができなくなることは疑いないと判示し、この理由によつて本件訴において上告人は結局請求の趣旨記載のような判決を求める利益なきに帰するから、本件請求は結局権利保護要件を欠くものと認め、上告人の本件請求を失当であると判断したのである。

原判決の理由において、本件訴に前訴判決の既判力の効果が及ぶとする説明は、要するに本件訴における上告人の請求は、上告人が「部分林残七千二百十六本に対する権利のあることを主張し之を前提として部分林台帳の附加記載を削除して控訴人(すなわち本件上告人)名義に書替えることを求めるものである」が、前訴判決の既判力は、上告人が右部分林に対する権利及び部分林台帳の名義書替請求権が存在しないことについて生ずるから、これを有効に主張することはできないというのであつて、所論のように、原判決は本件訴を名義書替の請求を主とし、台帳訂正の請求を従として考え、前訴の名義書替を求める訴が棄却され確定したのだからその既判力の効果が本訴に及ぶとしたのではない。すなわち台帳訂正を主とし名義書替を従とする請求であつても、前訴判決において認められないことが確定した部分林に対する権利の存在することを前提とするのであるから、すでにその前提を主張することができない以上、上告人の請求は結局認められないことに帰着するという趣旨である。原判決の説明は、行文において台帳訂正と名義書替を前後して記載した部分もあるが、決して所論のように名義書替が独立の訴であるから既判力が及ぶと解したのでないことは判文上明らかである。されば原判決の理由につき判示と異なる解釈に立つて憲法違反又は判例違反を主張する論旨は前提において誤りであつて理由がない。

同第二点について。

所論は、原判決が争点の記載を欠如した違法があると主張しその理由の(イ)として、名義書替の請求は独立の主張でなく、台帳訂正の請求に従たるものであることを主張したのに、この争点について判断しないというのであるが、第一点について説明したとおり、原判決は名義書替の請求を独立の訴とし、それゆえ既判力が及ぶと判示した趣旨ではないから、論旨は理由がない。またその理由の(ロ)として、被上告人は前訴が原告の給付の訴であるにかかわらず、これを確認の訴と誤解したという上告人の主張の争点について、原判決は判断をしていないというのであるが、原判決は、前訴において上告人は部分林残木数について権利あることの確認を求めその上台帳名義書替の判決を求めたと判示していること明らかであるから、論旨のような違法はない。

同第三点について。

所論の詳細に述べているところの要旨は、前訴と本訴とは請求を異にするから、前訴判決の既判力の効果は、本訴には及ばないというに帰着する。しかし原判決は前訴と本訴との請求がいずれも同じものとして判断しているのではない。前訴において本件部分林の権利は当時すでに客体たる残木なく右部分林の権利は存在しないということが確定していることを前提とし、この既判力の効果として上告人はこれと異なる主張ができない結果、本訴において上告人が台帳を訂正することも名義の変更を求めることも、たとえその台帳が上告人主張のように下戻指令を原因とする権利関係を記載するものであつても、いずれもこれを求める利益はないことに帰し、結局本訴請求は権利保護要件を欠くと判断していることきわめて明らかであつて、論旨のような違法はない。(もつとも原審が利益がない云々と判示したのは少しく妥当を欠く嫌がないではない。しかし前訴判決において上告人に部分林の権利がないことが確定しているにかかわらず、本訴はそれと反対に右権利の存在することを前提とするものであるから、この点において棄却を免れないものである。けだし前訴判決において権利がないことが確定している以上、その既判力のため裁判所は右の確定に反して権利ありと判定することは許されず、右既判力に従つて権利なしとする外ないのであるから、上告人の本訴請求は前提たる権利のない請求たるに帰するからである。それ故本訴請求を棄却した原判決は結局正当であり、論旨は理由なきに帰するのである。)

同第四点について。

所論は、前訴の判決が、本件下戻指令の趣旨が杉立木の数を主眼として定められ、地域によつて定められたのでないのにかかわらず、杉立木一万本というのは目算による概数であつて、本件部分林における権利はすでに全部引渡済であると判断したのは違法であるから、かかる判決は既判力を生ずることはできないという趣旨であるが、すべて前訴判決に対する攻撃であつて、本件原判決に対する非難の理由と認められないから判断のかぎりでない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

昭和二四年(オ)第三三八号

上告人 中川邦芳

被上告人 国

上告人ノ上告理由

第一点

第二審判決ハ憲法ニ背反シタル判定ナリトス。

コノ論旨ヲ説述スルニ当リ先ヅ左記諸点ヲ掲グ、コレ本件ハ特別法ニ相関シ殊ニ示来年ヲ経タル按件ナルヲ以テナリ。

(イ) 本件部分林ニ関スル特別法

一、国有林野法(明治三十二年三月二十三日法律第八十五号 同 年七月一日施行)

一、同上法施行規則(明治三十二年八月三日農商務省第二十五号 同 年同月二十三日ヨリ施行)

一、国有林野部分林規則(明治三十二年八月三日勅令第三百六十二号 同 年八月二十三日ヨリ施行)

一、国有林野台帳規程(明治三十九年九月二十一日農商務省令第二十七号 同 年十月十二日施行)

一、国有林野台帳及図面謄本抄本下付規程(明治三十八年十二月二十三日農商務省令第三十号 同 三十九年一月十二日ヨリ施行)

一、国有土地森林原野下戻法(明治三十二年四月法律第九十九号 同 年施行)

一、国有土地森林原野下戻申請手続及申請書離形(明治三十二年四月農商務省令第八号)

一、国有土地森林原野下戻法適用心得(明治三十五年五月二十日農商務省訓令第十二号 同 年六月十日施行)

(ロ) 本件部分林由来ノ大要

本件部分林植立ハ旧藩時代藩主植林奨励ノ達シニ基キ、石川主税ナル者御留山大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下ト申所ニ杉勝手ニ植立候事ニ文化十一年戍四月二十六日石川主税ニ申渡

ニヨリ同人カ杉ノ植立ヲナシ孜々造林ヲナシ来レルモノナル所維新後改租ノ際誤テ官林ニ編入セラレタリ(本件ハ立木ナルモ其他土地原野モコノ種ニ属セルモノ多カリシ)。

コレ官ノ杜選ニ基クモノ多カリシ為メ、官ハ之カ是正ノ要アリトシテ明治三十二年国有土地森林原野下戻法及同申請手続ナルモノヲ発布、其後国有土地森林原野下戻法適用心得ナルモノヲ発布施行セラレタリ。

該法規ニ基キ主税承継人石川伝太(伝太ハ時代ノ推移罹災等ニテ家政不如意ニシテ所々出稼キ、無力ナリシ為メ右下戻後ニ於ケル権利承継人畠山雄三ニ於テ費用万端ヲ立替ヒ申請手続ヲナシタルモノ)ハ左記申請ヲナシタリ。

植立杉部分木引直申請書

山本郡能代港町万町四十三番地ノ内乙五番地

士族 石川伝太

四十七年九月

申請ノ目的物

秋田県山本郡檜山町母体官林ノ内

字大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下

山林反別 弍拾五町歩

一、杉立木 壱万本

内訳

杉 四百五十本   但シ目通 七尺廻

〃 五百六十本   〃 六尺廻

〃 六百九十本   〃 五尺廻

〃 八百本     〃 四尺廻

〃 八百五十本   〃 三尺五寸廻

〃 一千五百本   〃 三尺廻

〃 二千二百本   〃 二尺五寸廻

〃 二千九百五十本 〃 二尺廻

事実

一、前項山林ハ祖先石川主税儀当時藩主ニ於テ植樹奨励ノ令達ヲ布カレ候御趣意ニ基キ、文化拾壱年戍四月中村方ヘ示談ヲ整ヘ故障無之承諾ノ証ヲ徴シ其向ニ請フテ許可ヲ受ケ自費労力ヲ以テ植立タル樹木ニ候処、地租改正ノ当時誤テ官林ニ編入セラレ荏苒今日ニ至リ全ク父祖ノ養護ノ労ヲ埋没ニ属シ来リ候所、今般植樹証査トナルヘキ書類発見致候得ハ旧藩御定メノ御割合三官七民ノ部分木ニ御引直シヲ得度別紙証拠ニ依リ御下渡ヲ申請ス。

理由

一、前項事実ノ通リ祖先石川主税ハ文化拾壱年戍四月中母体村御留山前記山林空山ニテ有之ヲ以テ麓村ヘ示談ヲナシ主税ニ於テ右山林ヘ勝手ニ植立ヲナスヘク、毫モ障リ無之旨御承諾ノ証ヲ徴シ其向ニ請フテ許可ヲ受ケ杉植立致シタルモノニシテ、別紙第一号証ハ正ニ村方ニ於テ主税ニ差出シタル承諾ノ証ナリ、而シテ主税ハ又其承諾証ヲ以テ其向ニ請フテ許可ヲ得タルノ証ハ今地方庁ニ就キ山林公簿ノ閲覧ヲ乞ヒ取調フルニ、参考書第壱号ノ通リ第壱号証乃チ村方承諾書同文ヲ前ニ記載シ其末文勝手ニ植立候事戍四月二十六日石川主税ニ申渡シト附記セリ、此即チ植立ヲ許可シタルノ証ナリ、而シテ現在木ハ悉ク一定ノ植立木ニシテ正ニ年令ニ於テモ主税ノ植立許可セラレタル文化拾壱年以後ノモノタルハ一見疑フ所ナキモノナリ、而シテ又参考書第参号ハ拙者祖先主税カ植立シタル樹木タル事ハ地元母体村民ノ今日ニ至ルモ古老ノ見聞言伝ヘニ依リ尚之ヲ認識シ之ヲ証明セルモノニシテ、又其植立ノ事実ヲ証スル一端トスルヲ得ヘシ、其他旧記ノ徴スヘキモノハ拙者幼弱父祖ヲ失ヒ生計裕カナラス、従来ノ居住地檜山町ヲ去ツテ諸方ニ出稼シ家産滅亡僅カニ家族ヲ携ヘテ、明治二十一年現在地ニ転籍シタル所後無年、又明治二十三年三月二十七日火災ニ罹リ不幸存在ノ古書等モ焼失烏有ニ属セルヲ以テナク、此レヲ以テ右山林上ニ付キ種々吟味地元村ヲ搜索シ僅カニ別紙一号証号ヲ探リ得タルモ是レ又同村ニ於テ今ヨリ四拾年火災アリテ古書類ヲ容レ置キタル御倉類焼過半ハ焼失、又明治二十一年同様火災ニテ再焼シタル由ニテ旧録等ハ殆ント無之、其他ニ証憑ヲ求ムルヲ得ス、依テ参考書ト古老伝ニ依リ存在ノ事実ニ証明ヲ求メ得タルハ参考書第三号ナリ、抑モ前記山林ハ主税ノ自費労力ヲ以テ植立シタル者ニシテ、其証査ハ第一号証本書以下参考書ニ依リ明ラカナル処、即チ其割合ノ義ハ参考書第二号旧藩御定メノ三官七民ノ割合ニ準拠シ、現立在植立木ノ七分ヲ私有ニ引戻相成度奉願候也。

立証

壱号証

一、文化拾壱年戍四月二十五日母体村肝煎重助同長百姓久米之助外五名ヨリ石川主税タル村方承諾書控壱通。

此ハ村方ニ於テ母体御留山大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下杉植立ノ義故障無之旨承諾書ヲ差出シタル控書ナリ。

参考書第一号

一、同文書ニ対シ其翌白石川主税ヘ申渡サレタル末文附記ノ秋田地方庁山林公簿壱通、之レハ石川主税ヨリ前記承諾書ヲ添ヘ杉植立願出テタルニヨリ右植立ノ儀許可シタルモノノ証ナリ。

参考書第弍号

一、支化八年末六月山林植立ノ儀ニ付一般ニ令達相成候公文書写壱通。

参考書第三号

一、母体村方証明書壱通。

右申請候也

明治三十二年五月六日

石川伝太

秋田県秋田市楢山町本町下町二十二番地

右代理人 加藤景福

秋田県平鹿郡角岡村八十四番地

右代理人 大友利修

秋田県山本郡能代港町万町

右代理人 関勝威

秋田県山本郡檜山町長

佐良土献代理助後 吉成省三

秋田県山本郡能代港町長

代理助後 金貞吉

農商務大臣 曾根荒助殿

(以上申請書ニハ其申請ニ係ル引直部分木壱万本ノ生立地点ヲ示スモノトシテ、該申請手続ニ従ヒ図面ノ添附アリ、但シ其後被告ニ於テ保存セラレアリシモノハ申請本書ト契印ナキモノニシテ申請当時ノ添附図面ト異ナル疑ヒアルモノ)

右申請ニ基キ農商務大臣ハ本省ヨリ高田、松浪ノ両属官ヲ現地ニ派遣シ、実地踏査ノ結果其復命ニ徴シ申請ヲ理由アリト為シ、明治三十五年三月三十一日附即チ約三ケ年ノ歳月ヲ経テ同大臣平田東助ヨリ同省林第六一一八号ヲ以テ

明治三十二年五月六日附申請国有林内立木三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ件聞届ク

但シ下戻区域ニ付テハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受ク可シ

トノ指令アリタリ

(該指令書ニハ図面ノ添附ナシ)

更ニ秋田大林区署ニ対シテハ、同年同月同日同省同号ヲ以テ左記命令

秋田県山本郡檜山町母体官林内

大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下

山林反別 二十五町歩

一、杉立木 壱万本

但シ目通リ七尺廻リ以下二尺廻リ以上

右国有林内三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ儀其管下山本郡能代港町石川伝太代理人加藤景福外三名ヨリ申請ノ所今般聞届ケノ旨指令候条引渡方針取計フ可シ

ヲ発セラレタリ

(該命令書ニハ概況図トシテ該下戻部分木生立ノ地点ヲ示ス為メ之カ添附アリ、該概況図ハ上記申請書添付図面ト頗ル形状ヲ異ニシタル且ツ広範囲ノモノトス)

而シテ右国有土地森林原野下戻法第四条第一項ニヨレハ下戻ヲ受ケタル者ハ其下戻ニヨリ其所有又ハ分収ノ権利ヲ取得ス

判例ニ

国有土地森林原野下戻法ニ従ヒ下戻ヲ受ケタル者ハ其下戻ニ因リ、所有又ハ分収ノ権利ヲ取得シタルモノニシテ、国有以前ニ遡リ所有又ハ分収ノ権利ヲ回復スルモノニ非ス(大審院民事判決録明治三七年六七六頁)。

下戻ニ依ル下戻処分ハ公法上ノ行為ナルモ一旦主務大臣ノ聞届アルニ於テハ該処分ハ茲ニ完了スルモノトス(大審院民事判決録明治四〇年七六五頁)

如上記同署ハ該下戻聞届ヲ原因トシテ

国有林野台帳規程第一条

大林区署ハ国有林野ニ関シ左ノ台帳ヲ備へ之ヲ保存整理スヘシ

同条二

部分林台帳ハ国カ分収権ヲ有スル部分林ニ関スル事項ヲ登録スルモノトス

等其他同規程ノ各条規ニ基キ左記ノ如ク登録表示セラレタリ

<省略>

部分林台帳ハ部分林ニ付キ作成備置スヘキモノナルヲ以テ部分林存スルニ於テハ常ニ之ヲ備付スヘク、而シテ下戻ニ因ル部分林ハ下戻聞届ニ依リ部分林ニ引直サレ同時ニ分収ノ権利ヲ創設的取得スルモノナルヲ以テ下戻聞届ニ基キ作成備置其之ヲ原因トシテ部分林権ノ目的物及其権利者ヲ登録スヘキモノトス

(本件部分林台帳ニハ実測図トシテ該部分林生立ノ地点ヲ示シタル図面ヲ附シアリテ、該図ハ上記命令書添附ノ概況図ト同シク右申請書添附図面ト形状ヲ異ニシ、且ツ其範囲ノ大ナルコト右概況図ト略ホ同様ナリトス)

次テ同台帳記載ノ如ク明治三十五年七月廿三日該権利者ヲ、秋田市保戸野中町譲受人畠山雄三ノ権利者名義ニ登録替セラレタリ。

上記 高田、松浪両山林属官ノ復命書左ノ如シ

秋田県山本郡檜山町大字母体国有林内大滝沢ノ内鼻コクリ沢ノ一部古道下

一、杉立木 万本

山本郡能代港町

申請人 石川伝太

右立木部分木下戻申請事件ニ付命ヲ奉シ、秋田大林区署員其他関係者立会実査ニ及候処

一、申請地ハ大滝沢ノ内鼻コクリ沢西方ノ一部ニ当ル杉林ニシテ点々雑木ノ混生スル処アリ、而シテ第一号証ニ所謂古道下トハ母体部落ノ内刈又石揚吉等ノ住民ノ往古通行セシ山道アリシカ故ニ其下部ノ一区域ヲ指称シタルモノナリトノ申立ニシテ果シテ然ルヤ、古図等ノ拠ルヘキモノナキヲ以テ明瞭ナラスト雖モ、右山道ノ形跡ハ申請人ヨリ提出セル別紙図面ノ通リ申請地ノ周囲ニ今猶現存致居リ、且ツ第一号証ニヨルモ鼻コクリ沢内ニ古道下ト唱ヘタル箇所アリシコトハ疑ヒナキ義ニシテ此附近他ニ道路ノ形跡更ニ之無キ等ヨリ考フレハ申請人ノ申立ハ事実ナラント認ム、大滝沢全体ノ林況タル一体ニ杉生立シ、且ツ目通リ廻リ八九尺ヨリニ尺位迄ナリト雖モ其内申請地ハ特ニ杉ノ木立多クシテ樹齢モ大林区署ニ於テ取調ヘタル外尚今回更ニ一本伐採調査セシニ

断面ノ径 断面ノ年輪 総見込樹齢

弍尺六寸五分 七拾弍 七拾九

ニシテ樹木ノ大小ニ依リ一概ニ之レカ樹齢ヲ精算シ難シト雖モ、目通リノ八九尺廻リノ分数本ハ或ハ植立許可前ノ残木ナルヘキモ今回申請ニ係ル目通リ七尺廻リ以下ノモノハ植付許可後漸次植裁シタルモノト認ム、尤モ樹齢ノ一斉ナラサルハ少シク疑ハシキモ植立許可ヲ得タル上ハ必ス同時ニ全部植立スヘキモノト限リタル儀ニアラス、殊ニ本件ノ如キ一己人ノ造林事業ニシテ且ツ勝手次第ニ植立ヘキ事ヲ申渡サレタルモノノ如キハ自家ノ都合ニヨリ年々若干ツツノ苗木ヲ養生シ、漸次数年ヲ経テ植付タル事アリシハ事実ナル可クシテ良シ又、多少其間ニ天然生ノモノアリトスルモ矢張リ植付木ト共ニ保護又生育セシメタルモノナルニ依リ、是等ハ植付木ト同様処分スルハ最モ穏当ナラン

右ノ理由ニシテ本件ハ明カニ植付ヲナシタルコトヲ徴証スヘキ帳簿等ハ存在セスト雖モ別紙証書ニヨリ鼻コクリ沢ノ内古道下ハ勝手ニ植付許可ヲ得タル事ハ事実疑フヘカラサルモノナリ、既ニ植付許可ヲ得且ツ実ニ於テ猶其植付ニ相当スル樹木ノ存在スル上ハ更ニ他人カ植栽シタル反証アルニ非サレハ、先ツ植付許可ヲ得タルモノノ植付ナリト推測スルハ当然ナリト信ス、申請人ハ石川主税承継人タルコトハ村長証明ノ如ク事実相違ナキモノト認ム

右復命候也

明治参拾四年拾月拾五日

山林局 属

高田民藏

松浪与三郎

農商務大臣平田東助殿

(ハ) 本件部分林下戻聞届指令書ノ趣意本旨

上記下戻指令書本文ニヨレハ即チ

明治三十二年五月六日附申請国有林内立木三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ件聞届ク

コノ本文ヨリスレハ上記申請書ニ引直申請シタル杉立木壱万本ノ下戻ヲ制限ナク聞届ケラレタルコト一見明白ナリ

其但書ニ

但シ下戻区域ニ付テハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受ク可シトアリ

之ヲ右本文ニ比照スルニヨリ其指揮ヲ受クヘキ区域ハ上記本文ノ壱万本ノ生立区域ナルコトヲ看取ナシ得ルト同時ニ右指令ニ於テハ其下戻ノ部分木壱万本ノ生立地点ハ申請書ニ表示スル古道下弍拾五町歩ヲ其儘容認スルニ止マリ、之ヲ劃定ノ上下戻サレタルモノニアラサルコトヲ知ルヘシ、若シソレ地域劃定ノ上下戻サレタルモノトセハ該但シ書キノ必要毫モアルコトナシ

之ヲ上記命令書及台帳ノ登録ニ比較鑑按スルニヨリ如上ノ趣旨ナルコトヲ肯定シテ余リアリト謂フヘク、即チ上記壱万本ノ表示登録ニ付テハ何等制限的記載ナケレハナリ

進ンテ左記他ノ下戻指令一、ニノ実例ニ徴シ一層分明ナリトス

甲、

杉二百七拾四本ニ限リ下戻ノ儀聞届ク

秋田県山本郡種梅村梅内法定代理人種梅村長

佐藤総一申請植立杉部分木編入ノ件

明治三十四年十一月十四日指令

乙、

明治三十二年七月五日付申請官林下戻ノ件申請地ノ内

奧見内沢南平通リ上初森ヨリ下モ民有地堺迄ノ立木ニ限リ聞届ク

秋田県北秋田郡七日市村長長岐貞治申請

明治三十五年十月二十三日農商務省指令第三七六号

而シテ右指令ニ付テノ大臣ノ大林区署ニ対スル命令及台帳ニモ之ニ相当スル表示、登録アリ

(ニ) 部分林台帳ノ本質

部分林台帳ノ作製及之カ登録ニ付テハ之ヲ上述シタリ、而シテ其本質ハ要スルニ法規ノ命スル所ニ依リ作製セラルル当該権利ノ目的物及権利者ヲ表示スル唯一ノ備付証明公簿ナリトス、従テ登録自体ニ法益ヲ生シ其登録事項ヲ冐サレタル場合ニアリテハ、登録自体ノ法益保護トシテ之カ是正ヲ求メ得ヘキモノナルコト必至ナリトス

コレ国有林野法、国有林野台帳規程並国有林野台帳及図面謄本抄本下付規程等ニ鑑照考察シテ最モ分明ナリトス

而シテ部分林ノ登録ニハ之ヲ異動性ノモノト不動性ノモノ二種ニ分類スルコトヲ得

彼ノ部分木植立本数ノ如キハ前者ニ属シ下戻聞届ニヨル本数登録ノ如キハ後者ニ属ス、之レ前者ハ植立シタル本数ノ登録ニ過キサレハ其分収ノ際ニ異動ノ生スルハ必然ニシテ、後者ハ其下戻サレタル部分木数ノ登録ナレハ謂ハレナク其数量ノ異動ヲ生スルモノニアラス、之レ下戻ハ同下戻法第四条ニヨリ其分収ノ権利ヲ取得スルモノナレハ必スヤ特定又ハ特定シ得ヘキ本数ノモノタルヘキコト、法律上当然ノ事理ニ属スルカ故ニ其権利関係ハ絶対従テ之カ登録ハ不動性ノモノトス、故ニ前者ハ事実上異動性ノモノニシテ後者ハ法律上不動性ノモノナリト云フコトヲ得ヘシ。

(ホ) 本件部分林ト本件訴訟ニ付テ

本件部分林ハ上記ニヨリ分明ナル如ク其壱万本ノ下戻ナルコト寸疑アルコトナシ、而シテ之ヲ明証スヘキモノハ以上挙示スル如ク悉ク被告ノ手中ニアル最高公文書等ニシテ其文書自体ニヨリ判然タルノミナラス之ヲ法規及下戻実例等ニ照シ愈々炳然タルモノトス。

然ルニ被告ハ何等根拠反証ナキニ不拘放漫漠然右ハ地域ヲ劃定シテ下戻シタルモノ、而シテ其劃定地域トハ上記申請書ニ添付シタル図面ニ拠ルヘキモノナリト強イ、申請書ニ記載スル下戻申請ノ目的物杉立木壱万本ハ単ナル漠然タル概数ヲ記載シタルモノニシテ以下各書ノ壱万本ノ記載、登録ハ右単ナル漠然タル概数ヲ踏襲シタルニ過キスト妄言スルモノトス。

右謂フ所ノ漠然タル概数トハ如何ナル概数ナリヤ、更ニ単ナル漠然タル概数トハ如何ナル概数ヲ指スモノナリヤ、殊ニ右ハ概数ト記載スヘキヲ壱万本ト誤記セシトカ、又ハ概数壱万本トスヘキヲ其概数ノ二字ヲ漏シタトカ言フニアラスシテ、壱万本ノ記載ハ概数ノ記載ナリト強弁スルモノニシテ全ク不能ノ主張及踏襲トハ何ヲ意味スルモノナリヤ、如此記載例ハ絶テアルコトナク勿論台帳規程ニモ踏襲登録ナルモノアルヘキ理由ナシ。

就中被告ノ上記下戻聞届ニ付左ノ如キ奇想天外ノ珠玉ノ迷説ヲナシ居ルモノ

曰ク

指令

該聞届記載ニ関スル文詞ノ如キハ斯ル経過ニ関シ下戻ニ対シテ官庁ニ協力スヘキ旨ヲ附記シタモノテアツテ、夫レ以上意味ヲ有スルモノテナイ、尚此達シニハ杉立木壱万本ナル記載カ全然ナイ。

右ハ何ヲ言ハント為スモノナリヤ寔ニ健全性ナキ戯言ト謂フヘクソモ被告ハ国有土地森林原野下戻法ヲ何ト心得へ居ルヤ同法ニ基ク大臣ノ下戻指令ヲ如何ニ観ジ居ルヤ、被告ノ言フカ如クンハ右下戻指令ニアラスシテ協力申附書トテモ称スヘキモノナリヤ、同下戻法中何等カコノ如キ規定ヲナシ居ルヤ。

陳弁実ニ窮シタリト言フヘシ、コノ窮マレルヨリ考察スルモ、被告ノ言ヒ分ノ全体カ如何ナルモノテアルカヲ断定スルニ難カラス。

被告ハ当該聞届指令書ノ文面ヲ見直シテハ如何、文字自体書イテナケネハ即チ無イ杯トハ入学前ノ児童モ笑フテアロウ、言フマテモナク文意書趣ヲ表現セントナスモノハ文書テアル、文書ハ決シテ文字ノ羅列テナイ、下戻聞届ハ文書テアツテいろはノ才手本テナイ。

問フ該指令書ニ協力云々ノ文字カトコカニ書イテアリマスカ、其意味ラシキモノモナイテハナイカ、殊ニ単ナル漠然タル概数ノ文字モ之レナキノミナラス其之ヲ推知スヘキ何モノモナイテハナイカ。

被告ハ本件指令書ヲ右ノ如ク協力申附書ノ様ニ解スレハコソ本件申請ニ対シテ未タ下戻指令ナキモノト錯覚誤解独擅専恣顕然タル壱万本ヲ二千七百八十四本ニ減シテ最早ヤ残木ナシト強弁シテ恥ツル所ナシ、裁判所又之ニ加膽スルモノノ如ク以テ国民ヲ憂愁ニ沈淪セシム、今ノ世尚ホコノ虐政曲裁アリ誰レカ長恨事トナササルモノアランヤ。

如上本件ハ日月ノ如ク照乎タル按件ニシテ一点ノ疑惑アルコトナシ、従テ之ヲ訴訟トナスヘキマテモナク当然解決サルヘキモノナリトシテ、前主畠山雄三ニ在リテモ断ヘス、右指令ノ実行ヲ求ムルモ被告ハ妄リニ之ニ応セス、原告ニ於テ之カ譲受後ニアリテモ間断ナク之カ要請ヲ尽シタルモ同シク之ニ応セス為メニ、原告ハ止ムナク昭和四年中本件乙第一号証ノ一ノ訴訟ヲ提起シタリ。

然ルニ該訴ハ其請求事項カ其順序ニアラサルヲ考ヘ更メテ訴求スヘク原告ハ前訴第二審ニ於テ本件乙第一号証ノ二ノ如ク訴状貼用印ノ補充ヲナササル儘、昭和七年中之ヲ終結シ一面被告ニ対シテハ其旨通告シタリ。

其後ニ在リテモ出来得ヘクンハ訴外解決ヲ希ヒ其之ニ勉ムル中斗ラス軍国戦運ノ世トナリ、遂ニ解決ノ時機ヲ失スルニ至リ漸ク本訴提起ノ運ヒトナリタルモノトス。

茲ニ附言スヘキハ、右下戻ノ当時秋田大林区署ニ本件取扱者ニ月居某ト称スル属官アリ、畠山雄三ヨリ聞ク所ニ依レハ頗ル醜官汚吏ニシテ、本件下戻部分林引渡ノ際同人ハ金壱千円ヲ持参セハ壱万本全部引渡シテヤルト云ヘシモ、其時分ノ壱千円ハナカナカ容易ノモノテナクソレニ引キ替ヒ樹木ハ左程値打チナク為メニ之カ要求ニ応セサリキ。

現ニ右月居ハ退官後本件部分林残木七千二百十六本ヲ種トシテ金儲ケヲ企テ、権利者畠山雄三ノ承諾ナキニ之レアルモノ、如ク装ヒ、或ル時ハ金川某ナル者ヨリ金五千円ヲ騙ヒ為メニ告訴又ハ金員返還ヲ受ケタルコトハ秋田地方裁判所ニ於テ取リ扱ヒタル顕著ナル事件ナリトス。

(ヘ) 本件訴訟請求ノ趣旨及原因ト前訴判定ノ範囲

(天) 本件訴訟請求趣旨及原因

甲、請求趣旨

国ハ秋田県南秋田郡山本郡鹿角郡部分林台帳(雑第一四八号)中譲受人畠山雄三部面

一、樹数欄ノ壱万本(黒書)ニ附シタル朱線及二千七百八十四本、本数ノ減少セシハ実査ノ結果ニヨル(朱書)

一、反別欄ノ実測反別拾九町五反六畝七歩、反別ノ減少シタルハ実査ノ結果ニヨル(朱書)

一、事故欄ノ上記事由ニヨリ本個所全部自然国有林ニ編入セラル、明治三十六年八月七日(朱書)及川尻印ヲ削除シ

該台帳ヲ控訴人名儀ニ書替ヲ為ス可シ。

本趣旨中右壱万本(黒書)ニ附シタル朱線ノ削除ニ付キ特ニ注意スヘク、即チ本件下戻聞届ハ国有土地森林原野下戻ニ基キ所管大臣ノ下戻聞届処分ヲ原因トシテ明白ニ登録セラレタル壱万本ハ法律上不動性ノモノナルニ不拘、秋田大林区署ハ擅ニ朱線ヲ附シ之ヲ抹殺シタルコトハ本件請求ノ起レル要因ナリトス。

別言スレハ下級官庁カ上記下戻法ヲ無視、且ツ大臣ノ命令ニ背キ専恣独断当該部分林台帳ニ甚タシキ過誤以テ本来実在スル権利ヲ形式上之ヲ失ヒタルモノノ如ク到底意味ノ通セサル(即チ上記大臣ノ秋田大林区署ニ対スル本件部分林引渡命令ニハ杉立木壱万本目通七尺廻リ以下弐尺廻リ以上、引渡方取計フ可シトアリテ、決シテ実査ノ上引渡セヨトノ命意ナキニ不拘下級官庁カ実査ノ結果、壱万本ノ部分木カ二千七百八十四本ニ反別弍拾五町歩カ拾九町五反六畝廿歩ニ減少シタ、而カモ其事由ニヨリ本個所全部自然国有林ニ編入セラルト、コノ附記アルノ故ヲ以テ本件部分林ハ最早ヤ残木ナシト理不尽ノ言ヒ懸リヲ為ス、殊ニ自然国有林ニ編入セラルトハ何タル雑言テアロウ、抑モ部分林ナリヤ国有林ナリヤハ人為ニ依ルモノテアル、自然ヨリ見レハ何レモ同シ森林テアル、ソレカ自然ニ国有林ニ編入セラルトハ何ヲ言ハントナスモノナリヤ、之ヲ以テコノ附記自体ヨリ考察スルモ誤記テアル、コノ如キ附加誤記ニヨツテ吾人ノ財産権カ減少消滅シタ杯トハ実ニ言語同断ノ極メテアル)附記ヲナシタルカ故ニ、之ヲ削除復活セシムルノカ本訴ノ眼目トスル所ナリトス。

乙、請求原因

当該部分林ハ国有土地森林原野下戻法ニ基キ下戻サレ同法第四条ニ拠リ分収権ヲ取得其之ヲ原因トシテ国有林野法、国有林野台帳規程ニ準拠シ、当該部分林台帳ニ登録セラレタル杉立木壱万本ナリトス。

コノ故ニ当該部分林台帳ノ登録ハ彼ノ植立許可ニヨル植立本数ノ登録ノ如キ分収ノ際必然異動ノ生スヘキモノト大ニ其趣キヲ異ニシ、上記ノ如ク下戻聞届処分ニ因リ其樹種、樹数、目廻リヲ定メテ其下戻ヲ聞届ケラレ、同時ニ之ニ対シ分収ノ権利ヲ取得シタルモノニシテ、其権利関係ハ絶対的従テ之カ登録ハ不動性ノモノトス、之ヲ以テ示後謂ハレナク片面的ニ該権利ハ勿論、其登録事項ノ変更消滅ヲ来スコト断シテアルコトナシ

約言スレハ本件部分林台帳ノ杉立木壱万本ノ登録ハ下戻ヲ原因トシテ登録セラレタルモノナリ、下戻ハ国有土地森林原野下戻法第四条ニヨリ分収ノ権利ヲ取得スルモノナルヲ以テ必スヤ特定又ハ特定シ得ヘキ定数ノモノナラサルヘカラス、被告ノ云フカ如キ単ナル漠然タル概数ハ到底権利取得ノ対象タル能ハス、コノ理ニヨリ之ニ関スル権利関係ハ絶対的其登録ハ不動性ノモノトス、コノ故ニ示後謂ハレナク片面的ニ該権利ハ勿論其登録事項ノ変更消滅ヲ来スヘキ性質ノモノニアラス。

尚右不動性ノコトユ付テハ上記(ニ)部分林台帳ノ本質ニモ其不動性ノモノナルコトユ付テハ勿論、又本訴請求原因ノ何タルヤニ付テハ原告カ第一審ニ呈出シタル昭和廿二年八月廿五日附第一準備書面同年十月廿五日附第二準備書面及第二審ニ呈出シタル原審判決不服理由、同原審判決不服理由総括的説明中請求趣旨及原因要旨等ニ於テ訴状記載ニ係ル請求趣旨請求原因ヲ反覆釈明シタリ。

判例

一、下戻ニ依ル下戻処分ハ公法上ノ行為ナルモ一旦主務大臣ノ聞届アルニ於テハ該処分ハ茲ニ完了スルモノトス(大審院民事判決録明治四十年七六五頁)。

一、国有土地森林原野下戻法ニ従ヒ下戻ヲ受ケタル者ハ其下戻ニ因リ所有又ハ分収ノ権利ヲ取得シタルモノニシテ、国有以前ニ遡リ所有又ハ分収ノ権利ヲ回復スルモノニアラス(大審院民事判決録明治三七年六七六頁)。

一、地租改正処分ニ因リ現ニ国有ニ属スル山林立木ニ付キ、国ト分収ノ事実アリタル為メ其下戻ヲ受ケテ新ニ分収ノ権利ヲ取得シタル者ハ国有林野法第十九条第二項ニ所謂国有林ニ就キ収益ノ分収ヲ為スモノニ外ナラス、従テ其山林立木ハ部分林ト看做スヘキモノナリ(大審院民事判決録明治四二年三七七頁)。

然ルニ被告(秋田大林区署)ハ如上ノ事実法理ヲ無視シ、右植立許可ニ依ル植立本数ノ登録ノ如キ異動性ノモノト誤リ何レノ日カ徒ラニ請求ノ趣旨ニ於テ削除ヲ求ムル記載ヲ附加シタリ。

之レ上記下戻法第四条、台帳規程、指令、命令、台帳登録竝判例ニ照シ全部誤記ナルコト分明ナリ、依テ速カニ之カ削除ヲ為スヘキモノトス(国有林野台帳規程第十六条)。

当該下戻聞届ハ明治三十二年五月六日付ヲ以テ訴外石川伝太カ上記下戻法ニ基キ左記申請書(申請書ハ上記(ロ)本件部分林ノ由来ノ大要冐頭ニ之ヲ掲クルヲ以テ之ヲ略ス)ニヨリ明治三十五年五月三十一日下戻聞届ケラレタルモノニシテ、明治三十五年七月廿三日右伝太ヨリ訴外畠山雄三ニ於テ当該部分林権利全部ヲ譲受ケ、原告ハ右雄三ヨリ昭和四年二月六日秋田地方裁判所々属公証人内川竜太郎作成第壱万八千拾号公正証書ニヨリ当該部分林七千二百十六本ニ対スル権利ノ譲渡ヲ受ケ同時ニ秋田営林局ニ対シ、之レカ名義書替ヲ求メタルモ同局ハ猥リニ上述附加誤記ヲ言ヒ分トシテ之ニ応セサルモノトス。

判例

一、国有林野部分林規則第三条ノ規定ハ大林区署長ノ許可アルニアラサレハ処分行為ヲ成立セシメサル趣旨ニ非ラスシテ其許可アルニ非ラサレハ処分ノ効力ヲ生セシメサル趣旨ナリトス(大審院大正三年(オ)第八四七号同四年四月廿二日判決第四卷諸法九六頁)。

一、国有林野部分林処分ノ効力ハ大林区署長ノ許可アルニアラサレハ発生セスト雖モ、其処分行為ハ既ニ許可出願前之ヲ成立セシメ得ルモノトス(長崎控訴院大正三年(ネ)第五七号同年九月廿六日長崎控訴院判決)。

一、民収権利者名義ノ書替ハ民収権ノ移転アリタル場合ニ限リ為スヘキモノナレハ、仮令担保ノ為メニ外ナラサルニセヨ民収権ノ移転アルトキハ書替ヲ為スヘキコト勿論ナリト雖モ、民収権ノ移転ナキニ不拘名義ヲ書替スルコトハ法律上為スヲ得サル所ニ属ス(大審院大正三年(オ)第五号同四年七月廿九日判決)。

一、明治十一年内務省達甲第四号部分木仕付条例第十条ハ部分木仕付権ハ予メ当該官庁ノ許可ヲ得ルニ非サレハ売買譲渡ノ目的ト為シ得サル旨ヲ規定シタルニアラスシテ、唯其売買譲渡ハ当該官庁ノ許可ヲ得サレハ其効力ヲ生セサルコトヲ示シタルニ過キス。

当事者カ当該官庁ノ許可ヲ得スシテ直ニ部分木仕付権ヲ移転セント欲スルハ不能ノ事項ヲ目的ト為スモノニシテ無効ノ行為ナリトス(判決抄録一八巻民三五二七頁)。

右部分木仕付条例ハ国有林野部分林規則附則第二十条ニヨリ廃止セラレタリ。

一、国有林野施行規則第五十三条ニ当事者ヲシテ願書ニ連印シ契約書ヲ添附シテ、之ヲ大林区署長ニ差出スヘキ旨ヲ規定シタルハ即チ大林区署長ニ許可ノ要求ノ意思ヲ陳述セシムル趣意ナルヲ以テ、裁判所カ当事者ニ権利譲渡ノ許可ヲ受クル為メ大林区署長ニ対シ譲渡ノ手続ヲ為スヘシト命シタル判決ハ民事訴訟法第七百三十六条ニ所謂意思ノ陳述ヲ為スヘキコトノ判決ニ該当ス(大審院民事判決録明治四十三年四二六頁)。

此ノ理ニヨリ下戻ヲ原因トスル部分林台帳登録ハ不動性ノモノ、即チ本件部分林杉壱万本ノ登録ハ下級官庁ハ勿論何人ト雖モ擅ニ変更消滅スルコトヲ得サルモノトス、然ルニ秋田大林区署ハ猥リニ之ヲ変更、消滅シタル請求趣旨ニ記載スル附記ヲナシタルハ誤記ナルヲ以テ之ヲ削除シ、名儀書替ヲ為スヘシト謂フニ在リ。

之ヲ以テ本訴ハ誤記削除ヲ以テ其主タル請求トナシ名義書替ハ之ニ附従性ノモノニシテ各独立シタル請求事項ニアラサルモノトス

(地) 前訴判定ノ範囲

原告前訴即チ秋田地方裁判所昭和四年(ワ)第一二号事件ハ仙台控訴院ニ於テ貼用印紙補充セサル儘控訴却下トナリタルモノ(本件乙第一号証ノ一、二)

本件乙第一号証ノ一ニ事実トシテ掲クル如ク

原告訴訟代理人ハ被告カ明治三十五年三月三十一日付農商務大臣平田東助名義ニテ農商務省指令第六千百十八号ヲ以テ訴外石川伝太ニ下戻シタル部分林杉立木ハ壱万本ニシテ、同部分林残木ハ七千二百十六本ナルコトヲ確認ノ上、該部分林台帳名義人畠山雄三トアルヲ原告名儀ニ書替ヲ為スヘシ。

訴訟費用ハ被告ノ負担トストノ判決ヲ求メ

其請求原因トシテ陳述シタル要旨ハ訴外亡石川伝太ハ明治三十二年法律第九十九号国有土地森林原野下戻法ニヨリ明治三十二年五月六日、秋田県山本郡檜山町母体官林大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下山林反別二十五町歩杉立木目通七尺廻四百五十本、同六尺廻五百六拾本、同五尺廻六百九拾本、同四尺廻八百本、同三尺五寸廻八百五拾本、同三尺廻千五百本、同二尺五寸廻二千二百本、同二尺廻二千九百五十本、合計壱万本ニ付三官七民ノ部分林ニ引直方申請シタル処、明治三十五年三月三十一日指令林第六一一八号ヲ以テ農商務大臣ヨリ右申請国有林内立木三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ件ヲ聞届ケラレ、其下戻区域ニ付テハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受クヘキ旨命セラレ一方同大臣ヨリ秋田大林区署ニ対シ同シク林第六一一八号ヲ以テ前記母体官林ノ内大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下山林反別二十五町歩ノ内杉立木壱万本、但シ目通リ七尺廻以下二尺廻以上ヲ三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ件石川伝太代理人加藤景福外三名ヨリ申請ノ処聞届ノ旨指令ニ及ヒタルニヨリ引渡方取計フヘキ旨命セラレタリ。

然ルニ被告ハ右壱万本ノ下戻区域ヲ指揮セス、明治三十五年五月二十五日右壱万本ノ内僅カニ二千七百八十四本、此材積二万五百三十九尺〆九分一毛ノ下戻区域ヲ指揮シタルノミニシテ、其余ノ七千二百拾六本ノ部分林残木ノ存在ヲ否定シ、未タ前記聞届書及命令書ノ趣旨ヲ果タササルモノナリ、明治三十五年七月二十三日訴外畠山雄三ハ右伝太ヨリ該部分林権利ヲ譲受ケ部分林台帳名義人トナリタル処、原告ハ昭和四年一月六日秋田地方裁判所々属公証人介川竜太郎作成第一万八千十一号ノ右部分林売買契約公正証書ニ基キ、右雄三ヨリ其部分林権利ノ譲渡ヲ受ケ、国有林野法施行規則第五十三条ニ基キ、昭和四年三月十二日当事者願書ニ連署連印シ、右契約書ヲ添附シ当該官庁ニ対シ名義書替ヲ申請シタルモ、被告ニ於テハ謂ハレナク之カ書替ヲ為ササルモノナリト謂フニ在リ。

而シテ同証理由後段ニ曰ク

原告ハ本件申請ノ目的物ハ杉立木壱万本ソノモノナリ、即チ伝太ノ祖先主税カ秋田藩主ヨリ鼻コクリ沢古道下ニ植立免許ヲ受ケタル事実アリ、而シテ鼻コクリ沢ニ一万数千本ノ杉立木生立スルトコロヨリ其内一万本ヲ以テ古道下ナル部分ニ相応スルモノト思量シテ之カ下戻ヲ申請シタルモノニシテ、其生立区域ニ付テハ申請当時必スシモ明確ナラサリシ只概略ノ地点ヲ指示シタルニ過キス、申請書添附図面モ亦同様ニシテ単ニ申請書ノ形式ヲ整フル為添付シタルモノナル旨主張シ、成立ニ争ナキ甲第一号証(本件申請書)ニハ杉立木一万本トシ、且其内訳ヲモ詳記シアリ、又成立ニ争ナキ甲第十五号証ニ拠レハ植立ノ区域ハ明瞭ナラシコトヲ窺フニ足ルヲ以テ、或ハ原告ノ主張ヲ肯定シ得ヘキカ如キ観ナキニシモアラス、然レトモ植立本数モ亦明瞭ナリシコトノ徴スヘキモノナキヲ以テ一万本ト限定シテ申請シタル所以ヲ知ルニ由ナク、寧ロ「古道下」ナル地名ニ基キ其区域ヲ定メテ申請シタルモノト認ムヘキノミナラス、前記甲第十七号証(松浪与三郎証人調書)成立ニ争ナキ乙第十八号証ヲ綜合スレハ一万本ナル数量ニハ重キヲ置カス、右区域ヲ主トシタルコトヲ推知シ得ヘキヲ以テ一万本ナル数量ニハ重キヲ置カス、右区域ヲ主トシタルコトヲ推知シ得ヘキヲ以テ一万本ナル数量ハ単ナル目算ニヨル漠然タル概数ヲ記載シタルモノニシテ甲第四、五号証並甲第十四号証ノ一乙第五号証(部分木台帳)等ニモ一万本ト記載アルハ右申請書ノ記載ヲ其儘踏襲シタルニ過キサルモノト認ムヘク、結局前記各証拠ニ拠リ前記ノ如ク認定ヲ為スヲ妥当ナリトス、即チ石川伝太ハ別紙添付図面ニ甲号地域トシテ表示セラレタル地域ヲ限リ該地域内ノ生立杉立木ニ付部分林引直ヲ申請シタルモノニシテ、前記指令ニヨリ部分林ニ引直方聞届ケラレタル杉立木ハ右申請ニ係ル杉立木ノ全部ニシテ且之ニ止マルモノナルコトハ前説示ノ如クナルヲ以テ、被告国カ明治三十五年三月三十一日農商務省指令第六千百十八号ヲ以テ訴外石川伝太ノ為部分林ニ引直方聞届ケタルハ別紙添付図面ニ甲号地域トシテ表示セラレタル地域内ノ杉立木ノ全部ニシテ、且之ニ止リ一万本ト数量ヲ定メテ下戻シタルニアラサルモノト謂フヘシ、然リ而シテ証人佐藤吉兵衛ノ証言並前記成立ニ争ナキ乙第十八号証第九号証ヲ綜合考覈スレハ右甲号地域内ノ杉立木七民分ハ既ニ明治三十五年中全部引渡済ニシテ残木ナキコトヲ認メ得ヘシ、甲第十九号証(畠山彌市ノ証人調書)中右認定ニ反スル部分ハ措信セス、然レハ本訴請求ハ失当ナルコト洵ニ明白ナルヲ以テ示余ノ争点ニ対スル判断ヲ須タスシテ之ヲ棄却スヘク

ト右理由ニヨレハ国カ石川伝太ニ対シ部分林引直方聞届ケタルハ判決添付図面ニ甲号地域トシテ表示セラレタル地域内ノ杉立木全部ニ止マルモノニシテ、一万本ト数量ヲ定メテ下戻シタルモノニアラス、而シテ右地域内ノ杉立木七民分ハ既ニ引渡済ミナルヲ以テ残木ナシト

判定シタルモノナルコトヲ知ル。

名義書替ニ対シテハ何等判定ヲ与フルコトナシ。

従テ前訴判決ノ主文ニ包含スルモノハ右判定ヲ与ヘタル具体的事項ニ限ルモノナルコト分明ナリトス。

(ト) 本件部分林ト各乙号証トノ関係

本件部分林ト各乙号証トハ全然相関係ナキモノトス。

即チ本件部分林ハ明治三十五年七月二十三日訴外石川伝太ヨリ畠山雄三ニ於テ其権利全部ヲ譲受ケタルモノナルニ

乙第二号証ノ一ニヨレハ

石川伝太ハ明治三十九年中

乙第三号証ニヨレハ

富樫営藏ハ明治四十一年、大正四年、大正七年

乙第六号証ノ一ニヨレハ

富樫五兵衛ハ昭和三年中

各々訴提起

共ニ畠山雄三ニ於テ当該部分林権利ノ譲渡後ニ係ル無権利者ノ訴訟ナリトス

聞ク所ニヨレハ右ハ共ニ所謂事件師ノ企策ニ起リタルモノノ如シ

上記ノ如ク右ハ総テ無権利者ヨリ提起サレタル訴訟ニシテ、本件部分林ハ全ク交渉ナキモノナリシカ其之カ為メ本件部分林ニ対シ何等カ陰影ヲ与ヘタル観アルモノノ如シ、然レトモ之レ只其外観ニ止マリ其内面実質ニ付テハ毫モ影響アルヘキニアラサルコト素ヨリトス。

以下

上告理由第一点ノ論旨ヲ述フヘシ

上記(ヘ)天、本件訴訟請求ノ趣旨及原因ニ於テ述フル如ク、其趣旨ニ掲クル名義書替ハ誤記削除タル主請求ニ随従性ノモノニシテ、其一項ヲ形成スル請求事項ニアラス、両者ハ双互一体性ノモノテアル、別言スレハ主請求立タサレハ之レト運命ヲ共ニシ名義書替ノミ独立シテ別個ノ判断ヲ受クヘキ性質ノモノニアラス、其随従性ノモノナルコト上記何々ヲ削除シ何々ノ名義書替ヲ為スヘシ、トノ記載自体ヨリシテ之ヲ知リ得ヘク、殊ニ原告ハ本訴第一審ニ呈示シタル第二準備書面第一、被告第一準備書面第三ノ陳述ニ対ス、中

更ニ同項中名義書替ノコトニ付キ云為セラル、該云為ニ付テモ今少シク正シキ御説ヲ聴キタキモノテアツタ。

被告ハ名義書替ヒ其モノミヲ抽出シテ彼此同一ナリト論セラル(心底密カニ濁リナキヤヲ疑フ)。

然シナカラ此レハ共ニ主請求ニ追従性ノモノテ各自独立シテ其一項ヲ形成スル請求事項ニアラス、両者双互一体性ノモノテアル別言スレハ、主請求立タサレハ之ト運命ヲ共ニシ名義書替ヒノミ独立シテ別個ノ判断ヲ受クヘキ性質ノモノニアラス、之ヲ以テ既ニ其主動的請求ニシテ彼此其趣旨ヲ異ニスル以上ハ、之レト同一ニシテ所謂既判力ニ支配セラルヘシトノ論議ノ如キハ苟モ法ヲ執ル者ノ須カラク心シテ避ク可キ事ナリトス。

又同シク第一審ニ呈出シタル昭和廿二年十一月十七日附第四準備書面第一、乙、中

名義書替ヒニ付テハ原告第二準備書面第一、末尾参照

又同シク第二審ニ呈出シタル昭和廿三年三月六日附原審判決不服理由第壱冊第六、ニ

原判決ハ擅ニ控訴人(原告)訴状記載ニ係ル請求趣旨ヲ変造全然其ノ趣意ヲ更改シタリ。

訴状記載ニ係ル請求ノ趣旨ハ

何々ヲ削除シ

該台帳ヲ原告名義ニ書替ヲ為ス可シ

ト明記即チ名義書替ハ何々ヲ削除ナル主請求ニ追従関連性ノモノニシテ独立的請求事項ニアラサルコトヲ文法上確然表現シタルモノナルヲ

原審判決ハ

何々ヲ削除シ

被告ハ該台帳ヲ原告名義ニ書替ヲ為ス可シ

ト臆面モナク書キ改メ名義書替ヲ別個独立ノ分離性ノ請求事項ニ変造シタリ、而カモ原審判決ハ其判決理由ニ於テ之ヲ全ク独立事項トシテ問擬之ヲ排斥シタリ其無法実ニ恐ルヘク寔ニ言語ニ絶スルモノトス。

控訴人(原告)ノ所見ニコレハコノ如キ請求ハ主請求タル誤記削除ニ追従性ノモノニシテ各自独立シテ其一項ヲ形成スル請求事項ニアラス(偶々其ノ文言ヲ等フスルニ過キス)両者ハ双互一体性ノモノ別言スレハ主請求立タサレハ之ト運命ヲ共ニスル連繋的伴随性ノモノテ名義書替ノミ独立シテ別個ノ判断ヲ受クヘキ分離性ノモノニアラサルコト、彼ノ訴訟費ニ関スル請求ト敢テ其趣キヲ異ニスルモノニアラスト信ス。

控訴人前訴ニアリテモ名義書替ハ本請ト同趣旨ニ於テ請求シタルモノナル所現ニ前訴裁判所ハ其主請求ヲ排斥スルニ当リ名義書替ニ付テハ別ニ判断ヲ与フルコトナシ(本訴乙第一号証ノ一理由末尾参照)。

コノ所説ハ被控訴人(被告)原審第一準備書面ニ於ケル名義書替ノ論議ニ対シ、控訴人(原審)ハ原審第二準備書面ニ於テ専ラ強調スル所ナリ。

宜ヘナル哉原審カ此変造ヲ敢テシタルヨリ推理考察スレハ、控訴人(原告)ノ上記所説ヲ全面的ニ容スルモノナリト断定シテ憚ル所ナシトス。

ソモコノ如キ変造ナルコト明々歴然苟モ司法裁判ノ職ニ在ル者傍若無人訴民ヲ足下ニ一蹴盲人視スル如キ非道違法ノ振舞ハ天人共ニ容レサル稀代ノ暴挙ニシテ、独リ裁判上ノ失態ノミニ止マラス、別途ノ有責行為ニ該当スルモノト信セラル。

又第二審ニ呈示シタル昭和廿三年三月十六日附原審判決不服理由第弐冊第十、

原審ハ其理由ニ於テ職務上ノ失態以外ノ有責行為ニ該当スル疑ヒアリト認メラルヘキ所行ノ下ニ控訴人ノ訴ヲ斥ケタリ。

即チ(六) ハ控訴人ハ本訴第壱冊第六、ニ於テ縷陳スル如ク、実ニ恐ルヘク原審ハ請求趣旨ヲ常套茶飯事ノ如ク変造以テ一事不再理ノ原則ニヨリ失当ナリトシテ排斥シタリ、控訴人ハ本書第壱冊第六、ニ於テ細説スル如ク本訴当該部分林台帳名義書替ノ如キ事項ハ常ニ其主請求ニ追従連関性ノモノニシテ、決シテ之ト別離的運命ヲ有スルモノニアラサルコーハ其性質上異説ナキ所ニシテ現ニ前訴判決理由ニ於テモ其ノ事項ニ対シテハ何等ノ判定ヲ与フルコトナシ、(原審ハ上記(三)ニ於テ自判ノ曲事ヲ掩ハン為メ之ニ対シ判定ヲ与ヘタリト説示スルモ、全ク虚構ノ陳弁寔ニ正気ノ所為ナリヤ否ヤヲ疑フ、コレニ付テモ乙第一号証ノ一ヲ特ニ参照)然ルニ原審ハ控訴人ノ請求趣旨ヲ変造今又其眼前ニ在ル乙第一号証ノ一ノ説示ヲ誣ヒント為ス、其僻事非行ノ態タラク実ニ言語ニ絶スルモノアリ、常人既ニ然リ別チテ公直厳正其照魔鏡タルヘキ司法裁判ノ職ニ在ル者敢テコノ悪戯ヲ為ス、実ニ天人共ニ容レサル所行ト断スヘク、コノ如キハ単ニ職務上ノ失態ニ止マラス、他ノ有責行為ニ該当スル所ノ行ト観察スヘク今ヤ諸般建設革新サルヘキ時運ニ際シコノ如キ不法極マル措置ハ直チニ邦家司法裁判ノ威信ヲ痛ク内外ニ失墜スルコト甚大ニシテ、コノ如キハ独リ訴民ノ一私権ノ問題トノミ局限スヘキモノニアラス確信ス

又同弍冊第十四、末尾ニ

彼ノ名義書替ノ請求モコノ請求事項ハ主請求タル誤記削除ニ追従連関スルモノナリヤ、将タ独立性ノモノナリヤハ一争点ナリト云フヘク然ルニ之ヲシモ記載スルコトナシ。

之レ亦上来論難細述スル如ク原審ハ之ヲ変造シタル結果其記載ノ要ナキニ至リタルモノナリ。

又同シク第弍審ニ呈出シタル昭和廿三年四月十八日附準備書面原審判決不服理由結括的説明兼ネテ前訴判決ノ性能ニ及フ

(甲) 末尾

名義書替ニ付テハ原審判決不服理由第壱冊第六及原審第二準備書面其他参照

等々ニ於テ執拗ニ強調其外各口頭弁論事毎ニ之ヲ釈明解説之レ勉メタリ。

然ルニ第二審判決理由中而カモ其主要点ニ付キ左記説明アルヲ見ル(以下便宜ノ為メ理由全部ヲ掲ク)。

案スルニ訴外石川伝太カ明治三十二年法律第九九号国有土地森林原野下戻ニ基キ、明治三十二年五月六日附ヲ以テ秋田県山本郡檜山町母体官林ノ内大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下山林及別二十五町歩内ノ杉立木下戻申請ヲシ、明治三十五年三月三十一日附農商務省指令第六一一八号ヲ以テ農商務大臣平田東助カラ石川伝太ニ対シ三官七民ノ割合ニヨル杉立木下戻ノ指令カアリ、同日同大臣カラ秋田大林区署長ニ対シ、林第六一一八号ヲ以テ前記山林反別二十五町歩内杉立木一万本、但シ目通リ七尺廻以下二尺廻リ以上ヲ三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ件石川伝太代理人加藤景福外三名ヨリ申請ノ処、聞届ノ上指令ニ及ヒタルニヨリ引渡方取計フヘキ旨命セラレ、同署備付ノ部分林台帳ニ控訴人主張ノ如キ所定ノ登録カサレタコト(但シ右下戻指令ニヨリ石川伝太カ現実ニ権利ヲ取得シタ部分林ノ杉立木ノ樹数ノ点ハ除ク)ハ被控訴人ニ於テ争ワナイトコロテアル、控訴人ハ石川伝太カ右下戻指令ニヨツテ権利ヲ取得シタ部分林ノ杉立木ノ樹数ハ一万本テアツテ、右下戻指令ヲ原因トシテ部分林台帳ニ登録サレタ右権利ソノ他ノ登録事項ハ絶対不動ノモノテアルカライワレナク変更消滅ヲ来スモノテハナイ、シカルニ被控訴人ハ右事実及法律ヲ無視シ、右部分林台帳ノ記載ニ請求ノ趣旨ニオイテ削除ヲ求メル部分ノ記載ヲ附加シタカ、右ハ誤記且前記下戻命令違背ノ行為テアルコト明白テアルトコロ、右石川伝太ハ明治三十五年七月二十三日畠山雄三ニ右部分林ノ権利全部ヲ譲渡シ、控訴人ハ昭和四年二月六日畠山雄三ヨリ右部分林残七千二百十六本ニ対スル権利ノ譲渡ヲ受ケタカラ請求ノ趣旨記載ノ如ク、右附加部分ノ記載ヲ削除シテ控訴人名義ニ名義書替ヲ求メルト主張スルノテアルカ、コノ点ニ関シ被控訴人ハ既判力ニ関スル抗弁ヲ提出スルカラ先スコノ点ニツイテ審判スル、ソコテ成立ニ争イナイ乙第一号証ノ一、二ニヨルト控訴人ハ昭和四年中被控訴人ヲ相手トシ秋田地方裁判所ニ同裁判所昭和四年(ワ)第一二号(訴名略)ヲ提起シタノテアルカ、該控訴ニオケル請求原因ノ要旨ハ石川伝太ハ明治三十二年法律第九九号国有土地森林原野下戻法ニヨリ、明治三十二年五月六日秋田県山本郡檜山町母体官林大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下山林反別二十五町歩、杉立木合計一万本ニツキ三官七民ノ部分林ニ引直方申請シタトコロ、明治三十五年三月三十一日指令第六一一八号ヲ以テ農商務大臣ヨリ之ヲ聞届ケラレ、其ノ下戻区域ニ付テハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受クヘキ旨命セラレ、一方同大臣ヨリ秋田大林区署長ニ対シ林第六一一八号ヲ以テ右下戻申請ニ付聞届ノ旨指令シタカラ引渡方取計フヘキ旨命シタ、シカルニ被告(本件被控訴人ニ該ル)ハ右一万本ノ下戻区域ヲ指揮セス、明治三十五年五月二十五日右一万本ノ内僅カニ二千七百八十四本此ノ材積二万五百三十九尺〆九分一毛ノ下戻区域ヲ指揮シタルノミテ、ソノ余ノ七千二百十六本ノ部分林残木ノ存在ヲ否定シ、未ダ前記聞届及ヒ命令書ノ趣旨ヲ果サナイ、石川伝太ハ明治三十五年七月二十三日畠山雄三ニ右部分林ノ権利ヲ譲渡シ、原告(本件控訴人ニ該ル)ハ昭和四年二月六日右畠山雄三カラ右部分林ノ権利ヲ譲受ケ、同年三月十二日名義書替ヲ求メタカ、イワレナク書替ヲシナイトイウニアツテ被控訴人ニ対シ右農商務省指令第六一一八号ヲ以テ農商務大臣ヨリ石川伝太ニ下戻シタ部分林杉立木ハ一万本テ同部分林台帳名義人畠山雄三トアルノヲ控訴人名義ニ書替スヘキ旨ノ判決ヲ求メタモノテアルコト、シカルトコロ秋田地方裁判所ハ昭和七年三月四日右部分林引直方聞届ケラレタ杉立木ハ申請ニ係ル杉立木ノ全部テ且之ニ止ルモノテアルカ一万本ト云フノハ目算ニヨル概数テアツテ、ソノ七民分ハ既ニ明治三十五年中全部引渡済テ残木ハナイ旨、従テ控訴人カ畠山雄三ヨリ譲受ケタト主張スル部分林ノ権利ハ当時既ニ客体タル残木ナク、右部分林ノ権利ハ存在シナイモノテアルトシテ、控訴人(右事件ノ原告)ノ請求ヲ棄却スル旨ノ主文ノ下ニ判決ヲ言渡シ、該判決ハソノ頃確定シタコトヲイスレモ認メルニ十分テアル。

凡ソ確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ既判力ヲ有スルモノテアルトコロ、右確定判決ノ主文ニ包含サレル範囲ハ控訴人カ農商務省指令第六一一八号ニヨル下戻ノ部分林一万ノ残七千二百十六本ニツキ畠山雄三カラ譲受ケタコトヲ原因トスル、之ニ対スル部分林ノ権利ハ存在シナイコトカ確定サレ且同部分林台帳ヲ控訴人名義ニ書替手続ヲスル請求権カナイトスル点ニアルコトハ右認定事実ニヨツテ明テアル、従テ右確定サレタ法律関係ノ範囲ニオイテハ裁判所ニオイテ之ト異ル裁判ヲナシ得サルモノトスル既判力ヲ生シ、該既判力ノ効果トシテ当事者ト後ノ訴訟ニオイテ之ニ反スル主張ヲ有効ニスルコトカテキナクナルコトハ疑カナイ。

シカルニ本件訴訟ハ右確定判決後同一ノ当事者間ニ提起サレタモノテ、ソノ請求ハ前記ノ如ク、要スルニ右部分林ニツキ控訴人ニオイテ畠山雄三カラ譲受ケタコトヲ原因トスル部分林残七千二百十六本ニ対スル権利ノアルコトヲ主張シ、之ヲ前提トシテ部分林台帳ノ附加記載ヲ削除シテ控訴人名義ニ書替イルコトヲ求メルモノテアルコトカ認メラル、尤モ削除請求ノ点ニツイテハ控訴人ハ本訴ニオイテ右部分林台帳ハ右下戻指令ヲ原因トシテ部分林ノ権利ヲ登録シタモノテアルカラ、ソノ登録サレタ権利ソノ他ノ事項ハ絶対的テイワレナク、変更消滅サセルコトハテキナイ旨ヲ強調シテソノ附加記載ノ削除ヲ求メルモノテアルカ、コノヨウニ部分林台帳ノ記載ニ関シテ請求ヲナシ得ルモノトスル根拠ハ要スルニ控訴人カ実質上部分林ノ権利ヲ有スルコトヲ前提トシ、ソノ部分林権利者トシテ部分林台帳ノ名義ヲ事実ニ符合サセルタメニ、ソノ名義書替手続ヲ求メルト同時ニ之ニ附随シテ事実ニ符合シナイ台帳記載ノ事項ニツキ削除訂正ヲ求メル趣旨ニ存スルニ外ナラナイコト、控訴人ノ主張自体カラシテ之ヲ窺フコトカデキルトコロテアル、之ニヨツテ考イルト控訴人ノ右部分林ニ対スル権利及部分林台帳ノ名義書替請求権カ存在シナイコトニツイテ前記確定判決ノ既判力カ生スルモノテアルコトハ前記説明ノ通リテアルカラシテ、ソノ既判力ノ効果トシテ之ニ反スル主張ヲ有効ニスルコトカテキナイ結果、本訴ニオイテ控訴人カ右部分林台帳ノ名義書替ヲ求メルコトハ勿論、ソノ台帳ノ附加記載ノ削除ヲ求メルコトモタトイソノ台帳カ控訴人主張ノヨウニ下戻指令ヲ原因トスル権利関係ヲ記載スルモノテアツテモ、イスレモ之ヲ求メル利益ナキニ帰シ本訴請求ハ結局権利保護要件ヲ欠クモノトイワナケレハナラナイ、ヨツテ控訴人カ本訴請求ハ示余ノ争点ニツイテ判断スルマテモナク失当テアル。

上記理由後段ニ曰ク

コノヨウニ部分林台帳ノ記載ニ関シテ請求ヲナシ得ルモノトスル根拠ハ、要スルニ控訴人カ実質上部分林ノ権利ヲ有スルコトヲ前提トシテ、ソノ部分林権利者トシテ部分林台帳ノ名義ヲ事実ニ符合サセル為メニソノ名義書替ノ手続ヲ求メルト同時ニ之ニ附随シテ事実ニ符合シナイ台帳記載ノ事項ニツキ削除訂正ヲ求メル趣旨ニ存スルニ外ナラナイコトハ控訴人ノ主張自体カラシテ之ヲ窺フコトカテキルトコロテアル。

右判示ヨリスレハ其言フ所総テ根拠論及前提論ニシテ既判力ニ対シテハ素ヨリ論外ニシテ、敢テ取ルニ足ラスト雖モ其述フル所実ニ田夫野人ノ暴言トモ云フヘキモノナルニ付茲ニ一言スヘシ。

原告カ上来解説釈明スル如ク本件請求スル具体事項ハ当該部分林台帳ノ下戻ヲ原因トスル杉立木壱万本ノ登録ハ、法律上不動性ノモノテアル、ソレヲ下級官庁カ之ヲ動性ノモノト誤リ、擅ニ変更減少消滅ノ附加記入ヲシタノカ誤記テアルカラ、之ヲ削除シテ名儀書替ヲシテクレト請求スルノテ、而シテ之カ訴求ハ当該部分林ニ付キ所有権ヲ有スルコトヲ法的理念ノナスモノナリト言フノテアル。

而シテ原告ノ本訴ハ誤記削除ハ主タル請求ニシテ名義書替ハ之レニ随従性ノモルナルコト、其然ル所以ハ上来縷述スル所ニヨリ明白ナリトス

然ルニ上記判示ニヨレハ名義書替ハ主ニシテ誤記削除ハ附随ナリト妄考自定シタリ、而カモ之レハ控訴人ノ主張自体カラシテ之ヲ窺フコトカテキルト。

何タル独断テアロウ、何タル言懸カリテアロウ、控訴人ノ主張自体ハ上来重々述フル如ク本訴誤記削除ノ請求ハ主請求ニシテ名義書替ハ之ニ随従性ノモノナルコト反覆釈明執拗ヲ顧ミス説破シタリ、誰レカ之ヲ解シ能ハサルモノアランヤ。

何人カ之ヲ誤ルモノアランヤ。

元来既判力ノ問題ハ具体的事項、即チ訴状ニ掲クル具体的事項(訴状ニハ其要件トシテ其請求事項ヲ具体的ニ掲記スヘク然ラサレハ裁判ヲ為スニ由ナケレハナリ)ニ付キ見ルヘキモノヲ窺フヘキモノテナイ、即チ窺フトハ内面的ノ事柄ニ付キ使用セラルル用語ニシテ具体的事項ノ如キ外観的事柄ニ付キ使用セラルル用語テナイ、約言スレハ既判力ノ問題ハ所謂形而下ノ問題テ形而下ノ問題テナイ、第二審ハ此ノ点ト既判力ノ問題ハ純然タル訴訟上ノ効力ニ存スルモノナルコトヲ忘却ノ下ニ意識的ニ妄定自判スルモノナルコトヲ考察セラル。

コレ後述スル如ク第二審判決ハ本件請求ヲ既判力ニヨリ排斥センカ為メ案出シタル前線工作ナルト同時ニ、徒ラニ被告ノ無暴乱雑ナル民事訴訟法ヲ度外シ学説判例ヲ無視シ、加フルニ前訴ノ訴ノ種類ヲ解セサル私製濫造ノ既判力ノ抗弁ニ迎合シ、進ンテ臆面モナク第一審カ原告ノ本訴、請求ノ趣旨ヲ変造更改且ツ前訴ノ申立、原因マテ変更シテ漸ク曲出シタル奇想天外ノ既判論ヲ糊塗セントシテ考案シタル苦肉ノ沙汰ナルコトヲ忖度スルニ難カラス、而カモ其無暴ニシテ拙ナルコト被告並第一審ヲ凌駕スルモノノ如シ、本件ヲ既判力ニヨリ排斥センカ為メ訴訟ノ最重要項タル請求趣意ヲ主客顛倒其暴論ノ資ニ供セントスルカ如キハ全ク外道ノ所為テアル。

其外第二審ハ右判示中「ソノ他ノ事項」ナル文辞ヲ挿入シタリ(理由前段ニモ同様)、然レトモ被告ハ訴状ハ勿論幾多ノ準備書面ニモコノ文辞ヲ使用シタルコトナシ、原告ハ其訴状ニ「権利ハ勿論其登録事項」ト明記シタリ、文字ハ僅々二文字ニ過キサルモ、其意味ヲ異ニスルコト蓋シ大ナリト云フヘシ、之レ又意識的前線工作ニシテ其外同判決原告事実摘示四、中「従テ本件下戻ハ杉立木壱万本テアルコトカ明テアル」ノ文言ヲ殊更ニ挿入シテ居ル、之レ等モ其前後ノ言句ヨリシテ何等連絡ヲ有セサルニ突如之ヲ挿入シテ居ル、思フニ是レ又前訴ノ請求原因ト本訴ノ請求原因トヲ双互近接セシメ、以テ既判力ノ説明ニ便セントスル前線工作ト看做スヘク、ソレ其全面的事毎ニコノ如キ意識的工作アルヲ見ル、仔細ニ之ヲ点見スレハ其判示スル所ハ原告ノ訴状及準備書面ニ表示釈明スル請求趣旨、原因ニ種々相違アルヲ知ル。

更ニ上記第二審判決理由ニハ驚クヘキ重大ナル計劃的非行アルヲ観ル。

即チ該理由中段ニ

(甲)「被控訴人ニ対シ右農商務省指令第六一一八号ヲ以テ農商務大臣ヨリ石川伝太ニ下戻シタ部分林杉立木ハ一万本テ同部分林残木数ハ七千二百十六本テアルコトヲ確認ノ上該部分林台帳名義人畠山雄三トアルノヲ控訴人名義ニ書替スヘキ旨ノ判決ヲ求メタモノテアルコト

(乙) シカルトコロ秋田地方裁判所ハ昭和七年三月四日右部分林引直方聞届ケラレタ杉立木ハ申請ニ係ル杉立木全部テ且之ニ止マルモノテアルカ一万本トイウノハ目算ニヨル概数テアツテソノ七民分ハ既ニ明治三十五年中全部引渡済テ残木ハナイ旨

(丙) 従テ控訴人カ畠山雄三ヨリ譲受ケタト主張スル部分林ノ権利ハ存在シナイモノテアルトシテ

(丁) 控訴人(右事件ノ原告)ノ請求ヲ棄却スル旨ノ主文ノ下ニ判決ヲ言渡シ、該判決ハソノ頃確定シタコトヲイスレモ認メルニ十分テアル」

右ハ第二審カ自ラ判示スル所ニシテ(甲)ハ原告前訴ニ於ケル原告ノ請求ニシテ(乙)ハ之ニ対スル秋田地方裁判所即チ原告前訴裁判所ノ判決ナリトス

言フマテモナク判決ハ其請求ニ対シテノミナサルヘタ、而カモ其具体的請求事項ニ付テノミ(凡ソ請求事項ハ訴状ニ之ヲ具体的ニ表示スヘク然ラサレハ裁判ヲ為スニ由ナケレハナリ)ナサルヘキモノナルコト必然ノ理ナリトス、同時ニ若シ之レナカリセハ不告不理ノ原則トシテ何等判定ヲ与フヘキニアラサルコト民事訴訟法ノ明定スル所ナリ。

然ルニ第二審判決ハ、以上ノ如ク本訴原告カ前訴ニ於テ請求シタルモノハ(甲)ナルコトヲ、又之ニ対スル判決ハ(乙)ナルコトヲモ自ラ判示ナスニモ不拘、猥リニ(乙)ナル判決中ニ(丙)ヲモ包含スルモノナリト独断妄定シタリ。

之レ又如上記第二審ハ既判力ノ問題ハ具体的事項即チ形而上ノ論議殊ニ純然タル訴訟上ノ効力ナルコトヲ理解セサルニ基因スルモノナリトス。

而シテ如上右判示理由ニ引キ続キ

凡ソ確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ既判力ヲ有スルモノテアルトコロ、右確定判決ノ主文ニ包含サレル範囲ハ控訴人カ農商務省指令第六一一八号ニヨル下戻ノ部分林一万本ノ残七千二百十六本ニツキ畠川雄三カラ譲受ケタコトヲ原因トスル、之ニ対スル部分林ノ権利ハ存在シナイコトカ確定サレ且同部分林台帳ヲ控訴人名義ニ書替手続ヲスル請求権カナイトスル点ニアルコトハ右認定事実ニヨツテ明テアル」

右判示ニヨレハ原告前訴判決ノ主文ニ包含スルモノハ前記第二審カ独断妄定シタル(丙)カ其範囲ニ属スルモノト自定自判シタリ、即チ原告前訴判決ノ主文ニ包含スルモノハ上記本来ノ請求事項タル甲ニアラスシテ第二審カ擅ニ作造シタル(丙)ナリト自作自定自裁自判シタリ

而カモ其擅造物カ本訴ト前訴トノ根拠、前提ヲ同フスルカ故ニ既判力ヲ以テ問擬スヘシト暴論、僻説ヲナスモノトス。

ソレ第二審カコノ暴挙ニ依リタルモノハ何カ、僅々既判力ノ論外トスル根拠前提ノ擅造不純物ノミ、換言スレハ第二審カコノ背法悖理ノ暴挙ヲ逞フシ漸ク擅造シタル不純物ヲ以テスルモ到底本訴ヲ既判力ヲ以テ排斥スルコト難ク況ンヤ、コノ擅造不純物ナカリセハ既判力ノ陰影モヨク把捉シ得ヘキニアラス

公直厳正私心ナカルヘキ裁判官カコノ如キ主客顛倒更改挿入、擅造自作、迂余曲折、混迷曖昧、矛盾撞着ノ暴論、僻説、而カモ凉然無耻、遂ニ裁被合作ニヨリ国民ノ権利ヲ侵害セントナス、国民ハ何レニ就キ糺スヘキヤ何ニ拠リ生クヘキ乎実ニ寒心冷肝真ニ暗黒迷闇ノ思ヒニ沈淪セシム、悲哉。

コレ裁判官カソノ良心ニ従ヒ独立シテソノ職権ヲ行ハス、以テ国民ノ財産権ヲ侵犯スルモノト云フヘク、兼ネテ第二審判決ハ理由ヨリ帰納シタル裁判ニアラスシテ先入予断ノ下ニ為メニセンカ為メナサレタルモノナリト信ス。

第二点

第二審判決ハ争点ノ記載ヲ欠如シタル違法ノ判決ナリトス。

(イ) 本件名義書替ニ付テハ被告ハ第一審ニ呈出シタル第一準備書面ニ於テ既判力ノ抗弁トシテ左記陳述アリ。

「本訴ハ右訴訟(原告前訴ノ意)ノ目的物ニ比シ第二ノ名義書替ノ請求ハ全然同一」云々トアリ。

之ニ対シ原告ハ第一審ニ呈出シタル第二準備書面ニ於テ

「更ニ同項中名義書替ノコトニ付云為セラル、

該云為ニ付テモ今少シク正シキ御説ヲ聴キタキモノテアツタ、被告ハ名義書替其モノノミヲ抽出シ彼此同一ナリト論セラル。

然シナカラコレハ主請求ニ追随性ノモノテ、各自独立シテ其一項ヲ形成スル請求事項ニアラス、両者ハ双互一体性ノモノテアル、別言スレハ主請求立タサレハ之ト運命ヲ共ニシ名義書替ノミ独立シテ別個ノ判断ヲ受クヘキ性質ノモノニアラス、之ヲ以テ既ニ其ノ主動的請求ニシテ彼此全然其趣旨ヲ異ニスル以上ハ之ト同一ニシテ所謂既判力ニ支配セラルヘシトノ論議ノ如キ苟モ法ヲ執ル者ノ須カラク心シ避ク可キ事ナリトス」

現ニ原告前訴ニアリテモ裁判所ハコノ名義書替ニ付テハ何等ノ判定ヲシテ居ナイ(本件乙第一号証ノ一参照)

其他ノ準備書面

殊ニ原告カ第二審ニ呈出シタル昭和廿三年三月六日附原審判決不服理由第一冊第六、ニ

「原判決ハ擅ニ控訴人(原告)訴状記載ニ係ル請求趣旨ヲ変造全然其趣意ヲ更新シタリ

訴状記載ニ係ル請求趣旨ハ

何々ヲ削除シ

該台帳ヲ原告名儀ニ書替ヲ為ス可シ

ト明記即チ名義書替ハ何々ヲ削除ナル主請求ニ追従関連性ノモノニシテ独立的請求事項ニアラサルコトヲ文法上確然表現シタルモノナルヲ

原審判決ハ

何々ヲ削除スヘシ

被告ハ該台帳ヲ原告名儀ニ書替ヲ為スヘシ

ト臆面モナク書キ改メ、以テ名義書替ヲ別個独立分離性ノ請求事項ニ変造シ、而カモ原判決ハ其判決理由ニ於テ之ヲ全ク独立ノ請求事項トシテ問擬之ヲ排斥シタリ、其無法実ニ恐ルヘク寔ニ言語ニ絶スルモノアリ。

控訴人(原告)ノ所見ニヨレハ、コノ如キ請求ハ主請求タル誤記削除ニ追従性ノモノニシテ各自独立シテ其一項ヲ形成スル請求事項ニアラス(偶々其文言ヲ等フスルニ過キス)。両者双互一体性ノモノ別言スレハ、主請求立タサレハ之ト運命ヲ共ニスル連繋的伴随性ノモノテ名義書替ノミ独立シテ別個ノ判断ヲ受クヘキ分離性ノモノニアラサルコト彼ノ訴訟費用ハ被告ノ負担トス」トノ請求ト敢テ其趣キヲ異ニスルモノニアラスト確信ス。

控訴人(原告)前訴ニアリテモ名義書替ハ本訴ト同趣旨(附随性)ニ於テ請求シタルモノナル所現ニ原裁判ハ其主請求ヲ排斥スルニ当リ名義書替ニ付テハ別ニ判断ヲ与フルコトナシ。

コノ所説ハ被控訴人(被告)原審第一準備書面ニ於ケル名義書替ノ論議ニ対シ控訴人(原告)ハ原審第二審準備書面ニ於テ専ラ強調スル所ナリ。

宜ナル哉原審カ此ノ変造ヲ敢テシタルヨリ推理考察スレハ控訴人(原告)上記所説ヲ全面ニ容認スルモノト断定シテ憚ル所ナシトス。

ソモコノ如キ変造ナルコト明々歴然、苟モ司法裁判ノ職ニ在ルモノ傍若無人訴民ヲ足下ニ一蹴盲人視スル如キ非道違法ノ振舞ハ天人共ニ容レサル稀代ノ暴挙ニシテ独リ裁判上ノ失態ノミニ止マラス、別途ノ有責行為ニ該当スルモノト信セラル」

上記述フル所ニヨリ名義書替ハ附随的請求ナリヤ否ヤハ最モ重要ナル争点ナリトス。

而カモ第二審ハ判決ニ之ヲ掲ケサルモノトス。

(ロ) 被告ハ原告ノ前訴ヲ給付ノ訴ナルニ不拘之ヲ文辞中ノ確認ナル文字ニ拘泥シテ所謂確認ノ訴ナリト誤解シタリ。

被告第一審ニ呈出シタル第二準備書面ニ曰ク

「即チ前訴テハ原告カ積極的ニ所有権ノ確認ヲ求メタ請求ヲシ、之ヲ否定サレテ権利ノ不存在カ確定シタノテアルカラ、イヤシクモ此ノ権利ヲ基本トスル限リ一切ノ請求カ許サレナクナツタノテソレヲ敢テ再ヒ所有権ニ基イテ部分林台帳ノ誤記削除ヲ求メルノカ本訴タカラテアル」云々

其他同シク第一審ニ呈出シタル第一準備書面三枚目表ニモ共有権ノ積極的確認ノ訴、積極的ナ引渡未済ノ存在確認ノ訴ナル文句アルヲ見ル。

之ニ対シ原告ハ第一審ニ在リテハ余リニ被告ノ錯覚誤解ニ驚キ之レカ反駁ハ却テ大人気ナシト信シ特ニ敬意ヲ表シ其説述ヲ控ヒタリ。

第二審ニ在リテハ原審判決不服理由第弍冊第十三、後段ニ於テ

「即チ被控訴人(被告)ハ原審第一準備書面三枚目表其他ニ控訴人ノ前訴ハ共有権ノ確認ノ訴ナリト錯覚誤認シタルモノノ如ク、右原審説示ト同一ノ論議ヲ為シタリ、原審ハ驚クヘキ其論議ヲ鵜呑ミ盲従採用コノ如キ大外レタル判示ヲナスニ至リタルモノノ如ク、控訴人前訴ハ決シテ其言フカ如キ共有権ノ積極的確認ノ訴ニアラス、即チ裁判所ニ対シテ所謂確認判決ヲ求メタルモノニハ断シテアルコトナク、前訴判決事実摘示(本訴乙第一号証ノ一)及本書先キニ之ヲ掲クル如ク被告ニ対シ下戻サレタルモノハ杉立木一万本ニシテ、其残木アルコトノ確認ヲ命スル判決ヲ求メタル即チ所謂給付ノ訴ニシテ決シテ所謂確認ノ訴(確認判決ヲ求ムルモノ)ニアラス、被告及原審ハ其使用セラレタル文字中確認ノ二字ニ拘泥シテ意識的トモ考察セラルル程ノコノ誤リヲナシタルモノトス、然ラサレハコノ如キ曲論ヲナス道理ナキモノトス。

右ハ全ク訴ノ種類性質ヲモ弁セス、上述請求趣旨ノ変造既判力ノ大誤解ト相俟ツテ訴民ニ精神上並ニ物質上多大ノ損害ヲ与フル無為無能ノ判示ナリト言フヘシ。

原審ニアリテハ右被控訴人ノ共有権ノ積極的確認ノ訴云々所有権云々ノ曲論ニ対シテ控訴人ハ其余リノ謬説ニ寧ロ驚異、之ニ対スル反駁ハ畢竟法ノ講釈ニ渉リ大人気ナシト遠慮特ニ敬意ヲ表シテ之ヲ止メタルモノナル処(控訴人原審第四準備書面)、意外ニモ原審ハ之ニ盲従誤用其謬見ヲ踏襲スルカ如キハ彼ノ本件登録杉立木一万本ノ台帳記載ハ其概数ノ踏襲登録ナリトノ僻見誤説ト相対シテ寧ロ一種ノ誤見妙味ヲ覚ユ、去レト此如キハ控訴人ノ夢想タモナシ能ハサリキ。

示来第二審ニアリテハ殆ント各準備書面口頭弁論等ニ於テ之ヲ解説釈明シタリ。

然ラハ前訴ハ謂フカ如キ所謂確認ノ訴ナリヤ否ヤハ之レ又重要ナル一ノ争点ナリトス、然ルニ第二審ハ判決ニ此ノ争点ノ記載ヲモ怠リタルモノトス。

第三点

第二審判決ハ著シク既判力ヲ曲解スルノミナラス其曲解シタル既判力ニヨリ本訴ヲ排斥スル為メ本訴請求趣旨ヲ擅ニ主客顛到、加フルニ原告前訴判決ニ包含セサルモノヲ妄リニ追加自定自判、以テ其曲解ノ資料ニ供シタル違法アルモノトス。

凡ソ判決ハ元来創設性ヲ有スルモノニアラス(但シ所謂確定判決ノ如キ法律ニ於テ創設性ヲ附与スルモノハ別個ノ法的理念ニ基ク)シテ認定的ノ本質ヲ有スルモノトス、即チ判決ハ権利ノ発生、変更、消滅ヲ来サシムル効力アルコトナシ、別言スレハ或ルモノノ請求ノ訴ニ於テナシタル判決ハ当事者間ニ其請求権ノ有無ヲ認定スルニ止マリ其モノ自体ノ発生、変更、消滅ヲ来サシムル効力アルコトナシ。

コノ故ニ確定判決トハ形式的確定力ヲ生シタル、即チ上訴ニ依リ取消又ハ変更スルコト能ハサルニ至リタル効力ノ生シタルモノヲ指称ス、之ヲ以テ確定判決ノ効力タル既判力ハ純然タル訴訟上ノ効力ナリトス。

而シテ判決ハ訴ノ請求趣旨ニ付キナスモノニシテ其請求趣旨ハ訴状ニ具体的ニ其事項ヲ挙示スヘク(之ヲ具体的ニ挙示スルニアラサレハ裁判スルニ由ナク、同時ニ不告不理ノ原則上裁判ハ其之ニ止マルコトハ訴訟法ノ明示スル所ナリトス)従テ主文ニ包含スルモノハ判決ニ於テ認定セラレタル其具体的事項ニ限ルモノナルコト当然ナリトス、依テ既判力ハ確定判決ノ効力ナルカ故ニ其具体的事項ニ付テノミ生スルモノト論結スヘク、コノ理ニヨリ其之ニ含マサル請求趣旨ノ基礎、根拠、前提ハ既判力ニ付テハ素ヨリ論外トス

蓋シ吾カ民事訴訟法カ確定判決ノ既判力ヲ認メタル所以ハ、同一当事者ニ提起セラレタル前後両訴ノ同一請求ニ対シ再ヒ法律ノ保護ヲ与フルノ要ナシトノ原理ニ基クモノトス、斯カル故ニ其以外ノ請求事項ニ対シテ固ヨリ其効力ヲ及ホスモノニアラサルモノトス、而シテ請求カ同一ナリト称スルニハ当事者、請求原因並ニ其目的物カ同一ナルコトヲ要シ、故ニ既ニ其請求ノ原因並ニ目的ヲ異ニスル以上ハ仮令其請求権ノ発生シタル基礎、根拠、前提事実ニ関スル主張カ同一ナリトスルモ、其前提事実タル権利関係カ前訴訟ニ於テ所謂確認ノ訴ニヨリ確定判決ヲ受ケタルモノニアラサル限リ之ニ対シテ既判力ノ抗弁ヲ呈出スルコトヲ得サルモノトス。

右ハ訴訟法上当然解釈サルヘク学説判例ノ一致スル所ニシテ原告ニ在リテモ、第一審以来最モ強調釈明スル所ナリトス試ミニ学説、判例ノ二、三ヲ茲ニ摘示スヘシ。

第百九十条主文ニ包含スルモノトハ、判決ニ記載セラレタル原因事実及申立ニヨリ特定セラレタル請求ヲ是認シ又ハ否定セラレタル裁判ナレハ其理由特ニ抗弁ノ如キハ判決ノ目的タル事項ニ非ラサレハ之ヲ以テ主文ノ内容ヲ成スモノトナスヘカラス(大判大正元、一〇、一八判決録一八輯八七九頁)。

同学説(法学博士細野長良民事訴訟法要義四巻一九四頁)

判決ハ訴訟ノ目的タル請求ニ付テ之ヲ為スモノナレハ、請求ノ当否ノミヲ確定セシムル力アリ、従テ判決ノ確定力ハ原因及内容ニヨリ箇別セラル請求ニノミ制限セラルルモノトス(大判大正元年、民、一〇九二頁)。

判決ハ訴訟ノ目的タル請求ノ当否ノミヲ確定セシムルモノニシテ、請求ノ当否ニ付テノ判決ハ理由ニ依リ維持セラルル主文ヨリ成ルモノナレハ、縦令判決ノ理由中ニ係争契約ノ法律関係ニ付判断スル所アルモ、其ノ主文ノ内容ヲナササル権利ニ関シテハ確定力ヲ生スヘキモノニ非ス(大判大正四年民二二一二頁)。

判決ハ其主文ニ包含スルモノニ限リ確定力ヲ有スルモノナレハ、第一審判決主文ニ何等宣明ナキ請求ニ付テハ縦令其理由中ニ之ヲ棄却スル旨ノ説明アルモ未タ判決ヲナササルモノト解セサルヘカラス(大判大正六年民一八〇頁)。

判決理由中テ判断サレタ事項ニハ既判力ハ及ハナイ訴訟物トセラレ、而カモ判決主文テ判断サレタ法律関係ニ付テノミ既判力ヲ生ス、判決ノ理由中テ判断サレタ主張又ハ抗弁ノ内容タル法律関係又ハ事実ノ存否ニ付テハ既判力ヲ生シナ、イ故ニ此点別訴訟テ争ヒ得ル(大判昭和一〇、六、一四巻)。

右ノ外現ニ本件ニ付被告ヨリ本件ハ既判力ニヨリ排斥セラルヘキモノナリトシテ態々呈出シタル乙号証ニ左記判決アルヲ見ル実ニ笑止千万、第一審第二審モ之ヲ見テカ否カ恐ラク一読モセサルモノノ如ク其不真面寧ロ滑稽ノ感アルノミ。

乙第五号証ノ三(大正九年(オ)第五二八号大正十年三月五日大審院言渡)

按スルニ民事訴訟法第二百四十四条ニ依レハ判決ハ其主文ニ包含スルモノニ限リ確定力ヲ有スルモノナルヲ以テ、確定判決ニ因ル既判力ノ抗弁ハ前訴訟ニ於テ確定判決ヲ経タルモノニシテ、其主文ニ於テ拒否セラレタルモノト同一ノ請求カ後ノ訴訟ニ於テ再ヒ訴訟ノ目的トナリ、又ハ攻繋防禦ノ方法トナリタル場合ニ之ヲ提出スルコトヲ得ルモノニシテ而シテ其請求カ同一ナリト称スルニハ当事者請求ノ原因、並ニ其目的物カ同一ナルコトヲ謂フモノナルカ故ニ、既ニ其請求ノ原因並ニ目的物ヲ異ニスル以上ハ縦令其請求権ノ発生シタル前提事実ニ関スル主張カ同一ナリトスルモ、其前提事実タル権利関係カ前訴訟ニ於テ民事訴訟法第二一一条ノ規定ニ従ヒ申立ノ拡張、又ハ反訴ノ提起ニ依リ確定判決ヲ受ケタルモノニアラサル限リハ之ニ対シテ既判決ノ抗弁ヲ呈出スルコトヲ得サルモノトス。

飜テ本件事案ヲ査スルニ曩キニ訴外石川伝太ヨリ被上告人ニ対シテ提起シタル国有林野部分木引渡請求ノ訴訟ニ於テハ、石川伝太ハ秋田県山本郡檜山町母体官林字大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下ノ国有林反別二十五町歩余杉立木一万本ニ対シ、三官七民ノ割合ニ依リ該立木ノ引渡ヲ請求スルト云フニ在リテ、即チ所有権ニ基キ下戻立木ノ引渡ヲ請求シタル事按ナリトス、而シテ該事件ニ関スル確定判決ハ右伝太ノ請求スル立木ハ既ニ全部引渡ヲ了リタリトノ理由ヲ以テ其請求ヲ棄却シタルモノナルカ故ニ、所有権ヲ基礎トスル立木引渡ノ請求権ナキコトハ既ニ確定シ其範囲ニ於テ既判力ヲ生スルモ其以外ノ請求ニ付テハ固ヨリ確定力ヲ有スルモノニ非ラス、而テ本件訴訟ハ前記国有林内ニ於テ訴外石川伝太カ下戻ニヨリテ取得シタル部分木ヲ被上告人ニ於テ擅ニ伐採売却シテ不当ニ利得シタルヲ以テ、其利得ノ返還ヲ請求スト云ウニ在リテ下戻ニヨリテ立木権ノ所有権ヲ取得シタリトノ前提事実ノ主張ハ二者同ナルモ、前訴ハ係争立木ノ引渡ヲ受クル請求権ノ存在スルコトヲ主張シテ右立木ノ引渡ヲ求メ、本訴ハ被上告人カ右立木ヲ擅ニ伐採シテ不当ニ利得シタルコトヲ主張シテ其利得ノ返還ヲ請求スルモノニシテ、二者其請求ノ原因並ニ目的物ヲ異ニスルモノト言ハサル可カラス、故ニ前訟ノ判決ニ於テ下戻立木ハ既ニ全部其引渡ヲ了リタリト理由ニ依リテ石川伝太ノ請求ヲ棄却シタルモ、右前提事実ニ関スル判決ノ理由ハ本訴ニ対シ何等ノ既判力ヲ生スルモノニ非ス、然ルニ原判決カ右ノ判決ハ当然其既判力ヲ本訴ニ及ホスモノトシテ上告人ノ請求ヲ棄却シタルハ既判力ヲ不当ニ拡大シタル不法アルヲ免レス。

乙第六号証ノ二(昭和五年(ネ)第七二二号昭和七年九月廿七日宮城控訴院言渡)

依テ之カ異同ニ付キ按スルニ成立ニ争ナキ新乙第九号証ノ一ニ依レハ、石川伝太ハ前記訴訟ニ於テ本件鼻コクリ沢古道下ノ杉立木ヲ、三官七民ノ割合ニ依ル引渡ヲ求メ、其請求原因トシテ被控訴人ヨリ先キニ引渡ヲ受ケタル箇所(本件甲号区域ニ該当ス)ハ下戻許可トナリ古道下ニアラスシテ、全然別異ノ処ナリシカ故ニ、更ニ下戻区域ナル古道下ノ山林立木ノ引渡ヲ前記割合ニテ求ムト云フニ在リテ、即チ所有権ニ基キ単ニ下戻立木ノ引渡ヲ求メタル事案ナルコトヲ認メ得ヘク、是ト本訴トヲ比較シ観ルトキハ本訴ニ於テハ控訴人ハ石川伝太ノ許可ヲ受ケタル下戻区域ハ先キニ引渡ヲ受ケタル区域ノ外、更ニ別紙図面ノ乙号区域ヲモ包含スルモノトシテ其具体的範囲ヲ特定シ、先ツ之カ部分林区域ノ確定ヲ求メ其部分木ノ引渡ヲ求ムルニ在ルヲ以テ両訴ノ請求原因並目的ハ直ニ之ヲ同一ナリト云フヲ得サルコトヲ看取シ得ルカ故ニ、被控訴人ノ既判力ノ抗弁ヲ使用シ難シ。

コノ如ク明確判然タル反対証拠ヲ眼前ニナシ、而カモ被告ハ自ラ之ヲ呈出シテ既判力ノ抗弁ヲ立証ストナシ、如何ニモ得意満面第一、第二審ハ不法極マル既判力判決ヲナシコレ又得々タルモノノ如シ、実ニ乱レタリト云フヘク、特ニ革正サルヘキ今ノ世ニ当リ公直森厳正確ナルヘキ司法裁判ニ此ノ不祥事ヲ見ル為メニ、国権ノ主体タル国民ノ財産権カ侵蝕セラルルコト甚タシ、コノ結局不覇独立公正ナル良心ニ従ヒ職権ヲ行ハス訴訟ヲ見ル誠ニ勤勉ナラサルニ基因スルモノト云フヘキナリ。

茲ニ於テ本訴ノ請求趣旨、原因ヲ見ルニ

コノ点ニ付テハ第一審以来訴状及各準備書面ニ於テ反覆釈明就中第二審ニ呈出シタル原審判決不服理由第二冊中第九、

(甲) 控訴人本訴ノ請求趣旨及原因トシテ

コレハ控訴人訴状及第一審各準備書面等ニ於テ明確ナル如ク、之ヲ要約スレハ

法規ニ基キ作製セラルル当該権利ノ目的及権利者ヲ表示スル唯一ノ備付公簿タル部分林台帳ニ下戻指令ヲ原因トシテ杉立木一万本(所定ノ目通リ廻リ)ト明記セラレタル登録ハ法理法律、即チ国有土地森林原野下戻法第四条ノ解釈上確定不動ノモノテアルコト且ツ該台帳ノ本来ノ使命本質ニ鑑案スルモ其登録事項ハ確定性ノモノテアル。

然ルニ下級役人カ之ヲ異動性ノモノト誤リ(主務大臣ノ下戻聞届ナル公法上ノ処分行為タル劃期的限界線アルコトヲ無視即チ下戻申請ヨリ引渡マテ一連ノモノト錯覚誤解)擅ニ之ヲ減少変更消滅当該部分林台帳ニ記入シタル、之ニ関スル記載即チ控訴人訴状請求趣旨ニ於テ削除ヲ求ムル事項ハ総テ誤記テアル、故ニ之ヲ削除シ該台帳ヲ控訴人名義ニ書替ヲ為スヘシト求ムルノテアル。

上記中国有土地森林原野下戻法第四条ノ解釈トハ、之レ又上来述フル如ク下戻ハ同条ニヨリ分収権ヲ取得スルモノテアル故ニ、云フカ如キ単ニ目算ニヨル漠然タル概数ハ権利取得ノ対象タルコト能ハス、必スヤ特定又ハ特定シ得ヘキモノタルコトヲ要ストノ法理ニ基クモノトス。

次テ原告前訴ノ請求趣旨、原因ニツキ

コレハ便宜ノ為メ第二審カ其判決中ニ摘示スルモノヲ掲ク

即チ其理由前段ニ

控訴人ハ昭和四年中被控訴人ヲ相手トシ秋田地方裁判所昭和四年(ワ)第一二号(訴名略)事件ヲ呈起シタノテアル、該訴訟ニ於ケル請求原因ノ要旨ハ、石川伝太ハ明治三十二年法律第九九号国有土地森林原野下戻ニヨリ明治三十二年五月六日秋田県山本郡檜山町母体官林大滝沢ノ内鼻コクリ沢古道下山林反別二十五町歩杉立木合計一万本ニツキ三官七民ノ部分林ニ引直方申請シタトコロ、明治三十五年三月三十一日指令第六一一八号ヲ以テ農務大臣ヨリ之ヲ聞届ケラレ、其ノ下戻区域ニ付テハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受クヘキ旨命セラレ、一方同大臣ヨリ秋田大林区署ニ対シ林第六一一八号ヲ以テ右下戻申請ニツキ聞届ノ上指令シタカラ引渡方取計フヘキ旨命シタ、シカルニ被告(本件被控訴人ニ該ル)ハ右一万本ノ下戻区域ヲ指揮セス、明治三十五年五月二十五日右一万本ノ内僅カニ二千七百八十四本此ノ材積二万五百三十九尺〆九分一毛ノ下戻区域ヲ指揮シタノミテ、ソノ余ノ七千二百十六本ノ部分林残木ノ存在ヲ否定シ未タ前記聞届及ヒ命令書ノ趣旨ヲ果サナイ、石川伝太ハ明治三十五年七月二十三日畠山雄三ニ右部分林ノ権利ヲ譲渡シ原告(本件控訴人ニ該ル)ハ昭和四年二月六日右畠山雄三カラ右部分林ノ権利ヲ譲リ受ケ同年三月十二日名義書替ヲ求メタカ、イワレナク書替ヲシナイトイウニアツテ

(甲) 被控訴人ニ対シ右ノ農商務省指令第六一一号ヲ以テ農商務大臣ヨリ石川伝太ニ下戻シタ部分林杉立木ハ一万本テ同部分林、残木数ハ七千二百十六本テアルコトヲ確認ノ上該部分林台帳名儀人畠山雄三トアルヲ控訴人名義ニ書替ヲナスヘキ旨ノ判メタモノテアル。

シカルトコロ

(乙) 秋田地方裁判所ハ昭和七年三月四日右部分林引直方聞届ケラレタ杉立木ハ申請ニ係ル杉立木全部テ且之ニ止ルモノテアルカ、一万本トイウノハ目算ニヨル概数テアツテ、ソノ七民分ハ既ニ明治三十五年中全部引渡済テ残木ハナイ旨

(註 前訴裁判所ハ名義書替ニ付テハ何等判定ヲ与ヘテイナイ本件乙第一号証ノ一理由末尾参照)

右第二審カ自ラ判示スル如ク(甲)ハ原告前訴ノ申立テアツテ(乙)ハ前訴裁判所ノ之ニ対スル判定テアル。

之ニヨリ以上両訴ヲ比照スレハ一見著シキ相異アリ、而カモ之ヲ以テ既判力ニ問擬スルカ如キハ寧ロ不可思議ノコトチ之ヲ反論スルノ却テ愚策ナルヲ思ハシム。

然ルニ第二審ハ右ニ続キ驚クヘキ暴挙ヲ敢テシテ居ル、即チ

(丙) 従テ控訴人カ畠山雄三ヨリ譲受ケタト主張スル部分林ノ権利ハ当時既ニ客体タル残木ナク右部分林ノ権利ハ存在シナイモノテアルトシテ

(丁) 控訴人(右事件ノ原告)ノ請求ヲ棄却スル旨ノ主文ノ下ニ判決ヲ言渡シ、該判決ハソノ頃確定シタコトヲイツレモ認メルニ十分テアル。

ト判定シタリ。

然シナカラ以上(丙)ノ判示ハ毫モ(甲)ニ含レス故ニ(乙)ニ含レサルコト亦当然ナリトス、之レ全ク第二審ノ独断妄定即チ第二審カ猥リニ自ラ請求事項ヲ作造追加シ、自ラ之ニ判定ヲ与ヘ以テ前訴裁判ニ包含スト誣ヒ約言スレハ自定自判テアル、何タル畏ルヘキ裁判テアロウ。

而カモ右ニ次キ、更ニ愕クヘキハ

(戍) 凡ソ確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ既判力ヲ有スルモノテアルトコロ、右確定判決ノ主文ニ包含サレル範囲ハ控訴人カ農商務指令第六一一八号ニヨル下戻ノ部分林一万本ノ残七千二百十六本ニツキ畠山雄三カラ譲受ケタコトヲ原因トスル、之ニ対スル部分林権利ハ存在シナイコトカ確定サレ、且同部分林台帳ヲ控訴人名義ニ書替ノ手続ヲスル請求権カナイトスル点ニアルコトハ右認定事実ニヨツテ明テアル、従テ右確定サレタ法律関係ノ範囲ニオイテハ裁判所ニオイテ之ト異ナル裁判ヲナシ得サルモノトスル既判力ヲ生シ、該既判力ノ効果トシテ当事者ハ後ノ訴訟ニ於テ之ニ反スル主張ヲ有効ニスルコトカテキナクナルコトハ疑カナイ。

右ニヨレハ第二審ハ本訴ノ請求事項ヲモ自作加工上記自定自判事項ニ符合セシメ、以テ前訴判決ノ主文ニ包含スルモノトシテ、既判力ニ問擬スルモノナルコトヲ知ル(斯カル独断擅恣ノ行為カ独立シテ職権ヲ行フモノナリト誤信スルニアラサルナキ乎)。

尚同理由後段ノ判示ニヨレハ迂余曲折混迷僻説論旨至テ曖昧ニシテ把握シ難キモ、結局第二審ノ自作加工ニ係ル原告本訴請求事項カ上記自定自判ノ判決主文ニ包含スルモノナリトシテ本訴ヲ既判力ニヨリ排斥スルモノト考ヘラル、殊ニ此ノ曲説ヨリスレハ基礎前提カ同一ナリセハ前訴、後訴ノ趣旨原因各々異ナリトナスモ、既判力アリト強弁スルモノノ如ク推考セラル。

コノ暴論ヲ以テスルモ其判示ニヨレハ、既判力ノ論外トナス前提論根拠論ニ過キサルコトハ右判示ニヨリ明白、即チ判示中(之ヲ前提トシテ)(根拠ハ要スルニ控訴人カ実質上部分林ノ権利ヲ有スルコトヲ前提トシ)ノ文辞アルニヨリ紛フヘキモナイ。

以上之ヲ要スルニ第二審カ本訴ヲ既判力ニヨリ排斥スル理由ハ上記ノ如ク本訴ノ請求事項ニ自作加工、更ニ前訴ノ請求事項以外ノ事物ヲ自ラ作造追加之ニ自ラ判定ヲ与ヒ、以テ之レカ前訴判決ノ主文ニ包含スト独断妄定其之カ確定セリトナシ、原告本訴ノ請求ノ根拠前提カ其範囲ニ属スルカ故ニ本訴請求カ失当ナリト謬論誤説ヲナスモノノ如シ。

之ヲ以テ第二審ノ既判力ニ対スル見解ハ訴訟法規、学説、判例ニ反スルノミナラス、其反スル根拠、前提論モ如上自作加工、自定自判ニヨリ理不尽ニ得タル不純物ニシテ若シ之レナカリセハコノ僻説モ始メヨリ得ル能ハサルモノトス。

第二審ハ此ノ暴論ニ加ヒ厚顔無恥ニモ左ノ如キ判示ヲシテ居ル、即チ同理由後段ニ曰ク

コノヨウニ部分林台帳ノ記載ニ関シテ請求ヲナシ得ルモノトスル根拠ハ、要スルニ控訴人カ実質上部分林ノ権利ヲ有スルコトヲ前提トシ、ソノ部分林権利者トシテ部分林台帳ノ名義ヲ事実ニ符合サセルタメニ、ソノ名義書替手続ヲ求メルト同時ニ之ニ附随シテ事実ニ符合シナイ台帳記載ノ事項ニツキ削除訂正ヲ求メル趣旨ニ存スルニ外ナラナイコトハ控訴人ノ主張自体カラシテ之ヲ窺フコトカテキルトコロテアル。

右ニヨレハ原告本訴ノ主動的請求タル誤記削除ハ其附随性ノモノナリトシテ掲クル名義書替ニ却テ附随スルモノナリト独断迷定シテ居ル、ソレカ而カモ控訴人ノ主張自体カラシテ窺フコトカテキルト極論スルモノテアル、実ニ主客顛倒モ極マレリト云フヘキテアル、コノ主客顛倒ノ不法極マルコトニ付テハ本理由第一点ノ論旨ニ於テ之ヲ詳述シタルヲ以テ其重複ヲ避ケ茲ニ之ヲ省ク、就テ御参照ヲ希フ。

只茲ニ一言スレハ第二審カ如上ノ自作加工、自定自判ノ不法ヲ以テスルモ不法判決ノ目的ヲ遂クルヲ困難トナシ、更ニ此ノ暴挙ヲ敢テナスモノノ如ク、想フニ第一審ハ此ノ点ニ付テハ原告本訴ノ請求趣旨ヲ変造更改、被告ハ其附随性ノ名義書替ノミヲ抽出以テ既判力説明ノ一助トナシ、第二審ハ此主客顛倒ヲ以テ之ニ加勢助力愈々其暴威ヲ逞フセントス、而カモ顧レハ前訴裁判所ハ該名義書替ニ付テハ何等判定ヲ与ヘテ得ナイ、コレテハ裁判ハ何ニ対シテナスモノナリヤ訴状モ訴状ノ要件モ無用、寧ロ訴訟法ノ総崩レテアル、豈独リ確定判決ノ既判力ノ当否ニ止マランヤ。

第四点

違法ノ判決ハ遂ニ既判力ヲ発起スル性能ヲ有セサルモノトス、茲ニ述ヘントスル論旨ハ仮令原告本訴ト前訴トハ之ヲ同一ナリトシ、又学説、判例、民事訴訟法ニ反スル延長、拡大混迷ノ基礎論、根拠論、前提論ヲ以テスルモ前訴判決ハ本訴ニ対シ、既判力ヲ発起スル性能ヲ有スルモノニアラサルコトヲ解明セントナスニアリ。

上来述フル如ク、就中本理由第一点(ロ)本件部分林ノ由来、(ハ)本件部分林下戻聞届指令書ノ趣意本旨ニ解説スル通リ、既ニ被告ニ於テ保存セラルル本件下戻申請書、最高公文書タル同下戻聞届指令、大臣ヨリ秋田大林区署ニ対スル同引渡命令書及法規ニヨリ作成セラルル備置公簿タル部分林登録台帳ニ杉立木一万本ノ明記アルコトヲ見ル、コノ該各書記載文言自体其他種々ノ面ヨリ観察スルモ杉立木一万本ノ記載ナルコト明々白日ノ如シ。

然ルニ前訴裁判所ハ(本件乙第一号ノ一)理由後段ニ曰ク

成立ニ争ヒナキ甲第一号証(本件申請書)ニハ杉立木壱万本トシ、且其ノ内訳ヲ詳記シアリ、又成立ニ争ナキ甲第十五号証ニ拠レハ植立区域ハ明瞭ナラサリシコトヲ窺フニ足ルヲ以テ、或ハ右原告ノ主張ヲ肯定シ得ヘキカ如キ観ナキニシモアラス、然レトモ植立区域ト共ニ植立本数モ亦明瞭ナリシコトノ徴スヘキモノナキヲ以テ、壱万本ト限定シテ申請シタル所以ヲ知ルニ由ナク、寧ロ「古道下ナル地名ニ基キ其区域ヲ定メテ申請シタルモノト認ムヘキノミナラス、前記甲第十七号証(松浪与三郎証人調書)成立ニ争ヒナキ乙第十八号証ヲ綜合スレハ壱万本ナル数量ニハ重キヲ置カス、右区域ヲ主トシタルコトヲ推知シ得ヘキヲ以テ、一万本ナル数量ハ単ナル目算ニヨル漠然タル概数ヲ記載シタルモノニシテ甲四、五号証並甲第十四号証ノ一乙第五号証(部分木台帳)等ニモ壱万ト記載アルハ右申請書ノ記載ヲ其儘踏襲シタルニ過キサルモノト認ムヘク結局前記各証拠ニ拠リ前記ノ如キ認定ヲ為スヲ妥当ナリトス。

右判示ニヨレハ

本件ハ植立区域モ植立本数モ共ニ分明ナラサリシコトヲ認定シタリ、而シテ共ニ分明ナラサリシカ故ニ寧ロ区域ヲ定メテ申請シタルモノト認ムヘキテアルト判断シタリ。

然レトモ本件申請ハ素ト杉立木ノ引直申請ニシテ土地又ハ原野ノ引直申請ニアラス、果シテ然ラハ此ノ場合ニアリテハ立木ノ数量ニ重キヲ置キ、壱万本ト限定シテ下戻申請シタルモノト認ムヘキモノナルコト申請人自身ノ本然申請自体ノ通念採証ノ方則ニ適合、且ツ裁判上認定ノ常識ト謂フコトヲ得ヘシ。

尚右判示ニ続キ

即チ石川伝太ハ別紙図面ニ甲号地域トシテ表示セラレタル地域ヲ限リ、該地域内ノ生立杉立木ニ付部分林引直ヲ申請シタルモノニシテ前記指令ニヨリ部分林ニ引直方聞届ケラレタル杉立木ハ右申請ニ係ル杉立木ノ全部ニシテ、且ソ之ニ止ルモノナルコトハ前説示ノ如クナルヲ以テ、被告国カ明治三十五年三月三十一日農商務省指令第六千百十八号ヲ以テ訴外石川伝太ノ為メ部分林ニ引直方聞届ケタルハ、別紙添附図面ニ甲号地域トシテ表示セラレタル地域内ノ杉立木ノ全部ニシテ、且之ニ止リ一万本ト数量ヲ定メテ下戻シタルニアラサルモノト謂フヘシ、然リ而シテ証人佐藤吉兵衛ノ証言並前記成立ニ争ナキ乙第十八号証第九号証ヲ綜合考覈スレハ、右甲号地域内ノ杉立木七民分ハ既ニ明治三十五年中全部引渡済ニシテ残木ナキコトヲ認メ得ヘシ、甲第十九号証(畠山彌市ノ証人調書)中右認定ニ反スル部分ハ措信セス、然レハ本訴請求ハ失当ナルコト洵ニ明白ナルヲ以テ示余ノ争点ニ対スル判断ヲ須タスシテ之ヲ棄却スヘク

コノ判示ニヨレハ、当該下戻ハ其指令ニヨリ一定地域ヲ劃定シテ聞届ケラレ、一万本ト本数ヲ定メテ聞届ケラレタルモノニアラスト認定シタルモノ、然リ而シテ其当該指令トハ本判決事実摘示冐頭ニヨリ知ルコトヲ得ルカ如ク、明治三十五年三月三十一日農商務省林第六一一八号農商務大臣指令明治三十二年五月六日附申請国有林内立木三官七民ノ割合ヲ以テ下戻ノ件聞届ク

但シ下戻区域ニ付テハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受ク可シ

而シテコノ指令ニハ何等図面ノ添附カナイノテアル。

コレカ当該下戻ハ何テアルカヲ定ムル唯一無二ノ最高有力証拠テアル、コノ最高公文書ニヨリ其否ヤヲ判然確定スルコトカ出来ルノテアル、コレ謂フマテモナク下戻ハ国有土地森林原野下戻法ニ依ル権利取得ノ完了的ノ行政処分ナレハナリ。

元来該下戻指令ノ趣旨ニ付他ノ証拠ヲ以テ之ヲ開明セントナスコトソレ自体誤リテアル、其文言自体ニヨリ之ヲ判断スヘク又充分之ヲナシ得ルノテアル、然ルニ何カ故ニ之ヲ他ニ求メントナスヤ寔ニ故ナキナリ。

上記指令ノ趣旨最モ明白テアル、即チ其本文所謂

明治三十二年五月六日附申請トハ上記判示ニヨリ知リ得ル如ク、古道下杉立木一万本ノ部分林引直テアル、其之ヲ聞届ク、但シ其下戻区域即チ壱万本ノ生立区域ハ秋田大林区署長ノ指揮ヲ受ク可キ旨ノ指令テアル、故ニコノ指令即チ但書ヨリシテ当該下戻ハ却テ地域ヲ劃定シテ聞届ケラレタルモノニアラサルコトヲ確知シ得ルノテアル。

殊ニ本指令ニハ上ノ如ク何等図面ノ添附カナイノテアル、コレカドウシテ地域ヲ劃定シテ下戻シタモノテアルト認定スルノテアロウカ、私心ナキ判定テアロウカ。

(本訴ニアリテモ被告ハ第一審昭和廿二年九月一日口頭弁論ニ於テコノ指令書ノ「内容ヲ知ラナイ」即チ不知ト答ヒ殊ニ其但書ハドウシテモ認メヨトセナイ、尤モ之ヲ認メタラ地域劃定論ハ即座ニ崩壊スルモノト考察スルモノノ如ク、去レト心事至テ不公明公務員ノ面目ヲ失スルナキヤ、原告ハ之ニ対シ自己ノ行為ヲ不知トハ認否ノ方式ニ反スルデナイカト反問セシニ、裁判長ハソレデヨイデシヨ、原告カラ立証スレハヨイデナイカト抑止、コレニ付キ更ニ一言スヘキコトアリ、即チ秋田地方裁判所ハ其判決書ニ矢張リ工合ヒカ悪イト考ヒタカ、之ヲ大膽率直ニ被告ハ之ヲ不明ト答ヒタト改変シテ居ル、判決モ種々気苦労ノモノテアル、之ヲ他ノ下戻指令ノ実例即チ本理由第一点挙示ニヨルモ其違法ナルコトヲ知ル)

註 本判決書(乙第一号証ノ一)ニ添附スル図面ハ当該申請書(官ニ保管スル)ニ添附ノ申請本書ト契印ナキ図面、即チ取リ替ヒタル疑ヒアル図面ト同形ノモノ、又右判文中甲第五号証ハ乙第一号証ニ該リ当該大臣ノ杉立木壱万本ノ引渡命令書ニシテ、コレニハ概況図トシテ壱万本ノ下戻地域ノ梗概ヲ示シタル上記図面トハ甚タシク地域ヲ大ニシタル且ツ形状ヲ異ニシタル図面ノ添附、又乙第五号証即チ当該部分木台帳ニハ実測図トシテ上記引渡命令書添附ノ概況図ト略ホ同一ノ図面ノ附綴アリ。

殊ニ本判決ニ明カナル如ク、該件ハ其申請書及最高公文書タル指令書、命令書、部分林台帳ニ明記登録シタル生立地点弍拾五町歩ヲ拾九町五反六畝廿六歩ニ杉立木壱万本ヲ二千七百八十四本ニ減少シ、以テ残木ナシト認定シタル按件ナリトス。

従前測量器ノ完全セサリシ時代ニアリテハ、目盛リ測量殊ニ傾斜地ハ平面測量ナリシヲ以テ旧時測量セシモノヲ近時ノ精巧測量器ヲ以テ傾斜面測量ヲ為スニ於テハ、高カラサル山地モ裕ニ約三、四倍ノ面積ヲ有スルモノナルコト寔ニ顕著ナル事実ニシテ同時ニ測量界ノ常識ナリトス。

壱万本カ二千七百八十四本、即チ其約四分ノ一ニ減少セシトハ仮リニ云フカ如キ単ナル目算ニヨル漠然タル概数ノ記載ニ過キストナスモ、社会通念ニ稽ヒ素ヨリ首肯スヘキニアラサルノミナラス、低能者モ容易ク之ヲ合点スル所ニアラサルヘシ。

当今普通山林ノ取引ニアリテモ大山林ハ勿論、小山林ト雖モ概ネ目算ニヨルコト之レ又顕著ナル事実、業者ノ常識ニシテ、而カモコノ目算ハ殆ント其実数ニ違ハサルモノトス。

元来上記四ケノ文書ハ其何レナルヤヲ断定スルニ最モ必要ナル無二ノ主働的証拠ニシテ、受働的性質ノモノニアラス(原告前訴ハ此ノ点ニ関シ当該部分林下戻本数ノ壱万本、即チ如上文書ニ記載セラルル杉立木壱万本ハ其正シキモノナルコトニ付キ自ラ立証セントナシタルハ誤策ニシテ、本訴ニアリテハ之ヲ証スルニハ該四文書ヲ以テ足リ、之ヲ否定セントナスモノコソ反証スヘク、殊ニ原告ハ之カ反証ハ不能事ナリトノ見解ヲ有ス)

然ルニ前訴裁判所ハ之レカ弁別ヲ欠キ妄リニ他ノ弱体雑物ヲ捉ヘ来リテ証拠トナシ、其何タルヤヲ認定シコノ主働的証拠物ヲ却テ受働的、即チ立証ノ対象物ニ供シタリ、過誤モ甚タシク更ニ踏襲云々ニ至リテハ其考案至テ優秀ニシテ寔ニ珍妙ナリトス、単ナル目算ニヨル漠然タル概数トハ言フモ言フタリ、単ナル目算トハ如何ナル目算ナリヤ、漠然タル概数トハ如何ナル概数ナリヤ、更ニ加ヘテ単ナル目算ニヨル漠然タル概数トハ如何ナル概数ナリヤ、数理上ハ勿論何レノ分野ニ於テハ真ニ前代未聞ノ文辞、寧ロ滑稽味津々或ハ謎ノ如ク或ハ為メニスル苦肉ノ策ノ如ク到底真面目ノ所作トハ受ケ入レ難ク、実ニ意味深迷遼闇コノ如キハ釈迦ノ悟達、孔孟ノ博識、基督ノ全智全能ヲ以テスルモ能ク之ヲ解セサルヘシ。

其之レ等ヲ考フル時前訴裁判所ハ全ク不能ノ事実ニ付キ認定ヲナシ居ルコト之レナリ。

即チ本件申請書ニ記載スル壱万本ハ単ナル目算ニヨル漠然タル概数ヲ記載シタルモノ、其他ノ三公文書ニ記載スル壱万本ハ右申請書ノ記載ヲ其儘踏襲シタルニ過キスト認定、別言スレハ右ハ単ナル目算ニヨル漠然タル概数ト記載スヘキヲ誤テ壱万本ト記載セシトカ、又コレ等文字ノ加入ヲ脱漏セシトカト認定シタルモノニアラスシテ、壱万本ト記載ハシテアルカ、ソレハ壱万本ト記載シテアルノテナクテ単ナル目算ニヨル漠然タル概数ト記載シテアルノダト認定シテ居ルノテアル。

仮令ハ天ト書イテアルノニ、ソレハ天ト書イテアルノテナクテ地ト書イテアル、壱万円ト書イテアルノニコレハ壱万円ト書イテアルノテナクテ弍千七百八十円ト書イテアルト認定スルニ等シク、地ト記載スヘキテアツタカ天ト、弍千七百八十四円ト書クヘキテアツタカ壱万円ト誤記、又ハ概算壱万円ト書クヘキテアツタカ概算ノ二字ノ加入ヲ脱漏シタトカ、ト認定シタモノテナイ。

若シソレ踏襲云々ニ至リテハ其考案極メテ優秀寔ニ珍妙感嘆ノ外ナシト述フルニ止ム。

コレ前訴判決ハ全ク不能ノ事実ニ対シ認定ヲナシテ居ルト称スル所以ナリ、コノ如キハ物理上ヨリスルモ将タ法理上ヨリスルモ認定不能、如何ナル手段方法ヲ以テスルモ人為ノ能クスル所ニアラス、別ケテ法則アル訴訟上ノ証拠方法ニ於テオヤ。

而カモ凉然トシテ之ヲ何々ニヨリテ之ヲ認ム、之ニ反スル証拠ハ之ヲ措信セスト御座ナリノ判定ヲナシテ居ル。

所謂自由心証主義トハ裁判官ニシテ学識経験ニ富ミ公正良心アル官吏トシテ経験ノ方則並理論上ノ法則ニ従テ之レ等限界線ヲ忠実ニ遵守履践ノ下ニ自由ナル心証ヲ以テ各証拠力ヲ判断セシムルニアリ。

之ヲ以テ右ハ仮リニ認定可能ノ事項ナリトナスモ、前訴裁判官ノ挙措ハ証拠方則ニ大外レタル違法ノ所行ナリトス、況ンヤ如上ノ全然不能ノ事実現象ヲ無暴ニモ之ヲナシ得ルモノト錯覚誤定シタリ。

之レ或ハ常時之レ等僻事ニ馴染シタルニ因由スルニアラサルナキヤ、コノ如クシテ吾等国民ハ憲法ノ保障ヲ余所ニ其権利ヲ虐ケラレ遂ニ訴フルノ道ナキニ至ルコトアルニ想到セハ転タ失望落膽長嘆息ニ堪ヘサルモノアリトス。

加フルニコノ概数論ハ国有土地森林原野下戻法第四条ニ違背スルコト明白ナリトス。

即チ下戻ハ同法第四条ニヨリ分収権ヲ取得スルモノトス、依テ其対象物ハ必ス特定又ハ特定スヘキモノナラサルヘカラス、単ナル目算ニヨル漠然タル概数ハ断シテ権利取得ノ対象タルコト能ハサルヤ勿論ナリトス。

上述スル所ニ考フレハ前訴判決ハ明ラカニ重大ナル違法背反ノ性格ヲ有スルモノト断スヘク、而カモ後訴ニ対シ其之ヲ以テ既判力アリトナスニハ再ヒ之ト同様違法背反ノ判決ヲ繰リ返スト同一ノ結果ニ帰着スヘク、ソレ裁判官ハ法律ニ拘束セラルル為メ到底之ヲ能クスル所ニアラサルヘシ。

此ノ法的理念ニ立脚推論シテ違法判決ノ性能ヲ以上ノ如ク断定スル所以ナリトス。

以上

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