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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)273号 判決 1951年4月03日

主文

原判決を破棄する。

福岡高等裁判所が同庁昭和二四年(ウ)第二〇号仮処分申請事件につき昭和二四年五月一六日した仮処分決定はこれを取消す。

本件仮処分申請はこれを却下する。

訴訟費用は原審当審共に被上告人の負担とする。

理由

上告理由について。

原判決は、論旨に援用するような理由により確定判決(これと同一の効力を有する債務名義を含む。以下同じ。)の債務者は、民訴五〇〇条、五四七条の規定により、その確定判決に基づく強制執行の停止を求めることができる場合の外は、一般に仮処分により右の停止を求めることができると解し、先に被上告人の申請に基づき原裁判所のした仮処分決定を認可したのである。しかし確定判決に基づく強制執行を停止することのできる場合については強制執行編にそれぞれの規定があつて、右は制限的に列挙したものと認むべきであるから、右の場合を除き、一般に仮処分の方法により強制執行を停止することは許されないものといわなければならない。

原審は、強制執行に対する異議は強制執行着手前には許されずまた執行に対する異議は執行手続上の非違を是正することを目的とするだけで、基本たる権利または法律関係そのものの存否を確定するものでないことを理由として、債務名義表示の権利の不存在確認及びこれを本訴とする仮処分を許す必要があると判示しているが、いわゆる請求異議は強制執行の着手前であつてもこれを提起することができるのでありまたそれは単に手続上の非違を是正するものでなく、実体上の理由に基づいて債務名義の執行力を排除することを目的とするものであるから、債務名義表示の債権の不存在を争い得る場合に、請求異議の訴を起して強制執行の停止を得る方法がないことを憂える必要がないばかりでなく、強制執行を仮処分により停止できるかどうかは、一に強制執行法全般の趣旨から判断すべきであつて、単に本訴を提起し得ることから当然に仮処分が許されるものと速断することは誤りであるといわなければならない。

しからば仮処分により強制執行を停止することを是認した原判決は失当であつて論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして本件申請は仮処分により強制執行を停止すべきことを求めるものであつて、その失当なことは右に説明したとおりであるからこれを却下すべきである。

よつて民訴四〇八条、九六条、八九条に従い、主文の通り判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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