大判例

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最高裁判所第三小法廷 平成7年(行ツ)198号 判決 1997年2月25日

大阪市城東区鴫野東三丁目二九番五号

上告人

濱田禮二郎

大阪市城東区中央二丁目一四番二九号

被上告人

城東税務署長 吉田公也

被上告人

右代表者法務大臣

松浦功

右両名指定代理人

大竹聖一

右当事者間の大阪高等裁判所平成四年(行コ)第四一号相続税課税処分取消請求事件について、同裁判所が平成七年七月二六日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告をを棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張も失当であり、右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難し、若しくは原審の判断を経ていない事項につき原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 尾崎行信 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 大野正男 裁判官 千種秀夫)

(平成七年(行ツ)第一九八号 上告人 濱田二郎)

上告人の上告理由

判決の判断に影響を及ぼすことが明らかな法令違背がある。即ち

一、第一点(相続税財産評価に関する基本通達)

相続税法は行政刑法であり、脱税は重罪で重加算税も科せられ、刑罰を以て強制されるのであるから高度の均衡、合理、妥当性を要する刑罰法規として罪刑法定主義(憲法三一条)の適用があり、又租税法律主義(憲法第八四条)の適用もあり、これには課税要件法定主義を含み財産評価は課税要件の根本である。

立法府を経ない評価通達は違法であり、又最高裁(大)判例(昭30・3・23、最民9巻3号336頁)にも反する。仮に違法違背でないとしても不合理な部分は無効である。

二、第二点(不動産の評価と課税額)

不動産の評価は時価とし(相続税法)時価とは不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい(評価通達)、収益或は利用価額ではない。取引には譲渡所得税、住民税、仲介手数料が必要経費である。

評価の時価にはこれら必要経費を含むからこの分は実質のない見かけの価額でこれを含めて課税額とするのは課税の根拠を誤るもので合理性・厳格性を含む租税法律主義(憲法第八四条)に違反する。財産権の不可侵(憲法第二九条)にも違反する。

なお、二審判決は相続時に経済的取引を伴っていないとするが取引をしたと仮定して時価を出すのであり、又納税は金銭納付で、不動産は高額なほど短年月に時価で売却するのは困難であり、例外の物納も許可制で条件がきびしく旧村落地では隣地と或は借地人間で境界不明瞭が多い。

定期預貯金のときは、相続日に解約すると仮定して利子所得税分を控除している。不動産所有者と定期預貯金所有者を相続税法で差別するのは、法の下の平等原則(憲法第一四条)に違反する。

財産の大部分が土地の場合、高率の税(五億円以上七五%昭和62年)であるから金銭納付不能の不合理がある。分かりやすい例として、株式を挙げると相続時点では売却換金していなくてもしたと仮定して売買委託手数料有価証券取引税、所得税、住民税を控除して課税額とすべきである。控除分は実質のない見かけの評価額で売却換金時期を問わない。

三、第三点(底地の評価)

評価通達及び原判決では、底地価額は更地価額から借地権価額を控除する(本件の場合 1-0.6=0.4)控除主義を採用しているが、これは収用のときと稀に借地人が買うときのみ適用さるべきものである。借地権は半永久で、期限到来で返還の例もなく、非訴手続で増改築も可能であり永久に朽廃しない。

地代に地価に見合う経済的価値はなく(甲一、一七、四一号)、仮に有としても元本は永久に回収できない。売れるのは借地人任せで稀なことである。

一時期地上げ屋が存在したが、道路事情のよいビル、商用適地に限られるのである。本件底地は旧村部落で区画整理地でなく道路は一車線或は軽自も入れない巾員で車社会の時代に暫時も駐車できず地上げ適地でない。銀行も底地は担保としない。

底地にかかる相続税も巨大な保有税で永久に回収できない。税の周期は二五乃至三〇年である。

地主は累進税率を避けるため放棄したくてもそれも不能でる。市に底地の寄付を申出たら道路公園等の予定地でないからと断られたのである。

借地人は自身の相続税は対策のためにも買わない。

国土庁制定の不動産鑑定評価基準においてもその各論争第一-ロ底地で「底地の鑑定評価額は、実際支払賃料から諸経費を控除した純収益を還元して得た収益価格と比準価格を関連づけて決定する…」としている。控除主義の否定である。実際の第三者が底地を購入するような取引事例は少ないから収益価格の比重が非常に大きくなってくることに留意する必要があるのである。(甲一八号)

右基準の総論第七-(四)収益還元法で「不動産の価格は、一般に当該不動産の収益性を反映して形成されるものであり、収益は、不動産の経済価値の本質を形成するものである。したがって、この手法は、学校、公園等公共又は公益の目的に供されている不動産以外のものはすべて適用されるべきものであり、自由の住宅地といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。…なお、市場における土地の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するもので、先送りがちな取引価格に対する有力な検証手段として、この手法が活用されるべきである。」としている。底地に市場性、換金性のないこと、財産価値に乏しい(見方によれば負の財産-税負担を考慮するとき)ことは公知の事実であり、市場性のあるものとないものを同一平面で論ずる控除主義は著しく不合理であり、稀な売買例をもって常にある可能性と判断するのは経験則、国土庁制定不動産鑑定評価基準に違背する。

借地権が、〇・三以下のときは取引慣行が熟していないとの理由で評価は零である。本件底地に到底〇・三の価値はない。底地も亦取引慣行が熟していないのである。借地権者と底地権者を合理的理由なく差別するのは法の下の平等原則(憲法第一四条)に違反する。

四、第四点(宅地の使用賃借の評価)

評価通達では父の土地に子が、夫の土地に妻が家を建てた場合、使用貸借とし用語は民法の規定によるとし使用貸借権価額は零としている。

家と土地は一体で、本建築の家は人が住みこまめに修理すれば何百年も朽廃しない。

返還を約束してはじめて使用貸借である。半永久の家屋を数年或は十数年で撤去し、土地を返還することはありえない。公知の事実、経験則違背である。

実質は贈与であり、仮にこれが認められなくても借地権の贈与に当たる。 大阪国税局の取扱いでは、昭和三九年末までの土地の使用借権につき、借地権相当額の贈与税は非課税とされと第二審判決は述べるが原判決挙示の証拠があり認定事実を認定できる証拠が見当たらないから証拠によらないで事実認定の違法がある。(証拠とは通達の写し等をいう)

子が父の土地に建築した昭和三八年当時の適用通達は昭和三四・一・二八付直資一〇「相続税基本通達の全部改正について」第六四条(無利子の金銭貸与等)で「特殊関係にある者間において、無償または無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には法第九条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。」とされている。

贈与税は贈与を受けた翌年に支払うべきもので、仮に課税基準に達するとしても時効である。贈与税、相続税は選択課税ではない。時効制度を無視するのも違法である。

昭和四八年の現行通達を昭和三八年に遡って適用するのは、遡及処罰の禁止(憲法第三九条)と遡及適用禁止を含む租税法定主義(憲法第八四条)に違反する。

実質贈与に当たるとの主張に対して原判決は、登記のないこと、贈与税の支払のないこと、契約のないことを挙げ、仮に贈与が認められなくても借地権の贈与に当たるとの主張に対しては地代支払のないことを挙げるが、登記は第三者対抗の効用だけであり、南側隣地との境界不明で分筆できないのである。契約書はなくても建物によって贈与実行は証明できる。

贈与税については子の場合路線価低額時代であるから不安と思われ、妻の場合は建築確認書の敷地欄に贈与によ自己所有地とし(税務署提出)、妻で贈与税不要(婚姻二〇年以上)である。贈与が認められなくても、借地権の贈与に当たる判例として「親子間で書面によらず借地権の贈与が行われた場合に、当該借地について、贈与者である親の占有が排除され、受贈者である子が自らの独立の占有を取得したことが明らかになった時を右贈与の履行が終わった時である」(五三・一二・二〇 東京高裁訴月二五・四・一一七七シュト二〇五・四三)に違背する。(甲二九号)

地代支払については、相当額を生活費の中で支出している。名古屋高裁昭五七・五・二四判決、税資一二三号・四五五頁 税資料一二一号・七五頁判決では同族関係者間の土地使用関係は、土地の明渡しを求められる可能性はないから使用貸借ではなく、借地権又は地上権類似の権利と認められる。(甲五二号)

本件は、この判例に違背する。

通達及び判決はトレーラーハウスの場合のみ妥当である。

五、第五点(大阪国税局長制定の評価基準)

判決では基本通達に基づき大阪国税局長が毎年評価基準を制定し、路線価は毎年売買実例価格、前年の路線価、接続地域との均衡、精通者の意見等を参酌して定められ実勢価格をかなり正確に反映していることが認められるとしているが、…を参酌して定められたというだけで、何故短絡的に正確に反映していることが認められるか証明がない。

一方、上告人の不合理の多数の主張については証拠がないとしている。

売買実例価格も実際はないものと思われ制定後の上告人の売買実例より路線価を大巾に上回るから合法としている。公平の証明にならない。

昭和六二年を含む相当期間、路線価は実勢価格の二分の一乃至三分の一で節税対策にも利用され、判決は公知に事実、経験則に違背する。

実勢価格をかなり正確に反映していることが認められるとするのは原判決挙示の証拠から認定事実を認定できる証拠が見当たらない証拠によらないで事実認定の違法がある。

底地権割合も実際は実例収集はないと思われ、上告人が天理教に制定後、底地を売却し、この価格を実勢価格でない路線価で除し、〇・四を大巾に上回るから合法としている。

底地権割合〇・四も根拠不明である。

上告人の路線価不合理不均衡の主張の骨子は次のとおり。

JR環状線の鶴橋、大阪城公園、京橋、福島、野田、西九条等主要駅周辺の住宅地と本件宅地に近いJR片町線鴫野、放出駅周辺の住宅地とでは前者の方が高かるべく、又鴫野駅周辺でも本件純住宅路線を駅に近い区画整理地で道路巾員の広い実質商用路線と比較しても本件路線の前後接続の巾員の広い実質商用路線と比較しても微差であり、四米未満道路は中心線から二米以内は死地であるから、これを考慮すると変わらない不均衡、不合理がある。又宅地の価値は道路巾員の広狭が決定的要素であり、前述四米未満道路の不利は一部死地になるだけでなく、二車線可能道路(五乃至六米以上)と比較し、暫時も駐車できぬ、或は車も入れぬ不利、不便は車社会の時代に大なるものがあり、容積率も五米未満は指定値より減少され、道路端建物高さも巾員に比例する(甲三号)。前述の四米は将来六米になる(甲三二号)。

又放出下水処理場の開放曝気槽(し尿、生活排水汚水を底からエアーで吹かす)に、離隔距離二二米で対面する宅地は悪臭と不衛生で、大阪市内稀有の住宅不適地であるが、この減価もなく、すべて売買実例に基づく路線価に折込済とする判決は制定に当り採用した売買実例を示していないから証拠によらない事実認定の違法の外採証法則に対する立証法則に違背する。

なお、上告人は多数地点の路線価を駅よりの距離、道路巾員、住宅或は実質的商用路線の別により不均衡不合理を立証している。

六、第六点(私道の評価)

通達及び判決では、私道の評価は六〇%であるが、私道の価値は私道が両側宅地と一体となって公的私的再開発される可能性にある。(甲四八号)

本件私道を含む地区は駅からも離れ旧村落地の延長で道路狭く(巾員二・六米)且屈曲した無税私道から再に折れた行き止まり私道で両側地権者八名であり再開発の可能性絶無である。

天理教に売却した実例より証明できるとするが、それは私道分を無償にすると贈与税がかかるので通達に合わせ本件から私道分を割いているのであって、他の実例もおそらく同様であろう。

同一条件の宅地で一方が公道に面し、一方が私道に面する場合合計で差異が生ずる不合理がある。(甲四八号)

私道は宅地の使用価値を維持発揮させることを目的とし廃止は不能であり、私道部分は建ぺい率、容積率の算定面積に算入されないからその価格は宅地部分に吸収されそれ自体の価格をもたない。(甲四八号)

価値なきものに課税するのは課税の根拠を誤るもので合理性、厳格性を含む租税法律主義(憲法第八四条)に違反する。

なお、判決では私道は多数者による通行を受忍すべく、その使用収益にある程度の制約が存するものの、私人の所有である以上、所有者に管理及び処分権が存することは当然であるし、現に私道の一部を譲渡していることに照らせば六〇%としたことに特段不合理性な点は存しないとするが、不特定多数が通る私道は評価零であるが本件私道は行き止まりで通行は七戸だけで受忍することは何もないが処分権はあってもそれが価値を有する証明がないのは、証拠によらないで事実認定に違法がある。

なお自治省告示で固定資産税の場合は一〇%としていたが大阪市では平成六年度から零としている。(甲五四号)

上告人の審査請求における主張を採り入れたのである。

七、第七点(路線価設定に値しない路線)

鴫野本三-一六六と三-一六八-二との間の路線は、通達にいう不特定多数の者が通らない。有効巾員一・九米で通るのは近隣数戸で車置場になっていることが多い。不特定多数が通れば一・九米に車は置けない。(甲四七号)

判決で脱落しているのは審理不盡である。

八、第八点(朽廃家屋の評価)

明治時代古材で建てた納屋は放置していたので朽廃し、台風時危なく隣家に倒れれば迷惑をかけるので自力で除去しようと思っていた。固定資産台帳にあるからと通達にいう現況によるを無視し課税するのは課税の根拠を誤るもので、租税法律主義(憲法八四条)に違反する。なお現在除去して存在しない。朽廃棄状況 甲五三号のとおり。

九、第九点(小規模宅地等の特例)

判決では事業用宅地と居住用宅地の評価減に差を設けたのは利用状況に着目したものとするが、利用状況が異なっても価値は同じである。仮に処分に制約を受けることを論拠とするなら、前記第二点においては相続時に経済的取引を伴っていないとし、第三点においては底地に市場性換金性のないことを無視する判断を示しており矛盾する。

事業者と非事業者を措置法で差別するのは法の下の平等(憲法一四条)に違反する。

一〇、第一〇点(狭少地の評価、順号16)

軽自も入れぬ私道の奥に設けた避難路で狭小で利用の方法なく処分も不能であるから財産的価値はない。価値ありとするのは課税の根拠を誤るもので、租税法律主義(憲法八四条)に違反する。

一一、第一一点(庭地の一部としての借地、順号11)

庭地の延長として借地している旧井路埋立地(井路とは公図用語で用水路のこと、判決文で井戸跡としているのは誤り)に家屋の場合の借地権はない。借地権を適用するのは課税の根拠を誤るもので、租税法律主義(憲法八四条)に違反する。

一二、第一二点(有価証券及び生前贈与)

父は明治二九年生まれで晩年脳梗塞が進み、幻聴、幻覚で騒いだり、徘徊したり、おしめを外したり、嫌がって暴れたりするので、はじめ長女が次いで次男が勤めを辞め、次男妻と三人で三~四年書夜交替で介護に当たものであり、その報酬分である。額も勤めに比し少額である。長女の場合は父死亡後同じ会社に再就職している。労力提供のない贈与とは異なる。課税の根拠を誤るもので、租税法律主義(憲法八四条)に違反する。

なお、税務署員は子が親の介護をするのは当り前といったが、右の説明をし認めたもので禁反言に当たる。

一三、第一三点(判断省略)

第八、一〇、一一、一二、点につき判断しないのは、総額主義によるものと思われるが一審制ならとも角、三審制の二審において主張の各争点について判断しないのは争点ごとに判断を求める訴提起人は争点ごとに訴状を要することになり訴訟経済に反する外、差し戻しの場合判断を要することになり遅延する。審理不盡である。

一四、参考事項

判決文の誤り、一〇枚目表ページ末行の不動産取得費は不要。(譲渡所得を出すときに控除するもの)

以上

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