大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和51年(オ)1260号 判決 1978年2月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論違憲の主張は、その実質において原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎない。論旨は、採用することができない。

上告代理人荒井金雄、同神山美智子の上告理由第一点について

所論は、農地法六条一項一号の規定は、憲法二九条に違反すると主張する。しかし、財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律で定められるべきものであつて、公共の福祉を増進し又は維持するため必要のある場合には、財産権の使用収益又は処分の権利に制限が加えられるのはやむをえないところであり、農地法六条一項一号の不在地主による小作地の所有禁止の規定が、同法一条の基本的立場に立脚した農地所有権に対する公共の福祉の見地からの合理的な制限であつて、なんら憲法二九条に違反するものでないと解すべきことは、当裁判所大法廷判決(当裁判所昭和二四年(オ)第一〇七号同二八年一一月二五日大法廷判決・民集七巻一一号一二七三頁)の趣旨に照らし明らかである。なお、論旨中、憲法一四条、二二条一項違反を主張する部分は、その実質において、同法二九条違反の主張に帰する。論旨は、いずれも、採用することができない。

同第二点について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 岸 盛一 裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里 裁判官 本山 亨)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例