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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(行ツ)2号 判決 1970年7月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人庄司進一郎、同千場茂勝、同荒木哲也、同大野正男、同宮原守男、同柳沼八郎、同田邨正義、大橋堅固、同西垣道夫の上告理由第一点について

論旨は、原判決は選挙の無効原因を正解せず、本件選挙の(一)選挙人名簿に関する欠陥、(二)投票事務の管理執行における違法、(三)投票用紙と投票者数についての疑点に現われた数々の欠陥、義務懈怠、重大な過誤は、選挙を無効ならしめるべき選挙の規定違反というべく、これと異なる原判決の判断は、法令の解釈適用を誤つたものである、と主張する。

しかし、所論の点につき原審の認定した諸事情を総合しても、本件選挙を無効ならしめるべき選挙の規定違反ありとすることはできない。これと同趣旨にでた原判決には所論違法はなく、論旨は採用できない。

同第二点について

所論の点に関する原審の認定は挙示の証拠により是認しえないものではなく、経験則違背をいう論旨は採用できない。そして、選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合に、当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときは、投票事務従事者において「その理由をただし」、また、本人であることの確認には生年月日の対照をもつてすることが、選挙事務の取扱いとして至当というべきであることは、所論のとおりである。しかし、これを欠いたからといつて、その取扱いがただちに選挙の規定に違反するものということはできず、法令違背をいう論旨は採用できない。

同第三点、第五点について

所論の点に関する原審の認定は挙示の証拠によつて肯認しえないものではなく、原判決に所論経験則違背、審理不尽の違法ありとはいい難い。したがつて、法令の解釈適用の誤りをいう所論は前提を欠く。論旨はすべて採用できない。

同第四点について

所論D、同Eにつき、上告人らは、原審においてたんに名簿調製上の違法を主張したにとどまり、所論のように、「選管職員が故意若しくは重大な過失によつて、これを看過し」、ために、これが名簿調製上の瑕疵の域をこえ、本件「選挙の公正を害するものとして」選挙無効の原因となる旨の主張をしたものとは認められない。よつて所論はその前提を欠き、論旨は採用できない。

同第六点について

所論第一の点に関する原審の認定、判断は相当で、その過程にも所論の違法は認められない。原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採用できない。

以上により、第二の所論も採用できない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

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