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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)932号 判決 1969年12月11日

上告人

森下ヨシ

代理人

海老名利一

被上告人

中央信用組合

代理人

林信一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人海老名利一の上告理由について。

本件建物の賃借権は根抵当権設定の後で該抵当権に基づく競売始決定の前に設定されたものであるから、その設定後三年を経過した昭和四三年一〇月二七日以降、これをもつて被上告人に対抗し得ないものであることは、民法三九五条および六〇二条の規定に徴し明らかである。そうとすれば、これと同趣旨の原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)

上告代理人の上告理由

一、事実認定に基く法律判断に誤りがある。

(一) 事実の認定は判示の通りである。然し乍ら本件の物件は被上告人が昭和四一年三月一五日札幌地方裁判所昭和四〇年(ケ)第二〇三号不動産競売事件に於て競落して取得したものである。

(二) 右競売に於て右不動産の時価の半額程度にて競落したものである。右競落に際しては賃借権の存在して居ることを熟知して競落したものである。

(三) 右競落価格が時価の半額と言うのは賃借権の存在および継続を前提として居たが故である。

(四) 競落人である被上告人が賃借権の存続を承知の上競落したもので賃貸借契約を暗黙のうちに承認を為したものである。

従つて賃借権が存続して居るもので、之が登記の抹消を求めるは何等実益がなく、且つ民法三九五条、同六〇二条の精神に反するものである。

借家権との関係に於てもその精神に反するものである。

従つて原判決は破棄を免れないものである。

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