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最高裁判所第一小法廷 昭和40年(行ツ)76号 判決 1969年3月27日

上告人 神宮司泰蔵

被上告人 鹿児島税務署長

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

本件訴の提起当時における旧所得税法(昭和二二年法律第二二号、以下同じ。)五一条(昭和三七年法律第六七号による改正前のもの)は、「再調査の請求若しくは審査の請求の目的となる処分の取消又は変更を求める訴」を原則として審査の決定を経た後でなければ提起できないものとし、「再調査の請求若しくは審査の請求の目的となる処分又は審査の決定の取消又は変更を求める訴」について出訴期間の特則を設けているが、再調査決定を対象とするものについてはなんら定めるところがない。このような規定に徴すれば、同法による処分で再調査の決定および審査の決定を経たものに対する取消訴訟は、その原処分または審査の決定を対象として提起すべく、中間的な再調査の決定を対象とするような訴訟の提起は許されないものと解するのが相当である。このことは、たとえば再調査の決定に瑕疵が存したとしても、それが審査の決定において補正あるいは治癒されていたならば、右瑕疵を理由として再調査決定を取り消すことは無意味であるし、また右瑕疵が審査の決定にも同様に存するのであれば、不服申立手続における最終的判断を示す審査決定を対象として争わせるのがより適切であるのにかんがみて、首肯することができよう。

してみれば、上告人が再調査の決定および審査の決定を受けたうえ出訴した本件における再調査の決定取消の請求は、原判決のような説示をまつまでもなく、不適法といわなければならず、右原判示を非難する論旨も理由なきに帰する。結局、右上告人の請求を却下した第一審判決を支持した原判決は正当であつて、論旨は採用することができない。

同第二点ないし第四点について。

原判決が、「昭和三一年分所得税の青色申告申請に対する取消」と記載されている通知書によつた処分を、上告人に対する青色申告書提出承認の取消処分を表示したものと理解することができる旨を判示したのは相当であつて、その理由とするところに対する論旨の非難は、いずれも右の判断を動かすに足りない。右通知書によるものはいかなる処分か判明しがたいとする所論は、到底肯認しがたく、右通知書が青色申告書提出承認の取消処分を表示するのに多少不完全であるにしても、それが処分庁の意図したものと表示上別異の処分と解される余地のあるものは考えられない。したがつて、論旨引用の当裁判所の裁判例も、この場合には適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨はい

ずれも採用することができない。

同第五点について。

旧所得税法二六条の三(昭和三四年法律第七九号による改正前のもの、以下同じ。)によれば、青色申告書提出の承認は、確定申告または損失申告につき青色申告書によることを許容することにほかならず、同条一〇項が右承認取消の原因となる事実のあつたと認められる時まで遡つて取り消すことができるものと規定したのは、遡つて取消の原因となる事実のあつた年分の確定申告または損失申告につき青色申告書による特典を剥奪することができる趣旨であることは明らかである。したがつて、右承認の取消にあたり、その効力を遡らすべき時期の指定は特定の年を表示して行なえば足り、所論のようにその取消原因となる事実の発生の日時まで通告することを要するものとする根拠は存しない。本件において、論旨のいう青色申告申請に対する取消の通知書を前敍のように青色申告書提出承認の取消を通告したものと認めうる以上、それが上告人に対して昭和三一年分に遡つて右承認を取消した趣旨であることは明白であり、右処分について所論の非難はあたえらず、論旨は理由がない。

同第六点について。

所論は、いずれも上告人に対する本件青色申告書提出承認の取消処分が無効あるいは取り消さるべきものであることを前提とした立論にほかならない。原判決は、上告人に対する右承認の取消はその昭和三一年分について行なわれ、したがつて同三二年分についても青色申告書による特典を享受できなくなつていたことは旧所得税法二六条の三第一〇項末段により明らかであるから、上告人の右両年分の所得に関する更正処分にあたり、上告人の確定申告は青色申告以外の申告書によつたものとみなされ、同法四五条一項の適用はないものとして処理されたのをもつて相当としたのである。右原判決の判断に所論の違法はなく、論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

上告理由<省略>

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