大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)1180号 判決 1966年1月13日

上告人

戸部弥太郎

上告人

戸部博吉

右両名訴訟代理人

吉沢祐三郎

被上告人

荘進

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人吉沢祐三郎の上告理由第一点〜第二点について。<省略>

同第三点について。

訴外荘寛が本件不動産を被上告人(被控訴人)に贈与したものであり、右贈与は、通謀虚偽表示であること、または訴訟を行なわせることを主たる目的としてなされたものであることを認めることができない旨の原判決の認定、判断は、挙示の証拠関係および本件記録に照らし是認でき、その間、論旨の違法は認められない。なお、所論は原判決の乙第一五号証の二に対する説示の違法をいうが、原判決は、右乙第一五号証の二には荘寛が被上告人に本件不動産を「譲渡」し、同人の所有となつたことを記しているにすぎないから、原判決の認定した贈与の事実を動かすに足らない旨を判示したものであり、右判断は正当であり、その間論旨の違法は認められない。また、原判決は、訴外荘寛が、本件不動産を上告人戸部弥太郎から買い受けたが、本件不動産の所有権をやがて被上告人に帰属させることを予想し、昭和二八年一一月二七日、上告人戸部弥太郎の承諾を得て、登記簿上被上告人名義で所有権移転登記手続を経由し、昭和三四年八月ごろ被上告人に右不動産を贈与した旨の事実を確定していることは判文上明らかである。かかる事実関係の下においては、登記の際被上告人自身がこれに関与しておらず、また被上告人の本件不動産の所有権取得の日が、右登記手続の日より後であるからといつて、登記が実体的権利関係と結局一致するものである限り、被上告人において右自己名義の登記をもつて、第三者に対する所有権取得の対抗要件とすることを得ないものと解すべきいわれはない。論旨の違法は認められず、所論は採るを得ない。

同第四点について。

所論の準備書面は、原審口頭弁論において陳述されておらず(記録三八五丁参照)、従つて、その陳述を釈明しなかつたからといつて、原審の訴訟手続に所論の違法は認められない。

同第五点、第六点について。<省略>

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹告 松田二郎 岩田誠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例