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最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)237号 判決 1966年9月22日

当事者

上告人 中野一雄

被上告人 山際米蔵

主文

原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

本件を神戸地方裁判所に差し戻す。

理由

上告人の上告理由冒頭および第一点について。

原判決の確定したところによると、本件書面の真否確定の訴の対象たる上告人作成名義の土地売渡書と題する書面の記載内容自体によって直接証明せられる現在の権利もしくは法律関係と目しうべきものは、上告人が被上告人に対して昭和二七年四月一日に原判示の四筆の土地を売り渡す契約をなし被上告人からその代金として金九八、〇〇〇円を受け取ったこと、右により、被上告人が現に右土地の所有権を有すること、もしくは被上告人が上告人に対して右土地所有権を移転すべきことを目的とする債権を有し上告人において右債務を負担するというのであって、右書面が民訴法二二五条にいうところの法律関係を証する書面に該当するとした原審の判断は、首肯できる。

しかして、原判決は、上告人と被上告人間において昭和二四、五年頃以来被上告人を貸主として数回に亘る金銭の貸借がなされ、被上告人から右貸金弁済の担保の提供を求められて上告人がその所有田地の一部を担保として供与することに同意したこと、被上告人において上告人に対する昭和二七年三月末頃の貸金九八、〇〇〇円につき売渡担保として前記四筆の土地の所有名義を上告人から被上告人に移転したとして本件書面を作成したこと、上告人が右金九八、〇〇〇円の貸借を争ってその弁済をしなかったので被上告人が上告人に対し原判示貸金請求訴訟を提起したこと、および、右訴訟において第一、二審とも被上告人が勝訴の判決を得て上告人が上告を申し立てたことを各認定判示しているのであって、以上の事実関係からすれば、右貸金訴訟における被上告人勝訴の判決が確定して被上告人が右判決に基づいて強制執行をしたとしても、その効を奏しなかった場合はもちろん、その効を奏した場合であっても、改めて被上告人が上告人に対し本件土地売渡書による権利の主張をすることの可能性が現にないとはいえない。ところで、原審の認定するところによれば、上告人は現に引き続き所有者として本件四筆の土地を占有耕作しているというのであるから、前示の可能性が現在存する以上は、上告人において本件土地売渡書の真否確定を訴求することについて即時確定の利益があるといわなければならない。

従って、右利益の存しないことをもって上告人の本件訴を却下すべきものとした原判決の判断は誤りであり、その結果が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、その余の論点について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れないところ、右の点につき原判決と同じ判断を示した第一審判決もまた取消を免れない。

よって、本案審理のため、民訴法四〇七条、三九六条、三八六条、三八八条に従って本件を第一審裁判所に差し戻すべきものとして、裁判官全員一致をもって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 松田二郎 岩田誠)

上告人の上告理由<省略>

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