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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)366号 判決 1961年6月08日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人弁護士高橋義次、同黒沢辰三、同馬場一広、同山本宏の上告理由について。

原判示の事実関係の下において被上告人が漁業法一四条四項、七項により県知事の認可を受けた以上は本件区画漁業権を有する上告人浦安町漁業協同組合及び本件共同漁業権を有する上告人両名に対しそれぞれその漁業権を共有とすべき旨請求する権利を有し、且つ、該権利の行使があつたが故に、上告人らはそれぞれこれが登録に協力する義務を有する旨の原判決の判断は、当裁判所もこれを正当として是認する。

論旨は、被上告組合は昭和三〇年七月一二日に設立された組合であつて、本件漁業権の免許のあつた昭和二六年九月一日当時には存在せず、従つて漁業法一四条四項、七項の共有請求をする資格がなく、前示認可は無効のものであるというのである。漁業法は、一般に漁業権を漁業従事者に与えようとしているのであり、殊に共同漁業権及び漁業法一四条二項所定の区画漁業権については沿岸漁民を尊重し、一組合で免許を申請する場合も、二組合以上が共同で申請する場合も、組合員たる沿岸漁民の世帯数が沿岸漁民世帯数の三分の二以上であることを必要としている(漁業法一四条二項、六項)、しかし、一面協同組合に加入していない者も、その沿岸漁民たる地位は尊重さるべきであり、従つてこれらの者も水産業協同組合法二五条によつて既存の組合に加入することも可能であり、また、これらの者が別に組合を設立し漁業法一四条四項、七項によつて知事の認可を受けた上共有を請求することも可能なわけである。そして、この場合漁業権の民主化をねらう漁業法の精神からして、右一四条四項を、漁業免許当時存在していた組合でなければ共有請求ができない旨限定的に規定しているものと解釈すべきではない。所論の定置漁業の場合は、漁業権の性質も異り本件の場合とは別異に考えて然るべきである。論旨はひつきようするに独自の見解に属し、採用のかぎりではない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

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