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最高裁判所第一小法廷 昭和33年(オ)653号 判決 1959年4月09日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人丸岡奥松の上告理由

(一)  「議案四七号」及び「議案五二号」が一度も法廷に顕出されなかつた者の論旨について。

一審記録に編綴の取寄書類写によれば、「議案四七号」は「第一二回天間林村農業委員会会議録」の末尾に、「議案五二号」は「第一三回天間林村農業委員会会議録」の末尾にそれぞれ添綴されており、しかも右第一二回会議録」は「四七号議案」を、同第一三回会議録は「五二号議案」をそれぞれ審議した議事録であることは、その内容から見て明かである。いわば右両議案はそれぞれ右両会議録の附属書類としてそれと一体をなすものと認められるから、一審裁判所が特にこれを除外して証拠調をしたという事実が認められない以上一括してこれを取寄せ証拠調をしたものと解するのが相当である。そして右各会議録が何れも法廷に顕出されたこと記録上明かであるから、論旨は理由がない。

(二)  一審において取寄せ法廷に顕出された証拠書類であつても、すでに還付済であるものを控訴審において更に証拠として採用するには改めて取寄せた上で法廷に顕出しなければならない旨の論旨について。

しかし控訴審において当事者が一審における口頭弁論の結果を陳述したときは、一審において提出された一切の証拠資料は総て控訴審に顕出されたものとされ控訴裁判所はこれを採つて事実認定の資料となし得るものであることは従来の判例とするところである。(大審院昭和一五年(オ)八三七号、同年一一月一二日判決、民集一九巻二〇四四頁、大審院昭和六年(オ)三七五七号、同七年七月五日判決、民集一一巻一五七九頁、最高裁判所昭和二七年(オ)五七九号、同二九年一〇月二九日第二小法廷判決参照)これを本件について見るに、原審における口頭弁論調書には、当事者双方代理人は一審の口頭弁論の結果を陳述した旨の記載があるから一審において顕出された所論書証も同時に顕出されたものというべく従つてこれを採つて事実認定の資料とした原判決には何ら違法はなく、論旨は採用し得ない。

(三)  職権証拠調をした場合は行政事件訴訟特例法九条但書によつてその結果につき当事者の意見を聴くべきであるのにそれをしなかつた旨の論旨について。

記録を調査するに、証拠調の結果につき意見を聴いた旨の記載はないが、これにつき当事者が遅滞なく異議を述べた形跡もない。されば仮にその点の違法があるとしても責問権の放棄によつて治癒されたものと解すべきであり、この点の論旨も理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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