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最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)2258号 判決 1959年4月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意について。

憲法三九条の一事不再理の原則は、何人も同じ犯行について、二度以上罪の有無に関する裁判を受ける危険にさらさるべきではないという根本思想に基く規定であることは、当裁判所大法廷判決の判示するところである(昭和二四年新(れ)第二二号、同二五年九月二七日大法廷判決、刑集四巻九号一八〇五頁)。また、法廷等の秩序維持に関する法律によって裁判所に属せしめられた権限は、直接憲法の精神、つまり司法の使命とその正常、適正な運営の必要に由来するもので、いわば司法の自己保存、正当防衛のために司法に内在する権限、司法の概念から当然演繹される権限であり、憲法のいずれかの法条に根拠をおくものではなく、従って、前記法律による制裁は、従来の刑事的、行政的処罰のいずれの範疇にも属しないところの、右法律によって設定された特殊の処罰であると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二八年(秩ち)第一号、同三三年一〇月一五日大法廷決定、刑集一二巻一四号三二九一頁)。それ故、被告人が、刑事的または行政的の処罰のいずれの範疇にも属していないところの法廷等の秩序維持に関する法律による監置の制裁を受けた後、更らに同一事実に基いて刑事訴追を受け有罪判決を言渡されたとしても、憲法三九条にいう同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われたものということのできないことは、右大法廷両判例の趣旨に徴して明らかである。されば、論旨中違憲をいう点は採るを得ない。

論旨中その余は結局名前も年令も異るというに帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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