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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)12号 判決 1958年3月13日

神戸市兵庫区福原町五九番地

上告人

田渕隆平

同所同番地

上告人

田渕菊野

右両名訴訟代理人弁護士

中垣清春

同市生田区浪花町五六番地

被上告人

株式会社神戸銀行

右代表者代表取締役

岡崎忠

右当事者間の約束手形金請求事件について、大阪高等裁判所が昭和三一年一〇月一一日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの各負担とする。

理由

論旨第一点について。

原判決の引用する第一審判決の確定した事実によれば、本件約束手形受取人たる被上告銀行は、支払期日に支払場所たる被上告銀行支店において右手形を所持し、呈示の準備をして支払を待つたが支払を受けることができなかつたというのであるから、かかる事実関係の下においては、これをもつて支払のための呈示が現実にあつたと同一の効力を生ずるとした原判示は正当であつて、所論は採るを得ない。

同第二点について。

所論は原審の適法にした証拠の取捨、事実の認定を非難するに帰し、原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背を主張するものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条一項但書に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

昭和三二年(オ)第一二号

上告人 田渕隆平

外一名

被上告人 株式会社神戸銀行

上告人代理人中垣清春の上告理由

第一点 原審は手形法第三十八条の解釈を誤つている。

本件第一審判決は、被上告人が「支払場所である自己の営業支店において手形を所持し呈示の準備をしてその支払を待つた」ことを認定して右認定事実は現実に手形を呈示したと同一の効果を生ずるものと解して差支えないと判示し原審も之を容認しているがこれは手形法第三十八条に云う呈示の解釈を誤つたものでもつて右認定事実の程度では現実の呈示があつたと認めることはできないものと思料する。

第二点 上告人田渕菊野に対し上告人隆平と同様の責任を負担せしめたことは違法である。

本件第一審及原審は被上告人と上告人菊野間においても証人佐野一成の証言及び甲第一、二号証によつて上告人隆平と同様の責任を認めているけれども之等証拠によつてはその様な認定はできないものである。仮に上告人菊野が本件手形の保証をしたものとしても損害金の支払についてまで之を保証したものとみることはできないものと思料する。

以上

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