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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(オ)4号 判決 1956年5月10日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士桑江常善の上告理由第一点について。

本件におけるがごとく、ある不動産の共有権者の一人がその持分に基き当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく、従つて、共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる旨の原判示は正当であると認められるから、論旨は採ることができない。

同第二点について。

原判決挙示の証拠によれば、太田要が実弟たる控訴人(上告人)名義に仮装して本件登記をなしたとの原判示認定を肯認することができるし、また、原判決は、第一審判決とは異つて被上告人等が共同相続をしたとの被上告人の主張事実を是認したものであるから、所論の審理不尽は認められない。なお、不法原因給付であるとの主張は、原審で主張しなかつたところであるから、原判決が民法七〇八条の解釈を誤つたとの主張は採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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