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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)2334号 判決 1956年5月10日

主文

原判決中「同第二の罪につき罰金弐拾九万五千四拾円に処する」とある部分を破棄する。

被告常磐産業株式会社を原判示第二の罪につき罰金弐拾七万五千四拾円に処する。

検察官の本件上告並びに原判決中前記部分を除いた部分に対する被告人の本件上告を棄却する。

理由

検察官の上告趣意について。

原判決が、その判示理由から、物品税の課税標準価格は、通常の取引形態及び取引事情における価格、従って、適正な市場価格又は取引価格でなければならないものであって、本件物品については該統制額を課税の標準価格とするを妥当と解する旨判示したのは正当である。されば、所論は、採ることができない。

弁護人宇野長之の上告趣意第一点、第三点竝びに弁護人本田熊一の上告趣意第三点について。

所論は、単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決が、物品税は月を標準とし申告、課税徴収するいわゆる月税であって、その逋脱罪もまた月を標準として罪数を定めるべきであり、また、所論の移出は、判示第一の(1)の罪の一部であって、その他の部分につき告発がある以上起訴条件に欠缺があるとはいえない旨判示したのは正当である。(なお、判例集八巻三号二一七頁以下、判例集九巻一二号二三五三頁以下参照)。

宇野弁護人の上告趣意第五点について。

所論は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、通告の金額が過当であるからといって、通告そのものが無効であって、通告なきに帰するといえないことは論を待たない。

なお、宇野弁護人の上告趣意中弁護人本田熊一の上告趣意を引用する旨の論旨に対する判断については、本田弁護人の論旨についての説明によって了解すべきである。

弁護人本田熊一の上告趣意第一点、第二点について。

所論第一点は、違憲をいうが、その実質は、単なる訴訟法違反の主張であり、同第二点中判例違反をいう点は、所論引用の判例は、本件に適切でないから、その前提を欠くものであり、その余は、単なる訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、所論通告書が昭和二三年七月一八日被告会社に送達されたこと、また、本件告発書が所轄高松地方検察庁に受付けられたのが同年一一月二日であることは記録上明白であるから、右通告書並びに告発書が無効であるとの所論は、その前提を欠くものである。また、公訴の逋脱金額が通告書及び告発書記載の金額と異っているからといって、その公訴を無効であるといえないことは多言を要しない。

同第四点について。

所論は、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、原判決に京花紙二号を貫数で表示してあるのは、その貫数と本件逋脱し又は逋脱しようとした税額とを対照すれば、締の誤記と認められる)。

宇野弁護人の上告趣意第二点、第四点について。

所論は、結局単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであって(判例違反をいう点は、判例を具体的に示していないから不適法である)、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。しかし、職権を以て調査すると、原判決が適法に確定したところによれば原判決は判示第二の罪の移出した製品に対する物品税を計金五五、〇〇八円としたにかかわらず、昭和二四年一二月二七日法律二八六号附則八項改正前の物品税法一八条一項、二二条を適用して、主文において同第二の罪につき被告会社を罰金二九五、〇四〇円に処したこと記録上明白である。しかるに同法一八条一項所定の罰金は逋脱せんとした税金の五倍、すなわち本件の原判示第二の罪においては金二七五、〇四〇円であること算数上明らかであるから、前示科刑をした原判決は、違法であって、原判決の当該部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。よって刑訴施行法三条の二、刑訴四一一条一号により原判決の該部分を破棄し旧刑訴四四八条により更に判決するものとする。原判決の判示第二の所為は、昭和二四年法律二八六号附則八項改正前の物品税法一八条一項に当るから、同法二二条により被告会社に対し該部分につき主文二項の罰金刑に処するものとする。

しかし、検察官の本件上告並びに前記部分を除いた原判決の部分に対する被告会社の本件上告は、その理由がないから、旧刑訴四四六条に従い主文三項のとおり判決する。

裁判長沢田竹治郎は退官につきこの判決の評議には関与しない。この判決は、その余の裁判官の全員一致の意見によるものである。

(裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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