大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)1655号 判決 1951年11月29日

本店

大阪市大淀区豊崎西通二丁目七番地

世界長ゴム株式会社

右代表者代表取締役

奥野松吉

本店

大阪市大淀区豊崎西通二丁目七番地

世界長商事株式会社

右代表者代表取締役

浅井定一

本籍

山口県大島郡安下庄町大字東安下庄二八九七番地

住居

大阪府豊能郡箕面村大字半町五四〇番地の二〇

世界長ゴム株式会社業務部長

川上三次

大正四年九月一〇日生

本籍

宮崎県宮崎郡広瀬村大字下田島二〇二八六番地

住居

福岡市上高宮町六番地

世界長ゴム株式会社九州支店長

高山久彌

大正五年二月一二日生

右に対する物価統制令違反各被告事件について昭和二六年四月二八日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人世界長ゴム株式会社、同川上三次の弁護人幸節静彦の上告趣意について。

本件は期待可能性を欠き責任を阻却し無罪である旨の所論は、原審でその主張がなく、従つて、原判決もその点について何等判断を与えていないのである。しかのみならず、所論摘示の事情は、いわば貧困で止むなく窃盗をした場合の貧困という状態のように、本件犯罪の主観的責任に関係のない単なる犯罪発生原因上に存する憫諒すべき客観的な情状たるに過ぎないものと認められる。されば、所論は、原判決に対する適法な上告理由を定めた刑訴四〇五条各号のいずれにも該当しないし、また、本件では同四一一条を適用すべきものとも認められない。

被告人世界長商事株式会社、同高山久彌の弁護人幸節静彦の上告趣意について。

しかし、物価統制令三条違反の犯罪成立後同四条に基き指定された統制額の告示が廃止されたからといつて、既に成立した犯罪の刑罰を廃止するものではないことは当裁判所屡次の判例である。されば所論は、刑法四〇五条に当らないばかりではなく、同四一一条五条を適用すべきものとも認められない。

よつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に則り主文のとおり判決する。

この判決は、被告人世界長商事株式会社、同高山久彌の弁護人の上告趣意に対する真野裁判官の本件は免訴すべしとの意見(判例集四巻一〇号一九八三頁以下参照)を除くの外裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齊藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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