大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)863号 判決 1951年3月15日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人牧野内武人同田村五男の上告趣意第一点について。

しかし、原判決は判示二八日正午頃判示利根川岸の船中で判示「清」に代り明間捨次郎との間に判示玄米一五俵売買の交渉をし、これを統制額を超過した代金で明間を通じて法定の買受資格のない判示峰岸嘉平に売渡し、翌日前記の船中で右代金を受取って「清」に手渡し以て右「清」の犯行を容易ならしめて幇助したものである旨判示しただけで、右「清」が右犯行当時の食糧管理法施行規則二二条の三所定の「米麦の所有者」であることを何等判示していない。されば原判決が右判示所為に対し物価統制令三三条、三条、四条、昭和二一年物価庁告示一五一号、刑法六二条一項、六三条、六八条等のみを適用して、食糧管理法三一条、九条、同法施行令一〇条、同法施行規則二二条の三を適用しなかったのは正当である。所論は、原判決における「法定の買受資格のない」という無意味な記載を捉えて、原判決の認定しない自己に不利益な犯罪のあることを前提として、原判決は適用すべき法律を適用しなかった違法があると主張するものであるから採ることができない。

同第二点について。

しかし、原判決は、被告人が判示経緯により判示五月二〇日頃通称「清」という男からの申出に応じ、判示米を判示波崎町迄運搬した上闇値で売ってやって利益を得やうと決意して、同月二八日正午頃判示米を霞ヶ浦湖岸から、判示波崎町川岸迄運搬して同所で右「清」に代り明間捨次郎と交渉の上統制額を超過した代金で捨次郎を通じて峰岸嘉平に売渡し、翌日その代金を受取って「清」に手渡して幇助した単一の意思決定に基く一連の実行行為を認定判示したものであるから、原判決が右運搬行為と右超過価格契約受領幇助行為とを一個の行為にして二個の罪名に触れるものとしたのは、正当であって、論旨はその理由がない。

よって旧刑訴四四六条に従ひ裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例