大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 平成5年(行ツ)45号 判決 1993年6月10日

浦和市常盤一〇丁目五番一九号

上告人

岡部照夫

浦和市常盤四丁目一一番一九号

被上告人

浦和税務署長 菊池幸久

右指定代理人

中村和博

右当事者間の東京高等裁判所平成四年(行コ)第七六号課税処分取消請求事件について、同裁判所が平成四年一二月一四日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下において、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大堀誠一 裁判官 味村治 裁判官 三好達 裁判官 大白勝)

(平成五年(行ツ)第四五号 上告人岡部照夫)

上告人の上告理由

第一点、法令解釈の誤り

一、原判決は、上告人が訴外会社に対して補償金二億五千万円の支払を約し、覚書記載のような合意をしたことは、経済人の行為として著しく不自然、不合理であるとして、結局課税庁側に加担し、行為計算の否認を認容するに至りました。

二、しかし、原判決の解釈は誤っています。

三、訴外会社が「新木場」に移転することになったのは、同業他社の倒産がキッカケです。

四、すなわち、倒産した同業他社の債権者らから懇願されて、新木場の土地、建物を買ったのです。その代金は一億五百万円です(甲第九号証)。

五、訴外会社は、右の代金のほか、移転費用として四千五百万円かかりました。そこで訴外会社は合計一億五千万円を借金するという破目になりました。

六、同業他社が倒産したように、当時は材木不況のどん底にありました。

(1) 材木不況下の上に、訴外会社は右の一億五千万円の借金があり、元利を返済していかなければなりません。

(2) 河川占有権の補償金すら約七千三百万円です。

(3) 借地権を無償で返還した事例を聞いたことがありません。

(4) 本件土地は、実に六四三坪と膨大であり、時価は一〇億といわれていました。

(5) 訴外会社が、木材不況を乗り切り、借金の元利を払いながら、立ち上がることが出来るまでは、訴外会社に本件土地を運営して収入を上げる道を与えてやるというのは当然の行為です。

(6) 不況下にある企業や経営困難な企業を、関係者が経済援助をすることは、企業社会ではしばしばみられるところです。

七、上告人がした行為計算は企業の援助活動の一環であり、経済人の行為として誠に合理的かつ自然であります。不合理、不自然は豪も存しません。

八、しかるに、経済人の行為として著しく不自然、不合理であるとする原判は法令の解釈も誤っています。

第二点、二重課税の違法

一、訴外会社は、本件土地の運用金を原資として多数の従業員の賃金を支払ってきました。

二、賃金を支払うときは当然のことながら、所得税を源泉徴収して納税してきました。

三、上告人に対する課税は「同じ原資」に対する二重の課税となります。

四、よって、本件課税処分の取り消しを求めます。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例