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最高裁判所第一小法廷 平成元年(行ツ)146号 判決 1990年4月19日

メキシコ国メキシコ市四・デー・エフ・スリバン五一

上告人

ソウサ・テスココ・ソシエダ・アノニモ

右代表者

イサック・エル・シラー

ウベルト・デュランシャステル

右訴訟代理人弁理士

松田喬

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被上告人

特許庁長官 吉田文毅

右当事者間の東京高等裁判所昭和六三年(行ケ)第一一三号審決取消請求事件について、同裁判所が平成元年四月二〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松田喬の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 橋元四郎平 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷巖 裁判官 大堀誠一)

(平成元年(行ツ)第一四六号 上告人 ソウサ・テスココ・ソシエダ・アノニモ)

上告代理人松田喬の上告理由

一上告理由第一点とするところは原判決は「1取消事由2及び3について」となし、次の判断を示している。

「成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(昭和六〇年八月三一日株式会社東洋医学舎発行「健康食品事典85」)乙第二号証の一ないし三(昭和五三年八月二五日医歯薬出版株式会社発行「スピルリナ 新しい食糧」)、原本の存在及びその成立に争いのない乙第三号証の一ないし三(昭和五五年廣済堂出版発行「医学界も認める緑の万能食 スピルリナの秘密」)、同乙第四号証の一ないし三(New Food Industry 一九七九年二月号)、同乙第五号証(昭和五七年七月五日付日本経済新聞)、同乙第六号証(昭和五三年七月五日付日刊工業新聞)、同乙第七号証(昭和五三年七月一〇日付健康食新聞)、同乙第八号証(昭和五三年一〇月一九日付食品化学新聞)、同乙第九号証(昭和五四年二月六日付日本経済新聞)、同乙第一〇号証(昭和五四年一〇月八日付毎日新聞)、同乙第一一号証(昭和五五年三月一日付医薬・健康ニュース)、同乙第一二号証(昭和五六年一二号証(上申書)の記載はたやすく措信できず、他に、八月五日付報知新聞)、同乙第一三号証(昭和五八年一月一日付健康食新聞)、成立に争いのない乙第一四号証(昭和五九年一一月一一日付日刊スポーツ)を総合すると、スピルリナは、スピルリナ科の藍藻類に属する藻の仲間であり、毒性がなく、古代より食用に供していた部族もあり、加工のうえ食用又は飼料とするのに適したもので高蛋白植物資源として注目されていること、スピルリナ科の藍藻は大きく二つの属、つまり真正スピルリナ属とアルスロスピラ属に分類され、真正スピルリナ属に属するものは現在二二種、またアルスロスピラ属に属するものは一三種あるが、アルスロスピラ属のものには、植物学者であるCeitlerの分類名を末尾にもつものが多いこと、スピルリナを食用に加工したものは蛋白価が高く、各種ビタミン類やミネラルなどの栄養成分が豊富であっていわゆる健康食品や自然食品として注目され、病気の治療や予防にも役立つものとして期待されているほか、養殖魚類の飼料として、特に錦鯉の色揚げ飼料として利用され、この方面の開発利用の余地も大きいこと並びにこのスピルリナはすでに乾燥させた粉末として我が国に輸入されているものであるうえに、昭和五三年七月には、スピルリナの粉末を原料とした健康食品が製造発売されていることが認められ、これに反する甲第一二号証(上申書)の記載はたやすく措信できず、他には、右認定を覆すに足る証拠はない。そして、前掲各証拠によれば、本願商標登録出願についての最終的な判断時としての本件審決時(商標法第四条第三項参照)である昭和六三年一月一四日ころにおいては、自然食品に対する関心の高まりと相まって、「スピルリナ」の語は、右にみたような健康食品ないし自然食品の一つとして注目されている藻類の仲間であり、前記認定のごとき栄養成分を含むことから、これを加工して自然食品の一つとして食用に供し得るものを意味することは、すでに我が国においても知られていたことが認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、本願商標の構成のうち「ゲイトラー」のもつ具体的な意義が一般に理解されていないとしても、これに先立つ「スピルリナ」を原材料としたものが右のような性状品質を有する健康食品の一つとして知られている以上、一般需要者が、「スピルリナゲイトラー」なる商標を付した加工食料品に接するときには、これが「スピルリナ」の種類に属する原材料を加工ないし含有した品質を有する商品であると容易に認識し得るものと認められる。したがって、本件審決が、「スピルリナ」の文字は、スピルリナとよばれる藍藻類を加工して食用に供するものを意味するものとして一般に使用されているとした認定に誤りはない。

また、本願商標の構成のうち「ゲイトラー」の部分が前記認定のごとき具体的な意義を有することが一般需要者に知られていないとしても、「スピルリナ」の語が健康食品の一つとして知られているのであるから、本願商標は、全体として商品の特性を表示する記述的商標と認めることができる。そうであれば、一般需要者が「スピルリナゲイトラー」を付した商品に接した場合、これを「スピルリナ」の種類に属する藍藻類を加工ないし含有した成分を有する商品であると認識するものということができるから、本件審決が、右と同じ検討をするに当たって、「スピルリナ」と、「ゲイトラー」との部分とに分けてそれぞれの意義を認定したうえで、本願商標の構成を全体として評価判断したことに何ら誤りがない。

以上の認定及び説示に反する原告の主張は、これを裏付けるべき証拠もなく、採用することができない。よって、取消事由2及び3は理由がない。

然しながら、右摘示した原判決の判断は辻褸、すじみちの会わない論旨たるに尽きる。即ち右判決の判断は「スピルリナ」藻類が物品であることを徒に力説しているに過ぎず、その商品たることを断定しているものでない。商標法上の商品たることを確言しているものでないこと、もとより、然り。物品と商品とは法律論上根底的に相違している。敢えて例示するの要なしとするも、強いて例示を求めれば「スピルリナ」藻類が合目的性と、価値と(価値は自覚によって生ずる。)妥当性(事実真理)とに徴し食用に供し得ない時、これを商標法上食品としての商品として取扱うことを得ないがその物品たること疑いを容れない。右原判決は「スピルリナ」の文句のある書籍(雑記本である。)と新聞記事とを掲記して「スピルリナ」と呼称されるとする物品の存在を肯定し、「ゲイトラー」に付いては「また、本願商標の構成のうち「ゲイトラー」の部分が前記認定のごとき具体的な意義を有することが一般需要者に知られていないとしても「スピルリナの語が健康食品の一つとして知られているのであるから本願商標は、全体として商品の特性を表示する記述的商標と認めることができる。」と判示しているが、それ等の判断は物品を謂われなくして商品に転換してしまっているのである。本願商標の対象として然も本願商標と不可分の商品「スピルリナゲイトラー」に付いての判断ではない。本来、本願商標「スピルリナゲイトラー」も、あるいは、物品名「スピルリナ」、または、同「ゲイトラー」も日本語的には無内容の文句たるに過ぎない。学名に「ゲイトラー」を付するといっても、学名なるものが必ずしも先進的研究を物語っているものではなく、主観的観点に於て、ないし、リンネ等の命名法を踏襲し任意に自己の姓を付加するものであってこれを日本人的方向に於て観取する時、あるいは、稀少用語として、あるいは、発音適性を有する用語として相他商品の如きを区別し得ることに商標法上何等否定される謂われはない。また、これに「スピルリナ」の用語を冠するも「スピルリナ」の中に「ゲイトラー」があり、「ゲイトラー」の中に「スピルリナ」が存在し、換言すれば「スピルリナ」と「ゲイトラー」とは矛盾の自己同一として精神現象上両者不可分の統一用語たるに帰することは疑う余地なし。これに対し「「スピルリナ」と「ゲイトラー」との部分とに分けてそれぞれの意義を認定したうえで本願商標の構成を全体として評価判断したことには何ら誤りがない。」と判示した原判決は物品に対する区別上の名称と商標たる本願商標が右事実真理を根底的に異別にするものであることを混同し、論旨不成立の言説を弄したるに外ならない。加うるに原判決は「以上の認定及び説示に反する原告の主張はこれを裏付けるべき証拠もなく、」と判示しているが、もともと「スピルリナゲイトラー」なる商品名は本願商標第三十二類に係る指定商品に今までなしと上告人は原審に於て主張しているものであるから、証拠上の論理により、また、今までの存否を立証する証拠の実際に徴し今までに商品名存在するとの立証は当然被上告人が立証すべきであるにも拘わらず、これを上告人が立証すべきであるとした右原判決は、即ち、民事訴訟法第三九五条第六号規定の判決の理由に齟齬が存在すること明白である。

二上告理由第二点とするところは原判決は「2取消事由1及び4について」となし、次の判断を示している。

「ところで、本願商標に係る指定商品についてみるに、出願当初においては、指定商品を第三二類「加工藻類および他の加工食品その他本願に属する商品」としていたものを、その後、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する加工藻(「類」が除いてある。)および他の加工食料品その他本願に属する商品」と補正したことは、当事者間に争いのないところではあるが、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」との表示のみからは冒頭の「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する」なる語は、

<1>原告主張のように、「加工藻類」、「他の加工食料品」、「その他本類に属する商品」のすべての語に掛かるのか、

<2>被告主張のように、「加工藻類」、「他の加工食料品」にまで掛かり、「その他本類に属する商品」には掛からないのか、

<3>「加工藻類」にだけ掛かり、「他の加工食料品」、「その他本類に属する商品」には掛からないのか

三様の読み方が可能である。

すなわち、出願人は、前認定のように、近時健康食料品等として注目されているスピルリナを含有する第三二類の食料品であることを示す標識として本願商標を出願したもので、これを含有しない第三二類の食料品についてまでこれを含有することを示す標識を付する意思を有しないものと推察すれば、<1>の読み方が可能であり、第三二類に属する食料品の中から「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する」ものとして「加工藻類」、「その他の加工食料品」が抽出されたとみれば、「その他本類に属する商品」とは、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品以外のすべての第三二類の食料品」を指すものと解せられ、<2>の読み方が可能であり(この場合でも、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有しない加工藻類および他の加工食料品」が「その他本類に属する商品」に含まれるか否か二様の読み方が考えられ、本件審決は、「本願商標は、指定商品中の「スピルリナを含有する商品」以外の加工藻類、加工食料品等について使用した場合」(第三頁第一六行ないし第一八行)との記述からみて、前者の読み方をしていると解せられる。)、前記指定商品の表示を「および」で分断して読めば、<3>の読み方も可能である(この場合でも、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有しない加工藻類」が「他の加工食料品」又は「その他本願に属する商品」に含まれるか否か二様の読み方が考えられえる。)。そこで、右の<2>又は<3>の読み方をすれば、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有しない商品」も本願商標の指定商品に含まれることになるから、かかる商品に本願商標を付して使用した場合には、一般需要者において、あたかもその商品に「スピルリナ」の種類に属する加工成分が含有されているかのように誤認するものと認められるから、本願商標は商標法第四条第一項第一六号に該当する。また、原告の主張するように、<1>の読み方をすれば、本願商標に係る指定商品はすべて「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する商品」であると理解できるとしても、本願商標が、別紙にみられるように品質及び原材料を「普通に用いられる方法で表示した標章」のみからなる記述的商標であることは明らかであるから、本願商標は商標法第三条第一項第三号に該当する。このように指定商品の表示をいかように読んでも、本願商標は商標登録を受けることができない。

本件審決も、「スピルリナ」や「ゲイトラー」の表示する意味を認定したうえで、本願商標が、「スピルリナを含有する商品」以外の商品に使用された場合に、商品の品質について誤認を生じる旨認定判断している説示の内容からみて、本願商標の構成を品質表示として把握していることは明らかであり、理由中には商標法第三条第一項第三号の規定がことさら掲載されていないけれども、本願商標を「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する加工食料品」に使用されるときには、右の規定に該当する旨の判断を実質的にしているものと解される。そうであれば指定商品の範囲についての認定の誤りをいう原告の主張は、これをもって本件審決を取り消すべき事由とみることができないことも明白である。なお、前記認定のごとくすでに我が国においてもスピルリナの粉末を含有した保健食品が製造販売されているのであって、また、それらの商品がいまだ一般需要者間に普及していないとしても、商標登録出願に係る商標が商標法第四条第一項第一六号にいう「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当するというためには、その商標によってあらわされるような品質の商品が現実に製造、販売されていることを必要とするものではなく、一般需要者が、その商標を付した商品に接したとするならば、その商品の品質効能等の特性を誤認するおそれがあれば足るものというべきであり、この理は同法三条一項三号の適用の関係においても同様である。

よって、取消事由1及び4も理由がない。

三以上のとおりであるから、その主張の点に認定判断を誤った違法があることを理由に、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。

と判示している。

然しながら右上告理由第二点に於て摘示した原判決はとんちんかんの論旨たること甚し。即ち、その論旨の矛盾する判断たる事を分説すれば次の如し

(1)本願商標の指定商品に係る「スピルリナゲイトラーの精製粉末」なる製品、ないし、商品は物品「スピルリナ藻類」ではない。凡そかけ離れた対象である。右精製粉末は本願商標の指定商品たる三十二類に区別される指定商品の対象になるが、(現実の文明観念に徴し)、右単なる「スピルリナ藻類」は決して右第三十二類指定商品の対象には実践的事実としてなり得ない。それは恰も蒲焼の例に見るが如し。生の鰻は食用になし得ないが、饅の蒲焼は天下の珍品である。そしてスピルリナ藻類は右精製粉末にしても人類が普通の環境にある時その食用を拒否すること恰も彼岸花の球根に於けるが如し。到底薬味にも使用なし得ない程度であって、若し食用に供するならば少量をオプラート、ないし、カプセル等を以て包装し、目をつぶって嚥下するの類いに帰するものである。それにしてもこれを継続的、ないし、連用すれば激しい嘔吐が発現することは必定である。何れにしても人間が普通に用いる食品の埒外にあるものである。そこで、本願商標の指定商品の表示に付いて原判決は「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」との表示のみからは冒頭の「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する」なる語は、

<1>原告主張のように、「加工藻類」、「他の加工食料品」、「その他本類に属する商品のすべての語に掛かるのか、」と断じ判断対象に措定して三様の読み方が可能であると判断し、この<1>に付いて肯定した判断を示している。

然しながら、原判決の如く右<1>が正当な判断として原判決が認容し得る客観性を有するものならば、本願商標の指定商品を表現することは上告人が商標登録出願人として自由に表現し得るところであって、上告人の原審に於けるこれに係る主張は当然採用されるべきであり、右<2>、及び、<3>に係る論旨は排斥されるべきが至当である。その謂われは右<1>に於ける上告人の主張は日本語として順当、正確な表現であり、日本語文法に適合した表現であるとともに「…その他本類に属する商品」に「スピルリナゲイトラー」の精製粉末を含有するの表示が掛らないとすれば「その他本類に属する商品の表示は蛇足に帰し推論上無内容に失する。だが指定商品の表示は「字余り、字足らず」を回避して満遍なき表示を行うことは理の必然であるから、それには日本語文法を確実に遵守しなければならない故に、右<2>、及び<3>の判断はこの文法に悖るものであるからそれ等の論旨は成立しない帰結をなしていることは明確である。

然るに原判決は

「本願商標に係る指定商品はすべて「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する商品であると理解できるとしても、本願商標が、別紙にみられるように品質及び原材料を普通に用いられる方法で表示した標章」のみからなる記述的商標であることは明らかであるから、本願商標は商標法第三条第一項第三号に該当する。このように指定商品の表示をいかように読んでも、本願商標は商標登録を受けることができない。

との判断を示しているが、

原判決は物品と商標法上の商品との法律観念を混同し、ないし、区別していることなく、また、本願商標が如何なる商品を構成するかの品質に係る法律観念、ないし、実践に付いて空想に過ぎない判断をなしているものである。例示すれば新聞紙のちぎった切断片は文化観念上物品であるには違いないがこれを商品というには通例妥当性を失し、右事実真理上商品を構成することなし。戦艦、戦闘機の如き、また同理に属する。凡そ、商標法令上商品というためには経済財貨たるを必要とし、需要と業務としての供給とが確定的に成立可能であり、商品市場に於て流通性があることが要求される。それでなければ自他商品を区別する商標法令上の用を充足するものではない。それなるが故に商標法第三条第一項第三号に於ても特に「商品」として規定し、「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」としているものであって、学名、物品名としての品質の如きは登録要件欠如の対象としていない。然るに本願商標「スピルリナゲイトラーはかかる名称の商品名がないことは勿論、物品名もなく、また、品質も「スピルリナ藻類」は肉眼を以てしては濃緑色をなした水液たるに外ならず、これが自然に繁殖するところには決して一種類の「スピルリナ藻類」に止まらず、雑然として多種類の「スピルリナ藻類」が入り交じるものである。これを採取するには一次的には濃緑水を採取する以外に実際上の手段はなく、従って上告人のいう右精製粉末には必然的に「コーヒー」でいうならば「ブレンド」が形成される結果に帰する故に、原判決が判示する如く特定の品質なるものは実践的に求め得ず、よって本願商標を品質表示の商標と断ずるが如きは商品製法上の論理を度外視しているものであり(上告人は原審に於て縷縷これを論述している。)、かかる原判決のとんちんかんな論旨は民事訴訟法第三九五条六号の規定に於ける原判決の理由に齟語ありというに十分である。

(2)更に原判決は

そこで、右の<2>又は<3>の読み方をすれば、「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有しない商品」も本願商標の指定商品に含まれることになるから、かかる商品に本願商標を付して使用した場合には、一般需要者において、あたかもその商品に「スピルリナ」の種類に属する加工成分が含有きれているかのように誤認するものと認められるから、本願商標は商標法第四条第一項第一六号に該当する。また、原告の主張するように、<1>の読み方をすれば、本願商標について誤認を生じる旨認定判断している説示の内容からみて、本願商標の構成を品質表示として把握していることは明らかであり、理由中には商標法第三条第一項第三号の規定がことさら掲記されていないけれども、本願商標を「スピルリナゲイトラーの精製粉末を含有する加工食料品」に使用されるときには、右の規定に該当する旨の判断を実質的にしているものと解される。そうであれば指定商品の範囲についての認定の誤りをいう原告の主張は、これをもって本件審決を取り消すべき事由とみることができないことも明白である。

なお、前記認定のごとくすでに我が国においてもスピルリナの粉末を含有した保健食品が製造販売されているのであって、また、それらの商品がいまだ一般需要者間に普及していないとしても、商標登録出願に係る商標が商標法第四条第一項第一六号にいう「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当するというためには、その商標によってあらわされるような品質の商品が現実に製造、販売されていることを必要とするものではなく、一般需要者が、その商標を付して商品に接したとするならば、その商品の品質効能等の特性を誤認するおそれがあれば足るものというべきであり、この理は同法三条一項三号の適用の関係においても同様である。

よって、取消事由1及び4も理由がない。

との判断を示しているが、

右原判決の判断に於て右<2>又は<3>の判断は、論理が成立せず(理由は上告人が<1>に付いて論述した通り。)、かつ、本願商標は商標法第四条第一項第十六号に該当するとの判断は本願商標は物品名にも、学名にも、商品名にも全く存在せず、また、品質表示の内容にはないこというまでもないから原判決判断の論旨(商標法第三条第一項三号の適用に付いても含む。)に齟語があることは勿論、判決に影響を及ぼすこと明かな違法がある(理由は後述の通り。)

更に、右商標法第四条第一項第十六号の規定は現実に対象が存在する複数の商品間に於てのみその適用が成立する規定であって(例示すれば、蒸し羊かんを練り羊かんとするが如し。)商品が存在しない場合、その適用が成立しない規定である。如何とならば商品が存在することは精神現象論上歴史的、実践的に存在するに至るのであって、換言すれば、右事実真理として存在するに至るものであって、その発現する事実は実際に発現して始めて確認し得るところであって、単に発現することを想定することは空想に堕するからである。換言すれば、想定商品、空想商品と比較することは比較自体無内容に失しているとともに、歴史的、実践的事実に対して空想とか、想定とか仮定とかが全く許容されないことは文化観念上世界の精神現象論学者が認容するところであり、若し、右空想等が認容されるとすれば、予言も、迷信も認容しなければならない背理的論理が成立するに至るからである。然るに原判決は単純に形式論理のみに準拠し理化学的論理、初等数学的論法(たかが、初等数学的論法。)に於てのみ判断することによってそこに商標法上の違法と論理の齟齬とに陥落するに至るものであって、その違法は民事訴訟法第三九四条に該当し、その齟語は同法第三九五条第六号に該当すると断ずるに十分である。

以上

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