大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和31年(あ)635号 判決 1958年3月12日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人原良男の上告趣意第一点について。

所論は判例違反を主張するけれども、所論引用の各判例は、いずれも共謀者間における投票買収資金の授受に関するものであり、本件においては、原審は、所論のような共謀関係を認定していないのであるから、右各判例は本件に適切でない。

同第二点は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由とならない。

弁護人青柳盛雄、同竹沢哲夫、同高嶋謙一の上告趣意第一点について。

所論は、第一審判決の犯罪事実の判示方法に関連して、憲法三九条違反を主張するものであるが、右は原審において主張判断を経ていないものであって、上告適法の理由とならない。

同第二点について。

被告人等は島根食糧事務所浜田支部の職員として、国家公務員法に規定する一般職に属する公務員であることは、原判示によってあきらかである。およそ、公務員はすべて全体の奉仕者であって、一部の奉仕者でないことは、憲法一五条の規定するところであり、また行政の運営は政治にかかわりなく、法規の下において民主的且つ能率的に行われるべきものであるところ、国家公務員法の適用を受ける一般職に属する公務員は、国の行政の運営を担任することを職務とする公務員であるから、その職務の遂行にあたっては厳に政治的に中正の立場を堅持し、いやしくも一部の階級若しくは一派の政党又は政治団体に偏することを許されないものであって、かくしてはじめて、一般職に属する公務員が憲法一五条にいう全体の奉仕者である所以も全うせられ、また政治にかかわりなく法規の下において民主的且つ能率的に運営せらるべき行政の継続性と安定性も確保されうるものといわなければならない。これが即ち、国家公務員法一〇二条が一般職に属する公務員について、とくに一党一派に偏するおそれのある政治活動を制限することとした理由であって、この点において、一般国民と差別して処遇されるからといって、もとより合理的根拠にもとづくものであり、公共の福祉の要請に適合するものであって、これをもって所論のように憲法一四条に違反するとすべきではないのである。

なお論旨は、特別職に属する公務員のうちに、政治的行為の制限を受けていない者(例えば内閣総理大臣、国務大臣等)のあることを挙げ、一般職公務員との間に差別あることを云為するが、これら特別職に属する公務員は、その担任する職務の性質上、その政治活動がその職務となんら矛盾するものでないばかりでなく、かえって政治的に活動することによって公共の利益を実現することをも、その職分とする公務員であって、前示のごとく、政治と明確に区別された行政の運営を担当し、この故につよくその政治的中立性を要求される一般職に属する公務員とは著しくその性質を異にするものであるから、右のごとき差別は、また、合理的根拠にもとづくものであり、公共の福祉の要請に適合するものであって、所論憲法一四条違反の主張は採用することはできない。

同第三点について。

所論は単なる法令違反の主張であって、適法な上告の理由とならない。

同第四点について。

被告人等は、第一、二審において、上司の命令的依頼によってやむなく、本件犯罪を犯すに至ったことを情状として述べているにすぎず、所論のような本件犯行は期待可能性を欠く旨の主張がなされた形迹はみられないのであるから、所論判例違反の主張は、その前提を欠くものである。

同第五点について。

所論は採証の法則違背、事実誤認、量刑不当の主張に帰するのであって、適法な上告の理由とならない。

よって刑訴四〇八条に従い、全裁判官一致の意見をもって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 入江俊郎 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例