大判例

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最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)1696号 判決 1949年6月29日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人矢野茂郎の上告趣意について。

しかしその判決をした當該裁判所の公判廷の自白が憲法第三八條第三項にいわゆる「本人の自白」に該らないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)。ところで新刑訴第三一九條第二項は「被告人は公判廷における自白であると否とを問わずその自白が自己に不利益な唯一の證據である場合には有罪とされない」と新に規定したのであるから新刑訴の適用される事件において公判廷の自白だけで有罪とした判決があればそれは新刑訴の規定に違反するものとして當然破毀さるべきである。しかし、本件は新刑訴施行前に起訴された事件であるから刑訴施行法第二條によって舊刑訴及び刑訴應急措置法が適用され、新刑訴は適用されないのである。而して當裁判所の解釋するところによれば憲法第三八條第三項は判決裁判所の公判廷外の自白について規定したものであり、前記新刑訴の規定はさらに憲法の趣旨を一歩前進せしめて前記公判廷外の自白の外に公判廷の自白についても補強證據を要する旨を規定したものであってその間何等抵觸するところはない。それ故當裁判所の見解を是認しても前記新刑訴法の規定を憲法に違反するものと言うことはできない。

然らば當裁判所の前掲判例は新刑訴施行の今日でも毫もこれを變更する必要を見ないのであって、論旨は理由がない。

よって舊刑訴第四四六條により主文の通り判決する。

この判決は裁判官、真野毅、同齋藤悠輔の補足意見、裁判官塚崎直義、同沢田竹治郎、同井上登、同栗山茂、同小谷勝重、同穂積重遠の各少數意見がある外裁判官全員一致した意見によるものである。齋藤裁判官の補足意見及び塚崎、沢田、井上、栗山、小谷、各裁判官の少數意見は前掲大法廷判決に、真野裁判官の補足意見及び穂積裁判官の少數意見は昭和二三年(れ)第一五四四號、昭和二四年四月二〇日大法廷判決に示された通りである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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