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新潟地方裁判所 昭和44年(ワ)518号 判決 1970年7月06日

原告 小池太市

被告 佐藤真紀子

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、「被告は、原告のために、別紙物件目録(一)の土地について建物所有を目的とする地上権設定登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求の原因として、次のとおり陳述し、被告の抗弁事実を否認し(た。)立証≪省略≫

一、原告は訴外昭和産業株式会社と昭和三四年一一月七日五〇万円を弁済期同三五年一月一〇日利息の定めなく遅延損害金年三割六分で貸し付ける旨の契約を結び、右貸金債権の担保として、訴外会社は、その所有にかかる別紙物件目録(一)の土地(以下「本件土地」という。)およびその地上にある同(二)の建物(以下「本件建物」という。)につき抵当権を設定し、同三四年一一月九日これが登記を経由した。

二、原告は、本件土地、建物についての不動産競売事件(新潟地方裁判所昭和三九年(ヌ)第四二号事件)において、同四〇年三月九日本件建物を競落して同四二年一一月一六日これが所有権取得登記を経由した。

三、被告は前記競売事件において、同四四年五月一四日本件土地を競落して同年八月二三日これが所有権取得登記を経由した。

四、以上からすると、原告は本件土地につき本件建物のため法定地上権を有しているというべきであるから本件土地の競落人である被告に対してこれが設定登記手続を請求する。

被告は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したとみなすべき答弁書の記載によると、主文同旨の判決を求め、答弁として、原告主張の請求原因事実のうち、本件土地を被告が所有していることは認めるが、その余は不知と述べ、抗弁として、本件建物の競落後原告と訴外会社間で示談が成立したから、原告は同建物の所有者でないと主張している。

理由

原告主張の請求原因事実は、≪証拠省略≫からすべて認定でき、他にこれに反する証拠はない。

右事実によると、原告は本件建物を競落したことにより本件土地について法定地上権を取得し、右建物に自己名義の登記を経由しているから、右地上権をもって第三者にも対抗できるが、第三者が地上権成立の当事者からこれが設定登記手続をなすべき義務を約定により承継しない限り、第三者に対して右登記手続を求めることはできないと解する。

被告は本件地上権成立の当事者ではなく、これが当事者である訴外昭和産業株式会社から右建物の競落後本件土地を競落した第三者にすぎないから、前記承継の約定について主張・立証のない本件では、被告が原告主張の登記請求につきこれが義務者であるとはとうてい解せられない。

以上からして、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないから棄却すべきであり民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 宮崎啓一)

<以下省略>

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