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徳島地方裁判所 昭和56年(行ウ)2号 判決 1984年5月30日

原告 富銅勉

被告 徳島税務署長

訴訟代理人 西口元 曽根田一雄 小沢康夫 染田 新 金垣健一郎 外三各

主文

一  原告の昭和五〇年分所得税について

被告が昭和五三年九月六日付でなした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)につき、課税総所得金額九五万五〇〇〇円を超える部分を取り消す。

二  原告の昭和五一年分所得税について

原告の請求を棄却する。

三  原告の昭和五二年分所得税について

1  被告が昭和五三年九月六日付でなした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)につき、課税総所得金額三八万二〇〇〇円を超える部分の取消しを求める本件訴えのうち、同四一万九〇〇〇円を超えない部分の取消しを求める訴えを却下する。

2  右更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分につき、課税総所得金額三八万二〇〇〇円を超える部分の取消しを求める原告の請求のうち、課税総所得金額四一万九〇〇〇円を超える部分の取消しを求める請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告の昭和五〇年分所得税について

主文第一項と同旨。

2  原告の昭和五一年分及び昭和五二年分所得税について

被告が原告に対して昭和五三年九月六日付でなした昭和五一年分及び昭和五二年分所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)につき、昭和五一年分は課税総所得金額一一三万五〇〇〇円を超える部分及び昭和五二年分は同三八万二〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文第三項の1と同旨。

2  本案の答弁

(一) 原告の請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、ガソリンスタンドを経営する者であるが、昭和五〇、五一及び五二年分の各所得税につき被告に対し確定申告をしたところ、被告は右各年分につき更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした。そこで、原告は、右各処分を不服として被告に対し異議申立てをし、これに対する決定がなされたが、なお不服であつたので、更に国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は右各処分の一部を取り消す旨の裁決をした(確定申告から審査請求に対する裁決までの経過及びその各内容は別表一((昭和五〇年分))、二((昭和五一年分))及び三((昭和五二年分))の各(一)ないし(四)の項目のとおりである。)。

2  しかしながら、右各更正処分(ただし、審査請求に対する裁決により一部取消し後のもの、以下「本件各更正処分」という。)には、左記の違法があり、したがつて本件各更正処分を前提としてされた右各過少申告加算税賦課決定処分(ただし、審査請求に対する裁決により一部取消し後のもの、以下「本件各賦課決定処分」という。)も違法である。

(一) 昭和五〇年分

原告の扶養親族である訴外富銅リツ(明治一六年一月二五日生)の老人扶養控除金三二万円を当該年度の原告の総所得から控除していない。

(二) 昭和五一年分

原告の扶養親族である訴外富銅修二(明治三九年一〇月三日生)の老人扶養控除金三二万円を当該年度の原告の総所得から控除していない。

(三) 昭和五二年分

当該年度の原告の事業所得を算定するにつき、原告のガソリンスタンドの経営に要したマツト洗機のリース料金一六万八〇〇〇円を一般経費として控除せず、右事業所得を過大に認定した。訴外富銅修二の老人扶養控除金三五万円を当該年度の原告の総所得から控除していない。

よつて、別表一、二、三の各(五)の項目に従い、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分につき、昭和五〇年分は課税総所得金額九五万五〇〇〇円を超える部分、昭和五一年分は同一一三万五〇〇〇円を超える部分及び昭和五二年分は同三八万二〇〇〇円を超える部分の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

増額更正処分は、課税標準またはこれに基づく税額を全体として確認する処分であつて、更正に係る税額等の脱漏部分を追加確認する処分ではないが、更正に伴う法律効果の点からは、申告による税額等の確定の効力を全面的に失わせて新規に納税義務の範囲を確定する効力を生ぜしめるものではなく、増差額に関する部分についてのみ右のような効力が生ずるものである。したがつて、本件訴えのうち、昭和五二年分につき、申告により既に確定した課税総所得金額四一万九〇〇〇円及びこれに対応する税額部分の取消しを求める部分については、その取消しを求める法律上の利益がないというべきである。

三  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認めるが、同2の主張は争う。

四  被告の主張

1  訴外富銅修二の老人扶養控除について

(一) 訴外富銅修二は、徳島市飯谷町地田一二四番地一に居住して農業を営んでおり、その耕作地の種類、所在地、面積は別表四のとおりであるが、同人は、当該農業所得について所得税又は住民税の申告をしていない。

そこで、同人の農業所得について徳島地区農業所得標準協議会及び徳島税務署長が作成した農業所得標準を基にして推計すると、別表五のとおり昭和五一年分は一一九万三九八九円、昭和五二年分は一二八万七七四〇円となる。したがつて、同人は、所得税法二条一項三四号に規定する扶養親族に該当せず、同法八四条の扶養控除の適用はない。

(二) ところで、右農業所得標準は、我が国の農業所得者に記帳の慣行がないのが一般的であり、農業所得の収支を明確にする資料も整備されていないという実情にかんがみ、農業所得に対する課税の公平を図るために、各地区の地力等に従い一〇アール当たりの標準的な所得金額として算定されたものである。

すなわち、まず、水稲所得標準についていえば、徳島地区農業所得標準協議会(課税庁側すなわち徳島税務署管内の市町村、徳島県及び徳島税務署で構成)と徳島県農業協同組合中央会及び徳島県農業会議(納税者側)が協議の上、管内標準地域の中庸な農業所得者について、水稲の収穫量調査及び収支にわたる実態調査を行つた結果を基にし、農林統計資料等を参考にして作成したものであり、次に、温州みかん所得標準についていえば、徳島税務署が収穫量、公租公課その他の必要経費につき実態調査等を行つて所得金額を算定した上徳島税務署管内の関係農業協同組合等と協議して作成したものであつて、共に所得推計方法として合理的なものである。

2  マツト洗機のリース料について

(一) 原告は、昭和五〇年ないし昭和五二年分の所得税について、それぞれ確定申告をした。しかし、右の申告所得金額は同業者に比して低額に過ぎていると認められた。そこで、被告担当官は前後一三回にわたり原告宅へ調査に赴いた。そして、調査に臨店した際、担当官は原告に帳簿書類等の提示を求めたところ、原告は仕入先の一つである徳島石油株式会社との取引を記録した得意先元帳のコピーを示したものの、「書類は十分整理されていない。」「売上げについては、内容を全部自分が知つているのだからそれだけで十分ではないか。」等述べて帳簿書類等の提示をせず、調査に対して協力しようとしなかつた。

したがつて、被告担当官はやむを得ず原告の取引先を調査し、それにより判明した仕入金額を基礎として同業者の差益率、一般経費率を適用して、原告の所得金額を推計することとした。そして、次の<1>ないし<6>の条件に適合する者の中から別表六のとおり、五名の同業者を選定した。

<1> 原告と同じ業種のガソリンスタンドを営んでいる者

<2> 青色申告者で記帳に基づく収支計算が行われている者

<3> 仕入金額は、四〇〇〇万円から九〇〇〇万円以内の者

<4> 従業員が二人ないし三人である者

<5> 同業者も農村地帯で営業している者

<6> 年の中途で開業、廃業しておらず、年間継続して営業している者

その結果として、右同業者五名の一般経費率の平均値は四・七パーセントであり、右平均値を用いて算定した原告の昭和五二年分の一般経費の額、更には事業所得の額等は、別表七のとおりである。

(二) ところで、推計課税は、所得金額の実額が把握できない場合において、推計により得た蓋然的近似値を一応真実の所得金額と認定して課税する制度であるから、本件のように同業者率(差益率、一般経費率等)によつて推計課税を行う場合の類似同業者は、その事業規模が当該納税者のそれと細部の点に至るまで完全に一致する必要はなく、営業場所、設備の状況、従業員数、販売品目、販売価格、仕入金額等(以下「推計の要件」という。)主要な点において、個別的類似性が認められれば十分である。一般経費についていえば、経費項目ごとに類似同業者間でも金額に差異のあるのが通常であるが、一般経費率は、これら類似同業者の平均値として算定されるのであるから、個別的要素が捨象されているのは論をまたない。したがつて、被告が採用した一般経費率四・七パーセントという数値は、類似同業者五名の平均値として算定されたものであるから、必然的に経費項目ごとの金額の差異といつた個別的要素は捨象されているのである。

(三) これを本件マツト洗機のリース料についてみるに、なるほど、リース料が事業所得に係る総収入金額を得るため直接要したものであれば、事業所得の計算上必要経費として認められるべきものである。すなわち、事業所得の計算が実額によつてなされる場合には、リース料も実額で経費に算入されるのである。しかし、本件の場合は同業者の一般経費率によつて所得金額を推計しているのであり、一般経費率の算出に当たつては、いうまでもなく、必要経費のうち、各業者の個別性が強く、総収入金額に比例しない、いわゆる特別経費(例、土地建物賃借料、給料賃金、借入金利子、建物減価償却費、貸倒損失等)は当然除外し、各業者間に普遍性を有し比較的総収入金額に比例する、いわゆる一般経費を算術平均している。

ところで、右同業者は、ガソリンスタンドを経営してゆくために通常必要な種々の機械器具類を備え付けており、その多くはマツト洗機も備え付けているのが通例である。そして、備付けの形態も、購入、賃借、その他種々のものがあるが、いずれとするも、購入したものについては減価償却費、また、賃借したものについては賃借料、というように税法の規定により相当な金額が一般経費として計上されている。それゆえ、本件において類似五業者の一般経費率の平均によつて推計した一般経費の額はマツト洗機のリース料も含まれた内容のものということができる。したがつて、一般経費のうちマツト洗機のリース料のみを取り上げて別途に控除すべきであるとの原告の主張は全く理由がない。

3  訴外富銅リツの老人扶養控除について

所得税法は、二人以上の居住者の扶養親族に該当する者がある場合の扶養控除の適用については、これらいずれか一人の居住者の扶養親族にのみ該当するものと規定し(昭和五二年改正前同法八四条三項)、具体的には居住者の選択によつて同人の申告書等に記載されたところにより、扶養親族の所属が決まる(昭和五二年改正前同法施行令二一八条一項)。

そこで、本件について検討すると、訴外富銅リツは、原告及び訴外富銅修二と生計を一にしていることは明らかであるところ、修二は農業を営んでおり、同人の昭和五〇年分の農業所得を前記農業所得標準を基に推計すると、別表八のとおり一〇一万五四九三円の所得があり、また、原告はガソリンスタンドを経営しており、同人の昭和五〇年分の事業所得は別表一の審査裁決額のとおり二一四万五三三六円である。そうすると、リツは、修二及び原告双方の扶養親族に該当することになり、右両名どちらの扶養親族になるかは右両名の選択にゆだねられているところ、原告は、昭和五〇年分の所得税の確定申告に当たつて、リツを扶養親族として確定申告書に記載していないのであるから、リツを原告の扶養親族に選択しなかつたものといわざるをえないのであつて、リツは修二の扶養親族であるとみなされることとなる。しかも、原告は、その後においてもリツに係る扶養親族の所属の変更手続を行つていない(所得税基本通達八三・八四―二参照)。

以上のことから、リツの扶養控除を適用すべきであるとする原告の主張は理由がないというべきである。

五  被告の主張1に対する原告の反論

訴外富銅修二は徳島市飯谷町地田一二四番地一に居住して農業を営んでいるが、昭和四九年に同人の妻スミエが死亡して耕作地の栽培管理労力が不足し、収量及び品質等が思わしくないこと、耕作地の大半が右町外にあるため経費がかさむこと、訴外富銅修二は老齢であること、条件の良い耕作地のみを耕作し、条件の悪い耕作地は休耕していること(休耕田畑の所在地、面積は別表九のとおり)、等により、別表一〇のとおり、昭和五一、五二年分における同人の農業所得は皆無である。

六  被告の再反論

仮に訴外富銅修二の耕作していた田畑等の面積が、原告主張の別表一〇のとおりであるとしても、前記農業所得標準に従つて推計すると、その農業所得金額は、別表一一のとおり、昭和五一年分は八五万七三三〇円、昭和五二年分は九一万七〇六五円となる。したがつて、修二は、所得税法二条一項三四号に規定する扶養親族に該当せず、同法八四条の扶養控除の適用はない。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、まず、被告の本案前の主張について検討する。

1  原告は、昭和五二年分所得税に係る更正処分につき、課税総所得金額三八万二〇〇〇円を超え四一万九〇〇〇円を超えない部分の取消しを求めているが、一方原告は同年分の所得税につき課税総所得金額が四一万九〇〇〇円であるとして確定申告をしている(右事実は当事者間に争いがない。)。ところで、納税義務者が確定申告書を提出すれば、納税義務はこれによつて確定する(国税通則法一六条)のであつて、以後確定申告書の記載内容の過誤の是正については、その過誤が客観的に明白かつ重大な事由に基づき、更正の請求以外にその是正を許さないならば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合を除いては、所得税法所定の方法のみによるべく、したがつて、過大申告の是正については、更正の請求(同法二三条)の手続によつてのみこれを求めうるにすぎない。そうすると、右特段の事情につき何ら主張立証のない本件においては、前記の部分の取消しを訴訟によつて求めることは許されないものというべく、その部分の取消しを求める訴えは、不適法として却下を免れない。

2  また、原告は、右課税総所得金額三八万二〇〇〇円を超え四一万九〇〇〇円を超えない部分についてなされた更正処分に対応して昭和五二年分所得税に係る過少申告加算税賦課決定処分がなされているものとして、その部分の取消しを求めているが、過少申告加算税は申告に係る税額を上回つたいわゆる増差税額について課せられるものであるから、前記申告額を超えない部分についてなされた更正処分に対応する過少申告加算税賦課決定処分なるものは存在しえないものである。したがつて、右部分の取消しを求める訴えは、不適法として却下を免れない。

三  訴外富銅修二の扶養控除について

1  訴外富銅修二が昭和五一、五二年当時徳島県下で農業を営んでいたことについては当事者間に争いがないが、現に耕作をしていた土地が被告主張の別表四のとおりであつたことについては、これを認めるに足りる証拠がない。成立に争いのない乙第二号証の二、第三号証の二、原告本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第一号証の一ないし一三、弁論の全趣旨によれば、訴外富銅修二が昭和五一、五二年当時耕作していた土地のうち、田は勝浦郡勝浦町大字沼江字三ツ石二三番と同郡同町大字沼江字宮前二五番で、実耕作面積は別表一〇のとおり、田(米)二三・九八アール、畑(みかん)一〇三・五〇アールであつたことが認められる。

2  原告は、訴外富銅修二の昭和五一、五二年分の農業所得が皆無であつた旨主張し、原告本人はこれに符合する供述をしているけれども、収支の実額を明確にしえないものであるところから信用できず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。そして、訴外富銅修二の右両年度における農業所得の認定については、本件全証拠によるも実額計算によることをえないから、推計による算定の必要性が認められる。

3  成立に争いのない乙第四、五、七号証及び証人中筋定男の証言によれば、水稲に関する農業所得標準は、徳島地区農業所得標準協議会、徳島県農業協同組合中央会、徳島県農業会議等との協議の下に、標準地の中庸な農業所得者について、坪刈調査・在庫調査等による水稲収穫量の実態調査、政府の売渡価格・買入価格・自主流通米の価格等から算定した単価による収入額の算出、経費の実態調査を行い、これらを基に農林統計資料等を参考にして作成されたものであること、成立に争いのない乙第六号証、証人中筋定男の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第八号証の一、二によれば、温州みかんに関する農業所得標準は、徳島税務署が管内の農業団体等との協議の下に、小松島あるいは勝浦町で選定した数戸のみかん栽培農家について、検見調査・在庫調査等によるみかん収穫量の実態調査、徳島市中央市場・徳島県経済連等の調査に基づき算定した単価による収入額の算出、経費の実態調査を行い、これらを基に農林統計資料等を参考に作成したものであることがそれぞれ認められる。この事実に照らせば、水稲及びみかんについての農業所得を推計する資料として、右各農業所得標準はいずれも合理性があるものということができる。

4  よつて、右農業所得標準のうち昭和五一、五二年度分を前記1で認定した耕作地に適用して訴外富銅修二の農業所得を推計すると、別表一一のとおり昭和五一年分は八五万七三三〇円、昭和五二年分は九一万七〇六五円となる。したがつて、同人は、右両年度について、所得税法二条一項三四号に規定する扶養親族には該当せず、同法八四条の扶養控除の適用はない。

四  マツト洗機のリース料について

1  原告が昭和五二年当時ガソリンスタンドを経営していたことについては当事者間に争いがない。成立に争いのない乙第九号証及び証人中筋定男の証言によれば、本件各更正処分に係る調査に際し、原告は被告の調査係官に対し仕入先の一つである徳島石油株式会社の得意先元帳の写し以外帳簿書類等を提示せず、被告の調査に協力しなかつたことが認められる。したがつて、本件各更正処分において被告が原告の所得金額を把握するにつき推計の必要性があつたというべきである。

2  前記乙第九号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一〇ないし二〇号証及び証人中筋定男の証言によれば、原告の昭和五二年度の売上原価は五二二六万二二三四円であり、原告は、その経営するガソリンスタンドの従業員として、妻・訴外富銅まり子のほか繁忙時に臨時の雇いを一名使用していたこと、被告は、同業者比率による所得の推計に当たり、徳島税務署管内でガソリンスタンドを経営する者の中から、<1>青色申告によつている者、<2>ガソリンの仕入価格が四〇〇〇万円から九〇〇〇万円までの者、<3>従業員が二人ないし三人程度の者、<4>原告同様農村地帯で営業している者、<5>年間継続して営業している者にいずれも該当する同業者五名を選定したこと、右同業者の昭和五二年度における売上金額、売上原価、一般経費、一般経費率は別表六のとおりであること、がそれぞれ認められる。右選定基準及び同業者の一般経費率が三・一一パーセントないし五・九六パーセントの比較的近似した数値の範囲内に分布していることに照らせば、原告の営むガソリンスタンドの昭和五二年度における一般経費を、右各同業者の一般経費率の平均四・七パーセントで推計することには合理性があるといえる。

3  そして、原告本人尋問の結果によると、原告主張のとおりマツト洗機のリース料一六万八〇〇〇円の支出が認められるけれども、それは一般経費として算定されるべきもののごく一部に関するものにすぎず、それと相まつて一般経費の実額計算を可能とするような資料は何ら提出されてないのであるから、右マツト洗機のリース料一六万八〇〇〇円を考慮することなく、前記同業者五名の一般経費率の平均四・七パーセントに基づいて原告の一般経費を算定したことに違法はないものというべきである。

五  訴外富銅リツの扶養控除について

1  訴外富銅修二が昭和五〇年当時徳島県下で農業を営んでいたことは当事者間に争いがない。前記甲第一号証の一ないし一三、乙第二号証の二、第三号証の二、第九号証、成立に争いのない乙第一号証の二、三、証人中筋定男の証言、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、昭和五〇年当時、訴外富銅リツ(明治一六年一月二五日生)には所得がなく、原告及び訴外富銅修二と生計を一にしていたこと、当時訴外富銅修二が耕作していた土地は前記三1に認定した分と同様であること、同人は同年度における農業所得について所得税の申告をしていないことがそれぞれ認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。そこで、前記三2、3の判断に従い、昭和五〇年分水稲及びみかんの農業所得標準(前記乙第七号証、乙第八号証の一、二)に基づいて、同年度における訴外富銅修二の農業所得を推計すると、別表一二のとおり七二万一一六六円となる。また、原告の昭和五〇年分の事業所得が別表一の審査裁決額のとおり二一四万五三三六円であることについては当事者間に争いがない。

そうすると、訴外富銅リツは、原告及び訴外富銅修二の双方の老人扶養親族に該当するものというべきである。

2  ところで、二以上の居住者の扶養親族に該当する者がある場合に、その者をいずれの居住者の扶養親族に所属するものとするかは、第一次的にはこれらの居住者の提出するその年分の確定申告書等に記載されたところにより定められる(所得税法八四条三項、同法施行令二一八条一項、以上いずれも昭和五二年改正前のもの)のであるが、原告が昭和五〇年分の所得税の確定申告に当たり、訴外富銅リツを扶養親族として申告書に記載しなかつたことは原告において明らかに争わないから自白したものとみなされ、また、訴外富銅修二が同年分の所得税につき確定申告をしていないことは前認定のとおりである。

しかして、被告は、右のような場合、原告は、その確定申告書に訴外富銅リツを自己の扶養親族として記載しなかつたのであるから、同女を原告の扶養親族に所属させる旨の選択をしなかつたものというべく、その結果、同女は当然訴外富銅修二の扶養親族とみなされると主張する。

しかしながら、所得税法上、扶養控除については、確定申告書等への記載を控除適用要件としていないのであるから、前記同法施行令二一八条一項本文の趣旨は、二以上の居住者の扶養親族に該当する者があるときには、その所属は原則として居住者の自由な選択によらしめ、申告書等に一方の居住者の扶養親族に所属させる旨の記載があればそれによることとしたにすぎず、それらに記載がなかつたときにはこれを消極的選択があつたものとみなす趣旨であると解することはできない。

そうして、同施行令二一八条二項によれば、二以上の居住者が同一人をそれぞれ自己の扶養親族として申告書等に記載したとき、その他同条一項の規定によりいずれの居住者の扶養親族とするかを定められないときは、まず、その年において既に一の居住者が申告書等の記載によりその扶養親族としている場合には、当該親族は、当該居住者の扶養親族とし(同項一号)、右によつてもいずれの居住者の扶養親族とするかが定められない扶養親族は、居住者のうち総所得金額等の合計額又は当該親族がいずれの居住者の扶養親族とするかを判定すべき時における当該合計額の見積額が最も大きい居住者の扶養親族とする(同項二号)旨規定しているのであつて、右規定の趣旨に照らすと、右にいう「その他………いずれの居住者の扶養親族とするかを定められないとき」とは、二以上の居住者のすべてが無申告又は申告書等に扶養親族として記載しなかつた場合はもとより、一の居住者は無申告であり、他の居住者は申告書に記載しなかつた場合など、およそ同条一項によつていずれの居住者の扶養親族であるか定まらないすべての場合を包含するものと解するのが相当である。したがつて、この点に関する被告の主張は採用できない。

3  してみれば、本件は、原告及び訴外富銅修二の扶養親族である訴外富銅リツにつき、そのいずれの扶養親族とするか同施行令二一八条一項本文によつては定められず、また同条二項一号に該当する場合でもないから、結局、同項二号に従い、訴外富銅リツは前認定のとおり訴外富銅修二よりも当該年分の総所得金額の大きい原告の老人扶養親族に所属すべきものというべきである。そうすると、原告の昭和五〇年分の総所得から訴外富銅リツの老人扶養控除金三二万円を控除しなかつた本件更正処分はその限度で違法であり、したがつて、これに基づく本件過少申告加算税賦課決定処分も同様違法である。

六  以上の次第で、原告の本件各係争年分の所得税について被告がなした本件各更正処分及び本件各賦課決定処分のうち、昭和五〇年分所得税について課税総所得金額九五万五〇〇〇円を超える部分の取消しを求める請求については理由があるからこれを認容し、昭和五二年分所得税について同三八万二〇〇〇円を超える部分の取消しを求める訴えのうち同四一万九〇〇〇円を超えない部分の取消しを求める訴えを不適法として却下し、昭和五一年分所得税について同一一三万五〇〇〇円を超える部分、昭和五二年分所得税について同四一万九〇〇〇円を超える部分の各取消しを求める請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 上野利隆 田中観一郎 以呂免義雄)

別表一~一二<省略>

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