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徳島地方裁判所 平成11年(行ウ)3号 判決 1999年10月29日

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別紙当事者目録記載のとおり

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告小濱景に対し、金七二万六七〇〇円及びこれに対する平成九年四月一九日から支払済みに至るまで年一割五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告小濱智圖に対し、金七六万五一〇〇円及びこれに対する平成九年四月一九日から支払済みに至るまで年一割五分の割合による金員を支払え。

第二当事者の主張

一  原告らの主張

原告らの主張は別紙のとおりであるが、これを善解すると、次のような内容である。

1  原告らは、平成八年三月末日、徳島市内に所有していた不動産を売却した。なお、右不動産の取得金額は二三〇〇万円であり、原告らは、昭和四九年四月から平成八年三月末日まで、右不動産に居住していた。

2  原告らは、平成一〇年三月一三日と同月一六日の二度にわたり、阿南税務署へ赴き、租税特別措置法に基づく「居住用財産の譲渡所得の特別控除」に該当し、税金が免除される旨口頭で主張したにもかかわらず、認められなかった。

3  そこで、原告らは、阿南税務署と国税不服審判所に対し、不服を申し立てたが、ともに却下された。

4  よって、原告らは納税額(原告小濱景は七二万六七〇〇円、原告小濱智圖は七六万五一〇〇円)の還付もしくは納税額相当額の賠償を求める。

二  被告の主張

1  原告らは、平成九年三月一七日、阿南税務署長に対し、平成八年分の所得税の確定申告書を提出した。原告らは、その後、さらに更正の請求を行い、平成一〇年七月二四日、阿南税務署長は更正処分を行ったが、その際の課税標準額及び税額は、原告らの申告類の範囲内にとどまっていたので、原告らが納付すべき国税債務は、原告らの申告により確定した(ただし、更正処分後の残余部分に限る。)。そして、右更正処分により生じた過納金は同年八月二五日に還付された。

2  原告らが租税特別措置法三五条一項に規定する居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けるためには、確定申告書に同条項の適用を受けようとする旨を記載し、大蔵省令で定める書類を添付することが必要となるところ、本件においては、そのような記載はなく、また、書類の添付もない。

3  そもそも、住民票ないし戸籍の附票によると、原告らが居住用財産と主張する対象と解される徳島市南昭和町六丁目一二番地五の家屋に居住していたのは、原告小濱景は平成二年九月一二日まで、原告小濱智圖は平成二年一二月二六日までであるから、同条項に定める居住用財産には該当せず、それ故、原告らは特別控除の適用を受けることはできない。

4  よって、原告らの請求が特別控除の適用が認められた場合に還付を受けることができた金額の支払を求めるものであるか、または、阿南税務署の担当者が誤った教示をしたため、本来できたはずの更正の請求ができず、その差額を国家賠償法などに基づいて賠償を求めるものであったとしても、いずれにせよ、失当である。

第三当裁判所の判断

一  証拠(文章末尾に記載したもの)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

1  原告小濱景は、平成九年三月一七日、阿南税務署長に対し、平成八年分の所得税について、納税額を八九万三九〇〇円とする確定申告書を提出した。しかし、平成一〇年三月一六日、更正を請求する理由等について「譲渡価格に対する課税であった。後日、関係必要経費が見つかったため、更正請求した。」と記載して、阿南税務署長に対し、平成八年分所得税を七二万八九〇〇円と更正する旨の請求をした。そして、同年七月二四日、阿南税務署長は、納税額を右請求どおり七二万八九〇〇円とする更正処分を行い、後日、納税額との差額一六万五〇〇〇円が還付された。【乙一の1、二の1、三の1】

2  原告小濱智圖は、平成九年三月一七日、阿南税務署長に対し、平成八年分の所得税について、納税額を九三万二三〇〇円とする確定申告書を提出した。しかし、平成一〇年三月一六日、更正を請求する理由等について「譲渡価格に対する課税であったが、後になって必要経費が見つかったため。更正請求した。」と記載して、阿南税務署長に対し、平成八年分所得税を七六万七三〇〇円と更正する旨の請求をした。そして、同年七月二四日、阿南税務署長は、納税額を右請求どおり七六万七三〇〇円とする更正処分を行い、後日、納税額との差額一六万五〇〇〇円が還付された。【乙一の2、二の2、三の2】

二  ところで、租税特別措置法三五条一項はいわゆる居住用財産の譲渡所得の特別控除について規定し、その二項は、右特別控除の適用を受けるためには、「同項(一項)に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨及び同項の規定に該当する事情の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他大蔵省令で定める書類の添附がある場合に限り、適用する。」とし、これを受けて租税特別措置法施行規則一八条の二は、住民票の写しの添附を要すると規定しているが、原告らが提出した確定申告書には、いずれも特別控除を受けようとする旨の記載はなく、更正請求においても同様であり、また、住民票の写しの添附があったことを認めるに足りる証拠もない。さらに、戸籍の附票(乙四の1、2)をみると、原告小濱景は平成二年九月一二日に肩書住居地に移転しており、原告小濱智圖も同年一二月二六日に移転しており、いずれも右時点から三年以上を経過していることが認められるのであって、他に原告ら主張の徳島市内の不動産が同法三五条一項に定める「居住の用に供している家屋」に該当することを認めるに足りる証拠もない。そうすると、原告らは同法三五条一項に基づく特別控除の適用を受けることはできない。

三  そして、原告らが確定申告書を提出した際、もしくは更正請求を行った際、阿南税務署の担当者が原告らに対し、右特別控除についていかなる教示、説明を行ったのか、その内容は明確でないものの、そもそも、前述のように、原告らは同法三五条一項に規定する特別控除の適用を受けることはできないのであるから、原告ら主張のように、阿南税務署の担当者が原告らに特別控除の適用を受けることができない旨の説明等を行っていたとしても、国家賠償法上の違法となることはない。

第四結論

以上の次第で、原告らの請求はいずれも理由がないので、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本久 裁判官 大西嘉彦 裁判官 齊藤顕)

(別紙)

当事者目録

原告 小濱景

右同所

同 小濱智圖

被告 国

右代表者法務大臣 臼井日出男

右指定代理人 河合文江

同 薬師神和夫

同 東田幸子

同 亀崎邦雄

同 松尾雅広

同 金島彰治

同 宇野秋則

同 加藤公一

同 白石豪

同 海野眞次

同 片岡大司

同 岡部安幸

同 山本洋二

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