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広島高等裁判所松江支部 昭和24年(を)104号 判決 1950年1月30日

被告人

田村兼則

主文

原判決を破棄する。

被告人を判示第一の罪につき罰金八千円に判示第二の罪につき罰金八千円に処する。

右罰金を完納することができぬときは各二百円を一日に換算した期間労役場に留置する。

押收してある両切用刻煙草二二〇〇瓦(証第一号)両切用刻煙草一五〇〇瓦(証第二号)私製両切煙草六一四本(証第三号)無証票刻煙草三〇〇瓦(証第四号)粉煙草九三〇瓦(証第五号)煙草卷器二個(証第七号)(米子簡易裁判所昭和二十四年領第七号)はこれを沒收する。

理由

弁護人油木巖の控訴の趣意は別紙控訴趣意書記載の通りであるからまづ一点について判断するに原判決は弁護人所論の通り被告人に治安維持法違反の前科あることを認定し該前科を量刑上の一資料としておることはその記載自体に徴し明らかである。然るところ治安維持法は昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件に基づく同年勅令第五百七十五号治安維持法廃止等ノ件により廃止され更に同年勅令第七百三十号政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件により治安維持法違反ノ罪を犯した者は人の資格に関する法令の適用については將來に向てその刑の言渡を受けなかつたものと看做されることゝなりこの精神よりすれば本件の場合においてもたとえ治安維持法違反の前科があつてもこれを無視すべきでありこれを被告人に不利益なる量刑上の一資料とすることは嚴につゝしまなければならないのに拘わらずこれと反対に出でた原判決はこの点において不当であるのみならずその他弁護人指摘の二点を彼此考量するときは弁護人所論の通り原判決は刑の量定が不当であると言わねばならぬから論旨は理由がある。

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