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広島高等裁判所岡山支部 昭和61年(う)70号 判決 1990年3月07日

本店所在地

岡山県倉敷市神田三丁目一番三七号

株式会社水島土木工業

右代表者代表取締役

赤澤次郎こと

千甲童

国籍

韓国

住居

岡山県倉敷市神田三丁目一番三七号

会社役員

赤澤次郎こと

千甲童

一九二四年一二月三日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、昭和六一年四月二八日岡山地方裁判所が言渡した判決に対し、被告人両名から控訴の申立があったので、当裁判所は、検察官宇陀佑司出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

原判決を破棄する。

被告人株式会社水島土木工業を罰金二〇〇万円に、被告人千甲童を懲役六月に、それぞれ処する。

被告人千甲童に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

差戻前第一審、控訴審及び原審における訴訟費用は被告人株式会社水島土木工業と被告人千との連帯負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、主任弁護人岡崎耕三作成の控訴趣意書、控訴趣意書訂正書、控訴趣意補充書、控訴趣意補充書(二)のとおりであり、これに対する答弁は、検察官宇陀佑司作成の答弁書のとおりであるから、これらを引用する。

第一訴訟手続の法令違反等の主張について(控訴趣意書第二の一ないし三、控訴趣意補充書第一)

一  所論は、「原判決は被告人株式会社水島土木工業(以下、被告会社という。)の実際所得金額を認定するにあたり、いわゆる損益計算法のみを用い、いわゆる財産増減法を用いなかったが、所得金額を認定するには両法を併用すべきであって、特段の理由がないのに一方のみですますことは許されないから、原判決には法人税法等の解釈を誤った違法があり、ひいて判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反があるというべきである。」というにある。

しかしながら、法人の所得金額は、損益計算法によって算出しようと財産増減法によって算出しようと、その基礎となる個々の勘定科目の数額が正しい以上、理論的に一致するものであるから、そうとすれば、所得金額の認定にあたって両法を必ず併用しなければならないものではなく、いずれか一方をもって足るというべきである(なお、法人の所得金額の認定にあたり財産増減法を用いることが許されることは、最高裁第二小法廷昭和六〇年一一月二五日決定の判示するところである。)。そして、右いずれの方法によるかは、立証責任を負担する検察官がその難易等を勘案して決すべきものである。

したがって、本件において、検察官の採った損益計算法によって審理を進め、被告会社の所得金額を認定した原判決に、訴訟手続の法令違反はないというべきである。論旨は理由がない。

二  所論は、その他、審理不尽、理由不備等をいうようであるが、その趣旨は必ずしも明らかでなく、また、本件記録を検討してもその違法はない。

第二事実誤認の主張について

所論に対する判断に先立ち、まず、被告会社の事業内容、経理処理の状況等についてみるに、本件記録(但し、収税官吏の被告人千甲童(以下、被告人千という。)に対する昭和四六年一二月九日付質問てん末書を除く(同書は、被告人千が拒否したため署名押印がなく、かつ、刑事訴訟法三二二条によって取り調べられたものであって、同法三二六条によって取り調べたものではない。)。)、当審における事実取調べの結果によれば、次の事実が認められる。(なお、以下、年月日等は全て「昭和」であり、「(株)」は株式会社、「(有)」は有限会社の略記で、「第一審」とは差戻し前の第一審を、「第二審」とはその控訴審を指し、「符」は当庁昭和六二年押第三号の符号をいう。)

被告人千甲童は、戦後より倉敷市において山土運搬埋立工事業を営み、三六年ころ倉敷市福田町松江山の神三五五番等の土地についての山土採取権を、三七年七月ころ倉敷市福田町松江獅々岩二七四番の三等の土地についての山土採取権を、四〇年一一月ころ倉敷市連島町家の上二九〇七番等の土地についての山土採取権を、それぞれ購入取得するなどした。

被告人千は、四一年一二月二四日、被告人株式会社水島土木工業を設立し(設立当初は「株式会社赤沢建設」、その後「株式会社水島土木」と改め、更に起訴後「株式会社水島土木工業」と商号変更した。)、その代表取締役となり、以後、会社組織で前記山土運搬埋立工事業を営み、四三年九月ころ被告会社の経理担当者として岡本祐二郎(以下、岡本という。)を雇い入れた(なお、同人はその後四四年一〇月被告人千の二女と結婚した。)。

被告会社の工事受注先は、鹿島建設(株)(以下、鹿島建設という。)(なお、鹿島建設への発注者は日本鉱業(株)、ペトロコークス(株)、旭化成工業(株)等であった。)、(株)大本組、日産建設(株)、(株)佐々木組等であり、被告会社は、右工事を完成するため、安東組等の重機運転業者に前記山土の切取りを下請けさせ、切り取った山土等を自営のダンプ業者(自らダンプカーを持って土砂等の運搬を業とする者。以下「ダンプ業者」という。)等に運搬させ、あるいは、受注工事の全部または一部を一括して山土を持っている怱那工業、小柴建設(株)、(有)三和土木、児島興業等の他の土木工事業者に下請けさせるなどしていた(なお、右の下請工事業者が、山土等の運搬だけを被告会社から下請けすることもあった。)。

ところで、右のダンプ業者や重機運転業者がその保有するダンプカー等を修理業者に修理させ、あるいはガソリンスタンドでガソリンを給油してもらったりした場合、多くの場合はいわゆるつけであり、また、右の者らが下宿業大本照男方に下宿したり、同人方で食事をしたりした場合も多くの場合はつけであって、それらの代金は、これら修理業者、石油店、大本照男らから直接被告会社に請求されていた。また、ダンプ業者等が被告会社にいわゆる前借りを申し込んだ場合、被告会社は、その時点におけるその業者の下請代金額の範囲内でこれに応じており、そして、この場合、被告会社は、この前貸金を経理上「仮払金」として処理していた。

被告会社のダンプ業者等に対する下請代金(被告会社ではこれを「外注費」と呼んでいた。以下、外注費ともいう。)の支払いは、毎月二〇日〆の翌月二〇日払いで行なわれており、被告会社では、右支払いに際し、まず外注費額から前記仮払金を差し引き、その残額について領収書を徴し、更に右の残額から、前記修理代金、ガソリン代金、下宿代金を差し引き(なお、この差し引いた金額は、被告会社にとっては経理上預かり金となるものであった。)、その残額をダンプ業者等に手渡しており、経理上、右領収書に記載された金額を外注費に計上するとともに、前記仮払金を外注費に振り替え、預かり金は、被告会社の帳簿に計上することなく、ダンプ業者等に代わって直接修理業者や石油店等に支払っていた。ただ、被告会社は、その際、自社所有車両の修理代金やガソリン代金も一緒に支払っていたので、修理業者や石油店に対する支払いは、通常、ダンプ業者等の支払額と被告会社の支払額とを合計した一通の小切手で行われていた。なお、被告会社では、ダンプ業者、重機運転業者下請工事業者に対する支払いを「車両関係支払い」と、修理業者、石油店等に対する支払いを「一般関係支払い」と呼んで、両者を区別していた。

以上の事実が認められる。

一  土仕入代金の損金計上もれについて(控訴趣意書第二の六)

1  所論

被告人千は、被告会社を設立した四一年一二月二四日当時、 倉敷市福田町松江獅々岩二七四番の一ないし四及び同町松江鴻ノ巣二七二番の土地上に切土(以下、「王島山の切土」という。)約三三万立方メートル(以下、「m3」と略記する。)を所有し(一m3あたり一八〇円)、また、 倉敷市連島町家の上二九〇七番等一九筆の土地についての山土採取権(以下、この山土を「矢柄山の山土」という。)を有し(一m3あたり六三円)、 右王島山の切土が置いてあった場所の南西部の土地についての山土採取権(以下、この山土を「王島山の山土」という。)を有していた。

ところで、被告会社は、その総勘定元帳(符一、二。以下、単に元帳という。)に記帳している土の仕入れ(この仕入れは、右の王島山の山土の仕入れである。)四四年九月期(以下44/9と略記する。)合計三八七〇万円、四五年九月期(以下、45/9と略記する。)合計一六五七万八二〇〇円のほかに、

(1) 44/9において

(イ) 王島山の切土合計一七万八九五七m3(代金合計三二二一万二二六〇円)を被告人千から仕入れて、これを左記工事に使用し、

番号 工事名 使用切土量

1 日鉱LPG球型タンク基礎工事 八二七〇m3

2  関東電化団地造成工事 二〇三〇m3

日鉱盛土工事 三一一〇m3

3  ペトロ煙突基礎工事 一五四八〇m3

4  ペトロ排水舗装工事 三六六五〇m3

5  サルファータンク埋立工事 八四〇〇m3

6  日鉱三万屯No.一一六タンク盛土工事 七八九五m3

7  ペトロ発電部廻り盛土工事 一二〇六m3

ペトロ事務所盛土工事 二〇四〇m3

ペトロトラクチャー工事 九三六m3

ペトロキルソン廻り盛土工事 二〇四〇m3

8  B′地区盛土工事 一三一一八m3

9  化成水島真砂土搬入工事 九四七〇m3

10  ペトロ二期整地造成工事 四二五二〇m3

11  日鉱W地区埋立工事 二五三九二m3

12  旭化成2MAB倉庫工事 四〇〇m3

(ロ) 矢柄山の山土合計六万八四〇〇m3(代金合計四三〇万九二〇〇円)を被告人千から仕入れて、これを左記工事に使用し、

番号 工事名 使用山土量

13  新西阿知団地造成工事 四八〇〇m3

14  連島地区県工業開発用地造成工事 六三六〇〇m3

(2) 45/9において

(イ) 王島山の切土合計八万一六〇〇m3(代金合計一四六八万八〇〇〇円)を被告人千から仕入れて、これを左記工事に使用し、

番号 工事名 使用切土量

15  ペトロ場内工事 一五〇〇〇m3

16  旭化成エチレン建設工事 二〇〇〇〇m3

17  川鉄中型条網工事 二二〇〇〇m3

18  オキストン盛土整地工事 八三五〇m3

19  四AN建設 海岸道路改良工事 一六二五〇m3

(ロ) 矢柄山の山土合計五万八二〇〇m3(代金合計三六六万六六〇〇円)を被告人千から仕入れて、これを左記工事に使用した。

番号 工事名 使用山土量

20  都市計画県道工事 一五二八九m3

21  岡崎地区宅地埋立工事 三五二〇〇m3

22  鶴新田造成工事 七七一一m3

右各代金は「材料費」として損金計上できるものであるのに、原判決は、被告会社には右各仕入れの事実はないとして、右各代金を損金として認容しなかった。右は事実誤認である。

2 判断

(一) 当裁判所は、所論主張のとおり、被告会社には、その元帳等に公表計上された土の仕入れのほかに、44/9において、王島山の切土一七万八九五七m3(代金三二二一万二二六〇円)及び矢柄山の山土六万八四〇〇m3(代金四三〇万九二〇〇円)の、45/9において、王島山の切土八万一六〇〇m3(代金一四六八万八〇〇〇円)及び矢柄山の山土五万八二〇〇m3(代金三六六万六六〇〇円)の、各土の仕入れがあると認めたが、右各土の仕入代金をここで損金認容しなかった。その理由は次のとおりである。

(二) たしかに、証拠、特に施業覚書(一一一九丁)、神原貢作成の譲渡書(二〇八〇丁)、被告会社作成の証明願及び岩本真美作成の証明書(写)(二〇八二、二〇八三丁)、山土売買契約書(第二審三三五丁)、竹田文三作成の証明書(三六二一丁以下)、収税官吏の被告人千に対する四六年五月一二日付質問顛末書(二二二一丁)等によれば、被告人千は、前記認定のとおり、被告会社を設立した四一年一二月二四日当時、個人資産として、<イ> 倉敷市福田町松江山の神三五五番等の土地について妻赤沢芳子、中村次郎、杏村道夫等の名義で山土採取権を(これが「王島山の山土」である。)、<ロ> 倉敷市福田町松江獅々岩二七四番の一ないし四、同町松江鴻ノ巣二七二番の土地について妻赤沢芳子名義で山土採取権を、<ハ> 倉敷市連島町家の上二九〇七番等の土地について自己名義で山土採取権を(これが「矢柄山の山土」である。)、<ニ> 塩生山についての山土採取権を、それぞれ有していたほか、<ホ> 右<ロ>の山土の一部をブルドーザー等を用いて切り取って採取した「王島山の切土」約三三万m3を同土地上に集積して所有していたことが認められる。

(三) 被告会社の44/9の元帳の勘定科目「土地代」には、四四年六月三〇日に四〇〇万円の(同日付の振替伝票(符四)には「山代」と記載されている。)、七月二八日に山代として四七〇万円の、更に九月三〇日に山代として一〇〇〇万円の、各仕入れの記帳があり(但し、同年九月三〇日付の振替伝票でこれらは「材料費」に振り替えられている。)、また、右九月三〇日付の振替伝票には、借方材料費・貸方未払金で四三年一〇月から四四年九月までの間の被告人千からの土代として二〇〇〇万円の記載がある(元帳の「材料費」にはこの仕入れの記帳がないが、翌期に繰り越された未払金の中にはこの仕入れが入っていると認められる)。以上を合計すると44/9の被告人千からの土の仕入代金は三八七〇万円となる。次に、被告会社の45/9の元帳の「材料費」には、四五年七月二三日に一七七万八二〇〇円と八〇万円の(同日付の振替伝票(符五)にはいずれも「山代」と記されている。)、九月三〇日に一四〇〇万円の(同日付の振替伝票には「材料仕入」と記されている。)、各仕入れの記帳があり、以上を合計すると、45/9の被告人千からの土の仕入代金は一六五七万八二〇〇円となる。

しかし、これらの仕入れは前記(二)の<イ>の王島山の山土の仕入れであり、このことは、収税官吏遠藤登芽夫作成の「「山土概算検討表について」の提出について」と題する書面(二四九六丁)(以下、山土概算検討表という。)の認めるところでもある。

(四) ところで、被告人千は、第二審、原審及び当審において、被告会社は王島山の切土と矢柄山の山土とを使用して埋立工事を行っている旨所論にそう供述を繰り返ししており、検察官に対する供述調書中にも、王島山の切土(二二九六丁)及び矢柄山の山土(二三一二丁)について触れた部分があり、第一審証人岡本も同旨の証言をしている。更に、第一審証人松浪節雄は、「四四年一一月ころから四五年九月ころまでの間に、松浪組が矢柄山の山土を使用して、都市計画県道工事、岡崎地区宅地埋立工事、鶴新田造成工事の各一部を行ったことがある。」旨証言しており(一〇二六丁)、松浪組請求書綴(符二五)中の請求書にも、矢柄山から山土を運搬した旨の記載がある。

これらに、更に、工事註文書綴(符九三)、鹿島建設請求書綴(符九四)、小柴建設作成の請求書(符九、一四、二八、三一ないし三三、五八)、稲葉明作成の上申書(一六四八丁)、佐々木組請求書綴(符九五)、注文書(符一〇八)等を併せ考えると、被告会社は、前記(二)の<ホ>の王島山の切土を使用して所論主張の前記1の(1)(イ)、(2)(イ)の各工事を、同<ハ>の矢柄山の山土を使用して所論主張の前記1の(1)(ロ)、2(ロ)の各工事を逐次行い、完成して鹿島建設等に引き渡したものと認められ、その使用土量は、所論主張のとおり、王島山の切土につき、44/9一七万八九五七m3(前記1の番号1ないし12)、45/9八万一六〇〇m3(同番号15ないし19)、矢柄山の山土につき、44/9六万八四〇〇m3(同番号13、14)、45/9五万八二〇〇m3(同番号20ないし22)と認められる。

そうとすると、被告会社には、右各土の仕入れがあったものというべきである。

(五) これに対して、前記山土概算検討表は、被告会社の工事収入金額から推計した売上(使用)土量と、前記(二)の公表仕入代金額を含む公表総仕入代金額から推計した仕入土量とを比較して、公表された王島山の山土の仕入れ以外に土の仕入れはないと結論しており、原判決も同旨の認定をしている(尤も、原判決は、所論が主張する王島山の切土と王島山の山土とを混同したきらいがある。)。

しかしながら、右山土概算検討表は、仕入土量を計算するにあたり、地山から採取された切土の体積は一・三倍に増加するとして、山土仕入代金額を六〇円で割った数量を更に一・三倍し、これが仕入土量であるとしているが、被告人千の原審における供述(三八六四丁以下)によれば、一m3あたり六〇円とは、地山から山土を採取しこれを切土とした状態でのことをいうものと認められるから(但し、採取費用は被告会社の負担)、そうとすれば、前記のように一・三倍することは許されず、山土仕入代金額を六〇円で除した数量をもって仕入土量とすべきである。しかるときは、計算上、仕入土量が、44/9において約一二万七二三〇m3(121万4411m3-70万6475m3-38万0706m3)、45/9において約一八万八五二九m3(77万5151m3-33万7845m3-24万8777m3)、それぞれ不足することになる(なお、山土概算検討表自体も、45/9においては計算上八万七一七六m3の仕入不足となることを認めている。)。右山土概算検討表も前記認定を左右するには足りないというべきである。

(六) しかしながら、前記(四)で認定した各土の仕入の代金を、ここで(すなわち勘定科目「材料費」として)損金認容することはできない。けだし、

(1) 前記1の番号1ないし10、18、19の各工事に使用された王島山の切土の代金については、後記二のとおり、小柴建設に対する外注費に含めて損金計上されており(所論の自認するところでもある。)、これが認容されているからである。

(2) 同番号20ないし22の各工事に使用された矢柄山の山土の代金についても、後記三のとおり、松浪組に対する外注費として損金計上されており(所論の自認するところである。)、これが認容されているのである。

(3) 問題となるのは、その余の同番号11ないし17の各工事に使用された王島山の切土の代金及び矢柄山の山土の代金である。しかし、被告会社では右(1)、(2)のように土仕入代金を「材料費」としてではなく別の形で損金計上していること、被告人千も、収税官吏に対して、「土の仕入れの記帳については、期末にその期の工事受注量から仕入山土量を考えて一括計上していた。」(二二三四丁)、「44/9及び45/9に土の仕入計上もれはない。」(二二六四丁)旨供述しており、岡本も、検察官に対して、土代の計上もれはない旨供述している(二三八〇丁)こと、加えて、そもそも被告会社の所得の減少につながる多額の土仕入代金を損金計上しなかったとは到底考えられないこと等に徴すると、右各土仕入代金はなんらかの形で損金計上されている公算が極めて大であるというべきであり、したがって、ここで右各代金を損金認容することは、二重認容となってできないというべきである。

(七) 以上のとおりで、被告会社には公表計上された土の仕入れのほかに王島山の切土及び矢柄山の山土の仕入れがあるが、これらの代金は既に別の形で損金計上されていると認められるから、結局、ここで損金認容できるものはないというべきである。論旨は理由がない。

(八) なお、付言するに、被告人千が右のような多額の土仕入代金をあえて真実どおりに自己に対する土代金として計上せず、小柴建設や松浪組に対する外注費として計上したのは、被告人千において自己の所得を秘匿しておきたいとの気持があったからではないかと推知される(なお、被告人千の原審における供述(三八一六丁)参照)。また、被告人千が収税官吏に対して真実を供述しなかったのも、同様の理由からと思われる。

二  小柴建設に対する外注費の架空計上について(控訴趣意第三の一)

1  所論

原判決は、被告会社が小柴建設に対する外注費として計上したもののうち、別表(一)掲記のもの(以下、本件外注費という。)は架空であると認定したが、事実誤認である。すなわち、被告会社は、前記王島山の切土を使用して、鹿島建設等から請け負った左記工事(以下、本件工事という。)を行ったが、右工事においてはダンプ業者の管理等を小柴建設に頼んだため、小柴建設に支払うべき管理料に被告人千に支払うべき右王島山の切土代金とダンプ業者に支払うべき外注費とを便宜加え、これらを一括して小柴建設に対する外注費として計上したのである。これが本件外注費である。

工事名 使用切土量

44/9

1 日鉱LPG球型タンク基礎工事 八二七〇m3

2  関東電化団地造成工事 二〇三〇m3

日鉱盛土工事 三一一〇m3

3  ペトロ煙突基礎工事 一五四八〇m3

4  ペトロ排水舗装工事 三六六五〇m3

5  サルファータンク埋立工事 八四〇〇m3

6  日鉱三万屯No.一一六タンク盛土工事 七八九五m3

7  ペトロ発電部廻り盛土工事 一二〇六m3

ペトロ事務所盛土工事 二〇四〇m3

ペトロトラクチャー工事 九三六m3

ペトロキルソン廻り盛土工事 二〇四〇m3

8  B′地区盛土工事 一三一一八m3

9  化成水島真砂土搬入工事 九四七〇m3

10  ペトロ二期整地造成工事 四二五二〇m3

11  日鉱盛土撤去工事 一五一一〇m3

(但し、撤去土量)

45/9

12  オキストン盛土整地工事 八三五〇m3

13  四AN建設海岸道路改良工事 一六二五〇m3

すなわち、被告会社では、鹿島建設等から請け負った工事の一部を小柴建設に下請けさせて同社に施行させていたが、これとは別に、請け負った工事が多い場合には、被告会社がいちいちダンプ業者を管理して無事故で工事を遂行することが困難であったので、ある特定の工事については小柴建設にダンプ業者の管理や工事の監督等をまかせ、書類上右工事を小柴建設に下請けさせたことにし(これを「窓口工事」と呼んでいた。)、その代わりに小柴建設に対しては「口銭」と称する管理料を支払っていた。そして、被告会社では、右工事に使用した土の代金、ダンプ業者に対する外注費及び口銭を、一括して小柴建設に対する外注費として計上していたのである。本件外注費はこの窓口工事分の外注費であって、小柴建設が実際に下請工事をしていないという意味においては架空であろうが、被告会社は、被告人千に対して切土代金を、ダンプ業者に対して外注費を、それぞれ支払うべき債務があり、しかも、これらは損金として計上し得るものであって、かつ、これらは被告会社の帳簿上別に損金として計上されていないのであるから、本件外注費の計上はなんら二重(架空)計上となるものではない。もし二重計上になるというのであれば、本件外注費がどの計上山土代金あるいはどの計上外注費と重複しているかを具体的に指摘すべきである。

2 判断

(一) 当裁判所は、本件外注費44/9四九九九万八二二〇円、45/9六一九万六二五〇円は正当な損金計上であると認めた。その理由は次のとおりである。

(二) まず、所論が主張する本件工事のうち、番号1ないし10、12、13の各工事を被告会社が鹿島建設等から請け負い、王島山の切土をダンプ業者に運搬させるなどして完成し、引き渡したことは、前記一2(四)で認定したとおりである。その使用切土量は、44/9一五万三一六五m3、45/9二万四六〇〇m3で、その代金額は、44/9二七五六万九七〇〇円、45/9四四二万八〇〇〇円と認められる(一m3一八〇円)。

次に、番号11の工事を被告会社が日産建設(株)から請け負い、ダンプ業者に盛土を撤去、運搬させるなどして完成したことは、工事注文書綴(符九三)等によってこれを認めることができる。

したがって、被告会社は、本件各工事についての王島山の切土代金及び外注費を支払う債務があり、これを損金に計上し得るというべきである。

(三) ところで、被告人千の第二審(第二審五九〇丁以下)、原審(三八二一丁以下、三八五一丁以下、三九二四丁以下、三九六六丁以下)における供述、第一審証人岡本の証言(一九九一丁以下、二〇〇九丁以下)、第一審証人小柴光作の証言(八九五丁以下)等を総合すると、次の事実が認められる。

被告人千は、本件各工事(但し、番号11の工事を除く。)について自己に対する王島山の切土代金をそのまま公表計上せず、小柴建設に対する外注費として計上しようと考え、小柴建設の経営者小柴光作(以下、小柴という。)に対し、手数料を支払うことを約して、右の切土代金、ダンプ業者に対する外注費及び右手数料の合計額を小柴建設に対する外注費として計上することの了承を求め、右金額にそう請求書、領収書を小柴建設名義で出してくれるよう頼み、同人の了解を得たうえ、同人からその都度請求書(符九、一四、二八、三一ないし三三)、領収書(符九、五一)を受け取り、小切手(符六七ないし七五、七八、七九)を振り出して換金し(その際、小切手の裏面に小柴の署名を求めたこともあった。)そのうちの切土代金相当額を自己が取得し、外注費相当額を被告会社に返し、手数料相当額を小柴建設に支払っていたことが認められる。

また、番号11の工事についても、ダンプ業者に対する外注費と小柴建設に対する手数料とを併せた金額について小柴から請求書、領収書(符九)をもらい、小切手(符七六)を振り出して換金していたことが認められる。

右認定に反する被告人千の原審供述はにわかに措信し難く、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

(四) そうとすると、本件外注費は右の請求書や領収書に記載された金額であるから、本件工事についての王島山の切土代金、ダンプ業者に対する外注費、小柴建設に対する手数料が別に損金計上されていない限り、本件外注費はそのまま損金として認容すべきこととなる。

(五) そこで、右の点について更に検討する。

(1) まず、王島山の切土代金について検討するに、これが被告会社の帳簿上損金計上されていないことは、前記一2の(三)、(四)で述べたとおりである。したがって、本件外注費中、44/9二七五六万九七〇〇円、45/9四四二万八〇〇〇円は、損金として認容することができる。

(2) 次に、ダンプ業者に対する外注費及び小柴建設に対する手数料について検討する。

その合計額は、本件外注費から前記王島山の切土代金額を控除した額、すなわち、44/9二二四二万八五二〇円、45/9一七六万八二五〇円と認められるところ、小柴建設に対する手数料が別に損金計上されていないことは明らかであるので、問題となるのは、ダンプ業者に対する外注費である。

この点については、たしかに、被告人千は、検察官に対して、別表(一)の外注費は番号9、11を除いて架空である旨供述しており(二二九五丁以下)、小柴も、検察官に対して、本件外注費は全て架空である旨供述している(二七五三丁以下)。そして、以下(イ)ないし(ル)に述べる強い疑問もある。

しかし、右の点を十分考慮しても、なお、ダンプ業者に対する外注費が別に計上されているとまでは断じ難く、結局、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則に従い、計上されていないものとして取り扱わざるを得ない。

(イ) 別表(一)番号1について

所論は、これを鹿島建設から請け負った日鉱LPG球型タンク基礎工事の一部八二七〇m3に関するものであると主張する(符九三中の鹿島建設の注文書参照)。しかし、車両請求書綴(符二八)中の小柴建設の請求書では、工事名が「日鉱(日産建設盛土)」と、数量が八〇〇〇m3となっており、所論とそごしているが、これをしばらくおくとしても、右小柴建設の請求書には一〇月一九日より一一月二〇日までの代金と記載してあるのに、所論が指摘する被告会社の鹿島建設宛ての請求書(符九四)ではその日付が四三年一〇月二〇日となっている。更に、この点をおいても、車両請求書綴(符二七、二八)中の請求書には「王島山-日鉱「カ」、「王島山-日鉱日産」ないしはこれらと同趣旨の記載が随所にあって、右の王島山から日鉱に運ばれた土の運搬代金が、本件番号1の工事についての外注費にあたるのではないかとの疑いが生ずる。

(ロ) 同番号2について

所論は、このうちの一部一〇四万一八五〇円を鹿島建設から請け負った日鉱盛土工事三一一〇m3に関するものであると主張する(符二八中の小柴建設の請求書参照。なお、右工事は右三一一〇m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。しかし、車両請求書綴(符二八)中の請求書には「王島山-日鉱「カ」ないしこれと同趣旨の記載が随所にある。

(ハ) 同番号3について

所論は、これを鹿島建設から請け負ったペトロ煙突基礎工事一万五四八〇m3に関するものであると主張する(符九中の小柴建設の請求書参照。なお、右工事は右一万五四八〇m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。しかし、車両請求書綴(符三〇)中の請求書には「王島山-ペトロ「カ」ないしこれと同趣旨の記載が随所にある。

(ニ) 同番号4について

所論は、これを鹿島建設から請け負ったペトロ排水舗装工事三万六六五〇m3に関するものであると主張する(符三一中の小柴建設の請求書参照。なお、右工事は右三万六六五〇m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。そして、前記証人小柴は、この実際の下請工事をした者は松浪組、三和建設、太陽建設であると証言している(九八四丁)(但し、右松浪組の経営者である前記第一審証人松浪節雄は、松浪組は四四年一一月ころから被告会社の下請けを始めた旨証言している。)。右三和建設とは(有)三和土木のことと解されるところ、車両請求書綴(符三一)中の(有)三和土木作成の請求書には、ペトロに山土を運搬した代金の請求があり、これが外注費として支払われていることは元帳(符一)により明らかである。仮に証人小柴の右証言を措信しないとしても、右車両請求書綴中の請求書には「王島山-ペトロ「カ」ないしこれと同趣旨の記載が随所にある。

(ホ) 同番号5について

所論は、これを鹿島建設から請け負ったサルファータンク埋立工事八四〇〇m3に関するものであると主張する(右工事は右八四〇〇m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。しかし、車両請求書綴(符三一)中の小柴建設の金額一五四万円の請求書には、工事名が「日鉱C地区」と、数量が合計で四四〇〇m3と記載されており、また、同綴中の金額一一七万円の請求書では工事名が「塩生山切土」となっている。両者がどのような関係にあるのか不明であるが、この点をおいても、右車両請求書綴中の請求書には「王島山-日鉱「カ」ないしこれと同趣旨の記載が随所にあり、特に、坂本建機の請求書には「日鉱「カサルファー」、「8400m3」の記載がある。

(ヘ) 同番号6について

所論は、これを鹿島建設から請け負った日鉱三万屯No.一一六タンク盛土工事七八九五m3に関するものであると主張する(右工事は右七八九五m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。しかし、車両請求書綴(符三二)中の小柴建設の請求書では、工事名が「「カ日鉱9万屯タンク」と、そのタンクの番号が一一二と、数量が六五七五m3となっており、明らかに所論とそごしているが、これをしばらくおくとしても、右車両請求書綴中の請求書には「王島山-日鉱「カ3万屯」ないしこれと同趣旨の記載が随所にあり、また、車両請求書綴(符三一)中の請求書には「王島山-日鉱「カ9万t」ないしこれと同趣旨の記載が随所にある。

(ト) 同番号7について

所論は、これを鹿島建設から請け負ったペトロ発電部廻り盛土工事、ペトロ事務所盛土工事、ペトロトラクチャー工事、ペトロキルソン廻り盛土工事合計六二二二m3に関するものであると主張する(符三三中の小柴建設の請求書参照。なお、右工事は合計六二二二m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。そして、前記証人小柴は、この実際の下請工事をした者は梁原建設、三和建設、旭東組であると証言している(九八六丁)。しかるところ、車両請求書綴(符三三)中の(有)三和土木の請求書には、ペトロに山土を運搬した代金の請求があり、これが外注費として支払われていることは元帳(符一)により明らかである。仮に証人小柴の右証言を措信しないとしても、右車両請求書綴中の請求書には「王島山-ペトカ「カ」ないしこれと同趣旨の記載がある。

(チ) 同番号8について

所論は、これを鹿島建設から請け負ったB′地区盛土工事一万三一一八m3に関するものであると主張する(符九中の小柴建設の請求書では「B地区盛土工事他」となっている。この盛土工事は右一万三一一八m3以外にない。符九三中の鹿島建設の注文書参照)。たしかに、車両請求書綴(符三二ないし符三四)中の請求書にはB地区ないしB地区に土を運搬した旨の記載はないが、しかし、収税官吏の三谷訓史に対する質問てん末書(一七四〇丁)によれば、右工事は旭化成工業(株)から鹿島建設に発注されたものであり、王島山の土が使用されたものと認められるところ、右車両請求書綴(符三三)中の請求書には「王-化成「カ」ないしこれと同趣旨の記載がある。

(リ) 同番号9について

所論は、これを(株)大本組から請け負った化成水島真砂土搬入工事九四七〇m3に関するものであると主張する(符九三中の(株)大本組の注文書参照)。しかし、請求書綴(符五八)中の小柴建設の請求書では数量が九八五五m3となっている。この点をおいても、車両請求書綴(符三五)中の請求書には「王島山-化成大本」ないしこれと同趣旨の記載が随所にある。

(ヌ) 同番号10について

所論は、これを鹿島建設から請け負ったペトロ二期整地造成工事四万二五二〇m3に関するものであると主張する(符五八中の小柴建設の請求書参照。

右工事は右四万二五二〇m3以外にない。符九三号中の鹿島建設の注文書参照)。これは、44/9の期末に未払外注費として計上され、翌期の四四年一〇月二〇日に支払いがなされているので(元帳(符二)「未払金」参照)、四四年九月二〇日〆分の車両請求書綴を検討する必要があるが、それがない。

(ル) 同番号11について

所論は、これを日産建設(株)から請け負った日鉱盛土撤去工事の一部一万五一一〇m3に関するものであると主張する(符九中の小柴建設の領収書、符九三中の日産建設(株)の注文書参照)。これも44/9の期末に未払外注費として計上されているので、四四年九月二〇日〆分の車両請求書綴が必要であるが、それがない。なお、同年一〇月二〇日〆分の車両請求書綴(符三七)中の車両番号五二五八等の請求書には「日鉱日産撤去」、「日鉱日産四号タンク撤去」なる記載がある(なお、前記日産建設(株)の注文書にも「日鉱No.4、No.9盛土撤去工事」の記載がある。

(ヲ) 同番号12、13について

所論は、番号12を鹿島建設から請け負ったオキストン盛土整地工事の一部八三五〇m3に関するものであると主張し(符一四中の小柴建設の請求書、符九三中の鹿島建設の注文書参照)、番号13を鹿島建設から請け負った旭化成四AN建設海岸道路改良工事の一部一万六二五〇m3に関するものであると主張する(符五八中の小柴建設の請求書、符九三中の鹿島建設の注文書参照)。たしかに、これらについては、車両請求書綴(符四七、四八)を調査するも、右各工事現場に土を運搬したとの趣旨の記載はない。

(六) 以上のとおりで、結局、本件外注費は全て損金として認容すべきこととなる。論旨は理由がある。

(七) なお、本件工事についての小柴建設に対する手数料の支払いを損金として認容する以上、所論も指摘するとおり、原判決が損金として認容した小柴建設に対する支払手数料44/9一二六万六八〇七円、45/9一二万三九二五円は、損金として認容するに故ないものである(このようにしても、ほ脱税額に増加を来さない限り、刑事訴訟法四〇二条には違反しない。)。

三  松浪組に対する外注費の架空計上について(控訴趣意書第三の二)

1  所論

原判決は、被告会社が四五年四月二三日に計上した松浪組に対する外注費四八七万九四五〇円と二七万九一八〇円との合計五一五万八六三〇円を架空であると認定したが、事実誤認である。すなわち、被告会社は、(株)佐々木組から請け負った左記工事の一部を松浪組に下請けさせ、松浪組は矢柄山の山土合計五万八二〇〇m3を使用してこれを完成した。

工事名 使用山土量

都市計画県道工事 一五二八九m3

岡崎地区宅地造成工事 三五二〇〇m3

鶴新田造成工事 七七一一m3

したがって、被告会社はこの山土代金合計三六六万六六〇〇円(一m3六三円)を松浪組に支払い、松浪組はこれを被告人千に支払うべきところ、被告人千が地元搬出道路の補償負担金約一五〇万円を支払うこととなっていたので、これを前記山土代金に加え、結局、被告会社は五一五万八六三〇円を松浪組に支払ったのである。なお、松浪組にはこのほかにも山土運搬代金を外注費として支払っている。

2  判断

(一) 所論が主張する右1記載の各工事を被告会社が(株)佐々木組から請け負い、矢柄山の山土を松浪組に運搬させるなどして完成し、引き渡したことは、前記一2(四)で認定したとおりである。その使用山土量は五万八二〇〇m3、その代金は三六六万六六〇〇円(一m3六三円)と認められる(尤も、所論主張の鶴新田造成工事については、それが(株)佐々木組から下請けされたのは四五年八月であって(符一〇八)、この工事に使用された山土代金はそれ以前の同年四月二三日に計上するというのは(振替伝票、元帳、小切手二通(符七七)参照)、いかにも不可解である。)。

そして、松浪組作成の領収証二枚(符一五)には「山土納入代金トシテ」、「山土納入代金トス」と記載されており、また、右山土代金は被告会社の帳簿上別に損金計上されていないから(前記一2の(三)、(四)参照)、これを損金として認容することができるというべきである。

(二) 次に、残余の一四九万二〇三〇円について検討する。

所論は、これを地元搬出道路の補償負担金であると主張し、施業覚書(一一一九丁)二項及び五項によるものであると主張する。しかし、その趣旨は必ずしも明らかではなく、端数がつくというのも不自然である。また、右施業覚書二項及び五項にもその明確な記載はない。却って、被告人千は、地権者表(一一一八丁)、仮受証(一一二一丁)、領収書(一一二二丁)によれば、「家の上整備流用土補償」として四八万一六〇〇円を、「搬出取合線敷料金」として二六万〇四〇〇円を地権者に支払っており(これは、原価一m3六三円の算出にあたって考慮されている。)、前記施業覚書を検討しても、それ以外に支払いを要するものがあるとは認め難い。したがって、所論主張の地元搬出道路補償金なるものは損金として認容することができない。

(三) 以上のとおりで、本件松浪組に対する外注費五一五万八六三〇円については、うち三六六万六六〇円は損金認容できるが、残余の一四九万二〇三〇円は損金認容できないものである。論旨は右の限度で理由がある。

(四) なお、原判決は、45/9において、被告会社が松浪組に前記領収証(原判決によれば架空の領収証)を書いてもらった謝礼として一〇万円を支払っていると認定し、これを支払手数料として損金認容しているが、所論も主張するとおり、前記証人松浪節雄の証言(一〇一三丁)によれば、右一〇万円は、右領収証作成の謝礼として支払われたものではなく、被告人千が商工会議所の会員に立候補した際の右松浪節雄の選挙運動に対する謝礼として被告人千個人から支払われたものと認められるから、そうすると、右一〇万円は損金認容するに故ないものである。

四  (有)三和土木に対する外注費の架空計上について(控訴趣意書第三の三)

1  所論

原判決は、四三年一一月二八日計上の(有)三和土木(以下、三和土木という。)に対する外注費一三〇万六四五〇円について、そのうち三〇万六四五〇円は架空であると認定したが、事実誤認である。すなわち、被告人千は、四三年一一月二八日、三和土木の経理担当者横山秀雄(以下、横山という。)から外注費一〇〇万円の前払いの申込みがあった際、この機会に、自己が三和土木の社長中村正一(以下、中村という。)に貸した三〇万円を回収しようと考え、その旨を横山に伝えて一三〇万円位の請求書を持参するよう求め、横山が一三〇万六四五〇円の請求書を持って来たので、その金額の小切手を切って渡し、その後横山から中村の借金の返済として現金三〇万六四五〇円を受け取ったものであって(六四五〇円は利息として)、被告会社が三和土木に支払った外注費額はあくまでも一三〇万六四五〇円である。本件は、横山が三和土木の帳簿に三〇万六四五〇円の社長中村に対する仮払いを記帳しなかったため生じたものである。

2  判断

(一) 当裁判所は、証拠を検討するも、本件三〇万六四五〇円が架空であるとの心証に達することができなかった。その理由は次のとおりである。

(二) たしかに、第一審証人横山秀雄は、「四三年一一月二八日に被告会社から前貸しを受けたのは一〇〇万円であって一三〇万六四五〇円ではない。三〇万六四五〇円は現金で返している。領収証が一三〇万六四五〇円になっているのは、被告人千からそのようにしてくれと言われたからである。三和土木の帳簿には、一三〇万六四五〇円の入金と三〇万六四五〇円の返金とが記帳されている。」旨証言しており(一〇四五丁以下)、また、領収書請求書綴(符一四)中の(有)三和土木作成の領収証にも「但12月20日拂内借金として」と記載されており、その金額も一〇〇万円が抹消されて一三〇万六四五〇円に訂正されている。

加えて、被告人千の本件に関する主張はこれまで変遷しており、例えば、貸付の相手方につき、当初はこれを三和土木と主張していながら(九四丁、一〇八七丁、一一〇三丁)、後にこれを社長中村正一個人と改め(二四四四丁)、債権の発生原因についても、検察官に対しては、灯油の立替金と供述しているのである(二三〇九丁)。また、本件一三〇万六四五〇円がどの外注費の支払いにあたるかについても、当初は一一月二〇日〆分の外注費の前渡しであると主張していながら(九三丁、一〇八七丁)、後にこれは前渡しではなく一〇月二〇日〆分の外注費の正規の支払いであると主張し(一一〇三丁)、更にその後再びこれを変えて、一〇月二一日から一一月二七日までの外注費一三〇万六四五〇円の支払いであると主張しているのである(二四四三丁、第二審一六二丁)。

そして、被告人千が中村に三〇万円を貸与したことを証する借用証書等の書類は、本件証拠上存しない。

(三) しかしながら、

(1) 元帳(符一)、振替伝票綴(符四)、領収書請求書綴(符一四)中の(有)三和土木作成の領収証、車両請求書綴(符二六、二七)中の(有)三和土木作成の請求書によれば、三和土木からの請求外注費額と被告会社からの支払外注費額とは、別表(二)のとおりであると認められるところ、

(イ) 前記証人横山の証言どおり本件を一〇〇万円の支払いとみても、請求額と支払額とは一致しないのであり、

(ロ) また、本件一三〇万六四五〇円の支払いは、被告会社の振替伝票及び元帳上外注費の支払いとして記帳されており、仮払金の支払いとはなっておらず、したがって、これを前提とすれば、当初横山から一一月二〇日〆分(一二月二〇日支払分)の外注費の前渡し(仮払い)一〇〇万円の請求があったが、被告人千は所論の理由により一〇月二〇日〆分の外注費一三〇万六四五〇円を支払うこととしてそれを支払ったものと考えられないわけでもなく(前記領収書の「但12月20日拂内借金として」とあるのを抹消し忘れた。)、

(ハ) 別表(二)の各金額を対比し、特に一二月七日の一〇〇万円の支払いが元帳上仮払いとなっていることに徴すると、の請求に対する支払いが<1><2><4>、の請求に対する支払いが<3><5><6>、の請求に対する支払いが<7><8>とみざるを得ず、そうとすると、本件<6>の支払いは、たしかに一〇〇万円とみても一三〇万六四五〇円とみても請求額には合致しないものの、一三〇万六四五〇円とみた方がより請求額に近く、自然である。

(2) なお、三和土木の帳簿上返金となっている三〇万六四五〇円については、被告会社の領収書ではなく岡本個人の領収書が発行されている(岡本の検察官に対する供述調書(二三七四丁))。

(3) 被告人千も、一貫して、本件三〇万六四五〇円が架空計上であることを否定しており、原審では、「四十二、三年ごろ中村が福岡から岡山にやって来た際、ついでに上京するということになって三〇万円を貸してやったことがある。本件は、その金を返してもらったものである。」旨述べて所論にそう供述をしている(三九九四丁以下、四〇二一丁以下)。

(四) 以上の点に鑑みると、本件支払額は一三〇万六四五〇円ではないかとの疑いが払拭し切れず、したがって、本件三〇万六四五〇円を架空計上と認定するにはなお合理的な疑いが残るというべきである。論旨は理由がある。

五  ダンプ業者に対する外注費の架空計上について(控訴趣意書第三の四)

1  所論

(一) 原判決は、44/9において、被告会社が別表(三)記載の仮払金を不正に外注費に振り替えて損金に架空計上をしたと認定したが、事実誤認である。すなわち、

(1) 被告会社はダンプ業者に対する外注費の支払いに際して仮払い金を控除することを原則としていたが、ダンプ業者から懇請があった場合には仮払金を控除しないこともあった。別表(三)の番号1、4(1)、6は、いずれもその仮払いが控除されないで期末の四四年九月三〇日まで残ったものであり、それで、被告会社ではやむなく、同日、同年九月二〇日〆分の外注費と対当額で相殺して仮払金を外注費に振り替えたものであり、残余の外注費を翌期に繰り越したものである。したがって、右はなんら架空計上ではない。

(2) 別表(三)の番号7の仮払金は同年五月二一日に、同番号8の仮払金は同年八月二〇日に、それぞれ外注費から控除されており、したがって、これらを外注費に振り替えることはなんら不正ではない。

(3) 別表(三)の番号2、5については、そのような仮払いは存在しない。尤も、香月守に対しては四三年一二月二〇日に仮払金五万円が、三宅勉に対しては同年一〇月二一日に仮払金一〇万円がそれぞれ発生しており、これらが外注費に振り替えられているが、これについてはなんら不正はない。

(4) その余の別表(三)の番号8、4(2)については、そもそもそのような仮払いあるいはそれに類似した仮払いはないのであるから、これらを外注費に振り替えて架空計上したこともない。

(二) 原判決は、被告会社が四五年六月二七日に大本照男に支払った下宿代一〇万四九〇〇円を外注費として計上したことにつき、これを架空であると認定して公表外注費額から控除しているが、右一〇万四九〇〇円は、後記九で架空計上と認定された福利厚生費七二万六三〇〇円の中に含まれており、既に公表福利厚生費額から控除されているのであるから、二重否認となる。

2  判断

(一) 原判決は、その理由説示からみて、台信忠ほか一名共同作成の調査事績報告書(以下、調査事績報告書という。)(一一八〇丁)及び前記山土概算検討表添付の「架空外注費」と題する紙葉(二四七〇丁)どおりに、本件ダンプ業者関係の架空外注費の計上を認めたものと解されるが、これによれば、原判決が認定した仮払金の支払相手方、仮払日及び仮払金額は、別表(三)のとおりであると認められる。

(二) 別表(三)番号1、4(1)、6について

(1) 番号1の小早川清に対する三〇万円の仮払金について

元帳(符一)の「仮払金」欄には、四三年一〇月二九日に小早川清(以下、小早川という。)に対する仮払金三〇万円の記帳があり、これが翌四四年九月三〇日に外注費に振り替えられている。

小早川の四三年一〇月二〇日〆分の請求外注費額は六一万二七四〇円であり、同年一一月二〇日付の小早川作成の領収証(符一三)も金額が六一万二七四〇円になっている。それゆえ、所論は、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して仮払金三〇万円は控除されていないと主張するのである。

しかし、前認定のとおり、被告会社では外注費の支払いに際して仮払金を控除するのを原則としており、これに、原判決が詳細に説示する事実、特に、所論によれば被告会社の小早川に対する四四年九月二〇日〆分の請求外注費七四万五七六〇円(同人作成の上申書(一三五一丁)参照)に対する支払いはこれから三〇万円を控除した額とならなければならないのに、請求額どおり七四万五七六〇円が支払われていること(符二一中の領収証、元帳(符二)の「未払金」欄参照)を併せ考えると、やはり、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して本件仮払金三〇万円が控除されているものと認めざるを得ない。この控除があったにもかかわらず、六一万二七四〇円の領収書が徴され、これがそのまま外注費として計上された(但し、うち二万一三四〇円は未払金の支払いとして)ものと認められる。そうとすると、三〇万円は架空(二重)計上というべきである。

(2) 番号4(1)の坪田登美男に対する四万円の仮払いについて

元帳(符一)の「仮払金」欄には、四三年一〇月二一日に坪田三津子名義で坪田登美男(以下、坪田という。)に対する仮払金四万円の記帳があり、これが翌四四年九月三〇日外注費に振り替えられている。

そして、たしかに、四三年一一月二〇日付の坪田三津子名義の領収証(符一三)には金額二二万九五〇〇円の記載があり、この金額は、精算書綴(符六三)中の四三年一一月二〇日付精算書No.2に記載された坪田の一〇月二〇日〆分の請求金額と一致している。それゆえ、所論は、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して仮払金四万円は控除されていないと主張するのである。

しかし、車両集計表(符二三)中の「10/20〆 引去り分」と題する紙葉には「坪田 40000」と記載されており、前記四三年一一月二〇日付精算書No.2にも、控除明細欄に赤字で仮払金四万円と記載されている(仮に、右精算書No.2に書かれた仮払金四万円が控除予定額であるというのであれば、右精算書綴中の同年一二月二〇日付精算書No.2の控除明細欄に記載された金額は、仮払金二万円ではなく仮払金六万円となる筈であるが、そうはなっていない。)。更に、所論は、本件仮払金四万円を四四年九月二〇日〆分の外注費と対当額で相殺して残外注費を翌期に繰り越した旨主張するが、四四年九月二〇日〆分の請求外注費額二七万三五〇一円(前記精算書綴中の四四年一〇月二〇日付精算書参照)は、そのまま一〇月二〇日に坪田に支払われているのである(符二一中の領収証、元帳(符二)の「未払金」欄参照)。これらによれば、やはり、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して本件仮払金四万円が控除されているものと認めざるを得ず、この控除があったにもかかわらず、二二万九五〇〇円の領収証が徴され、これがそのまま外注費として計上された(但し、うち三万九八〇〇円は未払金の支払いとして)ものと認められる。そうすると、四万円は架空(二重)計上というべきである。

(3) 番号6の広洋建材こと平木謙三郎に対する一〇万円の仮払金について

元帳(符一)の「仮払金」欄には、四三年一〇月二四日に平木謙三郎(以下、平木という。)に対する仮払金一〇万円の記帳があり、これが翌四四年九月三〇日外注費に振り替えられている。

そして、たしかに、四三年一一月二〇日付の平木の領収証(符一三)には金額が二六万七六〇〇円と記載されており、この金額は、平木の一〇月二〇日〆分の請求外注費額二六万七七〇五円(前記調査事績報告書(一一九〇丁)参照)にほぼ一致している。それゆえ、所論は、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して仮払金一〇万円は控除されていないと主張するのである。

しかし、前記車両集計表(符二三)中の「10/20〆 引去り分」と題する紙葉には「平木(広洋建材)100,000」との記載があり、更に、所論は、本件仮払金一〇万円は四四年九月二〇日〆分の外注費と対当額で相殺された旨主張するが、車両請求書綴(符三一ないし三六)、領収書請求書綴(符一三、二一)、前記調査事績報告書によれば、広洋建材ないし平木は四四年三月二〇日〆分までしか被告会社の下請けをしていなかったことが認められるから、所論はそもそもその前提を欠くものである。これらによれば、やはり、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して本件仮払金一〇万円は控除されているものと認めざるを得ず、この控除があったにもかかわらず、二六万七六〇〇円の領収証が徴され、これがそのまま外注費として計上された(但し、うち六万三四二〇円は未払金の支払いとして)ものと認められる。そうすると、一〇万円は架空(二重)計上というべきである。

(4) なお、第一審証人岡本も、これら仮払金は、「外注費の支払いに際して控除されており、それにもかかわらず外注費に振り替えるのを忘れていたため、期末に一括して外注費に振り替えたものである。」旨証言している(一八九〇丁)。

(三) 別表(三)番号7の三沢貞一に対する二万円の仮払金について

元帳(符一)の「仮払金」欄には、四四年四月二一日に三沢貞一(以下、三沢という。)に対する仮払金二万円の記帳があり、これが同年五月二一日外注費に振り替えられている。元帳には、このほか、同月二〇日三沢に対する外注費一五万四一三〇円の記帳がある。

所論は、四四年四月二〇日〆分の三沢に対する外注費は一七万四一三〇円であり、五月二〇日の支払いに際して本件仮払金二万円が控除され、残額一五万四一三〇円が支払われたのであるから、右二万円を外注費に計上することはなんら架空計上ではないと主張する(追加認否書(二)(二五一〇丁))。

しかし、三沢に対する四四年四月二〇日〆分の外注費額は一五万四一三〇円であるから(「一般、車両4/20〆支払明細表」(符八四)中の「5/20(4/20〆分)現金払い」と題する紙葉の三沢欄に記載された一五万四一三〇円が三沢の請求外注費額であることは、同紙葉の坪田欄に書かれた二二万三七二〇円が精算書綴(符六三)中の四四年五月二〇日付精算書に記載された坪田の請求外注費額と一致していることから、明らかである。なお、車両請求書綴(符三二)中の三沢の請求書には金額の記載がない。)、所論はその前提を欠くものである。

なお、所論の自認するところではあるが、念のため五月二〇日の外注費の支払いに際して本件仮払金二万円が控除されているかにつき検討するに、たしかに、前示のとおり三沢の請求外注費額は一五万四一三〇円であり、同人の作成した領収証(符一三)も一五万四一三〇円となっている。しかし、前記車両集計表(符二三)中の「4/20〆控除分」と題する紙葉の六枚あとの紙葉には仮払金額を書いたと思われるメモがあり、これには「4\21 三沢 2万」と記載されており、また、前記「5/20(4/20〆分)現金払い」と題する紙葉の三沢欄には、控除金額として五万二五〇二円の記載があり、この内訳は、本件仮払金二万円のほか、金アミ代二〇〇円、大豊興産(株)に対するガソリン代二万三三六二円(清水登春作成の上申書(一四三八丁)参照)、(有)共栄自動車整備工場に対する修理代八九四〇円(岡本達子作成の上申書(一四六一丁)参照)と認められるのである(なお、前記「4/20〆控除分」と題する紙葉、前記調査事績報告書(一二四二丁)参照)。これらによれば、四四年五月二〇日の外注費の支払いに際して本件仮払金二万円が控除されたものと認められ、それにもかかわらず、一五万四一三〇円の領収証が徴され、これがそのまま外注費として計上されたものと認められる。そうとすると、二万円は架空(二重)計上というべきである。

(四) 別表(三)番号8の太田清一に対する三万円の仮払金について

元帳(符一)の「仮払金」欄には、四四年八月一四日に太田清一(以下、太田という。)に対する仮払金三万円の記帳があり、これが同月二〇日外注費に振り替えられている。元帳には、このほか、同日太田に対する外注費一九万五九〇〇円の記帳がある。

所論は、四四年七月二〇日〆分の太田に対する外注費は二二万五九〇〇円であり、八月二〇日の支払いに際して本件仮払金三万円が控除され、残額一九万五九〇〇円が支払われたのであるから、右三万円を外注費に計上することはなんら架空計上ではないと主張する(追加認否書(二)(二五一一丁))。

しかし、太田に対する四四年七月二〇日〆分の外注費額は、前記「一般、車両4/20〆支払明細表」(符八四)中の「7月分車両外注ヒ」と題する紙葉により、一九万五九〇〇円と認められ、また、同紙葉には、本件仮払金三万円を含めた四万七九三〇円を太田の外注費から差し引く旨の記載があるから(なお、前記調査事績報告書(一二五七丁)参照)、結局、太田に対する四四年八月二〇日の外注費の支払いに際して本件仮払金三万円は控除されたが、それにもかかわらず一九万五九〇〇円の領収証(符一三)が徴され、これがそのまま外注費として計上されたものと認めざるを得ない。そうすると、三万円は架空(二重)計上というべきである。

(五) 別表(三)番号2の香月守に対する五万円の仮払金について

たしかに、元帳(符一)には香月守(以下、香月という。)に対する四三年一〇月二一日ないし一一月一九日の仮払金五万円の記載はない。

しかし、所論も指摘するとおり、四三年一二月三〇日に同人に対する仮払金五万円が発生し、これが翌四四年一月二〇日外注費に振り替えられているので、この点について検討する。

所論は、香月に対する四三年一二月二〇日〆分の外注費は一四万九四九〇円であり、四四年一月二〇日の右外注費の支払いに際して右仮払金五万円が控除され、残額九万九四九〇円が支払われたのであるから、右五万円を外注費に計上することはなんら架空計上ではない旨主張する(追加認否書(二)(二五〇六丁))。

しかし、香月に対する四三年一二月二〇日〆分の外注費額は九万九四五〇円であるから(前記調査事績報告書(一一八五丁)参照)、所論はその前提において誤っている。そして、外注費から仮払金五万円の控除があったことは所論の自認するところであるから、結局、香月に対する四四年一月二〇日の外注費の支払いに際して前記仮払金五万円が控除されたが、それにもかかわらず九万九四九〇円の領収証(符一三)が徴され、これがそのまま外注費として計上されたものと認められる。そうすると、五万円は架空(二重)計上というべきである。

(六) 別表(三)番号5の三宅勉に対する五万円の仮払金について

たしかに、元帳(符一)には三宅勉(以下、三宅という。)に対する四三年一〇月二一日ないし一一月一九日の仮払金五万円の記載はない。

しかし、所論も指摘するとおり、四三年一〇月二一日に三宅に対する仮払金一〇万円が発生し、これが翌四四年九月三〇日外注費に振り替えられているので、この点について検討する。

なるほど、三宅の四三年一〇月二〇日〆分の請求外注費額は二一万八五〇〇円であり(前記調査事績報告書(一一九二丁)参照)、同年一一月二〇日付の三宅作成の領収証(符一三)も金額が二一万八五〇〇円となっている。

しかし、前記車両集計表(符二三)中の「10/20〆 引去り分」と題する紙葉には「三宅勉 50,000」との記載がある。更に、所論は、前記仮払金一〇万円は四四年九月二〇日〆分の外注費と対当額で相殺された旨主張するが(追加認否書(二)(二五〇九丁))、四四年九月二〇日〆分の請求外注費額二八万六四七二円(前記調査事績報告書(一一九二丁)参照)については、同年九月二七日の仮払金一〇万円が控除されて、残額一八万七四七二円が支払われているのである(符二一中の領収証、元帳(符二)の「未払金」欄参照)。所論は、右一〇万円の控除は、右九月二七日の仮払金一〇万円の控除ではなく、四三年一〇月二一日の前記仮払金一〇万円の控除であると主張するようであるが、元帳(符一)の「仮払金」欄には四四年九月二七日に三宅に対する仮払金一〇万円の記帳があり、しかも、これが翌期に繰り越されており、四四年一〇月二〇日付振替伝票にも仮払金一〇万円を未払金に振り替える旨の記載があり、これをうけて、元帳(符二)の「仮払金」欄の一〇月二〇日欄の貸方に一〇万円の、「未払金」欄の同借方に一〇万円の各記載があるのである。これによれば、やはり、四三年一一月二〇日の外注費の支払いに際して前記仮払金一〇万円のうち五万円が控除されたものと認めざるを得ず、この控除があったにもかかわらず、二一万八五〇〇円の領収証が徴され、これがそのまま外注費として計上された(但し、うち四万六〇〇〇円は未払金の支払いとして)ものと認められる。そうとすると、五万円は架空(二重)計上というべきである。

(七) 別表(三)番号3、4(2)について

原判決は、右番号3、4(2)の各仮払いが存在し、これが外注費に振り替えられて公表外注費額二億七四三七万二七〇一円の中に含まれていると認定したうえ、右各外注費への振替えを不正のものとして公表外注費額から控除したものと解されるが、元帳(符一)の「仮払金」欄には右番号3、4(2)に符合する仮払いあるいはこれに類似する仮払いの記載はなく、もちろんこれらが外注費へ振り替えられたとの記帳もない。

右公表外注費額二億七四三七万二七〇一円は、右元帳の「外註加工」欄の借方金額合計二億三九〇四万五三四七円と貸方金額合計四二五万七三〇〇円との差額二億三四七八万八〇四七円に、四四年九月三〇日付振替伝票(符四)に記載された借方外注費一万四〇〇〇円(貸方当座預金)、同三三三一万七九六八円(貸方未払金)、同一一一四万九七一六円(同)の合計額から貸方外注費二〇〇万円(借方未払金)、同四五万七三四〇円(同)、同二四三万九六九〇円(同)を差し引いた額を加えたものであると認められるから、本件番号3、4(2)の各仮払金は公表外注費額に含まれていないものと認められる。そうとすると、原判決は、公表外注費額に入っていない本件外注費合計九万円を入っているものと誤認して否認した(公表外注費額から控除した)ことになるから、この点において事実誤認があるものといわざるを得ない。

(八) 以上のとおりで、結局、本件ダンプ業者に対する外注費についての否認額は、合計五九万円となる。論旨は右の限度で理由がある。

(九) 45/9について、所論は、原判決が架空計上であると認定した一〇万四九〇〇円は後記九の架空福利厚生費七二万六三〇〇円と重複している旨主張する。

しかし、右一〇万四九〇〇円は、四五年六月二七日に大本照男に支払った下宿代一〇万四九〇〇円を外注費として計上した分であり、一方、後記架空福利厚生費七二万六三〇〇円は、四四年一一月二二日から翌四五年五月二〇日までの間に大本照男に支払った下宿代を福利厚生費として計上した分であるから(元帳(符二)、前記調査事績報告書(一二七五丁)参照)、右一〇万四九〇〇円が右七二万六三〇〇円の中に含まれていないことは明らかである。論旨は理由がない。

六  岡本虎雄に対する外注費の架空計上について(控訴趣意書第三の五)

所論は、「原判決は、四四年二月一四日の岡本虎雄に対する三七万円の外注費の計上を架空であると認定したが、事実誤認である。すなわち、岡本は、支払いや入金を整理記帳した際、現金有高が現金出納簿残高より三七万円少なかったため、事実はダンプ業者に対し三七万円の外注費を支払ったのに領収書をもらい忘れたと考え、その支払先が判然としなかったことから、やむなく、便宜自己の父岡本虎雄の名前を借りて同人を支払先とする外注費三七万円を計上したものであって、支払先が架空であることは認めるが、三七万円の外注費の計上自体は架空ではない。」というにある。第一審証人岡本も同旨の証言をしている(二三二四丁)。

しかしながら、被告会社では毎月二〇日の外注費の支払いに先立って、個々のダンプ業者や下請業者ごとに支払金額や控除金額等を記載した一覧表を作成しており(符三、二三、八四参照)、現に四四年一月二〇日〆分も作成されているのであって、これを作成した岡本において三七万円もの外注費の支払先がわからなくなったとは到底考えられないところである。岡本自身にも、本件外注費計上の当時、本件三七万円を外注費として支払ったとの明確な記憶があったわけではなく(二三二四丁)、しかも、同人は、検察官に対しては、「被告人千から、自宅の方で持っている金がなくなったので入れてくれと言われて、会社の現金三七万円を渡した。」旨供述しているのである(二三七七丁)。これらに徴すると、本件三七万円が外注費として支払われたものとは到底認め難く、原判決に事実誤認はないというべきである。論旨は理由がない。

七  坪田登美男に対する給料手当の架空計上について(控訴趣意書第三の六)

所論

原判決は、坪田登美男に対する給料手当の計上(44/9六〇万円、45/9六五万円)は架空である旨認定したが、事実誤認である。すなわち、坪田は被告会社の下請けダンプ業者ではあるが、一面被告会社の従業員でもあり、被告会社は、従業員としての坪田に、車両の安全運転の管理、現場監督の補助等をさせて、毎月五万円の給料を支払っていた。被告会社がダンプ業者である坪田を特に従業員にしたのは、同人がよく働いてくれるからであり、また、同人が労災保険や健康保険等の社会保険に加入できるようにして欲しいと頼んだからである。被告会社は、坪田に対する給料から社会保険料を控除し、現にこれを倉敷社会保険事務所等に納入しており、ただ、右社会保険料等を控除した後の給料は、坪田の依頼により、自動車事故等に備えて被告人千個人が預かって保管しており、坪田には渡していなかったが、坪田の要求があるときにはいつでも渡していた。坪田が真実被告会社の従業員である以上、同人に対する本件給料手当の計上は架空ではない。

2 判断

(一)  たしかに、被告会社の賃金台帳綴(符六四、六五)中には坪田の四四年度及び四五年度分の賃金台帳があり、これには、坪田の入社が四二年四月であること、基本給が五万円であること、それを四五年一一月まで支給したこと、その他控除社会保険料の額等の記載がある。

そして、第一審証人坪田も、「被告会社の専属的な下請けとして、主として王島山の山土を運んでいたが、これとは別に、朝晩合計一時間半から二時間位会社の仕事(重機の整備の手伝い等)をして、二年間位会社から月五万円の給料をもらっていた。それは、健康保険に入りたかったからである。ただ、実際には月々給料を受け取ったことがなく、四七年末か四八年初めころ会社の下請けをやめるときに四二万円をもらい、また、その前に所得税の追徴を受けたときにこれにあてるため七万円か八万円をもらっただけである。被告人千が給料を預かっておくと言っていたのは聞いたことがある。なお、自分が被告会社の従業員ということになっていたので、山土の運搬は妻の坪田三津子名義で行っていた。」旨証言している(一五三二丁以下)。

また、第一審証人岡本も所論にそう証言をし(一八七三丁、二〇〇七丁)、被告人千も第二審(第二審四〇三丁)、原審(四〇〇〇丁)で同旨の供述をしている。

(二)  しかしながら、<1> 被告人千も自認するとおり、坪田は所論のいう給料を毎月きちんと手渡されてはいなかったのであり、単に給料が五万円出ていると告げられていたにすぎず、給料明細書すらも渡されておらず、また、そもそも坪田は下請ダンプ業者であって、同人の証言によっても朝晩一時間半から二時間位会社の仕事をしていたにすぎないのであり、それにしては五万円の給料は高きにすぎ(四四、四五年当時の五万円は決して少額ではない。現に、被告会社の正規の従業員で経理担当者の岡本ですら、給料は月三万五〇〇〇円(四四年二月まで)ないし六万円である。前記各賃金台帳参照)、<2> しかも、坪田の基本給は、四三年一月以降ずっと五万円で、他の従業員(例えば口頭敏之、安東良雄等)は序々に上がっているのに、坪田は全く上がっておらず、<3> 更に、前記坪田の賃金台帳によると、四三年七月までは坪田の受領印が押捺されているのに、それ以降は全く押捺されていないのである。

加えて、被告人千は、収税官吏に対して、最初の取調べから、坪田に対する給料の不正計上を行っていたことを認めており(二二一五丁)、「当初の考えでは、例えば一か月の外注費が二〇万円あれば、一五万円を外注費として払い、残り五万円を給料として払うつもりであったが、外注費として二〇万円を払い、別に五万円を給料として計上してしまった。」旨供述しているのである(二二二九丁)。

(三)  以上によれば、果たして坪田を被告会社の従業員と認め得るかは大いに疑問であり(被告会社は、坪田を社会保険に加入させてやるために形式上同人を従業員にして給料五万円を支払ったこととし、その中から社会保険料を支払い、その代わりに坪田はこれに応える形で朝晩少しずつ会社の仕事をしていたのではないかと推認される。)、仮に坪田を被告会社の従業員と認め得るとしても、坪田の前示証言や受領印が四三年八月以降押捺されていないこと等に鑑みると、坪田が被告会社の従業員であったのは四三年七月までであると認められる。

結局、いずれにしても、四三年一〇月以降の坪田に対する給料手当の計上は架空のものというほかない。論旨は理由がない。

八  修繕費、燃料費の架空計上について(控訴趣意書第三の八)

1  所論

(一) 修繕費について

原判決は、被告人千が故意に、44/9において四八六万七五四六円の、45/9において三一六万〇九〇二円の修繕費の架空計上をしたと認定したが、事実誤認がある。真実の架空(過大)計上額は、44/9が四八六万四四七一円、45/9が二七七万一〇七一円であり、しかも、右は経理上の誤処理であって、被告人千には脱税の犯意はなかったのである。

(二) 燃料費について

原判決は、被告人千が故意に、44/9において七三三万三四四二円の、45/9において三九三万九三二六円の燃料費の架空計上をしたと認定したが、事実誤認がある。真実の架空(過大)計上額は、44/9が四四二万七一六七円、45/9が三七四万四八三〇円であり、しかも、右は経理上の誤処理であって、被告人千には脱税の犯意はなかったのである。

(三) 被告会社が右のような過大計上の誤りを犯したのは、ダンプ業者に代わって支払う修繕費、燃料費と被告会社自身の支払うべき修繕費、燃料費とを一通の小切手で支払っていたため、誤ってその全額を損金計上したからである。

2  判断

(一) 原判決は、台信忠ほか一名共同作成の調査事績報告書どおりに(一一七九丁、一二一〇ないし一二七五丁、一二九三ないし一三四七丁)架空計上の修繕費額及び燃料費額を認定したものと解される。

(二) これに対して、所論は、支払先別ダンプ業者別に預かり金額(架空計上額)を主張するもので(認否書(第四回分)(一〇二丁以下)、同(第五回分)(一一四丁以下)、第二審答弁書(五)(第二審二一九丁以下))、右調査事績報告書に記載された金額のうちどの金額を争うものであるかは明らかでない。

(三) しかし、右調査事績報告書に記載された各車両の修繕費額及び燃料費額(ガソリン代)は、修理業者及び燃料店からの各請求書、領収書(領収書請求書綴(符九ないし二二、八三))、伊藤睦美((有)山田石油店)、山村俊一((株)藤原石油店)、清水登春(大豊興産(株))、中尾亮(中尾自動車工業(株))、野瀬茂(野瀬ゴム工業所)、岡本達子((有)共栄自動車整備工場)、橋本登之子((有)長門自動車整備工場)、中山征夫(岡本いすゞ自動車(株))各作成の上申書(一三五六ないし一四八六丁。いずれも、ダンプ業者に対する請求額等を帳簿から転記したもの、あるいは請求書をコピーしたもの)、小早川清作成の上申書(一三五〇丁)、被告会社作成の坪田に対する精算書綴(符六三)、車両集計表(符二三)、「一般、車両4/20〆支払明細表」(符八四)に基づいて記載されたものであって、少なくとも前記調査事績報告書中のアンダーラインの引かれた数額については、若干の転記の誤り(例えば、四四年二月二〇日〆分の控除明細表(一二三四丁)中、岩津喜八の修繕費の「野瀬ゴム」欄に三一〇円とあるが、これは、所論指摘のとおり(二五〇三丁)、同表の「平井電機」欄に書くべきものを誤って「野瀬ゴム」欄に書いたものと認められる(符一一号中の平井電機工業所の請求書及び野瀬ゴム工業所の請求書、野瀬茂作成の上申書(一四五〇丁)、符二三中の「44 2/20〆分控除分」と題する紙葉参照)。)、加算の誤り等を除いて、正当と是認でき、右報告書どおりに架空計上修繕費額及び架空計上燃料費額を認定した原判決に、未だ判決に影響を及ぼすべき事実の誤認はないというべきである。論旨は理由がない。

尤も原判決は既に他の点で破棄を免れないので、当裁判所の自判にあたっては、次の二点で正しい数額を使用することとした。

(1) 四三年一一月二〇日〆分の控除明細表(一二二一丁)中、金沢重機の修繕費の「丸善タイヤ」欄に三万九〇〇〇円とあるが、これは同表の「大本照男」欄に書くべきものを誤記したものと認められる(符八三中の大本照男作成の四三年一二月一五日付請求書、符一二中の丸善タイヤ工業所の請求書、符二三中の「(S43 11/20〆分)」と題する紙葉No.2、元帳(符一)「福利厚生費」参照)。したがって、これにより、44/9の架空計上修繕費額は三万九〇〇〇円減少し、逆に架空計上の福利厚生費額は三万九〇〇〇円増加する。

(2) 四四年九月二〇日〆分の控除明細表(一二六四丁、一二六五丁)中、修繕費のその他欄に、長門自動車分として「一万七五五〇円」、「四万〇五〇〇円」、「二万二八二〇円」、「一万一八八〇円」、「二五〇〇円」とあるが、前記領収書請求書綴(特に符一〇、一八)、橋本登之子作成の上申書を検討しても、右各金額にそう金額を見い出すことができない。したがって、右各金額を架空計上修繕費額と認定することはできないものといわざるを得ない。これにより、44/9の架空計上修繕費額は九万五二五〇円減少する。

(四) なお、所論は、右修繕費及び燃料費の架空計上について、被告人千には脱税の犯意がなかった旨主張するが、被告人千は、収税官吏に対して、最初の取調べから、ダンプ業者の油代を経費として落として不正計上していた旨認めており(二二一五丁)、その後の取調べでもこれを認めているのであって(二二二八丁)、これに徴すると、被告人千に所論にいう脱税の犯意があったことは明らかというべきである。論旨は理由がない。

九  福利厚生費及び雑費の架空計上について(控訴趣意書第三の七)

1  所論

(一) 原判決は、被告会社が大本照男(以下、大本という。)に支払った下宿代を福利厚生費として損金計上したことにつき、このうち、44/9においては一四三万三三六〇円が、45/9においては七二万六三〇〇円が、それぞれ架空計上であると認定したが、架空計上となるのは右各金額のうちの更に一部であって、事実の誤認がある。また、原判決は、大本に対する四五年七月二〇日の下宿代の支払いを被告会社が雑費として損金計上したことにつき、これが全部架空計上であると認定したが、架空計上となるのはそのうちの一部であって、事実の誤認がある。

すなわち、被告会社が大本に支払った下宿代のうち、一部は事実被告会社の負担によるものであって、全部がダンプ業者等からの預り金によるものではない。被告会社の負担にかかる下宿代は、<1> 金沢重機(四三年一〇月分から四四年二月分まで)、<2> 寺川惣太(四三年一〇月分から四四年六月分まで)、<3> 三好組(四四年二月分、同四月分、同五月分、同九月分から四五年一月分まで)、<4> ブルオペ(四四年五月分から七月分まで、同九月分)、<5> 美作重機(四四年七月分から九月分まで)、<6> オペ三塚(四四年九月分から一一月分まで)の下宿代があって、これらは、契約によりその下宿代を被告会社が負担することになっていたので、被告会社においてその負担で支払い、外注費の支払いに際してはこれらの者からその下宿代を差し引いていないのである。

(二) なお、右架空計上分についても、それは、ダンプ業者負担の下宿代と被告会社負担の下宿代とを一緒に支払っていたことによる単なる経理上の過誤であって、被告人千には脱税の犯意はなかったのである。

2  判断

(一) 原判決は、台信忠ほか一名共同作成の調査事績報告書どおりに(一一八〇丁、一二七五丁)架空計上福利厚生費額及び架空計上雑費額を認定したものと解される(なお、右調査事績報告書に架空計上分として記載された金額は、被告会社が大本に支払った金額の全てではなく、その一部である。)。

(二) たしかに、第一審証人岡本は、重機持ち込みの場合の重機運転手の下宿代は被告会社の負担であった旨証言しており(二三三八丁)、被告人千も、原審で、下宿代が会社もちの者がいた旨述べている(四〇〇四丁)。

(三) しかしながら、次の諸点を考慮すると、右証人岡本の証言及び被告人千の供述はにわかに措信し難く、少なくとも前記調査事績報告書に記載された分はダンプ業者等の預かり金から支払われたものと認めるのが相当である。論旨は理由がない。

(1) 仮に所論のいうとおりとすれば、所論も認めるとおり、前記金沢重機等の下宿代を同人らの外注費から差し引くことはできないものというべきところ、<1> 車両請求書綴(符二七)中の金沢重機建設(株)作成の四三年一一月分の請求書には、控除額として三五万四六八九円の記載があり、この金額の中に下宿代三万九〇〇〇円が入っていることはその記載上明らかであり、また、車両集計表(符二三)中の「(S43 11/20〆分)」、「(12/20〆分)」、「44 1/20〆」、「44 2/20〆控除分」と題する各紙葉にも、金沢重機の下宿代として、それぞれ、三万九〇〇〇円、三万九〇〇〇円、一万七七〇〇円、一万八三〇〇円の記載がある(仮に右車両集計表が所論の強調するように控除予定表であったとしても、そもそも外注費から控除できないものを控除予定表に記載すること自体が、不可解である。)。<2> 所論のいう「寺川惣太」とは、被告会社の従業員であった寺川惣太及び寺川等の両名を指すものと解せられるところ(前記賃金台帳綴参照)、前記車両集計表中の「(S43 11/20〆分)」、「(44 1/20〆)」、「(44 2/20〆控除分)」、「3/20〆分」と題する各紙葉には、寺川の下宿代として、それぞれ三万六六〇〇円、三万八四〇〇円、三万六〇〇〇円、三万七二〇〇円の各記載が、「6/20〆分(控除)」と題する紙葉の欄外には、下宿代として、寺川等一万七四〇〇円、寺川惣太一万六四〇〇円の記載があり、更に、大本作成の四四年一〇月三一日付請求書(符一九)によれば、同月分の寺川惣太の下宿代は一四〇〇円、寺川等のそれは二万七三〇〇円であるが、同年一一月一〇日付振替伝票(符五)によれば、これら下宿代が同人らの一〇月分の給料から差し引かれており(同様のことは、一一月分及び一二月分の下宿代についてもいえる。大本作成の同年一二月一日付及び四五年一月六日付各請求書、四四年一二月一〇日付及び同月三〇日付各振替伝票参照。)、しかも、右差引きに係る金額は正当にも益金(雑収入)として計上されており(預かった金銭で下宿代を支払ったのにそれを被告会社の損金として計上した場合、逆に預かった金額を益金計上しておけば、経理処理の手法としては拙いが、所得計算上は支障がない。)、右差引き額を益金計上すること自体被告会社が寺川惣太及び寺川等の下宿代を被告会社の負担ではないと認めたことにほかならず、なおまた、寺川惣太及び寺川等の四四年度の各賃金台帳(符六五)にも、その控除額欄に下宿代の記載があるのである。<3> 前記車両集計表中の

「(44 2/20〆控除分)」、「4/20〆控除分」と題する紙葉中には、三好組の下宿代として、それぞれ八四五〇円、一万九二〇〇円の記載がある。<4> 所論は、「ブルオペ」の四四年五月分の下宿代五四〇〇円は被告会社の負担であったと主張するが、大本作成の四四年六月九日付請求書(符八三)によれば、同年五月の「ブルオペ」(ブルドーザーのオペレーターの意」とは「岩田」と「山本」であると認められるところ、右五四〇〇円は、所論が主張するような下宿代ではなく、右両名の昼食代(岩田につき二六日分、山本につき一日分)であると認められ、かかる昼食代まで被告会社の負担というのは、甚だ理解に苦しむ。

(2) なお、岡本も被告人も、捜査段階では、被告会社負担の下宿代があることなど全く述べていなかった。

(四) 次に、所論は、右架空計上分につき被告人千に脱税の犯意はなかった旨主張する。

しかし、岡本は、検察官に対して、修繕費、燃料費、福利厚生費(下宿代)につき二重計上をしていたことは被告人千も知っていた旨供述しており(二三六七丁以下)、これによれば被告人千に所論のいう脱税の犯意があったことは明らかである。

仮に被告人千に本件下宿代の架空計上の認識がなかったとしても、被告人千は、前認定のとおり、修繕費及び燃料費に多額の架空計上があることを認識、認容しており、しかも法人税の確定申告書が虚偽過少の申告書であることを知っていたのであるから、そうとすれば、被告人千は、損金の架空計上分及び益金の除外分の全てについて故意によるほ脱罪の責任を負うものというべきである。論旨は理由がない。

一〇  収入除外について(控訴趣意補充書第二の(一))

所論は、「原判決は、被告人千が故意に原判決の収入除外をした旨認定したが、右は単なる記帳もれにすぎず、被告人千には脱税の犯意はなかったのであるから、原判決には事実の誤認がある。」というにある。被告人千も原審で同旨の供述をしている(三九〇三丁以下)。

たしかに、本件証拠上、本件各収入の除外があることを被告人千が具体的に知っていたかは疑問である。

しかしながら、被告人千は、既に四三年六月ころに岡山税務署の税務調査を受けて会社の帳簿が正確に記帳されていないことを指摘、注意されており、それにもかかわらず、被告人千は、会社の経理をひとり岡本にまかせ、同人が多忙を極めていたのに(被告人千及び岡本の強調するところである。)、補助者を雇い入れようとしなかったものであって、そこには、会社の経理を正しく行おうとする意欲が被告人千に乏しかったことが窮われ、ひいて、収入の記帳もれ等が起こることもやむを得ないものとして認容していたのではないかと推知されるのである。仮にこの点をおくとしても、前記九で述べたとおり、被告人千は益金の除外及び損金の架空計上の全てについて故意によるほ脱罪の責任を負うべきものであるから、いずれにしても論旨は理由がないというべきである。

一一  受取利息の除外について(控訴趣意書第三の九)

1  所論

原判決は、四一年一二月二四日以降に中国銀行水島支店(以下、中銀・水島と略記する。)、広島相互銀行倉敷支店(以下、広相・倉敷と略記する。)、信用組合岡山商銀(以下、商銀という。)及び富士銀行倉敷支店(以下、富士・倉敷と略記する。)に鳥越基吉名義等で預けられた合計四二口の仮名定期預金及び商銀に無記名等でなされた一三口の通知預金をいずれも被告会社に帰属する預金であると認定し、これら預金から生じた利息(44/9一三六万七四〇二円、45/9二一一万一五七四円)もまた被告会社に帰属するものと認定したが、事実誤認である。すなわち、被告人千は、長年個人で土木工事業を営んでおり、四一年一二月二四日の被告会社の設立当時巨額の個人資産を蓄積していた。しかし、被告人千は、かつて(株)大本組と民事訴訟をしたことがあったことから、右の個人資産の多くを仮名の定期預金にしており、これが被告会社の設立後も継続していたのである。本件受取利息は、この個人資産たる仮名定期預金等から生じたものであって、被告人千個人のものである。

2  判断

(一) 原判決が被告会社に帰属すると認定した本件受取利息は、収税官吏遠藤登芽夫作成の調査事績報告書(一九五二丁)によれば、別表(四)記載のとおり、<1> 四一年一二月二四日から翌四二年九月三〇日までの間に新規に預け入れられた中銀・水島の鳥越基吉名義の定期預金合計一七口、一六五〇万円の定期預金(うち金額五〇万円の定期預金は四三年四月六日に一〇〇万円に増額にされた。)、<2> 四二年一〇月二一日から翌四三年九月一四日までの間に新規に預け入れられた中銀・水島の鴨井節夫名義の定期預金等合計一〇口一〇〇〇万円の定期預金、<3> 四三年一〇月二日から翌四四年三月三一日までの間に預け入れられた中銀・水島の福本万太名義の定期預金等合計一五口一五〇〇万円の定期預金、<4> 四三年一一月三〇日に商銀に預け入れられた一口一〇〇万円の無記名の通知預金(但し、これらは四四年一月に払い戻されて、同月、右<3>の定期預金の一部一口一〇〇万円になっている。)、<5>四四年九月二九日に商銀に預け入れられた五口五〇〇万円の無記名の通知預金(いずれも四五年六月に払い戻されている。)<6> 四四年一〇月三一日から翌四五年三月二〇日までの間に商銀に預け入れられた無記名の通知預金等合計七口八五〇万円の通知預金(いずれも四五年六月に払い戻されている。)、以上の預金(以下、これを(一)の預金といい、うち定期預金を(一)の定期預金と、うち通知預金を(一)の通知預金という。)から発生した受取利息であると認められる。なお、右<1>ないし<3>の定期預金すなわち(一)の定期預金は、うち二口を除いて、いずれも四五年四月一日以降まで継続して預金されている(右二口のうち、一口は四四年三月三一日に、一口は四五年三月二五日に、それぞれ解約されている。)。

そして、別表(五)のとおり、右(一)の定期預金の四二年一〇月一日現在の合計額は一六五〇万円、四三年一〇月一日現在のそれは二七〇〇万円(一〇五〇万円の増加)、四四年四月一日現在のそれは四一〇〇万円(一四〇〇万円の増加)、四五年四月一日現在のそれは四〇〇〇万円(一〇〇万円の減少)、右(一)の通知預金の四五年四月一日現在の合計額は一三五〇万円である。

(二) ところで、中国銀行水島支店長作成の証明書(三八七丁以下)、同支店作成の回答書(符九六、九九)広島相互銀行倉敷支店長作成の証明書(六〇六丁以下)、同支店作成の証明書(符一〇〇、一〇一)、信用組合岡山商銀理事長作成の証明書(七七八丁以下)、同組合作成の調査表(符一〇二)、証明書(符一〇七)及び預金預り証(符一〇三ないし一〇六)、富士銀行倉敷支店長作成の証明書(八二九丁以下)、預金口座元帳(符九七)によれば、次の事実が認められる。

(1) 被告人千は、被告会社が設立登記された前日の四一年一二月二三日現在、中銀・水島、広相・倉敷、商銀及び富士・倉敷に対し、実名、仮名、無記名で個人定期預金合計約四八一〇万円を有していた。なお、右以外に当座預金約二〇万円あったが(符九七)、現金がいくら手許にあったかは不明である。

(2) 次に、四二年一〇月一日現在の前記(一)の預金以外の預金(但し、後記(四)の被告会社名義の定期預金及び後記四四年一一月二七日の富士・倉敷に預入れの定期預金を除く。)は、合計約三三六〇万円であり、四三年一〇月一日現在のそれは約三七七〇万円、四四年四月一日現在のそれは約二九七〇万円、四五年四月一日現在のそれは約五三〇〇万円であって、少なくともこれらが被告人千の個人定期預金であることは、検察官も認めて争いはないものと認められる。また、四五年四月一日現在商銀に赤沢次郎名義の通知預金三〇〇万円があった(七三七丁)(以下、右(1)(2)の預金を(二)の預金と、うち定期預金を(二)の定期預金と、うち通知預金を(二)の通知預金という。)。

(三) 右(一)、(二)を比較すると、前記(一)の定期預金は、おおよそ、被告会社設立登記日以降の新規預入定期預金で名義が明確に被告会社、被告人千またはその家族のもの(通称を含む。)となっているものを除いたものであると認められる(尤も、右(一)の定期預金の中には、「千原一夫」、「千原一郎」、「千原太郎」というかつての被告人千の通称である「千原次郎」に類似した名義のものもある。)

(四) なお、前掲証拠によれば、右(一)、(二)とは別に、被告会社名義の定期預金が、四三年一〇月一日現在で約一〇一〇万円(七八〇丁)、四四年一〇月一日現在で約二二五〇万円(七八〇丁、四六六丁、四七二丁、五一三丁。なお、符六二中の第三期決算報告書中にも同金額の記載がある。)ある。

(五) 原判決は、前示のとおり(一)の預金は全て被告会社の預金であると認定し、これに対して、所論は、その預金の資金源泉につき細かく説明を試みて(一四四丁以下、三四五六丁以下参照)、それが被告人千個人のものであると主張している(尤も、右主張の中には、四一年一二月一六日に中村次郎名義の当座預金から引き出された三九〇万円のうちの一〇〇万円が二年後の四三年一二月三一日に和田次郎名義で定期預金されたなどというにわかに首肯し難い主張もある。)。

(六) 当裁判所は、結論として、(一)の預金は被告人千個人のものと認定せざるを得ないものと考えた。その理由は次のとおりである。

(1) まず、四一年一二月二四日から翌四二年九月三〇日までの間に預けられた定期預金一七口一六五〇万円(前記(一)の<1>の定期預金)について検討するに、これを被告会社の定期預金とみた場合、被告人千個人の定期預金は、四一年一二月二三日現在において約四八一〇万円あったものが、翌四二年一〇月一日現在では約三三六〇万円に減少していることになる。しかし、本件証拠上、この約一四五〇万円もの減少を是認するだけの理由は見い出し難い。むしろ、被告人千には右約四八一〇万円に対する定期預金利息収入(当時は年利五・五%)があったこと、また、被告会社に対する前記王島山の切土代金及び矢柄山の山土代金収入があったことを考えると(追加認否書(一)(二四二一丁、二四二二丁)は、これを合計約五八三万八〇〇〇円であると主張している。尤も、右代金が実際に被告人千に支払われたことを証する証拠はないが、少なくとも王島山の切土代金約三六〇万円は、前記二で述べたところからみて、なんらかの形で被告人千に支払われているのではないかと推認される。)、四二年一〇月一日現在の(一)及び(二)の定期預金合計約五〇一〇万円は全部被告人千個人のものではないかと考えられる。したがって、本件一六五〇万円の定期預金から生じた本件利息も、被告人千個人のものと考えられる。

原判決は、被告会社が設立登記された四一年一二月二四日預入れの鳥越基吉名義の定期預金までも被告会社のものと認定しているが、被告会社の資本金五〇〇万円が中銀・水島に入金されたのは同月二六日であって(符九八参照)、原判決の右認定にはにわかに賛成し難い。

(2) 次に、四二年一〇月一日から翌四三年九月三〇日までの間に預け入れられた定期預金一〇口一〇〇〇万円(前記(一)の<2>の定期預金)と、右の期間に元金の増額があった五〇万円との合計一〇五〇万円について検討する。

ところで、右の期間に(二)の定期預金も約四一〇万円増加しているので、全体では定期預金が約一四六〇万円増加していることとなる。そこで、この全体の増加分について考えることとする。

まず、被告人千に定期預金利息収入があったことは明らかであり、その額は、年利五・五%として約二八〇万円(5010万円×0.055)となる。次に、被告人千は、鹿島建設に売却した王島山の山土代金を四二年四月から九月にかけて合計約八四〇万円受領している(前記山土概算検討表(二四九五丁)、鹿島建設(株)岡山営業所長作成の証明書(三六二一、三六二四、三六二五丁))。更に、被告人千には、被告会社に対する前記王島山の切土代金及び矢柄山の山土代金収入があったと考えられる(前記追加認否書(一)は、これを合計約一三五一万円と主張している。尤も、前示のとおり、右代金が実際に被告人千に支払われたことを証する証拠はないが、少なくとも王島山の切土代金約九一〇万円は支払われているのではないかと推認される。)。

他方、たしかに、被告人千は、収税官吏に対して、「会社の不正経理によってできた金を主として商銀に架空名義で定期預金等にしていた。」旨供述しており(二二二八丁)、検察官に対しても同旨の供述をしている(二二九五丁)。

しかし、被告人千の前記収入に鑑みると、四三年一〇月一日現在の(一)及び(二)の定期預金合計約六四七〇万円は全部被告人千個人のものと認めざるを得ないものと考えられる。したがって本件一〇〇〇万円の定期預金と元本増額分五〇万円から生じた本件利息も、被告人千個人のものと認めざるを得ない。

(3) 次に、四三年一〇月一日から翌四四年三月三一日までの間に預け入れられた定期預金一五口一五〇〇万円(前記(一)の<3>の定期預金)について検討する(なお、前記(一)の<4>の通知預金一〇〇万円は、四四年一月に払い戻されて右一五〇〇万円のうちの一〇〇万円の定期預金になっているので、右一五〇〇万円の定期預金に含めて検討する。)。

ところで、右の期間に、右(2)で被告人千個人の定期預金と認定した一口一〇〇万円の定期預金が解約され(四四年三月三一日)、また、(二)の定期預金が約八〇〇万円減少しているので、この合計約九〇〇万円が本件一五〇〇万円の定期預金の一部になったとすると、増加額は約六〇〇万円となる。そこで、この約六〇〇万円について考えることとする。

まず、被告人千に定期預金利息収入(但し、半年分)があったことは明らかであり、その額は年利五・五%として約一七八万円(6470万円×0.055÷2)となる。また、被告人千には、前記二のとおり、小柴建設に対する外注費として被告会社から支払われた王島山の切土代金約五二〇万円(前記二の1の番号1ないし3の工事に使用された切土量合計二万八八九〇m3に一八〇円を乗じた金額。)があったと認められる。

他方、たしかに、被告人千は、四三年末か四四年初めころ千人録の山林を買って手付金二五〇万円を支払っており、また、四三年末に長女をグアム旅行に行かせて約二〇万円を支出し(二五七丁)、自らも、四三年暮か四四年初めに韓国旅行に行き、四四年二月ころには香港旅行に行って、合計約九〇万円を使っている(被告人千の検察官に対する供述調書(二三〇二丁))。加えて、前示のとおり被告人千は収税官吏に対して、会社の不正経理によって作った金を商銀に仮名ないし無記名で預金していた旨供述しており、現に、前記認定のとおり被告会社の44/9には合計約一四五〇万円もの経費の架空計上ないし収入除外があったのである。そうとすると、前記約六〇〇万円のうち、少なくとも別表(四)の四三年一〇月三〇日から翌四四年一月三一日までの間に商銀に預けられた五口五〇〇万円の定期預金については、これを被告会社のものと認定してもよさそうである(なお、(二)の定期預金中に、四三年一〇月一日から四四年三月三一日までの間に商銀に預け入れられた定期預金はない。)。

しかし、被告人千の前記収入に鑑みると、やはり右五口五〇〇万円を被告会社のものと認定するにはなお躊躇を感じざるを得ず、結局、四四年四月一日現在の(一)及び(二)の定期預金合計約七〇七〇万円は全部被告人千個人のものと認めるほかないと思われる。したがって、本件一五〇〇万円の定期預金から生じた本件利息も、被告人千個人のものと認めるのほかない。

(4) 最後に、四四年四月一日から翌四五年三月三一日までの間に預け入れられた通知預金一二口一三五〇万円(前記(一)の<5>、<6>の通知預金)について検討する。

右の期間に、(二)の定期預金も約二三三〇万円増加し、新たに(二)の通知預金三〇〇万円が発生し、また、これとは別に、四四年一一月二七日富士・倉敷に一口一〇〇万円の仮名定期預金がなされ(八三五丁、一九六六丁)、四四年九月八日商銀に対し一五〇万円の返済がなされている(八〇六丁)ので、これらと本件一三五〇万円との合計約四二三〇万円について、その資金の出所につき検討すべきこととなる。

まず、右の期間に前記(2)で被告人千個人の定期預金と認定した一口一〇〇万円の定期預金が解約されており(四五年三月二五日)、また、被告人千には定期預金利息収入約三九〇万円(7070万円×0.055)があったと認められる。次に、被告人千は、四四年五月に山林を代金一四四万円で佐多五月に売却している(三六三〇丁)。更に、被告人千は、四四年九月二四日被告会社から王島山の山土代金として一〇〇〇万円を受領しており(公表済み。振替伝票上は同年九月三〇日受領。なお、右一〇〇〇万円は、被告会社が同年四月二一日に商銀に預け入れた通知預金一〇〇一万八三六〇円を払い戻して支払われている。岡山商銀理事長作成の証明書(七二〇丁)参照)、これを同日商銀に赤沢次郎名義で定期預金している(六六八丁、七八一丁)。また、被告人千には、前記二のとおり、小柴建設に対する外注費として被告会社から支払われた王島山の切土代金約二二三七万円(前記二の1の番号4ないし10の工事に使用された切土量合計一二万四二七五m3に一八〇円を乗じた金額。これらは別表(一)のとおり四四年四月から一二月までの間に支払われている。)があったと認められる。加えて、被告人千は、中銀・水島から四五年一月九日に一〇〇万円の、同年二月七日に五〇万円の、同年二月二八日に五〇万円の各貸付けを受け(五六四丁、五六七丁)、商銀から同年三月二六日に六〇万円の貸付けを受けている(八一二丁)。

なお、被告人千は王島山の山土代金として四四年六月三〇日及び九月二八日に合計八七〇万円を妻名義で被告会社から受け取っているが(公表済み)、この代金は、被告人千が妻名義で森下庄平、土師繁木及び土師敏正から購入した田の買受代金合計約三六七〇万円(右各人の質問顛末書。一九〇六丁、一九一五丁、一九一九丁、当審弁五ないし弁九)の一部に充てられているので、定期預金にはまわっていない(その余の土地代金は、中銀・水島からの借入金合計七〇〇万円、商銀からの借入金合計一八〇〇万円等でまかなわれている。被告人千の収税官吏に対する質問顛末書(二二二七丁)、中国銀行水島支店長作成の証明書(五六五丁、当審弁一一)、岡山商銀理事長作成の証明書(八〇六丁、当審弁一〇)参照)。

他方、たしかに、被告人千は、四四年七月に商銀に一〇〇万円を追加出資し(六八五丁)、同年一〇月ころには水道の負担金として一八七万五〇〇〇円を支払い、四五年二月には(株)三共観光開発の設立に際し四〇〇万円を出資し、また、四四年ころに朴泰栄に二〇〇万円を、柳甲録に三〇〇万円をそれぞれ貸し付けている(四七年四月現在未返済、八五四丁)(前記検察官に対する供述調書)。そして、前示のとおり被告人千は、会社の不正経理による金銭を商銀に預金していた旨供述しているのであり、現に前記認定のとおり被告会社の44/9には合計約一五〇〇万円の、45/9には合計約一〇〇〇万円の経費の架空計上ないし収入除外があったのである。そうとすると、本件一三五〇万円の通知預金は被告会社のものと認定し得ないでもない。

しかし、被告人千の前記収入に鑑みると、本件一三五〇万円を被告会社のものと認定するにはなお躊躇を感じざるを得ず、結局、四五年四月一日現在の(一)及び(二)の預金合計約一億〇九五〇万円は全部被告人千個人のものと認めるのほかない。したがって、本件一三五〇万円の通知預金から生じた本件利息も、被告人千個人のものというほかない。

(七) 以上のとおりで、本件(一)の預金は被告人千個人のものといわざるを得ず、したがって、本件利息も被告人千個人のものと認めざるを得ない。論旨は理由がある。

第三自判

よって、刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書に従い、更に次のとおり判決する。

一  罪となるべき事実

被告会社は、岡山市岡町六番八号に本店を置くとともに、岡山県倉敷市明神町四番五〇号に営業所を設けて、埋立や造成工事等の事業を営んでいるもの、被告人千は被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人千は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注費、修繕費等を公表帳簿に計上して真実支払をしたごとく装い、その所得を秘匿したうえ、

(一)  昭和四三年一〇月一日から昭和四四年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二六八一万一七二四円で、これに対する法人税額が八九四万一二五五円(税額計算書参照)であったのにかかわらず、昭和四四年一二月一日、岡山市天神町三番二三号岡山税務署において、同税務署長に対し、所得金額は一四九一万一七四六円でこれに対する法人税額は四七八万〇二七〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により法人税四一六万〇九八五円を免れ、

(二)  昭和四四年一〇月一日から昭和四五年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一〇七八万四九〇四円で、これに対する法人税額が三四二万五七二六円(税額計算書参照)であったのにかかわらず、昭和四五年一一月三〇日、前記岡山税務署において、同税務署長に対し、所得金額は七九七万七五五八円でこれに対する法人税額は二三九万八五八〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により法人税一〇二万七一三八円を免れ

たものである。

二  証拠の標目

次に掲げるもののほか、原判決の「証拠の標目」欄記載のとおりである(但し、収税官吏の被告人千に対する昭和四六年一二月九日付質問てん末書を除く。)。

一 被告人千の当公判廷における供述

一 差戻前第一審の第三三回、第三四回、第四一回各公判調書中証人岡本祐二郎の供述部分

一 原審第六回公判調書中証人岡本祐二郎の供述部分

三  法令の適用

原判決の適用した法令(刑種の選択、併合罪加重を含む。)を適用し、その各刑の範囲内で被告会社を罰金二〇〇万円に、被告人千甲童を懲役六月にそれぞれ処し、被告人千に対し刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、差戻前第一審、控訴審及び原審における訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条を適用して被告会社と被告人千に連帯して負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 齋藤昭 裁判官 武部吉昭 裁判官原田敏章は転補のため署名、押印することができない。裁判長裁判官 齋藤昭)

別表(一)

小柴建設関係外註費

<省略>

別表(二)

三和土木関係請求額支払額

<省略>

別表(三)

原判決認定の仮払金

<省略>

別表(四)

(一)の預金預入年月日

<省略>

別表(五)

(一)、(二)の預金表

<省略>

<省略>

脱税額計算書

自昭和43年10月1日

至昭和44年9月30日

<省略>

脱税額計算書

自昭和44年10月1日

至昭和45年9月30日

<省略>

控訴趣意書

被告人 株式会社水島土木工業

同 赤沢次郎こと千甲童

右両名に対する昭和六一年(う)第七〇号 法人税法違反被告事件について左の通り控訴の趣意を陳述する。

昭和六一年一〇月一六日

第一、はじめに

原審は被告人両名に対して有罪の判決の言渡を為したが、それは全部事実を誤認したことによるものであり、被告人両名は無罪である。

以下、その理由につき総論及び各論に分つて説明する。

第二 総論

一、本件法人税法違反被告事件において、検察官(国税局も含む)は、被告法人の実際所得金額を認定するについては損益計算法のみを用い、財産増減法は全く用いなかつたと主張している。

然し、所得税法は所得金額の計算につき、損益計算法を採用することを規定(法第三六条、三七条)しているが、法人税法は所得税法とは異なり当該法人の所得額を認定するについて直接的な明文を置いていない。

(判例時報一〇〇六号一一七頁判例批評参照)

然し、同法第一五九条、第七四条一項第二号、第六六条乃至第七〇条の二及び同法施行規則(特に第三四条確定申告書の記載事項)、並びに商法等諸法令を総合することにより、損益計算法(その年分の収入金から必要経費を控除して所得を算出する方法)によるほか、貸借対照表による財産増減法(期首現在の貸借対照表の各勘定科目の数額と期末現在の貸借対照表の各対応科目の数額とを比較し、期中の増加額、即ちその年分の所得を算出する方法)を併用するのが正規であるとされている。即ち、両者による計算結果は理論上一致すべきものであるところから、税法の規定に従つた所得金額の計算は損益計算法によつてこれを行い、その結果を貸借対照表による財産増減法によつて験算をすることにより、正確を期することにすることが基本的一般原則(基本理念)とされている。そして、この基本理念は、課税事件たると刑事事件たるとに関係無く両者に通ずる理念である。

従つて、そのどちらか一方のみの方法を用いて算出することは、他のもう一つの方法を併用することが不可能な例外的場合に限られるとされるのである。

従つて、また本件について検察官主張の如く、右の基本的一般的原則があるのにこれを無視して、ことさらに(格別の理由がないのに)その一方の損益計算法のみを用いてその所得額を認定しようとするのは、法令(経験則も法令)に違反し許容されないことである。

それ故、松沢智教授も、その著、「租税実体法と処罰法」(一四五頁以下)において、「検察官は刑事事件においても、所得額を損益計算法によつて立証するか、財産増減法によつて立証するについては、いづれの方法によつても所得額が理論的に一致すべきものとされている以上、本来、検察官の裁量によつて選択し得るものであるとの基本的立場を採るものの如くであるが、その当を得ないことは上記説示に照らし明白である」と説いている。

この理の根本は、国が国民に保証した租税法定定義(憲法第三〇条)と罪刑法定主義(同第三一条)に求められるのである。

即ち、内国法人(ここでは被告法人)が法人税法第一五九条第一項の違反を犯したとしてこれを処罰しようとする場合、先づその逋脱所得(ひいては租税責務)の有無ならびにその額を決定するについてはあくまでも、法定された商法、法人税法、同法施行規則等を正確に、而も漏れなく適用して決定されなければならないのであつて、これが租税法定主義である。

而して、前記の如く法令により当該法人所得(個人所得ではない)の額を決定するため、基本的、一般的には、特別の合理的理由がない限りは原則として損益計算法と財産増減法の両者を併用すべき旨法定せされているのであるから、当然、検察官(国税局も含む)は法定の右原則に従う義務がある。

ところで、本件被告事件について提出されている諸証拠並びに原審証人遠藤登芽夫の証言等を全て総合した結果によれば、本件逋脱罪の捜査にあたり、被告法人は、所謂二重帳簿をこしらえていたような事実は全く認められず、また備付けの帳簿の全冊そのまま(改ざんされないで)の状態で全ての証慂書類と共に提出され、その不足の故を以て捜査に著しい困難を来したようなことは全くなかつた事実が認められる。

而して、検察官においても、特に資料の不足や不備のために、財産増減法による捜査をすることが不可能若しくは著しく困難であつた旨の証拠は勿論その主張すらもなさず、実際捜査に当つた前記証人遠藤登芽夫においては、国税局の捜査は損益計算法と財産増減法の両方法を併用して行つた旨証言しており、その間捜査資料の不足の為後者の方法を用いることが困難であつたなどのことは全く証言していないのである。

然るに、検察官は、何等の合理的理由がないのに、前記法令に定めた基本的原理に違反して、その内の一方法だけを用いたのであつて、検察官の立証は全く違法と云うべく、結局本件は逋脱税額につき犯罪の証明がなかつたことに帰着するので被告人は無罪である。

果せる哉。後記の通り検察官(国税局を含む)が損益計算法によつて算定したとする逋脱所得額は間違いで、実際所得額に合致しないものであるとの理由で既に一四年余も争われている。若し検察官がもう一つの財産増減法も併用して正しく験算を為していたならばそれによつて、自らの誤りを発見することができ、このような争いが続くことはなかつたのである。

然るに、これを為さなかつた違法により、前記の損益計算法のみによる算定に誤りがあることを発見することができず、(あるいは実際上は前記の如く財産増減法による験算をしていたのであるから、これを発見していたのに、故意にこれに目を覆つて告発乃至公訴を提起した為め)このようなこととなつた次第である。

二(一) ところで、検察官(国税局も含む)が証拠書類があるのに敢えて財産増減法を用いなかつた理由は何なのか、前述の通りそこにはそれを納得せしむるに足る合理的な理由はないが、強いて好意的に考えるならば、損益計算方法について計算するだけで正しい逋脱所得額が算定できたと誤認したからであるとも考えられるのであるが、そうであるとするならばこれについて、検察官が犯した違法は重大なものがあると云うべきである。

また、原審での証人遠藤登芽夫の証言と被告人千甲童の供述並びにその他の証拠を綜合するならば後記の如く、本件捜査は、被告人赤沢次郎関係の仮名預金の資源は、てつきり、すべて被告法人の法人所得を被告人赤沢次郎が架空外注費をねつ造する等の方法により抜取つた金であるとの見込みで捜査を開始されたものであるが、後述する如く、稱する架空外注費も工事毎に真面目に調査すれば決して二重支払いしたものでないことが判明するのにその取調べもなさず、ただ小柴建設に圧力をかけて当面架空外注費支払を推測せしめる不実の捜査書類を作成するにとどめたが、捜査の進むにつれ、被告人赤沢次郎は昭和四一年一二月二四日被告法人設立前既に合計金約一億二、〇〇〇万円もの山土売却代金を取得していたことが判明したり、同時に被告人赤沢次郎個人所有の王島山の約三三万立方米の山土を被告人水島土木工業がその仕入代金を支払うことなく使用している等の事実が判明したりなどしたため、損益計算法のみで計算した数字を財産増減法を併用して験算をなしたならば、到底両者を一致せめしることができないことが判明するに至つたので、不法にも誤つた損益計算方法による計算結果を糊塗隠ぺいするため、敢て財産増減法による験算結果を証拠として提出しなかつたものであると思慮されるのであつて、その動機理由において誠に違法のものがあると認められる。

(二) 検察官は、差戻前の第一審及び控訴審においては公訴事実の証明については損益計算法のみによつて、公訴の維持を図ろうとした。

これに対し、被告人らは右の損益計算方法による個々の勘定科目について、その計算の間違いを正すべく、直接的に、主張並びに反証を提出して争い、なおその主張の正当性と性格性を証明すべく、進んで財産増減法による主張並びに反証(前の第一審の弁第一号証ノ一乃至第一八号証等)を提出して争つた。因に、差戻前の一審では検察官、裁判官共後者の方法による主張並びに反証の提出につき問題なくこれを認めたことを特に付言し度い。

その結果、前の第一審は、――控訴判決が指摘するように会計法則の解釈を誤つてはいたが――結局は、犯罪の証明なしとして被告人らに対し無罪の判決を言渡した。実にそれは昭和四七年公訴提起後約七年の長きに亘り熱心な証拠調べの結果であつたのであつて、その間において審理裁判官は、検察官請求の諸証拠には信用性がなく、これによつては、到底公訴事実を認定することが出来ないばかりか、かえつて、被告人らの主張並びに提出の証拠によつて、益々公訴事実に対する証明の不十分さが認められるので、被告人らに対しては犯罪の証明なしとして、無罪の言渡をなすべきであるとの強い心証を形成されていたものであることは間違いない。そして、同裁判官は、この心証を端的に表明しようとした余り、控訴審判決が指摘したような会計法上の誤りを犯したものであると思考せられるのである。

(三) 差戻後の原審において、被告人並びに弁護人らは、財産増減法の方法により反証を提出しようとして、――本件逋脱事件に対応する課税処分に対する広島国税不服審所宛の審査請求事件において、課税処分庁たる倉敷税務署長が右審判所に差出している――弁十一、弁十二の答弁書(これには、逋脱所得金の額並びにその金がいくら、どのように社外流出乃至社内留保されているかが記載されている)を書証として提出して、その取調を請求し、その許可を得たならば、その内容が不実であることを立証するため諸証拠を提出して、以て検察官が損益計算法のみによつて算出した本件逋脱所得額に誤りがあることを立証しようとした。

然るにこれに対し、検察官は、その間接事実を立証しようとするものであるとの理由で不同意とされた。そのため、弁護人としては已むなく、物証として「本書を行政不服審査の関係で本書面が提出されている」との立証趣旨をかえて提出せざるを得なかつた。

また、弁護人は右の課税処分をなした当時の税務署長久保亨を証人申請して前記逋脱所得のアリバイ、即ち、その社外流出乃至社内留保の内訳及びその金額等について証言を求めようとした。

然し、これまた関連性なしとの理由で反対され、弁護人は已むなく右申請をも撤回せざるを得なかつたのであつてこれらのことは本件記録に明らかにせられている筈である。

以上の如く、検察官は原審においては、強硬に損益計算法のみによつて立証すべきであるとの立場を取つて譲らないばかりか、弁護人らにおいて、検察官が損益計算法によつて計算したとする逋脱所得額の存在を否定して、財産増減法に基づく仮証(書証と人証)の取調を請求したそのことについてまで事実認定(数額認定)について関連性がないとして悉く弁護人の証拠申立に対し反対したのである。

同一の法人税逋脱事件について、租税逋脱罪における逋脱所得額と課税処分による逋脱所得額が、一致しないことがあるのは法令適用の面において若干異なるところがあるので多少の異同があるのは己むを得ないが、その基礎たる逋脱事実については異同がないのであるから、刑事裁判においてその逋脱所得額を誤りなく正確に認定するに際しその課税処分に対する不服審判において提出されている主張及び証拠が、その刑事裁判において主張し乃至は証拠として提出されることは真実発見という刑事裁判の基本理念に合致するものであり、当然許容されなければならない。

註 註釈刑事訴訟法第三巻、第一八六頁参照――同旨の記載あり。

ましていわんや、本件の脱税事件については前記倉敷税務署長作成の答弁書(弁十一、同十二)とは別の答弁書(当審において新たにその内容を証拠として貰うため右の弁十一と十二と共に証拠取調の請求する予定のもの)の第一の1によれば、「岡山税務署長は広島国税局収税官吏の査察調査によつて収集された資料に基づき請求人(被告法人)の所得を調査し、同税務署長が更正処分等を行つたものである)と記載されている。

而して、同税務署が(損益計算法によつて)算出した逋脱所得額と、検察官(国税局を含む)が(損益計算法によつて)算出した逋脱所得額とは全く同一の額となつている。(被告人既提出の認否書、答弁書、供述書等参照)

このような、事実関係の下においては、なおさら前記の主張乃至は証拠取調の請求が許されるべきものである。

然るに、このことが検察官の妨害によつて十分に行うことができなかつたことは、刑事訴訟法上頗る遺憾である。

而して、検察官が右の如く公判廷において法人税、刑事訴訟法を正しく理解しないまま損益計算法のみで計算すれば一切それにて足るのだとする一方的独断的な誤つた考え方は、起訴前の捜査においても、そのままあらわれているのであつて、そのような誤つた考え方の下になされた不適正な捜査によつては、決して正しい逋脱所得額の算定が出来ているとは思考せられない。

よつて、本件は証拠不十分としても無罪とされるべきものである。

なお、原審における証拠調べの瑕疵を補正するため、当審においては新に証拠の取調べを請求する予定である。

三、一歩を譲り、本件被告法人の逋脱所得を計算するにつき合理的理由がないのに、損益計算法によつてのみ行つたとしても、それが租税に関する判例がしばしば云う如く、「実際所得金額が少なくともこれ以下ではない」と云う最小限度額が正確に算定できているならば、真実は二つないのであるから、その結果を肯定しなければならないことは刑事裁判の本質上己むを得ないことがあるかもしれない。

然し、本件においては前記の通り合理的な理由が全然ないのに、その所得金額を算出するにつき一方的に損益計算法のみが用いられ、而も、それが適法に且つ適正に正しく行われていないことを理由として、被告人らが強力に争つている本件において、国税局は、実際は、損益計算法のみならず財産増減法も併用して調査しておりながら、検察官は、その公訴提起並びに公訴の維持に際して、異常に後者の財産増減法に基づく証拠調査を為すことを拒むのは、後者の方法で験算するならば、検察官算定の金額が間違いで到底本件公訴を維持し得ないとの危ぐに基づくものであるとしか考えようがない。このことは、検察官が損益計算法により算出した被告法人の所得金額が正確に正しく算出されていないとの事実を明らかに証明するものであると云うべきである。

四、検察官の冒頭陳述諸の末尾添付の「損益計算書」は不正確である。従つて斯用な不正確な計算書によつて計算された犯則所得額を、採つて以て正しい犯則所得額とすることは出来ない。そもそも、損益計算法に従つて所得金額を算出するについては、法令に従へば、本書末尾添付の書式例の通りの表を作成するのが原則である。

而して、それには、たな卸資産の問題は所得金額の算定に当たつては最重要のことであるので、税法も、たな卸資産の評価方法等につき種々規定している。

然るに、前記検察官作成にかかる損益計算書を見ると、別紙書式例にある、期首たな卸高、期末たな卸高の記載が全く見当たらない。このことは、本件被告法人は、期首にも期末にも全燃材料(山土)を在庫していなかつたと云うのである。

然し、当審証人遠藤登芽夫の証言並び同人が田井検事宛提出した山土既概算検討表(請求番号二〇〇号)の記載によつても明白な如く、被告法人は山土を用いて埋立工事の請負業を盛大に営み、年間巨大な量の山土を使用していた者である。そして、そのような山土は、他から仕入れたもの或は被告人赤沢次郎が会社設立以前から個人的に所有していた王島山所在の前記約三三万立米を使用したり、或は被告人赤沢次郎の妻芳子等が所有する王島山及び家の上(矢柄とも云う)の山土採取権を買受ける等の方法により調達していたのであるから、実際上は勿論常識的にも、その期首及び期末において相当金額の山土在庫を保有していたことは間違いない。それだのに右の損益計算書には、両年度共、期首、期末における山土のたな卸高の記載がない。

従つて、このことは、被告法人は、右両年度共、期首、期末に一立米メートルの山土も保有していなかつたということを表すものであり、取引業界の常識に反し、実際も反する。

原審証人遠藤登芽夫の証言によれば、前記山土概算表は起訴前に同人が作成したものの如くに証言しているが、同表の第一頁には、昭和四八年五月二二日、公判立会の田井検事宛に作成して提出したものとあり、捜査中に作成されたものでないことは明白である。

然し乍ら、同表を全体的に推測するならば、捜査の段階においては、被告法人が保有乃至使用した山土について、遂にその実態(期首、期末の在庫量、期中の仕入量、使用量の動き及びその金額の動き)を正確に把握することができなかつたか、或は、為さなかつたことから無責任にも被告法人の社員岡本祐二郎から、「総勘定元帳に記載されている山土の外には仕入れ山土はない」等との強引きわまる質問顛末書をとつて捜査終りとして送検したものであることが伺われるのである。そうでなければ、両年度共、期首、期末に在庫ゼロと云うようなことは希有ではなく到底あり得ることではないのである。

但し、被告会社が当該年度内に使用し或は次の年度で使用すべく用意していた山土が悉皆被告人千甲童個人所有の山土であつたと云うならば、話は別である。然し、少量と雖も被告会社所有の山土を用意し所有していたであらうことは総勘定元帳の記帳からも容易に推定できる。

以上の次第で右の損益計算書は正しく作成されていない不実のものである。従つてこのような不正確な計算書によつて算出された公訴事実記載の所得金額は、これまた不正確であるので、これを以て罪となるべき事実を確定することは出来ない。

よつて本件は無罪である。

五、原判決は、「被告人千甲童は被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的を以つて第一――架空の外注費、修繕費等を公表帳簿に計上して真実支払をしたごとく装い簿外となつた現金を架空名義の預金にするなどして、その所得を秘匿した――云々」と判示している。

右に判示された「架空名義の預金にする」との所為は本件法人税法違反事件においては、これをいわゆる「罪体」と見るか否かは別として、少なくとも、原審は、被告人らが被告会社の所得金を社外に取出して、架名預金にして秘匿したと云う事実を認定しているのであるから、果たして、被告人らが右認定の如く会社の金を社外に持出して架名貯金とした否かは、被告人らが本件法人税法違反の罪を犯しているのか否かを決める上において、最も大きな鍵であると云わなければならない。

然し、この点については、被告人らが差戻前の一審で提出した認否書(第七回)、前の控訴審で提出した答弁書(三)及び原審で提出した補充認否書(一)並びに原審での被告人千甲童の本人の供述により具体的詳細に説明してある通り、被告人らは決して、原判決適示の如く被告会社の金を持出して架空名義の預金にしたりなどした事実は全く存しないのである。理由の詳細は、特に前記被告人提出の補充認否書(一)の記載に原審における被告人千甲童の供述に、検察官請求番号の116~121の1及び弁護人提出の符第九六号第一〇六号の書証を対比乃至綜合することにより明瞭である。

なお、これについては後記各論の項を参照され度い。

因に、原判決は、被告人らは抜き取つた会社の金を架名預金にした事実を認定する証拠として前記請求番号116~1218(但し121の1はない)の各銀行支店長証明書を掲記しているが、同証明書の記載だけでは、被告人らが架空経費を計上して抜き取つた現金を預金した事実を証明することはできない。即ち、右証明書だけではその預金元本が何人の所有に属するものであるか、どの架空の経費がどのようにして抜き取られ、それがどの分の預金とされたものであるかなど、その具体的関連について証明することは出来ないのである。

而も、他にはこれを証明する証拠は何も摘示されていない。

よつて、被告人らが原審認定の如く架空の外注費や修繕費等をこしらえた事実は全くないことは実際上も理論上も明かである。

以上の次第で、いづれの点からしても被告人千甲童が為したる架名名義の預金は同人が被告会社の金員を持出して架名預金としたものでないことは疑う余地もない程に明白であり、同時にこれを覆へす証拠もない。

六、被告会社は、従前被告人千甲童が個人事業としてやつて来た水島土木を昭和四一年一二月二四日株式会社水島土木(後商号変更して株式会社水島土木工業となる)とした。

その際、個人事業の事業用資産としては、業務の形態上、ダンプカー等の運搬機械を若干所有している外、倉敷市福田町松江獅々岩二七四番の一乃至四、同所松江鴻ノ巣二七二番の地上に切土約三三万立米及び同市連島町字家の上二九〇七番外一八筆計一町八畝二六歩における山土採取権を有していた。

而して、右の山土は、被告人千甲童が、昭和三七年七月二三日妻赤沢芳子名義で平和建設の神原貢から同地上の山土所在地前面に所在し、鹿島建設株式会社がその所有山土を搬出するのに通行上邪魔になるため、同社から要請により同社の応援のもとにその通路を開くため、ブルトーザーを用いて切土し、約三〇万立米(三五万立米に近かつたと思われるが正確を期するため控えめに三〇万立米とした)の山土が生じたので、それを同地上の邪魔にならぬ箇所に蓄積し、被告人千甲童がこれを所有していたものである。(弁第三号参照)

またの山土採取権は、被告人千甲童が昭和四〇年一一月一二日植野寛より金七四万二〇〇〇円を支払つて取得したものである。(弁第一の一乃至七参照)

然し、被告人千甲童は右被告会社設立に際し、前記運搬機械は即時一括して会社をして使用せしめることとした。

然し、前記の山土三〇万立米及びの家の上の切土採取権は、即時一括してはこれは会社に使用或は採取することを許さなかつた。そして、会社設立後、会社が後日必要によりこれを使用或は採取する場合は、被告人千甲童が後日において、その対価を受けて譲渡することとしたのである。法人税法施行規則によれば、個人企業を法人組織に変更した場合には、別紙書式(資料(一)に則り、個人の営業用資産及び負債の内、会社に譲渡したものがあればその明細と、譲渡しなかつたものの明細とを届け出ることが義務付けられているのに、前記機械類は割賦で購入中のもので売主に所有権留保されていたので、この所有権を新会社に譲渡することが出来なかつたので、譲渡しなかつたし、前記の山土との採取権はその価格が著しく巨額で資本金五〇〇万円の被告会社の資金能力上はこれを一時に譲受けることは出来なかつたので、これを一括譲渡することをしなかつた。

このことは、被告人千甲童が原審公判廷において詳しく供述しているし、その他の証拠によつても明白にされている。

ところで、差戻前の一審での証人正木質の証言によれば前記の山土の価格は一立米当り一八〇円であることが証明されており、の採掘前の山土は後記の通り総量二三二、二〇〇立米が見込まれるところ一立米当り金六三円であることが証明されているところ、の山土は三〇万立米であるのでその合計価格は金五四〇〇万円となり、の採取料金は合計金一四六一万一〇〇〇円、総合計金六八六一万一〇〇〇円余となり、新払込資本金五〇〇万円の被告会社がこれを被告人千甲童から直に譲受けることにしなかつた理由はここにあつた次第である。

それだのに、被告会社は、昭和四四年九月期において、前記の山土を鹿島設計株式会社から下請けした日鉱LPG球型タンク基盤工事に八二七〇立米使用した外、その他一五工事用に合計一七万八九五七立米を、更に昭和四五年九月期において前同様ペトロ場内外四工事用合計八万一六〇〇立米を、総計二六万〇五五七立米(見積総額金四九〇万〇二六〇円相当)を使用したのである。(認否書第七回七一頁寄り七五頁まで参照)

而も、被告会社は被告人千甲童に対し右の山土使用に対する対価を支払つていないのである。このことは、被告人千甲童の原審公判廷における供述、被告会社の総勘定元帳の記帳によつて明かに認められる。(総勘定元帳の記載中、被告会社が被告人千甲童に山土代を支払つたことがある旨の記載も散見されるが、右代金は前記の各工事に使用した山土の代金ではないことを念のため付言する。)

また、被告会社は昭和四四年九月期において、前記の山土の内六万八四〇〇立米を新西阿知団地造成工事外一工事に四八〇〇立米を、昭和四五年九月期において同様、岡崎地区宅地埋立工事に五万八二〇〇立米を総計一二万六六〇〇立米(一立米当り六三円として見積総額金七九七万五八〇〇円相当)を使用したのである。

(認否書第七回七二頁、七三頁参照)

而も、被告会社備付の総勘定元帳その他の証拠を検しても被告会社が被告人千甲童はもとより他の何人に対しても右の山土採取代金をストレートに山土採取代金として支払つたことを証するような記載を発見することは出来ないし、実際もそうである。そこで、被告人千甲童は、後記の如くこの山土採取代金を被告会社に直接請求してその支払を受けるべきであるのに、これを回避し、松浪組をして同組が本件被告会社より支払を受くべき山土運搬代に、右の山土採取料を加算して被告会社に請求せめてこれを受領さしめた上、同組から山土採取料を受け取つたのである。

以上の記述によつて判明する如く、昭和四一年一二月二四日被告会社が設立された際、巨額の価格を有する被告人千甲童所有の山土並びに山土採取権が、被告人千甲童所有として留保されているのに、被告会社がこれを使用するのに、その使用量及び金額等につき明確なる記帳をなすべきであるのに、創業の日が、浅かつたこと、会計事務の人員が極端に少なかつたこと、業務が著しく繁忙であつたことその他の支払いのためこれを怠つていたことが明らかである。そして、右会計処理上の怠慢と不始末は当然非難さるべきものではあるが、さればと云つて、この非難を被告人らの刑事上の責任とすることは不当である。課税上の必要から、会計処理上の怠慢と不始末を是正し、遡つて正しい所得額を算出するためには煩瑣な手数を要することは勿論ではあるが、例えば本件の如き場合においては、被告人千甲童所有の前記の土地やの使用先、使用量、使用代金等を箇別に具体的に根気よく可能な限り調査し、学説及び判例が常用する「通常人であれば誰でもが疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確心を得る」までの調査を為すべきである。まして、科刑のおそれのある刑事裁判の審理においては、一段とその調査の密度は多重さるべきである。被告人ら並びに弁護人は、差戻し前の一審において、前記の山土の件につき強く主張したところ、これに対する弁明として検察官は遠藤登芽夫の作成に係る田井検事宛の「山土概算検討表」(記録二四六八丁乃至二四九六丁)を証拠として提出し、山土関係で被告会社の仕入の計算は認められないと主張された。これに対し、被告人らは、早速「被告の認否書について告発人遠藤登芽夫が昭和四八年五月二三日付で岡山地検田井検事殿宛に提出した書面に対する検討書」(昭和五六年二月一八日付被告人らの供述書参照)を提出し、強くその誤りを指摘した。その詳細は右書面を一読すれば明瞭であるので、再述はしないが、遠藤登芽夫は許すべからざる根本的誤りを犯している。

即ち、同人は山土の仕入量(立米)を計算するに当り地山を採土した場合掘削によりほぐされるから一・三倍に増加するとなし、刑訴各年度の仕入山土の数量に一・三倍を乗じた数量、即ち、例えば被告会社が仕入れた一〇〇〇立米の山土を埋立造成地へ搬入した際には一三〇〇立米の山土となるとするのである。

然しながら、当該採土によりほぐした土量を埋立地に運入し埋立完成後の出来上がりの盛土量は埋立のため重量運搬をするダンプトラックの頻繁な埋立場の従来による埋立土の締固め等、その他種々の原因により、その土量は変化し、出来上がりの盛土量は当初搬入の山土に比較し減少するのが業者間の経験による定説となつている。

而して、社団法人日本道路協会編の道路土工指針(差戻前の一審で証として提出済のもの)によれば、採土によりほぐした土量が地山の土量立米の一・三倍になるけれども、更にそれを運搬して盛土した場合の盛土土量は逆に地山の土量立米の〇・九倍に減少するとされているのであつて、右遠藤登芽夫は、〇・九に減るものを、逆に一・三倍に増えるなど、増と減と上と下と取違うような甚だしい誤りを犯している。

而して、この誤りのため上記の如く、山土関係で仕入の計上漏れは認められないなどと、これまた上と下を逆にした計算を出したのである。そこで念のため計算資料に基づき、右盛土土量の割合に従い昭和四四年九月期の帳簿記載の当期仕入のみについて、計算すると、売上山土量(盛土土量)一二一万四四一一立米に対し、仕入山土量(盛土土量の換算した土量)一〇一万六五三三立米となり仕入山土の数量(盛土土量に換算した土量)が売上山土の数量(盛土土量)に比較し、一九万七八七八立米少ないことになり、その部分については、土無くして売上が生じたことになり、不合理が生ずる。

昭和四五年九月期の帳簿記載の当期仕入のみについて、計算すると、売上山土量(盛土土量)七二万七五九五立米に対し、仕入山土の数量(盛土土量に換算した土量)が、売上山土の数量(盛土土量)の数量に比較し、一九万一三四三立米少ないことになり、その部分については土無くして売上が生じたことになり不合理が生ずる。被告会社が仕入原価もれとしている昭和四四年九月期の王島山の切土一七万八九五七立米を、盛土土量に換算すると、一二万三八九三立米となり、また連島町の山土六万八四〇〇立米を、盛土土量に換算すると、六万一五六〇立米となるから、前記不定数量一九万七八七八立米から、上記仕入原価もれの数量を控除しても、なお、売上数量に対し、一万二四二五立米の不足を生ずる。同様に被告会社が仕入原価もれとしている昭和四五年九月期の王島山の切土八万一六〇〇立米を盛土土量に換算すると、五万六四九二立米となりまた連島町の山土五万八二〇〇立米を盛土土量に換算すると五万二三八〇立米となるから、前記不足数量一九万一三四三立米から、上記仕入原価数量を控除しても、なお、売上数量に対し、八万二四七一立米の不足を生ずる。

以上の通り、仕入計上もれ(王島山の切土及び連島町の山土)により充当してもなお、昭和四四年九月期は、一万二四二五立米、昭和四五年九月は八万二四七一立米の開差不足額が生じ、これらの不足額については、埋立てなくして売上収入金を得たことになるのである。

七、上記諸事実を静かに通観するならば、検察官が犯罪成立の証拠として取調を請求した諸証拠はこれのみを以ては未だもつて被告人らを有罪とするに足らず、その内容においても信用性が認められない。

第三、各論

一、小柴建設関係の架空外注費

検察官は、被告会社が昭和四四年九月期に計上している四九九万八、二二〇円、昭和四五年九月期に計上している六一九万六、二五〇円の各外注費は架空外注費であると云い、原審もまたそうであると認定した。

然し、そうでないことは被告人らが差戻前の一審以来認否書、供述書、弁論要旨等を以て主張している通りであるが、なお念のため、次の通り付加主張する。

(一)<1> 検察官は、「小柴建設関係で、昭和四四年九月期に四、九九八万八、二〇〇円、昭和四五年九月期に六一九万六、二五〇円の各外注費を計上して、いることにつき――架空計上であることは明らかである」と言われるのであるが、この様に莫大な架空外注工事を、小柴建設が全然やつていなかつたとするとそれでは小柴光作は、なぜ外注工事利益も無く、むしろ不利益であるのに、「被告人千の依頼により、右架空の請求書、領収書を作成した」のであろうか、疑問を生ずる。なぜかなら、そこには右莫大な稱する架空外注費の架空な請求書や領収証を小柴光作が作成する原因、動機を伺い知ることが出来ないからである。

検察官の常識によれば、何ら関係が無い他人の依頼であつても、依頼を受けた者は自己に利益もなく、それどころか不利益かつ危険であつてもその要請に応ずるのが一般社会の常識であると言われるのであろうか。

<2> 稱する架空外注費に対しては、被告会社は小切手支払をなし、小柴建設は右小切手を銀行に提示し、自己が右金銭の受取人であることを証する小柴建設の裏書きをなし、当該金銭を受領までしている。

そうであるのに、検察官は右小切手の受領に対する領収証は架空の領収証であると言う。然しそれは、小柴建設が当該金銭を受領しているのではなく、被告人千甲童が抜き取つているのではないかとの単なる想像に因るものと解される。即ち、検察官は、具体的証拠によつて架空領収証のどの分の金が、どの分の架空預金として預入れされたかにつき全く証明していないのである。而も、右千甲童が抜き取り仮名預金したと稱するその預金はすべて個人千甲童の資金源により発生したものであることは、るる前述した通りである。

従つて、右架空外注費を被告人千甲童が抜き取つたと稱しても、その裏付けが無いから結果これを架空領収証と決めつけることは出来ないのである。

<3> 前<2>の通り領収証が真実の領収証であり、架空の領収証でないのであるから当然のことながら領収になる金銭の請求書も又真実の請求書と解するのが論理的に正当である。

万一、この請求書が虚偽のものであつたとするならば、小柴建設がことさらに架空な請求書の控を保存する理由が無い。むしろそれは同人が、これを保存していることは実際に請求した事実及びその請求の内容をとどめておくことにより、後日の取引或は記帳上の必要に備えたものと解されるから、右請求書控は架空請求書控ではなく、真実の請求書控であり、従つて、請求書は架空でないと解されるのである。

検察官は、請求金額と支払金額に一部相異するものがあるから、架空外注費であると想像できるとしているが、被告会社の外注工事費の支払は、当月二〇日締めまでの外注工事費を翌月二〇日支払としているのであるが、外注工事先が当月二〇日締後、翌月二〇日の支払日迄に既になしている外注工事費の先払を希望する者もあり、止むなく締切後外注工事費の一部と合わせて支払う場合があるので、その場合は、当該先払いした外注工事費は翌々月支払の時に差引し、残金を支払うこととしていた外注工事先の或程度の要請をいれながら円滑に工事をやつて行くのが、この種事業の通例であり、告発人等の勤務先官庁等と異なるところである。

以上の通りであるから、当月分外注工事費の請求額と支払金額が一部異なつているものがあるからとの理由のもとにこれを架空外注費であるなどと想像するのは早計である。

<4> 検察官は、小柴建設が、自ら行つた工事についての明細書を所有し、被告会社の外注工事をしていたことの作業日報や山土検収票まで作成していたことを以つて、本件の架空外注費が存した事実を認め得ると主張するのであるが、全く論理を無視した一方的独断である。

又、請求書は、作業日報及び検収票等を基にして作成したものと解されるから、請求書が真実の請求書であるとすれば作業日報や山土検収票も又真実であると解することが論理上正当であり、之を架空な作業日報や山土検収票と解することこそ常識と論理を逸脱していると言わなければならないであろう。

そうであるから、「小柴建設が行つた工事の名構を記載した作業日報の存在」は稱する架空外注工事費が真実の工事費であることを証する証拠であると言える。

<5> 差戻前の一審証人岩津喜八の証言によれば、告発人等は、岩津喜八等に予め記載した上申書なるものを表示し、「悪いようにはしないから、捺印してくれ」と強要し上申書を作成した事実が認められる。而して、同書には小柴建設のトラックは工事に来ていなかつたと記載されている。然し、一日二〇〇台から二五〇台のトラックが三、四ヶ所の山土積込場から荷積運搬している状況下に於て、自らもトラック運搬作業に従事していながら係る上申ができる筈も無いし、仮にその様な上申をしたとしても正確な上申にはならない。

<6> 検察官は差戻前の控訴趣意書で

『又、被告人千の検察官に対する「小柴建設関係で、多額の架空外注費を計上していた」旨の供述(記録二、二九五丁ないし二、三〇〇丁)等によつて、右外注費が架空計上であることは明らかである』と言われる。

然し乍ら、被告の右供述は検察官から厳しく架空外注費を計上したことを認めるよう迫られ、その時被告人は持病の心臓発作が起り、命にも係ることであつたから、止むなく心にもない承認をし、拘置所の病院に入院したものであつて(被告人千甲童の原審公判廷の供述等参照)言うまでもなく、その様な状態でなされた容疑者の供述はとつてもつて証拠とすることは許されない。

(二) 前同控訴趣意書で

『なお、右小柴光作は、公判において「被告法人が自己を窓口として下請業者に工事をさせ、自己が被告法人から口銭を貰つていた工事があつた」かの如き証言をしているが、「記録九〇一丁ないし九二二丁)同証言は、下請業者の特定のみならず、口銭の額さえも明らかにしえないなど、極めて不自然な内容であつて、到底措信できず右認定を左右するものではない』

と検察官は主張されている。

<1> 検察官は前段(一)で説明した如く、小柴光作の被告会社の外注工事は、何もやつておらず、外注工事による利益も無く、むしろ不利益且つ危険でおるにも拘らず、莫大な架空外注工事を小柴光作がなしたことにするため、被告人千の依頼により右架空の請求書、領収証を作成したとの供述を採用されている。そして、小柴光作の「被告会社が小柴建設を窓口として、下請業者に工事をさせ自己が被告会社から口銭を貰つていた工事があつた」との供述については、これを不自然の内容であるからとして不採用とされている。常識的、経験則的に解すれば、むしろ前段の供述こそ不自然であると言うのが正当であろう。いずれにせよ、両者の供述には矛盾がある。

検察官が供述を証拠として採用される場合の意図は目的の為には盲目的にその供述を信用し、(小柴建設の収入が少ない程、税務上有利であり、告発人は小柴建設の被告法人からの外注収入が架空になればなる程、罰条適用が有利になるから、目的利害が共通している)採用されるが、目的に反する供述については、頭から不採用にされるものの如くであつて、全く一貫性が無くご都合主義である。

<2> 又検察官は、前段(一)では、「小柴建設が行った工事の名構を記載した作業明細の存在(前同符号五五、五六)」があると言われるのに、後段では、「同証言は、下請業者の特定のみならず――明らかにしえない」と言われる。

然し、作業明細があれば、下請業者の特定はできると推定することは誤りであろうか。

<3> 検察官は、「口銭の額さえも明らかにしえない」と言われるのであるが、差戻前の冒頭陳述書第三犯行の方法で

「九、支払手数料の認容

1.四四、九期 一二六万六、八〇七円

これは小柴建設に架空分の請求書、領収証を要求したことに対する手数料として小柴光作に支払つたものである。

2.四五、九期 二二万三、九二五円

これは、前同様小柴に手数料として支払つた一二万三、九二五円と――である。」

と記載されている。

右は、脱税のための手数料の様に記載されているが、脱税を犯すための経費は、法人税上の損金にならないことは誰の目にも明白である。検察官の稱される反則所得額の計算が正当であるとすれば、右支払手数料は小柴光作が公判において、「被告法人が自己を窓口として下請業者に工事をさせ、自己が被告法人からの口銭を貰つていた工事があつた」と証言したのはその被告法人からの口銭を支払手数料として認容されたものと解さざるを得ない。

そうであるとすれば、検察官自ら架空外注工事費は実在の外注工事費であることを認められたことになる。

又、右支払手数料の記載によれば、検察官は明らかにしえない口銭の額を円単位位まで記載されていることから見て、「口銭の額さえも明らかにしえないなど極めて不自然な内容であつて到底揩信できず、右認定を左右するものではない」との主張は到底真実と解し得ない揩信できない主張であると言わざるを得ない。

以上、稱する小柴の架空外注工事費が実在の外注工事費であることを、あらゆる角度から検討し、論証した。

然し乍ら、小柴が検察官に対し、供述したと言い、その供述は説得力があるとして原審裁判官が採用された小柴光作の検面供述については、下記の通り根本的に疑問がある。

(一) 「被告人千に頼まれて、架空経費の計上に協力したことは間違いなくその金額は国税局の調査の通りである」とあるが、――

1.小柴は、被告人千に頼まれれば自動的に(あやつり人形のように)稱する架空外注工事費の被告会社計上に協力しなくてはならないのか、その理由が明らかでないか。

2.又、小柴が言うように、小柴建設は架空外注工事のみを専門にやる業者かどうか。

3.小柴は、「その金額は、国税局の調査の通りである」と言つているが、反面国税局は、「小柴が架空経費について説明した通りの金額である」と言つている小柴の供述と国税局の調査はどちらが先か。小柴は既に国税局が調査していた稱する架空経費の金額を認めることにより、国税局に迎向同調したのか、否か。

(二) 「架空分の工事名等は、被告人千がメモ紙に書いて決めてきたもので」とあるが、――

1.「架空分の工事名」とあるが、架空分でない工事名はどの工事か、その工事名は。

2.「被告人千がメモ紙に書いて決めてきた」と言うそのメモ紙は、小柴が保管していたか。

後段小柴の言では、領収証、請求書等が架空であることの識別ができるようにしていることに鑑み、重要なメモ紙の保管はなされているべきだと解されるかどうか。

(三) 「実際に仕事をしていないのであるから、嘘ということはすぐ分かる」とあるが小柴は後段で「架空とされる工事はいづれも小柴建設が窓口となつて下請業者に施工させ、被告会社から口銭をもらつていた旨証言している」が事実であればその場合は、小柴が自ら直接被告会社の下請工事をやらないから嘘と言つたものと解されるがこの点はどうか。我が国では、大きな工事になると下請の下請でも組形式でその又下請工事がなされているのが実状であるか。

このことは、事故の発生の未然防止(多人数より少人数で防止させるのがよい)その責任(全部に対し目がとどかぬ)金銭の支払が繁雑にならないなどの点から、その方式がとられているか。

(四) 「銀行へ金を引出しに被告人千と一緒に行つたのが一、二回で」とあるが、――

1.右の銀行引出は小柴が銀行支払を受けるためと解されるが、この金はどうしたか。

(五) 「あとは被告会社の方でしていた被告人千から小切手に名前を書いてくれといわれれば裏書をしたし、印を押してくれといわれればその通り押していた」とあるが――

1.小柴は小切手に裏書してそれを被告人らに渡す場合、その受取りを証するための受取書を貰うのが本当と思うが、貰つているか否か。

(六) 「請求書一綴(符号五八)は、嘘の請求をした分の控であり、別に保管していたものである」とあるが――

1.右嘘分の請求と言うのは、被告人ら並びに小柴の言う「窓口工事」分に該当するのではないのか。

小柴は将来、国税局査察官が必ず来所することを予定して、別保管していたものかどうか。若し小柴がそのようなことを察知して予め査察官に対応する準備をしていたとすれば、小柴は小柴建設自身の所得調査に対する準備をしたものではないかとの疑問が生ずる。

(七) 「控のない分は、領収証、請求書綴一綴(符号九)の中に含まれている」とあるが――

1.嘘の請求をした分は控が残されておるから、控のない分は真実の領収証、請求書の様に解されるが、真実の工事分の領収証であつても一般的に領収証控があるのが商習慣であり、複写式となつているのが通例である。請求書についても同様である。なぜ真実の工事分の領収証、請求書に控が無いのか疑問である。

(八) 「架空分については請求書の書き方が工事を一括して一枚書いてあるだけで、作業内容を日付ごとに詳しく書いていないので、それだけでも架空ということが分かる」とあるが――

稱する架空分は小柴自身はやつていないが、小柴が口銭の支払を受けて、責任をもつ窓口工事分と解される。その場合工事金の分配は小柴がやるのであるから、被告会社は総工事量が分れば足りるから請求内容を日付ごとに詳しく書くのを省略したものと解される。

稱する小柴の架空外注費とするのであれば、作業内容を日付ごとに詳しく書かせ真実を誤るようにしたことであろうが請求書の書き方が工事を一括して一枚にしたところに真実性があると解すべきである。

(九) 「始めの一、二回は請求内容を細かく書いてくれと頼まれ、向こうで書いた原稿通りに詳しく書いて出したことがあるが、その後被告人千も詳しい請求書を要求しなくなつたので、工事内容を詳しく書いたものは出していない」とあるが――

1.このことは、当初は被告会社も請求内容を細かく書いてくれと言い、念の為原稿を記載して渡したが前問(八)の理由の通り自然に簡単にしたものと解するのが経験則に合うのではないか。

2.右の原稿は保管されているのか。

3.複雑に記載した請求書は真実で記載が簡単な請求書は、架空であるとする理由に疑問がある。

一〇 「また、架空分については領収証の但書のところに工事名を書いているのでこれを見分ける基準になるし、作業明細書二綴(符号五五、五六)に本当の工事分以外は記載していないことからも分かる」とあるが――

1.右に云う架空分と言うのが「窓口工事分」(小柴が直接やつていないから架空分と表現している)であるとすれば「本当の工事分」と言うのは小柴が直接やつた工事と解され、所謂外注工事の形態区分の仕方を言つたものと解されるかどうか。

以上の通り数多くの疑義が生じ何人と雖も、到底源判決の如くこれを到底説得力がある供述等と解することはできないであろう。

原審裁判官は、小柴が検察官に「被告人千に頼まれて架空経費の計上に協力したことは間違いなく」と供述し、一方では「架空とされる工事はいずれも小柴建設が窓口となつて下請業者に施行させ、被告会社から口銭をもらっていた旨証言している」と判りました。

そもそも小柴が窓口工事をやることとなつたのは、次の理由に拠るものである。

土建業者には、許可官庁に対する出来上り工事の実績高によるランク付けがあり、工事実績の少ない者は工事入札者として資格制限を受け入札者にもなることが出来ないのが土建業の実状である。

従つて、僅かな口銭でも工事実績を向上させるため請負うことになるのである。

そうした事情から小柴が被告会社に外注工事の請負を懇願するが故に、窓口工事者になつてもらい被告会社の手数料支払を条件に請け負わせたのである。

特に、原審判決は、『架空とされる工事はいずれも「小柴建設が窓口となつて下請業者に施行させ、被告会社から口銭をもらつていた旨証言している』が口銭をいくらもらつていたのか明らかにすることができない』と判示されているが、前述の通り検察官は差戻前の冒頭陳述書第三犯行の方法での項において、

「九 支払手数料の認容

1.四四、九期 一二六万六、八〇七円

2.四五、九期 二二万三、九二五円

これは小柴建設に架空分の請求書、領収証を要求したことに対する手数料として小柴光作に支払つたものである。」

と言い、小柴の稱する架空分即ち窓口工事分の口銭を被告会社から小柴が支払を受けていることを明らかに示している。

当該支払手数料が脱税協力の手数料であるのであれば裁判官の判決された刑訴事業年度の損金にはならないのであるが、当該支払手数料が損金として計算されていることに鑑みれば、小柴が被告会社から窓口工事の口銭を貰つていたことは明らかであり、その金額までも明示されている。よつて、原判決のこの点に関する事実認定は誤つていることが検察官提出の証拠によつて明白に証明されるのである。而も、これと同時にこれにより小柴建設が被告人が強く主張しているいわゆる「窓口業務」を請負つていた事実が明らかに証明されるのである。

一一 検察官の主張するところによれば、被告会社は例えば鹿島建設株式会社から下請けしたA工事について、自ら乃至他の第三者をしてその工事を施工せしめてその費用乃至は請負工事代金を支払つているのに、同じA工事を小柴建設には請負わせていないのに請負わせたように装い、小柴建設をして被告会社に対して虚偽の工事請負代金を請求せしめて被告会社からその代金を支払わせて、被告人千甲童がその金を小柴建設から受け取つて架名預金をしたと云うのである。即ち、被告会社は一個のA工事を施工するについて、小柴建設と小柴建設以外である第三者の両方に代金を支出したのでそれは、二重支出であるところ、前者の小柴建設は工事をさせていないのだからこれに対する工事代金の支払は架空外注工事代金の支払となると主張するのである。

そうであるとすれば、これを主張する検察官としては右のA工事が全部完成して鹿島建設株式会社に引渡されているか否か、そして、それが引渡され済であるとすれば、その工事は小柴建設以外の何人が施行し、何人がその工事代金を受け取つているのかについて、工事人名並びに工事金額等を調査し、これを証明する義務と責任を負う。

然るに、検察官は現在に至るまでその工事人名並びに工事金額等について何等の証拠も提出せず、立証の義務と責任を果たさず、小柴光作がサイドの一方的供述のみを記載した同人の検面調書を証拠として提出するにとどまつている。

古来から所謂「片言を聞いて事を断ずる」ことが危険であり許されないとこは、万人の深く承知するところである。

然るに、検察官(特に差戻後の検察官)はこれに反する態度をとろうとしているのである。

然し、さすがに告発人遠藤登芽夫は、この点につき、原審公判廷において弁護人の尋問に対し、当該工事が実際には何人によつて施行されたかについては調査した旨(あいまいながら)証言して、その場の追求を免れたのであるが、真実その調査がなされているとせば、前記の如く、立証責任を負う検察官としては当然原審集結までの間にその調査結果(証拠)を提出すべきであるのに、遂にそのことはなかつたのである。このことは明らかにその調査がなされていなかつたことを証明すると云うべきである。

刑事裁判は民事裁判と異なり、想像や推測で有罪を決定することは絶対に許されず、合理的且つ客観的な証拠によらない限りは有罪を認定することはできない。

本件は正に検察官は被告人千甲童が個人所有の多額金を架名預金としていたのを被告会社の金を抜取つて預金していたものであるとの予断にとらわれるの余り、冷静さを失い、捜査の正規の道を見失つたものでありかかる態度は国民の基本的人権擁護の精神に著しく違背するものである。要之、本件小柴建設に関する架空外注費については証拠がなく無罪である。

二、松浪組関係の架空外注費

右については、被告人らが従来認否書、供述書、補充認否書並に弁論要旨等を以つて詳論した通りであるので、これをそのまま援用することとするが、なお次の通り若干付加陳述する。

(一) 原判決は、「所論は昭和四五年九月期に松浪組の関係で五一五万八、六三〇円の外注費を計上したのは、被告会社が被告人千個人に支払うべき右と同額の山土代金を松浪組を通して支払つたように単なる帳簿上の操作をしたに過ぎないというのである。然し乍ら、被告会社が本当に被告人千個人に支払うべき山土代金があるのであれば、直接被告人千個人にその支払をなした上帳簿上もその旨の処理をすれば足りるはずであつて、何故迂遠にも松浪組に対する外注費の支払として帳簿上の操作を経る必要があつたのか、所論は前提の点でもつて理解に苦しむといわざるを得ない」とした。これに対する反論は差戻前の控訴趣意書に対する被告人らの答弁書に記述した通りであり、右認定は誤つている。

即ち、佐々木組からの都市計画県道工事、岡崎地区住宅埋立工事、鶴新田造成工事等の下請工事をなすに至り被告会社はさらにこれを松浪組に下請けさせた。そしてその山土の運搬に最も高率的で埋立地に近い連島町字家の上の山土を掘削し当該埋立に当てさせた。(現在も掘削後の山が現存している)。

ところで、当該山土は前記第二総論の六記述の通り、昭和四〇年一一月一二日連島町字家の上二九〇七番地外一八筆一町八段二六歩の山土をその所有者倉敷市連島町矢柄六一七三植野寛外から七四万二、〇〇〇円で被告人千甲童が購入取得したが、山土採掘後の当該土地については、宅地造成をすることの地主等に対する義務負担(総坪数三、四六七坪に対して坪当り四、〇〇〇円とすれば概算金額一、三三六万八、〇〇〇円の造成費が必要になる)及び地元搬出道路の補償負担金一五〇万〇、〇〇〇円(四五、九期が搬出打切年度に該当)の支出が契約されている。

従つて、山土代金七四万二、〇〇〇円と宅地造成負担金の概算金額一、三三六万八、〇〇〇円を加算した一、四六一万〇、〇〇〇円を採掘数量二三二、二〇〇立米で割ると一立米当り六三円となるから松浪組使用量五八、二〇〇立米の原価は三六六万六、六〇〇円となり、それに搬出道路負担金一五〇万〇、〇〇〇円を加算すれば五一六万六、六〇〇円となる。(計算上五一五万八、六三〇円)

従つて、松浪組が埋立に使用した山土を被告人千甲童から購入し被告会社の前記下請工事の埋立に使用したとすれば、当然被告会社は松浪組にその対価を支払うべきものであり、さらに松浪組は右対価を山土所有者である被告人千甲童に支払つたとすることは筋道と論理の上に何ら誤りしなく、正当な方法であると言わねばならないのである。

(二) さらに判決は続ける

「被告人千は、この点につき山土代金を自己が代表者である被告会社に直接請求して支払を受けるとなれば、経理上不明確な点が発生することが懸念されたため、松浪組に依頼して右代金の請求と受領をしてもらい、更に自己において松浪組からその交付を受けたと弁解するが、被告人千個人と被告会社との間には何回かにわたつて山土の取引が存し、それらはすべて帳簿上明らかにされ、両者の直接取引として記帳されているのに、いかなる理由で右取引のみが殊更に経理上の懸念があつたというのであろうか。右弁解は限り無く疑わしく、道理に合うのではない」と疑われるのでその疑いを晴らすこととする。

検討

<1> 経理上の懸念

被告人千甲童が購入した当該山土採取権は、特殊な条件が付されており、通常のものではない。

イ 当該山土を掘削した跡地は住宅地となるよう造成する義務負担を被告人千甲童に課されている。

ロ 山土搬出道路の補償に対する義務負担が被告人千甲童に課されている。

右条件付き山土を被告会社が被告人千甲童から購入取得する場合

a、山土の価格をどうして計算するか。

b、山土掘削後の跡地を住宅地に造成する費用額は山土の価格に含めて計算すべきものと解されるが、その場合の記帳方法はどうするか。

特に、造成費用額は当該年度後に発生するから、当該年度に使用した山土にその費用額を含めておかないとその部分だけ山土の原価が低くなり、過大利益が発生する恐れがあるが、その見積概算造成費用額の計算とその記帳方法は。

c、山土搬出道路補償費も山土の原価に算入すべきと思われるが、道路や橋に損害を与えた時の山土に負荷すべきかどうか。

等々の計算と記帳処理について被告会社は困難と懸念を発生した。

(三) 判決は続く

「このことは、とりもなおさず被告人千個人と被告会社との間に右取引がなかつたことを伺うに十分であるといつてよい。現に、右代金に見合う山土の取引の事実は帳簿上どこにも記載がなく、被告人千個人が被告会社から支払を受けるべき右のごとき山土代金が存在したことは認められないのである。

そうとすれば、被告人千の弁解は前提の点で既に正当性を失つているというほかはない。こうして見ると、松波組の関係で計上されている外注費が架空であることは、やんねるかな、右の説示から自ずと明瞭である。」と言われる。

検討

然し、先にも記述した通り、当該山土は松浪組の被告会社からの外注下請工事の原価(山土代金と運搬代金の合計金)をなすものであるから、松浪組に対する外注工事費に含まれて被告会社の帳簿に記帳上済みとなつている。

右記帳については判決で「被告会社が本当に被告人千個人に支払うべき山土代金があるのであれば、直接被告人千個人にその支払を為した上帳簿上もその旨の処理をすれば足りるはずであつて、何故迂遠にも松浪組に対する外注費の支払として帳簿上の操作区を経る必要があつたのか」と記載されていたことを失念してのようであるが、当該文言によれば、当該山土代金が松浪組に対する外注費として記帳されていると言つているのであるから、そうすると「現に右代金に見合う山土の取引の事実は帳簿上どこにも記載がなく」なとどの判決文は全く論をなさないと云うべきである。

又、「被告人千個人が被告会社から支払を受けるべき右の如き山土代金が存したことは認められないのである」と言うことは松浪組が当該山土代金を外注費として受領し同時に被告人千甲童に支払つた事を認められたことになる。

告発人遠藤登芽夫が昭和四八年五月二二日岡山地検田井検事殿宛に提出した書面によると「昭和四五年四月二四日松浪組外注費支払中口/水島五一五万八、六三〇円」の支払が被告会社からなされていることを主張している。

以上の通りであるから「松浪組の関係で計上されている外注費が架空」でないとは説示を待つまでもなく明瞭である。

判決は続ける

『そしてまた、この点については松浪組の経営者松浪節男が、「被告人からちょっと要るのでと依頼され、実際には被告会社との間に山土の取引がないのに山土納入代金として被告人千の指示どおりの金額で四八七万九、四五〇円と二七万九、一八〇円の領収証二枚の合計に見合う請求書一枚を書いた。右請求書を古くみせるためにもみくしゃにした記憶がある」旨はつきりとその間の経過を生々しく証言しているほか、被告人千の検察官に対する詳細かつ具体的な自白が存することからも動かし難い事実であるので、最早これ以上詳しく触れることは避けたい』と言われる。

検討

<1> 松浪節雄が「――実際には被告会社との間に山土の取引がないのに山土納入代金として、被告人千の指示通りの金額で四八七万九、四五〇円と二七万九、一八〇円の領収証二枚を切つた」と言つたと言うのである。

松浪節雄は被告会社の埋立工事に対する下請工事人である。

そうであるとすれば、当然山土を埋立地に運搬し埋立をなさねばならないのであつて、その場合の山土はただ山土のみを売却するのではなく、山土を所定の埋立地に運搬し埋立を完了することにより下請外注工事を完成し、埋立に使用した山土代と埋立の為の運搬費地固費等を合計した外注工事費を被告会社から松浪は受領することになるのである。

ただ、被告会社の当該使用山土に対する価額の計算が遅れ、比較的簡単に計算のできた外注工事費の一部をなす運搬費該当部分の対価のみが早目に支払われていたということである。

筋道を通せば、松浪組が被告会社から下請受注していた埋立工事に使用した山土は被告会社の所有ではなく被告人千甲童の所有物であつた。

従つて、松浪組は既に埋立完了引渡済の埋立工事に使用した山土代、これは松浪組にとつては外注工事費の一部となるべきものの代金を領収し、同時に山土所有権の被告人千甲童の請求によつて、同人に支払つたと言うのである。

右の通りで、山土代は納まるところに納つたのであつて、そこには何らの不正もない。

<2> 松浪節雄が「被告人千からちょっと要るので依頼され」たと言っているのは、松浪が被告会社からの下請工事の埋立に使用した山土は被告人千甲童の所有であるところ、当該山土の採掘場である連島町家の上の山土搬出期限が昭和四五年度で期限切れとなり、山土採掘跡地の住宅地造成義務履行或は搬出道路補償金等の支払費用が要ることとなつたため、当該山土を使用した被告会社の下請工事人である松浪に頼んだことを言つたものである。

<3> 松浪節雄が「被告会社が国税局の査察を受けるやまたも被告人千の依頼で右架空の領収証二枚の合計額に見合う請求書一枚を書いた右請求書を古く見せるためにもみくしゃにした記憶がある」と言つたと言う。

領収証作成後国税局の査察を受けた時、松浪に請求書を作成してもらつたことは領収証作成時に請求書も作成さすべきところ忘れていたので作成させたものである。

松浪が気をきかせて「請求書を古く見せるためにもみくしゃにした」としても、そのことにより請求書の効力に変動があるものではない。

「右架空の領収証二枚」と言う意味は解しかねるが架空の領収証を言う意味を推理してみると「実際には被告会社との間に山土の取引がないのに、山土納入代金として」の領収証を書いたから、実際に代金を受領していない場合の領収証に該当するから架空の領収証になるとの意に解し得る。

然し乍ら若し被告会社に山土納入の事実が無いと言うのであれば下請工事に使用した山土が無いことになり埋立山土なしに埋立が出来たことになり不合理である。

そうすると、埋立山土の納入は松浪の外注工事費に包含され納入していることになり、そこに当該山土の代金の請求書や領収証が必要となつてくるのである。ただ、当該山土は被告人千甲童の所有であり、被告人千甲童から松浪が購入取得したことになるから、右被告会社から松浪に支払われた五一五万八、六三〇円を松浪が受領し同時に松浪から被告人千甲童に支払つたと言うに過ぎないのである。

原審判決は当該山土代五一五万八、六三〇円を架空外注工事費として否認しようとされるのであるが、そうであれば前記松浪組が下請けした工事の山土は同組がどこから購入したのか証拠上何ら明らかにされていない。そうすると埋立山土なくして埋立工事が出来たことになり、この様な不合理な法人税所得計算(収入金は計算するが、それに必要な経費金額は計算しない」を以つて法人税法第一五九条の罰則違用はできないことになるのである。

三、三和土木株式会社関係の架空外注費

このことについても、被告人らは前同様の各書面並に供述書によつて主張している通りであるが、更に念の為左記事項を付加陳述する。

(一) 原判決に、「(二)三和土木株式会社関係」と標題されるのであるが、有限会社三和土木の誤記ではないか。被告会社は、有限会社三和土木とは取引があつたが、三和土木株式会社とは取引もなかつた。

次に原判決は、横山秀雄が「被告会社から工事代金一〇〇万円の前受けをするに際し、被告人千から一三〇万円位の請求書を用意しろと指示され、ダンプカーの運送料についての基準に従つて算出した一三〇万六、四五〇円の請求書を作成し、」と証言したと認定した。

然し、当該証言を昭和四六年五月一五日に広島国税局収税官吏太田正が、横山秀雄から聴取した左記質問顛末書問三の答え「――私が就職後の昭和四三年一一月二八日に有限会社三和土木が月末の資金づくりに困り私が水島土木の事務所に行き、赤沢社長に前渡金百万円の融資を申し込みましたところ、赤沢社長は納入高にもとづいて請求書を作成して持参せよと云いましたので、早速一三〇万六、四五〇円の請求書と一〇〇万〇、〇〇〇円の領収証を三和土木の事務所で作成し、水島土木の事務所に持参し、赤沢社長に渡しましたところ」と照合すると、右判決に記載される横山秀雄の証言は甚しく乱暴であり、被告人を罪人とするに等しい表現でなされているのに反し、広島国税局収税官吏太田正の質問顛末書に記載されている応答は、具体的且つ真実性があるやに身受けられる。なかんづく、右判決記載の横山の証言で「被告人千から一三〇万円位の請求書を用意しろと指示され」とあるが、請求書は既になされた山土納入高に基づいて請求するものであることから、適正な請求書を作成出来る筈はないから、当該証言は作為された証言であることはすぐ判る。

この下りを顛末書の横山の応答について見ると、「赤沢社長は、納入高に基づいて請求書を作成して持参せよと云いましたので、早速一三〇万六、四五〇円の請求書と一〇〇万〇、〇〇〇円の領収証を三和土木の事務所で作成し、水島土木の事務所に持参し、赤沢社長に渡しました」とあるのに徴すれば被告人が適当な請求書を要求したのではなく、「納入高に基づいて請求書を作成」することを求めていることがはつきり判る。

又、判決記載の横山の証言では「領収証は当たり前のこととして一〇〇万円と記載したのを持参したが、小切手の額面に見合う金額の訂正を被告人千に要求されてこれに応じた。このように被告人千の言いなりにしたのは、三和土木は、被告会社の下請で、工事をもらわないことには経営を維持していけない立場にあり、三和土木の資金繰りのために、被告会社に工事代金の前受けという形で融資を申し込むこと自体弱身であつたからである」とあるが、被告人が請求金額一三〇万六、四五〇円と同額の小切手支払をなし、領収証を受領する場合支払額以下の一〇〇万円の領収証を求めるのが正当だと横山秀雄は言うのか承け賜りたい。

請求額と同額の支払に対し、領収証が受領金額と同額の領収証を発給するのは当然なことであつて、「被告人千の言いなりにした」とか、「三和土木が弱身」であつたとか、その様な理由により受領額以下の領収証が正当であるわけがない。経理担当者が右の様な証言をしたかどうか、経験則と常識に照らし疑わしくなつてくるのである。

又、続いて横山は、「それは中村正一の被告人千に対する個人的貸借関係の決済ではないので、帳簿上止むなく返金として処理した」とあるが、この様に請求額と同額の一三〇万六、四五〇円について被告人千から三〇万六四〇円の返しを求められた場合、それが経理人の職務に従事している場合当然、社長中村正一に報告し、指示を受けるのが職務上の常識である。そうすれば横山も経理上のミスを犯さなかったであろうことが推定できる。

検察官でさえ横山秀雄が有限会社三和土木の経営者であると誤解された程、横山秀雄の経理は彼一人の独断によりなされた。本来なら社長中村正一は被告人に対し個人的立替債務のあることを知つているのであるから、横山からの相談があればその旨経理の横山秀雄に話したであろうし、横山も又その経理は外注工事金の返金として処理するのではなく社長中村正一に仮払金三〇万六、四五〇円をたて反面現金三〇万六、四五〇円の出金をたてればこの件については社長の正当な経理が出来たのである。

そうしないと、横山が山土納入高に基づき、自ら計算した外注工事収入金は一三〇万六、四五〇円で誤りがないのに返金として処理した現金出金の三〇万六、四五〇円の相手勘定は外注工事収入金三〇万六、四五〇円の減少をたてることになり事実に反した経理上のミスを横山は犯すことになる。

そして、それこそ理由の如何に拘らず有限会社三和土木は三〇万六、四五〇円の収入金脱銭に対する脱税をしていることになる。

又、原判決は「貸付そのものを裏付ける客観的資料が全く見当らない」と言われるのであるが、当該貸金の存在についての中村正一の証明書は当該判決前に既に裁判所に被告から提出済みとなつている(但し、同人死亡により不受理とされている)。続いて「被告人千は検察官に対し、公判段階とは異なつて、三〇万六、四五〇円は灯油の立替金として返してもらつた」と言うから、貸付金と立替金は異なるから、供述の変遷に合理的な理由を見出し難いと言われるようであるが、立替金も貸付金の一種類であり、債権には変りがないことは同知の事実であるので申し添える。

四、ダンプカー運転手関係の架空外注費

このことについても、認否書(三回)、同(六回)等によつて主張しているが、左を原判決がこの項につき特別に力点を置いて事実認定をされているので、被告人並に弁護人らにおいても特にこれにも力点を置き説明することとし、別紙書面(一)の通り付加陳述する。

五、岡本虎雄関係の架空外注費

このことについても、従前認否書等各種書面を以て主張している通り無罪を主張するものであるが、なお、念のため下記の通り付加陳述する。

岡本虎雄関係の架空外注費は否認する。

先ず事実関係を明らかにするため、第一回検事控訴趣意書に対する反論書を再掲する。

<1> 控訴趣意書で検察官は

『被告人らは昭和四四年九月期に岡本虎雄関係で三七万〇、〇〇〇円の架空外注費を計上していることは認めながら「これは単なる経理上の誤処理である」旨犯意を否認するが』と言われる。(控訴趣意書七枚目末行前三行目から次頁初行目)

然し、架空経費とされている岡本虎雄の外注費三七〇万〇、〇〇〇円の計理担当者岡本祐二郎が前月支払日以後の支払入金を一括取まとめ整理記帳した時現金出納帳残高に対し現金有高が、当該金額だけ不足していたので、種々調査したが正確には、その原因関係は明らかとならなかつた支払日前後は事務がふくそうし、然も赤沢次郎と岡本祐二郎の僅か二名で支払に当たるためダンプ業者等などの支払に追われ、外注費に相当する金額について、領収証を受け取るのを忘れたのではないかとの推定のもとに己むなく便宜に支払外注費として計上したのである。

岡本祐二郎が右推定支払外注に対し誰が見ても外注工事先になり得ないことが、明らかな自己の父名義を利用したことは、後日支払先が判明した場合に、真の外注先に抹消変更するための備忘上と、岡本祐二郎の会社に対する責任上の良心によるものであつて、支払外注費を隠ぺいするものでないことは支払外注費が損金に該当することから理解し得る。

そうであるのに検察官は架空外注費であると言われる。そうであるとすれば当該三七万〇、〇〇〇円の使途を明らかにしてその使途からすれば架空外注費となることを立証して始めて架空外注費であると言い得るのである。その立証もなさず架空外注費であるなどとは何人も言い得ることではない。被告人らは本件架空外注費を認否書二回分で認否したことはあるが、認めたことは無い。又被告人らは「これは単なる計理上の誤処理である」と言つているのではなく、払外注先の氏名が判るまでの便宜的処理として岡本祐二郎の父名義を利用したものであると、言つているのである。

そこには良心的な計理処理の跡は身受けられても税金逋脱の犯意など微塵も身受けられない。支払外注先が判然すれば当然正当な名義に書替えられるものであり、損金となるべき支払外注先を秘匿する理由は何ら存在しないのである。ただ計理の知識があれば事故鑑定或は現金過不足鑑定により処理し、後日支払外注先が明らかになれば、それに応じた計理処理をすることになると言うだけのことである。

<2> 控訴趣意書で続けて

『被告法人が昭和四四年二月二四日に岡本虎雄に対して外注費として現金三七万〇、〇〇〇円を支払つた旨の元帳記載(前同符号一、現金、外注費科目の同日付欄)及び岡本祐二郎の検察官に対する「被告人千の指示によつて私が自己の父岡本虎雄名義で架空の領収書を作成した上これに見合う三七万〇、〇〇〇円を被告人千に交付した」旨の供述(記録二、三七七丁ないし二、三七八丁)等によると、故意に架空計上した事実は明らかであつて被告人らの主張するような単なる計理上の誤処理でないことは明白である』と検察官は主張される。

然し、

a、「被告法人が昭和四四年二月二四日に岡本虎男に対して外注費として現金三七万〇、〇〇〇円を支払つた旨の元帳記帳」をしたことは前<1>号で詳細に述べたとおりである。

b、岡本祐二郎は、差戻前の一審において、「被告人千の指示によつて私が自己の父岡本虎男名義で架空の領収書を作成した上これに見合う三七万〇、〇〇〇円を被告人千に交付した」旨の供述したことは無いと証言している。

前<1>で述べたように、岡本祐二郎は元金出納簿の残高と元金有高を照合したところ三七万〇、〇〇〇円の不突合即ち元金有高が帳簿残高より少ないことを発見したので種々調査したが正確には、その原因が明らかとならなかったが、ダンプ業者等に対する支払状況からすると、外注費に相当する金額について領収証を受取るのを忘れたのではないかと推定し、支払い先の判明するまでの備忘上と岡本祐二郎の責任上の良心から便宜同人の父親の名義を利用し、後日判明すれば抹消変更する予定で支払外注費として処理していたものである。

右事実に徴すれは岡本虎雄名義で領収書を作成した時は、既に実際の現金在高は帳簿残高より三七万〇、〇〇〇円少ないのであるから検察官が主張されるように、その少なくなつている現金在高から岡本祐二郎が再び三七万〇、〇〇〇円を引出し被告人千に交付するなどのことは論理上不能である。又、供述の通り被告人千に被告会社が三七万〇、〇〇〇円交付するのであれば被告人千に被告会社が三七万〇、〇〇〇円交付するのであれば被告人千に対する仮払金として処理することが税務計理の慣行となつているのに、これをなさず敢えて計理者岡本祐二郎の父名義を利用していることから見て被告人らの主張に真実があることがはつきり判る。供述のような逋脱行為をなすのであれば、調査するまでもなく、被告人に尋ねると、速に知り得るような岡本祐二郎の父名義を利用する理由は無く、そのことから見ても被告人らの主張に真実があることを伺い知ることができるのである。

因に、供述書捺印に当り岡本祐二郎の供述調書に対する不確実な確認或は検察官に対する恐怖心等から前記供述が誤つてなされたことは差戻前の一審での証人岡本祐二郎の証言によつて明瞭であつて、これを証拠にすることはできないが、万一それが認められないとしても、右の供述により上記事実の客観性を否定することはできない。

三七万〇、〇〇〇円の使途に対する明確な事実証拠も無いのに架空外注費は否認する。

念のため、昭和五〇年一一月二〇日の告発人らの内の台信忠の差戻前の一審法廷における証言について検討する。

速記録一二頁初行から一四頁一一行目に記載してある。

検察官の問

それから今おっしゃった岡本虎男に関する架空の外注費の関係ではこの報告書のどの部分に出て来るんですか。

台信忠証人の答

三一頁です。

検察官の問

昭和四四年九月期の外注先三一番

台信忠証人の答

一番上の行です。この場合私の記憶では岡本祐二郎は代表者から言われて三七万円の岡本虎男名義の領収書を作成したこと、このうち二二万は、本当に仕事をしたんだから一五万円は嘘であるというふうに言つておつたと思いますが、それで私としましては、この一五万円は架空外注費としてみたこと、三七万円のうち一五万円が嘘だというように判断しました。

検察官の問

この一二月二一日から一月二〇日の間という欄に今言われて二二万、三七万、一五万とかいう数字が出て来るんですが、これはどういうふうに読むわけですか。まず外注費二二万と書いてあるのは水島土木の帳簿にそのように計上されておるということなんですか。

台信忠証人の答

いえ、実際は二二万の仕事をしたんだと、それに対する支払いは三七万円しているという意味なんです。

検察官の問

然し岡本を調べたら二二万円だけだということになり、それを一応認めてやつて残りの一五万は不正であると

台信忠証人の答

そのように判断したということなんです。

この報告書の外注費の中では、これだけが例外として、ここにはいつてきて、おるだけで後こういうケースは、この報告書の中にありません。

以上の検察官と台信忠証人の質問応答で台信忠証人の答え「いえ、実際は二二万の仕事をしたんだと、それに対する支払いは三七万しているという意味なんです」の下りを見ると本件の三七万〇、〇〇〇円が支払外注費であることがはつきり判る。

そうであるのに三七万〇、〇〇〇円は被告人千に対し交付した金銭であると検察官は言われるのである。

要するに、右質問応答によれば、支払外注費として、元帳に記載していた三七万〇、〇〇〇円について岡本祐二郎を調査したところ調査の時点ではその内二二万〇、〇〇〇円までは支払外注費であることが認められたからこれを容認し、残額の一五万〇、〇〇〇円については、その時点で支払外注費であること即ち支払先がはつきり判らないから否認したと言う調査の状況が質問応答されているのである。

このようなことからしても、被告人らの主張が真実で正当であることが理解できる。

六、架空給料、手当。

七、架空福利更生費。

八、架空修繕費。

右六乃至八のことについても被告人らは前の控訴審において提出した答弁書(五)の通り無罪を主張するものである。

よつて、回答弁書(五)を本件控訴趣意書の末尾に、書面(二)として添付し、その内容を本件控訴趣意書の内容として陳述する。

九、受取利息の除外

(一) 公訴事実によれば、被告会社は架空経費の計上によつて抜取つた現金を仮名等で裏預金していてその利息を左記の通り利得しているとしている。

昭和四四年九月期 一三六万七、四〇二円

昭和四五年九月期 二一一万一、五七四円

(二) 然し、この受取利息は、昭和四一年一二月二四日被告会社が設立される以前から、被告人千甲童が預金していた個人所有の預金から発生した利息と、会社設立後も個人所有の財産(山土、土地等)を売却して得た金を架名預金にしていた預金から発生した利息であり、被告会社の所得となるべきものではない。

そして、このことは、被告人らが原審において最も力をこめて争つたところであり、その詳細は原審提出の補充認否書(一)を以て主張し、且つ、被告人千甲童からも、これにつき詳細な供述説明を得ているので、同書の内容をこの控訴趣意書の内容として陳述することとし、本件末尾に書面(三)として添付する。

第四、終わりに

一、検察が、本件犯則所得として立証される具体的金額は、冒頭陳述書添付の損益計算書記載の科目と金額である。

一方、岡山税務署長が被告会社に対して法人税額の更正決定を為したのに対し、同会社が異議の申立をしたのに対して、同署長が更正決定をなした理由とし、被告会社に教示した通知書(弁十二号、弁十八号)の科目と金額を対照すれば、全く同一であり、一致している。

註 その対照表は、被告人らが前の控訴審に提出した答弁書(二)の二九頁以下に掲記した通りである。

そして、右弁十二号及び十八『上記から一から14までに記載した理由により益金の額又は損金の額に算入した金額について次表のとおり、「社内留保」または「社外譲出した』と記載し社内留保金と社外譲出金の明細と記した次表を添付した。

これによつても、判明する如く、課税処分においてすら、逋脱所得金(犯則金)がどのように処分されたか、即ち、使用されたかにつき、その処分先までも証明し説明しているのである。

然るに、それによりもつと被告人らにとつて重大な処分をなそうとするのに、検察官は、被告人らが主張する社内留保や、社外譲出のことは何ら関係が無いと放言して全く捨て顧みないのである。

本件において、このような考え方が許容されるべきでないことは法律上も条理上も明白である。

右のように、税務署においてすら、(それが後記の通り全くその使途の内容が事実でないとしても)一応はこれを説明し、立証し、否認した金額が正当である事実を立証しようとしていることに鑑みればいよいよなおさらその感を深くするのである。

よつて、本件は当審においては是非共検察官よりこの点に関する主張と立証を得て以て真実を明らかにすべきであると思考する。

二、なお、別紙書面(四)は、原審において、被告人千甲童が税務署が認定した前記逋脱所得金の使途は事実でないことを主張、立証するため作成したものであるが、その記載によれば、税務署が認定した使途は根本的に事実でないことが明に認されている。

即ちこれにより、被告人らは検察官主張のような法人税法違反の罪を犯していないことが確実に証明出来るのである。

以上

昭和六一年一〇月一三日

右弁護人 岡崎耕三

広島高等裁判所岡山支部 御中

損益計算書

<省略>

法人設立届出書

<省略>

法 328 47.10 15,300

法人の設立届出書 付表

<省略>

法人 329 47.10 15,300

<省略>

別紙書面(一)

(四) ダンプカー運転手関係

ダンプ運転手に対する架空外注費は全然無い

第一回検事控訴の控訴趣意書に対する被告人の検討書面があるので事実を明らかにするため、掲記する。

<1> 控訴趣意書で検察官は

『被告人らは、昭和四四年九月期において、六八〇、〇〇〇円、四五年九月期において一〇四、九〇〇円をダンプ運転手に支払した如く、架空外注費を計上していることにつき「ダンプ運転手に前渡金を支給していたことを、失念し二重計上したもので犯意はない」とか「架空計上ではない」などと弁解を変遷させている』と言われる

(控訴趣書六枚末行から三行目より七枚目初行から四行目)

なるほど昭和四四年九月期の六八〇、〇〇〇円については、当初認否では資料の押収のため充分な検討ができなかつたため、犯意の無い外注費の二重計上として認否していたのであるが、その後検察庁押収資料(伝票等)について充分検討した結果外注費の二重計上が無いことを、確かめたので、ダンプ業者関係の外注費の架空計上は無いと認否したものであつて、資料の押収による止むを得ない認否変更であることを、主張する。

検察官は、昭和四五年九月期の一〇四、九〇〇円については、起訴に対するを冒頭陳述書『第三犯行の方法四、架空福利厚生費」で「ダンプ運転手分の立替えた下宿代を、会社が負担していた如く処理して、架空計上したもの」とし、昭和四五年五月分の下宿代一〇四、九〇〇円を、起訴事実としておられる。

従つてダンプ業者に対する同一金額の支払いとし一方では、架空外注費とし他方では、架空福利厚生費として、起訴事実の二重計上がなされている。

(認否書三回分)

右について認否書六回分で被告が指摘したところ告発人遠藤登芽夫も、昭和四八年五月二二日岡山地方検察庁田井検事殿あて提出した書類によると、昭和四五年九月期の一〇四、九〇〇円のダンプ業者に対する架空外注費は犯則事実として記載していない。

<2> 控訴趣意書で続けて

『…………が、大蔵事務官台信忠ほか、一名作成にかかる調査実績報告書(記録一、一六五丁ないし、一、三四七丁)及び証人台信忠の証言(記録一、一四二丁ないし、一、一四六丁)岡本祐二郎の検察官に対する供述(記録二、三七〇丁)を総合すると、被告法人がダンプ運転手に外注工事費を支払う際実際には前渡金相当金額を差引いて支払つていながら、これが振替処理を行わず、前渡金を含めた額を外注工事費として、二重計上している事実が、明白に認められるのであつて、被告人らの弁解は、措信できない」と検察官は主張される。検察官は告発人である台信忠に誤つた調査や、岡本祐二郎の記憶違いの供述等を誤信し、充分事実の検討をなさないで右主張をされるのであるが

a、前渡金(仮払金)相当額を支払月に、外注工事費から差引かれると家計が苦しいからその差引を延期してもらいたいとのダンプ業者の要請にこたえ、前渡金(仮払金)を、支払月に差引かないことがあること。

b、前渡金(仮払金)が返済されないまま、期末の九月三〇日が到来した場合、被告会社は八月二一日から九月二〇日締めの外注工事代金を引当てに、当該外注工事費(当該外注工事費は、翌月の二〇日即ち一〇月二〇日が支払日となるが、当該日は、翌事業年度となるため、相殺残額は、当期末払外注工事費となる)と前渡金(仮払金)を相殺し、完全返済を求め、又は相殺後の仮払金残額を翌期にくり越すこととしている。告発人らは被告会社が期末相殺に当り、当初の外注工事高の引当月の最終日を、仕訳伝票の摘要欄に記載し、仮払金返済予定日が延期されたものであることを、備忘メモし、以つてダンプ業者に対抗する手段としていたところ、右備忘メモを、悪意に解し、外注費の二重計上と誤解している。

c、被告会社は、外注工事費と、前渡金(仮払金)との、相殺仕訳を諸口仕訳としないで分割仕訳としている。このことは諸口仕訳とすると、元帳記帳をした。外注費の諸口相手勘定と、その金額を元帳の上で直接把握できないから、その都度伝票により確認する必要を生じ不便である。

分割仕訳によると、元帳記帳が総て同額の相手勘定に記載され、前記諸口仕訳の様な不便が生じないばかりか、試算表の貸借照合で記帳の誤りを発見し易い便がある。

従つて会計処理上かなり分割仕訳が行われているのが実状である。告発人らの調査は右分割仕訳により前渡金(仮払金)と相殺された相手勘定の外注工事費を悪意に解するの余り、何らの根拠と理由が無いのに外注工事費の二重記帳であると誤つた判断している。等について、充分な検討がなされていないので、論より証拠に、告発人らが、外注工事費の二重計上であると主張する各事実について、一つ一つ検討の上告発人らの主張の誤りを指摘し、次の通り反論する。

四四、九期 稱する架空外注費 六八〇、〇〇〇円について

告発人の主張

「車番 六〇S 小早川 一〇月 三〇〇、〇〇〇円

〃 一九二三 香月 〃 五〇、〇〇〇

〃 五四四六 中垣景正 〃 五〇、〇〇〇

〃 五六七八 坪田登美男 一〇月 四〇、〇〇〇 五月 四〇、〇〇〇円

〃 記載なし 三宅組 〃 五〇、〇〇〇

車番 記載なし 広洋建材 〃 一〇〇、〇〇〇円

〃 五五二二 三沢直一 四月 二〇、〇〇〇

〃 一五四六 太田 七月 三〇、〇〇〇

外注費の支払いに際し、実際は仮払金を相殺して支払つていながら、これの相殺(記帳二は振替)の処理をせず、後日更に架空外注費を計上して、仮払金の返済があつたものとしたものである。(仮払金とはダンプ運転手に対する前貸金である)」

もともと仮払金は、告発人も認めるように、ダンプ運転手に対する前貸金であり、その引当ては、当該ダンプ運転手の出来高外注工事費でる。

そこで当初仮払金をした場合は、

借方(仮払金) 貸方(現金又は当座預金)

の仕訳をし、元帳記入するのであるが、右仮払金を引落とすためには、反対記帳が必要となつてくる。

借方(外注費又は未払外注工事費) 貸方(仮払金)

従つて告発人が主張するように、「外注費の支払に際し、実際は仮払金を相殺して支払つていながら、これの相殺(記帳上は振替)の処理をせず」と言うことは無い、なぜかなら、貸金及びその返済については、ダンプ業者との対抗は、被告会社としては、記帳の上で、対杭せざるを得ないことから見ても、実際に仮払金債権を、外注工事代金と、相殺返済を受けていながら記帳せず、再びそのダンプ業者の外注工事代金と相殺し、重複返済を受けることなどあり得る筈がない、そのようなことをすれば、ダンプ業者が承知しないであろう告発人の主張は甚しく非常識である。

以上の通りダンプカー運転手関係の架空外注費は実在しないのである。然るに裁判官の判決によると架空外注費の計上は明らかであると言い、るる説明されるので、その説明の何処の部分に誤りがあるかを指摘し合せて誤判決であることをはつきりさせることとする。

(一) 判決書記載の文言によると、「小早川清の関係で計上されている架空外注費三〇万円を対象にして少々詳しく説明を試みてみよう」と言い、被告らも異論を言わない仮払金の発生について次の如く説明される。

「まづ、元帳(符号一)の仮払金勘定科目の昭和四三年一〇月二九日の欄をみると、小早川に対し三〇万円の仮払をしていることが認められるが、このことは、振替伝票(符号四)の右と同じ日の分の二行目の記載によつても明らかであり、また、その記載によれば右仮払は支払手形でなされたことを知る得る」とあり、続いて、裁判官の次の説明を記載するのであるがこの説明の内には事実でない部分があるので、次に後述する。

(二) 「次いで、右仮払金の決済関係が帳簿上どのように処理されているかを探るに、被告会社における運転手に対する支払関係は毎月二〇日締めの翌二〇日払いで、その支払の際仮払金や立替金相当額を差し引いており」と。

然しこれは全く誤つた認定である。即ち、

<イ>「その支払いの際仮払金や立替金相当額を差し引いており」では無く事実に徴すれば、「………差し引ことを立前としており」と言うことが正しいのである。

その理由は、ダンプ業者の中で家計の苦しいものは、それぞれの差し引き金額の内当月差し引きの延期を求める金額もあり、被告会社は事情によつて、これを認め延期する金額がある場合もある。

このような場合には差引くのが立前であるが実際は差引かない場合が多いのである。

原判決はこのようなことの事実を無視している。

<ロ>立替金は回収金(回収すべき金額と言う意味)とするのが良い。それはダンプ業者と一般業者の間の修繕費その他の契約(対価後日払の約)は不成立のため被告会社と業者間の契約として支払債務の履行がなされている状況に鑑みればダンプ業者の業者に対する債務が無いのに立替金と言うのは不合理であるからである。

続いて、裁判官の次の説明を記載するのであるが、この説明の内に事実でない部分があるので次に後述する。

(三) 「右三〇万円も昭和四三年一〇月締めで小早川に支払うべき外注費六一万二、七四〇円から他の立替金と合わせて差引かれていることが分かる。すなわち小早川の同年一〇月分の工事高は車輌請求書綴(符号二六)の中の小早川作成の同年一〇月二一日付請求書三通によつて確認するときができ、これを整理集計すると六一万二、七四〇円になることは支払集計帳(符号三)によつて明らかである。そして右工事高のうち小早川に現実に支払われたのは二〇万六、八五六円であつて、そこには四〇万五、八八四円の差額があり、その分について右工事高から差引があつたことを推認するに十分であるが」

検討<イ>「右三〇万円も昭和四三年一〇月締めで小早川に支払うべき外注費六一万二、七四〇円から他の立替金と合せて差し引かれていることが分かる」とあるがこれは三〇万円も差し引かれるべきだとの立前であつたにとゞまり実際には現実仮払金三〇万円は差し引かれていない。

<ロ>「そして、右の支払集計帳によると、右工事高のうち、小早川に現実に支払われたのは二〇万六、八五六円であつて、そこには四〇万五、八八四円の差額があり、その分について右工事高から差引があつたことを推認するに十分であるが」とあるが、判決で言う支払集計帳(符号三)なる呼稱は告発人が名付けたものであつて、被告会社が名付けたものではない、なぜ告発人がこの様に名付けたかは後述する。被告会社は支払期日前に豫めダンプ業者各人毎の外注工事高及びその外注工事高から差し引き予定の仮払金、修繕費、燃料費等の各回収高等を行別に記載し差し引き後の支払高が各人毎に幾らになるか、その金額、そしてダンプ業者全体では差し引き後の支払外注費が幾らになるかを計算しておき支払日の資金繰りとして銀行引出し額をどの程度にすれば当日支障を来たさないか又合せてダンプ業者各人からの回集金額の忘れるものの無いようにするため作成していた支払い予定明細書にしか過ぎない。

告発人らの調査に当り当該支払予定明細書(その様な名稱すら当該明細書には被告会社は記載していなかつた)を被告会社が提示したところ告発人等は、当該明細書に被告会社が何らの名稱も符していないことをよいことにして、領置後前期支払集計帳と名付け(いかにも被告会社に支払集計帳なる帳簿が作成されていたものの如く告発人が悪意ある粉飾によりその様に稱している。告発人遠藤登芽夫が田井検事殿に提出した書面によると支払集計表となつている)以つて、回収金額は総て支払期は前の記載金額を以つて回収され、差し引き後の金額でダンプ業者に外注工事費が支払われたものゝ如く作為したものである。

右の通りであるから判決は支払予定明細書に支払日前に記載された回収金額は総て外注工事高と差し引きされたものと速断し、かくて小早川の外注工事金額六一二、七四〇円とその差し引き額の合計額四〇五、八八四円との差額即ち二〇六、八五六円を以つて「右工事高のうち、小早川に現実に支払われたのは二〇六、八五六円であつて」と言い返金予定の仮払期三〇万円が現実に支払われたものの如く誤判決されたものである。

さらに、詳細に検討すると小早川が当初返金予定日の昭和四三年一一月二〇日の返金の延期を被告会社に求め返済されないまま決算期末になつたので昭和四四年八月二一日から昭和四四年九月二〇の間の小早川の外注工事高と締切支払日(翌期の昭和四四年一〇月二〇日となる)前に差し引き返金を求め、外注工事高との差額を未払外注工事費として翌期にくり越しているのである。

裁判官は支払予定明細を支払集計帳と告発人が作為していることに気がつかず、その名稱にまどわされ予定返金日当日に小早川の三〇万円の仮払金と当人の外注工事費との相殺支払があつたものと誤判断されたものである。

(四) 続けて判決は

「それが間違いないものとしての確証を得るために、更に客観的資料を漁つていくと、被告会社が小早川の右工事高から差し引くべきものとして、燃料費等の立替金があることが判明する。これを個別に示すに、清水登春作成の上申書によれば大豊興産に対する燃料費七万九、一八四円領収書請求書綴(符号一二)の中の水島重機整備工場作成の同年一〇月二〇日付請求書(No.0182)によれば同工場に対する修繕費七、五〇〇円、領収書請求書綴(符号八三)の中の大本照男作成の同年一一月五日請求書の一枚目によれば同人に支払をなすべき下宿代一万九、二〇〇円がなり、これらの各立替金と仮払金三〇万円を合わせてみると、四〇万五、八八四円になり、これが正に右差額分に合致し、現実に差し引かれていることがはつきりしている」検討<イ>判決は支払があつたと推認する四〇五、八八四円の内一〇五、八八四円回収額については上申書、請求書等により確認しているが、肝心の小早川の仮払金の返金については当該人からの証明も無く、当該稱する返金が当初予定日あつたことの何らの証拠も無い「差額分に合致し、現実に差し引かれていることがはつきりしている」との裁判官の論理は、ただ仮払金及び回収額の合計金額が四〇五、八八四円に一致したと言う算数の結果を示したのみで、それにより小早川の三〇万円の仮払金が現実に差し引かれていることの証明にはならない。

小早川は現実に当該締切日の返金の延期を希望し、返金していない事実、そして小早川の仮払金の返金の証明も無いことを合せ勘案すれば(後段判決記載分によると小早川は上申書により仮払金は相殺返金していないと言つている)むしろ現実に差し引かれていないことがはつきり判る。

さらに判決は続けて

(五) 「そのことを、更に客観的資料に基づいてひつくり返していうと、車輌集計表(符号二三)の中に小早川の一〇月分の外注費から引き去つた右各立替先と金額が下宿代を除いて明瞭に記載され、また、仮払金三〇万円については支払手形の分と明記されていることからも、十分に証明することができる」

検討<イ>裁判官が言われる車輌集計表(符号二三)は検察官請求証拠目録によると符号二三は標目領収書、請求書綴になつている相異がある。

<ロ>車輌集計表なるものは被告会社は作成していなかつたから、告発人らが被告会社が作つていた支払予定明細を以つて車輌集計表と稱しているものと推定されるが(支払集計表は車輌集計表からさらに予定支払額をまとめたもの)何れにせよ被告会社が締切支払日前に銀行引き出し金を計算するため或はダンプ業者毎の外注工事費から相殺控除支払がなされるべき予定金額等を記載し外注工事費支払の便に供するため作成していた支払予定明細(この名稱も被告会社は記載していなかつた)に拠るものと解される。そうであるから「一〇月分の外注費から引き去つた………仮払金三〇万円については支払手形の分と明記されていることからも十分証明することがてきる」と言つたとしても判決が外注費から相殺控除予定の金額を相殺控除した金額と読み誤つていることからすれば、それを以つて「十分に証明することができる」と言うことにならない。

さらに判決は続けて

(六) 「このように関係帳簿書類等を二重、三重にも読み取つていくと、被告会社では小早川に対する一〇月分の外注費六一万二、七四〇円のうちから仮払金三〇万円を差し引いて支払つておきながら、その振替処理を行うことなく」

検討<イ>関係帳簿書類と言う支払集計帳なる帳簿は告発人が、被告会社が作成していた支払予定明細書(この名稱すら被告会社は当該書類に記載していなかつた)を支払集計帳と名付けただけで、当該支払予定明細書は帳簿ではなく支払日の支払に当つての参考記録にしか過ぎない。告発人の田井検事殿えの提出書面によると、告発人が稱する支払集計帳は単に支払集計表となつている。

又、車輛集計表なるものを関係帳簿書類とされているが帳簿ではないことは集計表とあることから明らかである。何れにせよ稱する二重、三重の稱する帳簿書類は被告会社の作成していたもの即ち予定明細を基にするものと解されるから、それに記載されていた総ての金額が相殺支払したものと解し推論しても、予定は予定にして変更されることもあるべしの故知を忘れた非常識且つ非論理的証明にしか過ぎない。

仮払期三〇万円は返金が延期され一一月二〇日の支払日には返金はなされていない。従つて「差し引いて支払つておきながら」は誤断である。

<ロ>「振替え処理を行うことなく」と主張されるが新たに仕訳けを起すことは振替処理には当らないから本件の場合振替処理と言うのはどの様な意味か又その仕訳は

借方(外注費) 300,000円 貸方(仮払金) 300,000円

と推定されるが、仮払金の返金を支払うべき外注費に引当て相殺すると言うことは、新たな事実に基く新たな仕訳けを起すことであり、振替仕訳には当らないと解する。

何よりも返金されていないのであるから右仕訳は生じない。

判決は続ける。

(七) 「かつまた、領収書、請求書(符号一三)の中の小早川作成の同年一一月二〇日付の領収書によれば、小早川から工事高に見合う金額の領収書を徴していることが認められるが、このように敢えて偽装工作を施したうえ、仮払金三〇万円を含めた額そのものを外注費として計上していた事実が如実に浮び上がつてくるのである。そうすれば外注費六一万二、七四〇円から差し引いた仮払金三〇万円に相当する差額三〇万円を正当な外注費に上乗せして計上した結果になり、この分が架空外注費と評価されることは言うまでもない、右のような帳簿処理が正当だとする被告人千の弁解は会計上全く根拠がないものである」

検討<イ>裁判官は「小早川作成の同年一一月二〇日付の領収書によれば、小早川から工事高に見合う金額の領収書を徴していることが認められるが、このように敢えて偽装工作を施した」と言われるのであるが、裁判官は前に「小早川の同年一〇月分の工事高は車輛請求書綴(符号二六)の中の小早川作成の同年一〇月二一日付請求書三通によつて確認することができ、これを整理集計すると六一万二、七四〇円になることは支払集計帳(符号三)によつて明らかである」と言い裁判官自ら四三年九月二一日から昭和四三年一〇月二〇日の間の小早川の外注工事高は六一二、七四〇円であり、右は三通の請求書よつて、その支払の請求をしていることを認めている。

そして、請求額六一二、七四〇円に対しては、被告会社は相殺金額及びその余は現金で支払をしたので裁判官が言われる「小早川作成の同年一一月二〇日付の領収書」を小早川が被告会社に発給しているのである。そうであるとすれば小早川は当該外注工事高六一二、七四〇円を領収していることは間違いない事実である。

若し小早川がその金額が六一二、七四〇円以下の領収であるのに六一二、七四〇円の領収書を発給することは無い、汗水流した重労働の対価であることに憾みれば何人も納得のゆくことである。

然るに裁判官は右領収書は偽装工作であると言う。

<ロ>そして「仮払金三〇万円を含めた額そのものを外注費として計上していた事実が如実に浮かび上がつてくるのである」と言われる。裁判官は当該主張の直前に「被告会社では小早川に対する一〇月分の外注費六一万二、七四〇円のうちから仮払金三〇万円を差し引いて支払つておきながら、その振替処理を行うことなく」と言い仮払金三〇万円の決済金額に対する外注費の計上をしていないことを激しく叱責していながら、今度は仮払金三〇万円を外注費として計上していた事実が浮び上がつたと言われる。これが矛盾と言うものか、被告人は全く理解に苦しむのである。事実は小早川自身が家計が苦しいから返金を延期してくれと言うから当該返金に相当する金額は現金支払をしているのである。

従つてその三〇〇、〇〇〇円と裁判官も認める二〇六、八五六円計五〇六、八五六円の現金が支払われていることになる。

又、裁判官は「仮払金三〇万円を含めた額そのものを外注費として計上していた」と言い、従つて仮払金は外注費なりとの解釈のようであるが、当月外注工事費は仮払金や他の相殺金には無関係に六一二、七四〇円の金額で確定しているのである。

仮払金や現金や他の相殺支払金は既に確定された当該工事費の決済金額を意味するものではあるが、外注工事費の金額を確定させるものではないことは裁判官自ら当月小早川の請求額は六一二、七四〇円であることは明らかであると主張していることからはつきり判る。

要するに外注工事費とその決済金とを混同して解釈したところに矛盾した論理が発生しているのであつて裁判官の説明にはもつれがあると言わなねばならない。

<ハ>「そうするれば、外注費六一万二、七四〇円から差し引いた仮払金三〇万円に相当する差額三〇万円を正当な外注費に上乗せして計上した結果になり」と説明される。

然しながら仮に裁判官認定の通りとすれば正当な外注費は六一二、七四〇円だと言うのであるから右金額に被告人が帳簿に三〇〇、〇〇〇円と上乗せしたとすると九一二、七四〇円の外注費を計上していると言うことになる。

直前に裁判官は「小早川作成の同年一〇月二一日付請求書三通によつて確認することができ、これを整理集計すると、六一万二、七四〇円になることは支払集計帳(符号三)によつて明らかである」そして右の支払集計帳によると、右工事高のうち小早川に現実に支払われたのは二〇万六、八五六円であつて、そこには、四〇万五、八八四円の差額があつたことを推認するに十分である」と言われたのであるが右の四〇五、八八四円には、他の相殺支払金と共に返金予定の仮払金三〇万円が含まれているとする(現実には仮払金の返金相殺をなさず見合い現金三〇〇、〇〇〇円の支払があつた)のであるから四〇五、八八四円と現実に現金を支払をしたと稱する二〇六、八五六円を合計すると六一二、七四〇円の正当な工事高になる。そうだとすれば、九一二、七四〇円の計算は何処からも生じないのでる。判決には錯誤と矛盾と誤断がある。

<ニ>「この分が架空外注費として評価されることはいうまでもない」といわれる。仮払金三〇万円の支払予定明細に記載の全額を、支払つた金額と解されたが故に矛盾した論理はエスカレートし際限なく発展するのであるが常識のある普通人であれば検討経過からすれば誤断であることが判る。

<ホ>「右のような帳簿処理が正当だとする被告人千の弁解は会計上全く根拠がないものである」と言われる。

被告人は返金の無い仮払金三〇万円と外注費の相殺をしたことはないからもとよりその様な帳簿処理をしたことも無いことはるる説明した通りである。

然るに原審判決は返金予定と言うことは認められないそして世の中に予定の変更されることはあり得ないものの如く云われる。然しながら、これは現実に返金予定日が延期されている事実を無視したものであり絶対に容認することは出来ない。

原判決がかゝる誤りを犯したことは外注工事費が決済金額により左右されるものではないこと(決済されない金額は未払工事費という債務金額になる)又外注工事費の金額を超過した金額を被告会社が支払う理由もないこと等の道理を理解されていないことに基づくものである。

被告会社は当月の外注工事費を上廻る支払いはしていないから、超過して支払つた記帳をしたことも無い。支払期日前に被告会社が豫め記載していた支払予定明細を、告発人が支払後の明細に読み変えたが故に被告会社が脱税した如く主張するのであるが、仮に仮払金の返金決済があつたとしても架空外注費は生じない。なぜかなら支払予定明細書の相殺金額は期中にあつては外注工事高の範囲内の金額とされているのであるから(返金相殺があれば、それに相当する現金支払は無いし、返金相殺が無ければ、それに相当する現金支払がなされることになる)外注工事高を超過し稱する架空外注費が生じないことは冷静に解すればすぐ判ることである。

原審判決の被告人に対する非難は根拠の無いものである。

さらに判決は続ける。

(八) 「また、被告人千は、小早川の仮払金三〇万円は昭和四四年九月二〇日締めの工事高と相殺して残額三五万八、七七九円を未払外注費として翌期に繰越していると弁解するが、右繰越額は総勘定元帳(符号二)及び振替伝票(符号五)に記帳されている小早川関係の未払金の繰越額とが金額の点で一致しないばかりか、そもそも右のような相殺の事実を認めるに足りる客観的資料は一切存在せず、返つて小早川作成の上申書によればそのような相殺の事実など存しなかつたことが明らかに認められるのであつて、右弁解もまた真実に反することになる」と裁判官は判示する。

検討<イ>裁判官の判示には矛盾がある。

裁判官は「そもそも右のような相殺の事実を認めるに足りる客観的資料は一切存在せず」と言われるのであるが、一方では「小早川の仮払金三〇万円は昭和四四年九月二〇日締めの工事高と相殺して残額三五万八、七七九円を未払外注費として翌期に繰越していると弁解するが、右繰越額は総勘定元帳(符号二)及び振替伝票(符号五)に記帳されている小早川関係の未払金の繰越額とが金額の点で一致しない」と言うのであるから、裁判官は相殺の事実はこれを認めているのである。

ただ繰越額が総勘定元帳と振替伝票とでは金額が一致しないと言うだけである。(この金額不一致の理由は後記の如くその見方を誤つているものと解されのである)

<ロ> 小早川作成の上申書で仮払金の相殺返済が無かつたと記載された訳

昭和四四年八月二一日から昭和四四年九月二〇日の間の工事高は六五八、七七九円であるから、被告会社は決算整理のため翌期支払期日昭和四四年一〇月二〇日をまつまでもなく決算期末の昭和四四年九月三〇日に返金処理を受けたものとして差引き計算し昭和四四年一〇月二〇日の支払日には相殺後の三五八、七七九円の未払外注費を繰越しているのであるから、既に相殺返金された後の三五八、七七九円から再度返金相殺がある筈はないから、支払日の昭和四四年一〇月二〇日には仮払金の相殺返済はなされなかつたと小早川が記載したものと解される。

<ハ> 被告会社の外注工事高に対する相殺支払後の繰越額は告発人らに分り易く説明する便宜上単に仮払金と外注工事高との関係について計算しその相殺後の金額を明示したにとどまるから、他の相殺金を考慮すれば総ての相殺後の現金で支払わねばならない未払外注費のみが繰越されることになる。そう解すれば理解出来る。

<ニ> 判決は「相殺の事実を認めるに足りる客観的資料は一切存在せず」と言われるが昭和四三年一〇月締めのときのように資料の収集に努めれば客観的資料の存することがはつきりするのである。

従つて、小早川の昭和四四年九月締めの工事高については稱する車両請求書綴或は領収書・請求書綴でその請求額を確認することができ、また同様右請求額に対する領収書額については領収書請求書綴でその領収書を求め確認することができ、仮払金の返金があつたことについては、昭和四四年九月三〇日の振替伝票を見れば

借方(外注費)300,000円 貸方(仮払金)300,000円

右仕訳けがなされていることから昭和四四年八月二一日から昭和四四年九月二〇日の間の小早川の外注工事高から相殺返金がなされていることがはつきり判るのである。

以上の通りであるので、審理を盡さず「相殺の事実を認めるに足りる客観的資料は一切存在せず」となすのは刑事訴訟法の基本原理に反するものである。

判決は続ける

(九) 「以上、小早川関係の架空外注費三〇万円を的にして客観的資料に基づきそれが架空である理由を説明してきたが、そのほかの運転手に関する昭和四四年九月期の各架空外注費についても、小早川関係と同様に客観的資料を逐一検討することによつて優に確定することができるので、その一つ一つについての検討の結果をここでるる述べることを省き、これらのことをたやすく知り得る方法として、右検討の結果によつても、台信忠の証言によつても、その正確性を保障し得る同人ほか一名作成にかかる調査事績報告書が存することを指摘するに止めたい」と裁判官は言われる。

小早川関係の稱する架空外注費の存在しないことについては前述の通りるる反論したのであるが原判決は事実を見誤つていると言うことである。

即ち原判決は被告会社が締切支払日の参考にするため各支払日以前に豫め相殺支払をなすべき金額と各人の工事高相殺後の支払予定額等を記録し支払日に必要な資金繰りのため作成していた予定明細からその支払について作成していた集計表を支払集計帳と稱し或は予定明細による車輌請求書綴を以つて、相殺支払実行後のものと解するなど甚しい事実誤認をしている。

従つて、仮払金の返金が延期されていても、返金相殺がなされているとして、外注工事費に対する仮払金の稱する振替処理がなされてないと非難し(外注費の計上がなされていないとの意味のようであるが)一方では「仮払金三〇万円を含めた額そのものを外注費として計上していた事実が如実に浮び上がつてくる」など事実でもない矛盾する認定をし、そして小早川の作成した昭和四三年一一月二〇日の領収書は偽装したものだと言いながら一方では「小早川作成の上申書によればそのような相殺の事実など存しなかつたことが明らかに認められる」など同一人の作成した書類もその場その場のご都合で正にもなれば偽にもなるなど矛盾に矛盾を重ねている。

要するに、外注工事高はそれに対する決済金額の如何にかかわらず決済前に既に確定しているのであつて、その外注工事高を超過して、その代価を支払うことはないのであるから、決済金額に拠つては稱する架空外注費は生じないと言うことが判つていなかつたため小早川の架空外注費があるなどと誤解し、この誤解に基いて前記の如き誤判決がなされたものと思考される。

従つて、さらにその誤りを重ねて、一把ひとからげに他の運転手の稱する架空外注費が成立するが如き認定をされたとしても被告人は被告人らは到底これを容認することは出来ない。まして各人毎に事実内容も異なるのであるから各人毎の誤りの無い事実認定が必要である。特にその一つ一つを犯意としていることに鑑みればなおさらである。主張は当を得ない。

又原審は台信忠の証言を信用しておられるようであるが、前掲したように台信忠は外注工事費に対し、その決済金額の異なるごとに(例えば現金と相殺金がある場合)分割仕訳がなされているのにその分割仕訳の一つ(例えば相殺金)をとり上げ、それが架空外注費であるなどと、証言言するのであるが、当該外注工事人に関する台信の稱する架空外注費と台信が真実の外注費だと言つている金額を会計すれば当月分の外注工事高と一致していることから、台信が大きな誤りを犯していることがすぐ判るのである。

判決は続ける。

(一〇) 「ただ、右以外に被告人千が提起する若干の事柄について、少し触れておくに、昭和四三年一〇月において香月守に対する仮払金五万円及び中垣景直に対する仮払金五万円は元帳に記載がなく相殺すべき仮払金がない以上同人らの分について架空外注費が発生する余地がないとする点はもつとものようにみえるが、それは元帳に記載がないというだけのことであつて実際には右各仮払金は存在したというべきである。なぜならば車輌集計表(符号二三)によれば、右各仮払金相当額が当月分締めの工事高と相殺勘定がなされているからである」と。

検討然しながら、原審は判決の前提について大きな誤りを犯している。

即ち又車輌集計表(符号二三)と記載しているが檢察官請求証拠目録によると(符号二三)は領収書請求書綴となつており同符号には車輌集計表なる標目は思当らない。また

<イ> 香月守の仮払金五万円について

告発人らは右香月守の仮払金の仮払年月を四三年一〇月と指定と指定し、その仮払金について架空外注費なると言い被告人らは昭和四三年一〇月には稱する仮払金は発生しておらず従つて元帳にその記載もなされていないと反論している。

それに対して原審は、「右各仮払金は存在したというべきである。なぜならば車輌集計表(符号二三)によれば右各仮払金相当額が当月分締めの工事高と相殺勘定がなされている」と言い仮払金の存在を強く認定した。然しながら問題の要点は単に香月守の仮払金が存在していたか否かと言うだけではなく、昭和四三年一〇月に当該仮払金が発生していたかどうかにあるのである。

原審は当該仮払金は昭和四三年一〇月分締めの工事高と相殺されているから当該仮払金五万円は必ず昭和四三年一〇月中に発生していると言うのである。

昭和四三年一〇月分締めの工事高は昭和四三年九月二一日から昭和四三年一〇月二一日の間の工事高となるから昭和四三年九月二一日から昭和四三年九月三〇日の間に仮払金が発生する場合もあり、若し、そうとすれば当期刑訴事業年度の前期九月中の仮払金の発生となる。

被告人の調べで昭和四三年一〇月の当該人に対する仮払金の発生が無く、一方では当該仮払金が被告会社の昭和四三年一〇月分締めの工事高に対する昭和四三年一一月支払の支払予定明細に相殺予定として当該仮払金が記載されているものとすれば当期刑訴事業年度の前期九月分の仮払金発生と推認し得る。そうであるとすれば当該仮払金の架空外注費については訴外となるのである。(告発人らが仮払金の発生を昭和四三年一〇月中と指定していることからすれば)

<ロ> 中垣景直の仮払金五万円について

告発人が当該仮払金の発生をを昭和四三年一〇月と指定していることから論旨は香月守の場合と同様である。

判決は続ける。

(一一) 「また被告人千が、坪田登美男に対する同年一〇月二一日の同人の妻名義の仮払金四万円は当月分締めの工事高と相殺勘定がなされていないと指摘する点も、精算書綴(符号六三)の中の当月分の同年一一月二〇日付精算書(No.2)の控除明細欄をみると、右仮払金四万円は明らかに差し引かれており問題はない」と言う。

檢討<イ>然しながら右判決は大きな誤りを犯しているので次に反論する。

精算書綴(符号六三)と記載しているが符号六三は検察官請求証拠目録によると「運賃その他支払者」となつている。そして運賃その他支払者なるものは被告会社が支払予定明細を記載していたが、その書面を領置の際告発人らが適当に名付けたものと推定されるが(支払予定明細には標題の記載がなかつた)今回はさらにそれを「精算書」と名稱を変更している精算書とすれば仮払金も返済されていることになるとの目的の様にも思われる。

第一回検事控訴に対する被告人の反論を再掲する。

「<4>車番五六七八坪田登美男一〇月四〇、〇〇〇円五月四〇、〇〇〇円告発人が主張する一〇月四〇、〇〇〇円は昭和四三年一〇月二一日該人の妻・坪田美津子名義で中国銀行水島支店の支払小切手により貸付けがあり仮払金として記帳されていた。然し乍ら昭和四四年五月四〇、〇〇〇円の仮払については、元帳の仮払金勘定を見たが、当該月には該当する金額の仮払が無い。

依つて一〇月の四〇、〇〇〇円の仮払金について検討する。

右仮払金は昭和四三年一〇月二一日から昭和四三年一一月二〇日の外注工事高を引当てとしたもので、その返済は支払日の昭和四三年一二月二〇日になされる予定であつたが、本人の延期申し込みにより当日返済がなく返済がないまま、被告会社の決算期末となつた。

告発人は仮払金の予定返済日には必ず返済されるものの如く理解しているようであるが、予定は予定にして往々変更されることがあることの常識を有していないものの如くである。

被告会社は昭和四四年八月二一日から昭和四四年九月二〇日の間の外注工事費の支払日は翌期の昭和四四年一〇月二〇日となるから、この間の該人の外注工事費を計上するに至り、未回収の仮払金四〇、〇〇〇円をその金額から相殺し、残額を未払外注工事費として翌期に繰越している。

告発人は仮払金が予定返済日に必ず返済されているものと断定し、且つ被告会社が期末相殺処理の伝票を作成するに当り「昭和四三年一一月二〇日分として」なる摘要記載をしていた(上記摘要記載は当初の引当月を明らかにし、当該仮払金の返済が延期されていたことの証しとすることにより期末仮払金相殺をダンプ業者に対抗するための手段としてなしたものである)ことを奇貨とし、之を悪意に解し、甚しく誤つた判断をなしたものである。右のとおりであるから告発人の想像による本件架空外注費は当該人については発生していない。右のとおりであるから一一月二〇日の被告会社支払日前に支払金の資金繰りのため、工事高との相殺金等の予定明細を記載していた。告発人らはそしてその書面に予定明細であることの標示がないことを奇貨として、色々と書面の名稱を変遷させ、実際には当該人が仮払金の返金の延期を申し込み延期されているのに相殺されているなど一方的に強引に事実に反する主張をされるのである。

(一二) 以上に加えて、昭和四五年九月期における運転手関係の架空外注費一〇万四、九〇〇円が同じ期に計上されている架空福利厚生費七二万六、三〇〇円を重複しているものでないことは、証拠上それらを別々の数値として算出し得ることからして、多言を要しない所論は、残念ながら具体的な論拠を欠いている」と言う。

然しながら、右主張の誤りであることは一目瞭然である。

即ち、告発人らはその仕訳が

借方(外注費)104,900円 貸方(福利厚生費)104,900円

となるから福利厚生費により外注費が計算されると解しているやに見受けられる。

ところがこの仕訳は被告会社の支払外注費に対し、被告会社が外注工事者から回収すべき下宿代(これを福利厚生費としている)と相殺決済しようといする仕訳である。

従つて、それぞれ各人各月の外注費は決済金の如何に拘らず既に確定しているのであつて、確定している外注費を超過して相殺控除出来る訳はないから、例え福利厚生費として外注費と相殺控除してもその福利厚生費外注工事高の範囲内の金額とされていることから、確定した外注工事費を上廻る部分の稱する架空外注費は生じないのである。

以上るる反論したが原判決が(罪となるべき事実として)「架空の外注費……を公表帳簿に計上して真実支払いをしたごとく装い、簿外となつた現金を架空名義の預金にするなどしてその所得を秘匿した」と言われる刑訴年度の抜き取つた現金による架空名義の預金も存在していない(別紙参照)ことから見ても告発人らの主張には理由がないことがはつきりする。

以上

別紙 書面(二)

答弁書 (五)

第五、法人税法第一五九条(法人税を免れる等の罪)で言う第七四条第一項第二号(確定申告に係る法人税額)に規定する法人税の額につき、法人税を免れたかどうかは、同条項号の規定により正当に計算した場合の、その法人税の額を言い、従つて申告法人税額が右正当計算による法人税額に比較し、過少である場合、その過少の原因が偽りその他不正の行為による部分の法人税額についてのみ法人税法第一五九条の適用がある。

1 確定申告に係る法人税額を正当に計算する場合の減少原因について

………答弁書(三)記載につき省略………

2 確定申告に係る法人税額を正当に計算する場合の増加原因について

イ 架空外注費について

………答弁書(三)及び(四)記載の通り………

ロ 架空従業員給料手当について

(一) 坪田登美男に対する架空従業員給料の事実は無いから否認する。

<1> 控訴趣意書によれば検察官は、

『被告人らは、昭和四四年九月期に六〇〇、〇〇〇円昭和四五年九月期に六五〇、〇〇〇円の従業員給料手当を計上していることにつき「真実給料手当として支払いしたもので、架空ではない」旨弁解するが被告法人の経理担当者岡本祐二郎の検察官に対する「従業員に対する架空の給料手当を計上した」旨の供述(記録二、三七〇丁ないし二、三七一丁)』があると言われる。(控訴趣意書八枚目次頁六行目から一一行目)

然しながら右供述について、岡本祐二郎に尋ねたところ、検察官から「従業員に対する架空の給料手当を計上したことはあるか」との質問があつたが「従業員に対する給料手当を計上していますが、架空の給料手当を計上したことはありません」と答えたと言い「検察官が聴き誤つて給料手当の上に架空と言う文字をつけ加えて供述書をお書になられたのではないか」と言つている。

<2> 控訴趣意書は又

『従業員である坪田登美男の「被告会社が計上しているとおりの給料手当は貰つていない」旨の上申書(記録一、五七六丁ないし一、五七七丁)』があるから、同人に対する計上給料は架空な給料手当で同人に対する支給事実は無いと、検察官は言われる(控訴趣意書八枚目裏一一行目から一四行目)。

坪田登美男の上申書の右文言によれば「被告会社から給料手当は貰つていない」と言つているのではなく、給料手当は貰つているが、会社が計上しているとおりの金額の給料手当は貰つていないとの意に解される。このことは同人が給料支給額を直接家計に持ち帰らないで自動車事故の時の費用に当てるため、被告人千甲童に預託し、必要がある時にはその金銭から引出しをなし使用していたことに鑑み「被告会社が計上しているとおりの給料手当は貰つていない」と答えたものと解される。

<3> 控訴趣意書は続けて

『に加えて、被告人千の大蔵事務官に対する「ダンプの運転手である坪田登美男関係で最近の一年半ほど毎月五万円程度の架空の給料を計上していました。このようにした理由は社会保険を支払つておかなければもしけがをした場合自費で高くつきますから私がこのような便法をとりました。当初の考えは、たとえば一か月の仕事の金額が二〇万円あれば五万円は給料にして、二〇万円から五万円を差引き一五万円を支給、ほかに月給五万円を支給するという考えでしたが、運転資金をたくわえることが先走り、支給していない五万円を含め、二〇万円を支給したように計上しました」旨の供述(記録二、二一五丁、二、二二九丁裏)を総合すると、架空の従業員給料手当を計上していたことは明らかである』と検察官は主張される(控訴趣意書八枚目裏一四行目から九枚目の一〇行目)

(a) 然し右供述書は、被告人千甲童の供述を正しく記載していない。なぜかなら「ダンプの運転手である坪田登美男関係で最近の一年半ほど毎月五万円程度の架空の給料を計上していました」と供述したと言われるのであるが、若しそうであるとすれば「このようにした理由は、労災とか、社会保険を支払つておかなければ、もしけがをした場合自費で高くつきますから私がこのような便法をとりました」と言う理由が成立しないことになる。このことは架空な給料で実際に支払わねばならない労災とか社会保険の支払が出来ないことから見て明らかである。

であるから、前段は「ダンプの運転手である坪田登美男関係で最近の一年半ほど毎月五万円程度の給料を支払つていました」と被告人千甲童がいつていたことが推定出来る。

又「私がこのような便法をとりました」と供述したとあるが、被告人千甲童自身の労災や、社会保険でないことから、坪田登美男が被告会社に常傭の仕事もするから(ダンプ運転による仕事は、外注工事費に当り、給料にはならない)その給料から労災や社会保険を支払い、そしてけがをした場合自費で高くつくことを防ごうとしたものである。従つて「私がこのような便法をとりました」は「架空の給料を計上していました」をさらに強調するための粉飾であり、被告人千甲童の主張でないことがはつきり判る。

(b) 「当初の考えは、たとえば一か月の仕事の金額が、二〇万円あれば、五万円は給料にして、二〇万円から五万円を差引き一五万円を支給、ほかに月給五万円を支給するという考えでした」との供述は次の意味で被告人千甲童が話したものである。

坪田登美男は、ダンプの運転手であり、もともと外注工事先となる者である。従つて一か月の外注工事高が二〇万円あると、仮定すれば、その外注費の内から五万円を差引き、外注工事費を一五万円として支払い差引いた五万円を給料として支払う考えであつたと供述しているのである。従つて「ほかに月給五万円を支給する」の「ほかに」は失当な表現である。なぜかなら「ほかに月給五万円」のその月給五万円は支払外注工事費から差引いた五万円に相当するからである。

又右当初の考えをやめたのは一か月の仕事の金額は、支払外注工事費に該当するから、給料の支払に該当しないことになり、それでは労災や社会保険控除の対象になし得ないためである。

(c) 「運転資金をたくわえることが先走り、支給していない五万円を含め、二〇万円を支給したように計上しました」とある供述が真実を記載したものでないことは、若し「支給していない五万円を含め、二〇万円を支給したように計上しました」と言うのであれば年間支給した給料額は二四〇万円となり、検察官が冒頭で示された昭和四四年九月期に六〇万円、昭和四五年九月期に六五万円の従業員給料手当を計上していることにならないからである。

仮に支給していない五万円を、支給したように帳簿に計上すれば帳簿上の現金は減殺され従つて帳簿上の運転資金は減少し、帳簿上から見ても被告会社の運転資金をたくわえることにはならない。

又実際に支給していない五万円を支給したように帳簿計上しても実際の現金有高に変動を生じないからそのことにより被告会社の運転資金をたくわえたことにもならない。

以上の通りであるから被告人千甲童の真実の供述をわい曲して誤つた矛盾した真実でない供述にすり替えられたものであることがよく判る。

検察官の主張は、関係者の供述のみにより「架空の従業員給料手当を計上していたことは明らかである」と言われるので、供述については前記の通りであるが、さらに証拠と根拠を基にして、次の通り答弁する。

坪田登美男は、水島瑞穂町の実在人であり株式会社水島土木と雇傭契約がある。そして常傭部分に対する固定給として毎月定額五万円の給料を支給していた。その外にもダンプ運転手として個人請負作業に従事していた。

当該給料は社会保険料控除後の金額を被告人千甲童に予託し、自動車事故等の負担に備えていたものであるが、必要がある場合は、該人は被告人千甲童に、その引出しを求め使用していた。

当該人の給料から控除した失業保険料、健康保険料、厚生年金等はそれぞれ水島職業安定書及び倉敷社会保険事務所等に納入している。

又、当該備金の内から、昭和四十五年三月に三万円と二万円の二回にわたる引出し希望があつたことがあるが当人に渡した右金額は、本件給与所得が他の所得に上積され増加する所得税の納付に当てる必要があるとの要求であつた。

源泉徴収については、毎年本人より扶養控除等の申告書の提出があり(扶養控除者二人)又年末には源泉徴収票が作成され本人に手渡されている。

以上の通り本人の希望により自動車事故の負担等に備え、被告人千甲童と個人的約定をして、給料の一部を被告人千甲童に予託し、その結果その予託金額に相当する金銭を家計に持ち帰えつていなかつたとしても、被告会社は、既に給料を支払済みであるから本件給料を架空給料手当と言うことは出来ない。

右に対する補促説明

イ 告発人は「坪田登美男名義で給料手当を架空計上している」と言い坪田登美男が架空人である如く主張するが、該人は水島北瑞穂町の実在人であり、現に本件の証人として岡山地方裁判所に出廷している。

ロ 坪田登美男は、被告会社の従業員であり、被告会社から給料の支給を受けている。そうであるから、

<1> 失業保険法第十三条の二第一項(被保険者資格得喪の確認)「被保険者の資格の取得及び喪失は、労働大臣の確認によつてその効力を生ずる」の被保険者の資格の取得について労働大臣の確認を得て、被保険者となり同法第五条「保険料及び失業保険金の額は被保険者の賃金に基いてこれを算定する」による賃金に基いた失業保険料を水島職業安定所に納付している。

この事実を無視して告発者は、坪田登美男に対する被保険者の資格の取得について労働大臣がなした確認は、虚偽だと主張するのかどうか、又告発人は労働大臣に優越して、そのような事実認定が出来るかその根拠を示されたい。

<2> 坪田登美男は、健康保険法第十三条(強制被保険者)「左ノ各号ノ一ニ該当スル事務所ニ使用セラルル者ハ、健康保険ノ被保険者トス………」の被保険者となり同法第二条(報酬)「本法ニ於テ報酬ト稱スルハ事業ニ使用セラルル者ガ労務ノ対価トシテ受クル賃金給料、俸給、手当又ハ賞与及之ニ準ズベキモノヲ謂フ………」の給料を基礎とする健康保険料を倉敷社会保険事務所に納付しているが告発人は同法の監督者である厚生大臣、社会保険庁長官又は、県知事等について、坪田登美男に対し虚偽の健康保険料を徴収しているとして行政上の指示が出来るか又、その様な権限があるか、その根拠を示されたい。

<3> 厚生年金保険法第九条(被保険者)「適用事業所に使用される者は、厚生年金保険の被保険者とする」の被保険者として同法第二〇条の被保険者の報酬月額を基礎として厚生年金を倉敷社会保険事務所に納付しているが、告発人は同法の監督者である厚生大臣、社会保険庁長官或は県知事に対し、坪田登美男に対する虚偽の厚生年金を、徴収しているから納付者に返還せよと命令が出来るか、又その様な権限を有するか、その根拠を示されたい。

<4> 坪田登美男は四四・九期、四五・九期に被告会社から支給を受けた給与はそれぞれの歴年に右の源泉徴収票を添付し、その給与所得及び他の事業所得等と共に記載した確定申告書を倉敷税務署に提出し納税している。

倉敷税務署長は、当該申告による給与所得を容認し、坪田登美男の給与所得についての減額更生は現在まで無い。

従つて給与所得に対応する部分の税額についても納付していることになるが、告発人は当該給与所得はあり得ないとして被告会社の法人税に於ける同人に対する支払給料の損金算入を否認し、脱税であるとして、告発人千甲童及び被告会社を告発している。

告発人は一方では給与所得の実在を容認して、その給与所得に対応する税金を坪田登美男に還付しない倉敷税務署長の処理は適法であると認めていると解されるのに、今一方では被告会社についてだけその給与の支払はあり得ないと言い被告会社の法人税に対する告発をしたか、その理由を示せ。

<5> 被告会社は、四四・九期、四五・九期に坪田登美男に支払つた給与については、倉敷市長に給与支払報告書を提出し、その結果坪田登美男は該給与に対応する市県民税を徴収されている。

<6> 坪田登美男に対する被告会社の給与の支払については、その源泉事務で坪田登美男からそれぞれの歴年について扶養控除等の申告書を、記名捺印の上提出されている。

このことは、該人が被告会社から給与の支払を受けていることの意思表示と解し得るが告発人は、該人の意思を否認することが出来るか。

以上の通り被告人は坪田登美男と被告会社との雇傭関係給料の支給事実について、それに伴う各行政機関の行政処理なかんずく倉敷税務署長の課税処理等から具体的にその存在を実証した。

告発人は、質問応答書顛末書により「赤沢次郎ほか関係者が架空である旨を供述しており」そのことを以つて証拠とすると言うのであるが質問応答書の応答書顛末書の問と、供述等は総て言葉の受取り方により色々に解釈されるものであり仮に応答者供述者が、係ることに不慣れなため、告発人等の心理的圧迫或は、記憶がうすれている等の原因があるときは答、供述が事実と相違してなされる場合もあるのであるから何ら具体的事実も示さず、ただそれのみを以つて罪を確定出来るとする告発人の主張は早計である。

又、被告人千甲童は当該給与を架空であると言つたことは無い。

認否書で「給料の一部を赤沢次郎に予託し………」と記載したことは、一旦給料の支給がなされた後その支払給料の金銭が如何ように使用されようと、給料の支給事実に影響を与えるものではないが、その使途についても明らかにし、給料の支給事実を明瞭にしようとしたにすぎない。

告発人が預託事実について関係者は何も意思表示をしないと主張するが当事者間で意思表示がなされたから預託がなされたものであることを申し添える。

冒頭陳述書第三犯行の方法一二、雑損失の認容によると、

「四四・九期 四八、〇〇〇円

四五・九期 五一、一六二円

これは架空従業員給料手当として計上したものに対する社会保険料であり、会社が裏で支払つていたものを認容したものである」

と検察官は言われる。

前述した通り坪田登美男は、実在人であり且つ、被告会社の常傭の雇人で毎月固定給を支給していたこと等に鑑み「架空従業員給料手当として計上した」との記載事実は誤りである。

又「………ものに対する社会保険料であり、会社が裏で支払つていたものである」と記載されているが、右社会保険料は、福利厚生費として帳簿に記載されており、他の雇人等の社会保険料と共に水島職業安定所(失業保険料)及び倉敷社会保険事務所(健康保険料と厚生年金)に正規の手続に基き納入しているものであるから、これ等諸官庁に裏で支払つたものでないことは明白である。

又告発人は

「従業員給料手当(坪田登美男の架空給料)に対する社会保険料等であつて、会社が負担しており、違法行為に基づくもので、返還請求ができる性質のものではないから雑損失として認容したものである」と主張する。

惟うに告発人は被告会社が坪田登美男の社会保険料を福利厚生費として計上し、納付していることに着目し、該人に対する支払給料は架空給料であると想像したものと解されるが、会社が使用人の社会保険料を負担しても違法となるものではない。坪田登美男の納付すべき社会保険料を、被告会社が負担する契約は私的自治の範疇に属するものであり、税法上の制約を受けるものではない。

以上に対する補促説明

イ 告発人は従業員が支払うべき失業保険料、健康保険料、厚生年金を雇主が代位支払することは、違法であると主張するが、失業保険法、健康保険法、厚生年金法には、代位支払が違法である旨の規定が無い。

又国税庁長官の基本通達三六-三二(課税しない経済的利益、使用者が負担する少額な保険料等)によれば健康保険法、失業保険法、厚生年金保険法等の規定により、従業員が被保険者として負担すべき保険料を、雇主が負担する場合少額な場合は課税しないこととなつていることに徴しても、雇主の代位納付は違法にならないと解する。若し告発人の主張通りとすれば当該通達は違法行為に基づくものとして廃止されなければならない。

ロ 告発人らの主張通り坪田登美男の架空給料を計上し、脱税するための社会保険料の納付だとすれば、脱税のための経費は損金にならないから、当該社会保険料の返還請求ができないとしても、その返還を求める金額を雑損失として認容することはできない。

従つて返還不能だとして既納社会保険料を容認することは、とりもなおさず坪田登美男に支給した給料は、架空給料ではないと言うことを認めたことになる。

ハ 雑損失を容認する手段は、架空給料をつくるための手段と解されるが社会保険料納付先官庁に対し、社会保険料の納付を裏から支払つたとか、被告会社が坪田登美男の社会保険料を負担したことを、違法行為であるとか、根拠の無いことを誇張して主張していることから見ても、告発人らの主張に真実がないことが読みとれる。

架空の福利厚生費、修繕費、燃料費及び雑費について

(一)架空の福利厚生費及び雑費は、犯則の事実が無いから否認する。

(1) 控訴趣意書で

『被告人らは、昭和四四年九月期及び同四五年九月期において架空の福利厚生費、修繕費、燃料費を、また同四五年九月期に架空雑費を計上している事実は認めながら「計理上の誤処理である」として犯意を否認するが、被告法人の経理担当者である岡本祐二郎は、検察官に対し故意に架空の福利厚生費及び雑費などを計上しいていた事実を認め「福利厚生費や雑費を二重計上していることにすぐ気づいたので社長である被告人千に、こんな馬鹿なことは出来んですよ、と話したところ、社長もそれはわかつとると、言われましたが結局ずるずると続いていたわけです」旨供述し(記録二、三六七丁ないし二、三七〇丁)………被告人らが意図的に、右福利厚生費等を架空計上していたことは、明らかであり単なる計理上の誤処理とは、到底認められないところである』と検察官は言われる(九枚目一一行目から裏末行前二行目)

そこで岡本祐二郎に右供述について尋ねたところ、検察官にその様な供述をした記憶は無いとのことであつた。右供述の内容を見ると

(a) 「福利厚生費や雑費を二重計上していることにすぐ気づいたので社長である被告人千に、こんな馬鹿なことは出来んですよと話した」とある。

計理担当者である岡本祐二郎が既に自ら二重計上しておきながら「こんな馬鹿なことは出来んですよ」と話す通理が無い。「こんな馬鹿なことは出来んですよ」と言う話しは馬鹿な記帳をなす前に話す言葉であることは常識であるから係る供述を岡本祐二郎がなしたとは解し得ない。

(b) 「社長である被告人千に、こんな馬鹿なことは出来んですよと話したところ社長もそれはわかつとると言われました」とあるが、被告人千甲童に簿記の仕訳けなど判る筈は無いから「社長もそれはわかつとる」と言う供述は真実性が無い。

(c) 「結局ずるずると続いていたわけです」とあるが、前述(a)、(b)の通りであるから、誤記帳が続いていたと言うことに解される。

以上の通りであるから供述があつたと言われるその供述には信憑性が無い。

(2) 架空の福利厚生費について

架空の福利厚生費については、冒頭陳述書の「第三犯行の方法、四、架空福利厚生費」についてを見ると「ダンプ運転手分の立替えた下宿代を会社が負担した如く処理して架空計上したもの

四四・九期 一、四三三、三六〇円

四五・九期 七二六、三〇〇円」

との記載がある

(a)誤記帳について

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (外注工事費) ××× (現金) ×××

右仕訳けは前月分の二〇日締めの支払外注工事費を支払つた場合の仕訳けである。

ところで実際には、ダンプ業者の預りとすべき下宿代を前月分の支払外注工事費から控除し、残額の外注工事費を支払つているのであるから

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (現金) ××× (預り金) ×××

右仕訳けをさらに追加起票をすべきであつたのに、この仕訳けがなされていない。

そして下宿代を支払つた時は被告会社の支払下宿代とダンプ業者の預り、下宿代を区分し

年月日 借方 金額 貸方 金額 摘要

××× (福利厚生費) ××× (現金又は当座預金) ××× 被告会社分の支払下宿代

××× (預り金) ××× (現金又は当座預金) ××× ダンプ業者分の預り下宿代

の仕訳けをなすべきであつたそうであるのに、その仕訳をなさず、被告会社の支払下宿代とダンプ業者の預り下宿代の合計額で下宿先が請求して来ることと、又当初預り下宿代の仕訳けをしていないため、誤つてそのまま下宿代の合計額で次の仕訳をしていた。

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (福利厚生費) ××× (現金又は当座預金) ×××

そのため福利厚生費とした下宿代の中にダンプ業者の預り下宿代金が混入し、その分だけ決算上の福利厚生費が過大となつていた。

右の次第であるが

<1> 誤計算即ち預り下宿代の仕訳けをなさなかつた原因動機はダンプ業者の下宿代であるから、その金銭を預つて支払つたとしても被告会社には関係が無いと錯誤していた。

<2> 被告会社はダンプ業者に対する「外注費内訳計算書」を作成し預り支払をなすべき下宿代を、支払外注工事費の控除科目とし、控除すべき金額を記入し、保存していた。

そして調査に当つては被告会社は右原始記録を呈示し、調査を受けている。

従つて調査者が福利厚生費とした下宿代の過大計上額を計算することは容易であり、調査に対し原始記録及び過大計上に対する隠蔽消滅等の事実も無いし、詐偽又は不正の故意的事実も無い。

<3> 告発人らは預り下宿代の仕訳が無いので、そのため帳簿上は預り下宿代が支払外注工事費から控除されていないから、その部分の金銭が支払外注工事費に含まれ社外に流出したようになつているため、預り下宿代として支払外注工事費から控除した金銭を被告人千甲童が抜き取つたと主張している。

然し実際には預り下宿代を控除した残額の支払外注工事費の金額のみをダンプ業者に支払つておるため、預り下宿代に相当する金銭は社外に流出していない。

又、外注工事費の支払に当つての資金手当ては、支払外注工事費から控除科目(例えば預り下宿代)の金額を控除した総額を基とし預金引出しをしている。

以上の通りであるから実際には支払外注工事費からの控除科目となつているダンプ業者の支払下宿代は、預り金として社内に留保され、その後支払下宿先に社内留保された業者の支払下宿代を支払つたとしても被告会社の貸借上の純資産には変動を生じないのである。

要するに預り下宿代の支払に伴い被告人千甲童が当該金銭を抜き取るなどの犯則行為はあり得ないのである。

(3) ダンプ業者の預り支払下宿代

四四、九期

<省略>

(注)1.右表は検察庁公判部に差押資料の閲覧請求をなし検討した数額である。

2.<1>の金額は被告会社の支払下宿代とダンプ業者からの預り支払下宿代の総額である。

3.<2><3><4><5><6><7>は業者との契約により被告会社が負担した支払下宿代である。

4.以上の結果、起訴状冒頭陳述書に、架空福利厚生費(業者からの預り支払下宿代)として記載されている金額一、四三三、三六〇円は九〇七、二三〇円が正当であり、差額五二六、一三〇円は検察官が誤つて、過大否認され架空福利厚生費に該当する。

四五・九期

<省略>

(注)1.右表は検察庁公判部に差押資料の閲覧請求をなし検討した数額である。

2.<1>の金額は被告会社の支払下宿代とダンプ業者からの預り支払下宿代の総額である。

3.<2><3><4><5>は業者との契約により被告会社が負担した支払下宿代である。

4.以上の結果、起訴状冒頭陳述書に架空福利厚生費(業者からの預り支払下宿代)として記載されている金額七二六、三〇〇円は六八三、四〇〇円が正当であり、差額四二、七〇〇円は検察官が誤つて、過大否認された架空福利厚生費に該当する。

(4) 結論

(3)の「ダンプ業者の預り支払下宿代」で検討したように四四・九期、七二三、二五〇円、四五・九期、四六三、九〇〇円については当初から外注工事業者との契約により被告会社が負担する支払下宿代であるから、被告会社の預り支払下宿代に該当しない。

四四・九期、九〇七、二三〇円、四五・九期、六八三、四〇〇円については実際には被告会社が預り支払下宿代として社内留保していた金銭を支払下宿先に支払つたに過ぎないから貸借上の純資産には結果的に変動を生じないが損益計算上は、右預り支払下宿代を被告会社の負担となる支払下宿代と合せ、福利厚生費として記載されているから、計算上当該金額は福利厚生費の過大計上となつていることを認める。

一般にダンプ業者の下宿代を被告会社が支払うことは、被告会社の負担に属さない単なる預り金の支払であり、当該金額は既に預り支払下宿代として支払外注工事費から控除されているのであるから、その預り支払下宿代を福利厚生費としたことは誤りであつた。

右誤りを犯した大きな原因は、会社負担の下宿代と預り支払の下宿代を同時に小切手で支払つていたこと、又外注工事費の金額性(預り下宿代を控除しない金額が損金となる外注工事費であること)と決済のための預り金の性質(預り下宿代は他人の決済の金額を意味するから決して損金となるべき福利厚生費にはなり得ないこと)等について簿記の知識が無かつた為等に因るものであり、当初から脱税の意識を以つて右預り下宿代を福利厚生費に算入したものでないことは、記帳の原始記録となるべき一般ダンプ業者に対する外注費内訳計算書により、外注工事費から預りとなるべき下宿代が控除されていることが明らかであり、又下宿代の支払領収書等総て原始記録が保存されており、且つ、税務調査でこれ等の記録を提示したこと等から決して故意による不正行為を犯したものでないことを主張する。

補助説明

イ ダンプ業者の外注工事費は単に支払計算の上で宿代等を引去つた後の金銭のみが手渡し金額として支払われているからその時点では引去金は未だ下宿代として支払われない状態で被告会社の預金又は現金として実際には存在し、その後当該引去金に対応する預金又は現金を以つてダンプ業者の依頼先に宿代が支払われることになる。

そうであるから起訴の冒頭陳述書第三犯行の方法で言われるように「………公表帳簿に架空経費を計上して損金の水増計上をし、会社から抜き取つた現金を仮名預金にする等して隠匿し………」の会社から抜き取つた現金など実際には在り得よう筈が無い、換言すれば被告人千甲童は、会社から預り下宿代に相当する金銭を抜き取つていない。

ロ 被告人千甲童は、簿記の知識が無いため、結果ダンプ業者の宿代を誤つて被告会社の福利厚生費に算入し、ために損益計算上の利益(所得)減少が発生した。

然しながら計算誤りは何人にでもあることであり、早い話しが告発人や検察官ですら、本件宿代の計算について四四・九期は正確には九〇七、二五〇円が正当であるのに起訴状記載金額(告発金額)は一、四三三、三六〇円であると記載し、五二六、一三〇円の過大告発がなされており、四五・九期は正確には六八三、四〇〇円が正当であるのに起訴状記載金額は七二六、三〇〇円であると記載し四二、七〇〇円の過大告発となつている。

告発及び起訴の趣旨からすれば過大額についても被告人を罪人とするための基礎とされているのである。

被告人千甲童に預り下宿代の抜き取り等の犯罪も無く、又その他の犯意も無く、計理者の単なる計算誤りがあつたと言うことだけでは、犯罪は成立しないと主張するのである。

例え被告人らに対する心理的圧迫により、罪となるのに都合のよい供述を作成したとしても、犯罪行為に対する物証も無く、単純な誤計算に因る所得減少の事実のみを以つては、脱税のための犯則と言うことにはなり得ないのである。

(5) 架空雑費について

五、起訴に対する冒頭陳述書の「第三、犯行の方法、七、架空雑費」について

「前同様ダンプ運転手分の立替した下宿代を会社が負担した如く処理して、雑費として架空計上していたもの四五・九期 九〇、〇〇〇円」

とあるが右金額は、昭和四五年六月分の支払下宿代の総額であり、その内寺川惣太分の下宿代二七、六〇〇円は被告会社負担の約定であり、従つて既に預け金として外注工事費から控除していた金額は、六二、四〇〇円となり、訴状記載金額の九〇、〇〇〇円は、六二、四〇〇円が相当額となるから、二七、六〇〇円は過大な架空犯罪に対する起訴となつている。

被告会社が右の誤りを犯した理由は、前号福利厚生費の場合と同様、簿記知識がないため単純誤計算をなしたものであり、その誤りであることを明らかにし得る外注費内訳計算書の記載並に保存があり、且つ支払に対する領収証等も保存し、それ等の原始記録を調査に提示しているから、故意による不正行為でないことを主張する。

補促説明

告発人は「寺川惣太の下宿代会社負担の約定は事実であれば、経理担当者岡本祐二郎が当然供述するはずであるが、同人はこのことについて何ら述べない」と言い、であるから寺川惣太の下宿代は被告会社が負担していないと主張する。

顛末書等の供述は一般的に供述を求める告発人等が供述人に質問し、然る後にその質問された事項について、供述人が告発人らに答えるのが慣行とされている。

従つて告発人らが寺川惣太の下宿代会社負担の約定について岡本祐二郎に質問をなさなかつた場合は、供述が得られないのは当然であり、又告発人がその供述を求めない場合は、そのことに因り被告会社が寺川惣太の下宿代を負担する約定と、その約定を履行していても、その下宿代は預り支払下宿代となり、その金額は、告発金額となるとの理由は成立しない。

(二)架空の修繕費及び燃料費は犯則の事実が無いから否認する

(1) 控訴趣意書で

『被告人千も大蔵事務官及び検察官に対し「架空燃料費などを計上することについては、私の考えを岡本に話し、同人に実行させました。その時期は、昭和四三年の中頃からと思います。このことは私と岡本が知つていることであとは誰にも話しておりません」旨供述しているのであつて(記録二、二一五丁ないし二、二九五丁)被告人らが意図的に……架空計上していたことは明らかであり、単なる計理上の誤処理とは到底認められないところである』(控訴趣意書九枚目裏七行目から一四行目)と検察官は主張される。

<1> 然しながら「架空燃料費などを計上することについては、私の考えを岡本に話し、同人に実行させました」と供述したと言われるのであるが、被告人千甲童に簿記の知識が無いのにどうして記帳仕訳けの指示が出来るのが常識上理解出来ないことである。

第一架空燃料費と言う表現は、実在しない燃料費を言うものであるが本件の場合の燃料費は、実在する燃料費であり、ただその燃料費が外注工事請負人であるトラック業者の燃料であり、それを被告会社が預り支払していたのであつて、実在する燃料費であることは今更ら申すまでもない。

告発人らはそれを、架空燃料費と稱することにより、犯則があるものの如く裁判の予断を得ようとする手段としているのである。

支払外注工事費から、トラック業者の支払燃料費等を控除し、その残額を手渡し金額として支払つている場合に、その支払外注工事費の金額仕訳をした場合は、控除した支払燃料費は預り金として仕訳けをなすべきものであるが、係る仕訳けを知らない被告人千甲童が、右記帳上の預り支払燃料費の仕訳けをなすべきでないと指示したとの供述は、被告人千甲童の簿記知識の程度からは到底理解し、得られないところである。

<2> 「このことは私と岡本が知つていることであるとし誰にも話しておりません」とのことについて被告人千甲童は外注工事費等の支払取引は、私(被告人千甲童)と岡本がやつていましたと話したことを悪意に利用し、「……が知っていることで、あとは誰にも話しておりません」と話しに尾ヒレをつけ、犯罪を作られたものと思うと話している。

又、以上の通り告発人や検察官が言われる右供述は、したことがないが供述書をよく見ないで捺印したため、そのように作られていたものと考えると、被告人千甲童は申し述べている。

(2) 架空の燃料費について

架空の燃料費については、冒頭陳述書の「第三犯行の方法、六架空燃料費」についてを見ると

「前同様ダンプ運転手分の立替した自動車の燃料費を会社が負担した如く処理して、架空計上したもの

四四・九期 七、三三三、四四二円

四五・九期 三、九三九、三二六円」

との記載がある。

(a) 誤記帳について

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (外注工事費) ××× (現金) ×××

右仕訳けは前月分の二〇日締めの支払外注工事費を支払つた場合の仕訳けである。

ところで実際にはダンプ業者の預りとすべき燃料費を前月分の支払外注工事費から控除し、残額の外注工事費を支払つているのであるから

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (現金) ××× (預り金) ×××

右仕訳けを、さらに追加起票をすべきであつたのに、この仕訳けがなされていない。

そして燃料費を支払つた時は、被告会社の支払燃料費とダンプ業者の預り燃料費を区分し

年月日 借方 金額 貸方 金額 摘要

××× (燃料費) ×××(現金又は当座預金) ××× 被告会社分の支払燃料費

××× (預り金) ×××(現金又は当座預金) ××× ダンプ業者分の預り燃料費

の仕訳けをなすべきであつたそうであるのに、その仕訳けをなさず、被告会社の支払燃料費とダンプ業者の預り燃料費の合計額で、燃料屋が請求して来ることと、又当初預り燃料費の仕訳けをしていないため、誤つてそのまま燃料費の合計額で次の仕訳けをしていた。

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (燃料費) ×××(現金又は当座予金) ×××

そのため燃料費とした内に、ダンプ業者の預り燃料費が混入しその分だけ決算上の燃料費が過大となつていた。

右の次第であるが

<1>誤計算即ち預り燃料費の仕訳けをなさなかつた原因動機はダンプ業者の燃料費であるから、その金銭を預つて支払つたとしても被告会社には関係が無いと錯誤していた。

<2>被告会社はダンプ業者に対する「外注費内訳計算書」を作成し預り支払をなすべき燃料費を支払外注工事費の控除科目とし控除すべき金額を記入し保存していた。

そして調査に当つては、被告会社は右原始記録を呈示し調査を受けている。従つて調査者が燃料費の過大計上額を計算することは容易であり、調査に対し原始記録及び過大計上に対する隠ぺい消滅等の事実も無いし、詐偽又は不正の故意的事実も無い。

<3>告発人らは預り燃料費の仕訳けが無いので、そのため帳簿上は預り燃料費が支払外注工事費から控除されていないから、その部分の金銭が支払外注工事費に含まれ、社外に流出したようになつているため、預り燃料費として、支払外注工事費から控除した金銭を被告人千甲童が抜き取つたと主張している。

然し実際には預り燃料費を控除した残額の支払外注工事費の金額のみをダンプ業者に支払つておるため預り燃料費に相当する金銭は社外に流出していない。

又、外注工事費の支払に当つての資金手当ては、支払外注工事費から控除科目(例えば預り燃料費)の金額を控除した総額を基とし、予金引出しをしている。

以上の通りであるから実際には支払外注工事費からの控除科目となつているダンプ業者の支払燃料費は預り金として社内に留保され、その後燃料屋に社内留保された業者の支払燃料費を支払つたとしても被告会社の貸借上の純資産には変動を生じないのである。

要するに預り燃料費の支払に伴い被告人千甲童が当該金銭を抜き取るなどの犯則行為はあり得ないのである。

(3)ダンプ業者の預り燃料費の檢討

<1>倉敷市中敏四丁目五-四一 大豊興産が請求した燃料費

a ダンプ業者の預り燃料費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払燃料費 四五・九期支払燃料費

<省略>

b 被告会社の支払燃料費

<省略>

(注) 但し、四三年一二月分支払額三九〇、〇〇〇円、四四年一月分支払額六二〇、〇〇〇円、四四年六月分支払額七五五、〇〇〇円は右合計額から除かれているが、これに対する請求書の閲覧を公判部に求めたが、見当らないとの回答であり、その旨当初当該請求書を差押え持帰えつた広島国税局査察課担当主査に照会するも、そのようなことはないはづだとの回答で、現在のところ右部分については檢討すべき燃料の請求書の閲覧が不可能なため檢討認否することが出来ない。

<2> 倉敷市水島明神町二一四六、藤原石油が請求した燃料費

a ダンプ業者の預り燃料費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払燃料費 四五・九期支払燃料費

<省略>

b 被告会社の支払燃料費

<省略>

(注) 但し、四三年一〇月分支払額一九八、四六〇円、四三年一二月分支払額一九九、八〇〇円、四五年九月分支払額四四九、五九二円は右合計額から除かれているが、これに対する請求書の閲覧を公判部に求めたが、見当らないとの回答であり、その旨当初当該請求書を差押え持帰えつた広島国税局査察課担当主査に照会するも、そのようなことはないはづだとの回答で、現在のところ右部分について検討すべき燃料の請求書の閲覧が不可能なため検討認否することが出来ない。

<3> 倉敷市水島西通り一、山田石油が請求した燃料費

a ダンプ業者の預り燃料費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払燃料費 四五・九期支払燃料費

<省略>

右小計額以外の支払で、差押請求書の閲覧が出来ないため、個々人の車番を明にすることが出来ないが、ダンプ業者の支払燃料費と推定したものは次の通りである。(a’)

支払年月分 ダンプ業者 四四・九期支払燃料費 四五・九期支払燃料費

<省略>

<4> 福山市手城町一四八、平山石油が請求した燃料費

a ダンプ業者の預り燃料費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払燃料費 四五・九期支払燃料費

<省略>

以上を統計するとダンプ業者の預り燃料費は、次の通りとなる。

<省略>

(注)1.(株)水島土木の支払燃料費は除かれる

2.告発人が差押え持帰えつた燃料費請求書を紛失しているため、当該金額に犯則金額が含まれているかどうか、認否が出来ないばかりか、犯則の証拠が無いことになつたので次の金額を除く。

<省略>

(4) 結論

(3)の「ダンプ業者の預り燃料費」で檢討したように四四・九期四、四二七、一六七円。四五・九期三、七四四、八三〇円は実際には被告会社が預り、燃料費を燃料屋に支払つたに過ぎないから、貸借上の純資産には結果的に変動を生じないが、損益計算上は、右預り燃料費を被告会社の負担となる支払燃料費と合せ、燃料費として損金計上しているから、燃料費の過大計上となつていることを認める。

一般にダンプ業者の負担となる預り燃料費を、被告会社が支払つても被告会社の燃料費に該当しない。当該金額は既に預り燃料費として支払外注工事費から控除されているのであるから、その預り燃料費を損金計上の燃料費としたことは誤りであつた。

右誤りを犯した大きな原因は、会社負担の燃料費と預り支払の燃料費を同時に小切手で支払つていたこと。又外注工事費の金額性(預り燃料費を控除しない金額が損金となる外注工事費であること)と決済のための預り金の性質(預り支払燃料費は他人の決済の金額を意味するから、決して損金となるべき燃料費にはなり得ないこと)等についての簿記の知識が無かつた為等に因るものであり、当初から脱税の意識を以つて右預り支払燃料費を損金計上の燃料費に算入したものでないことは、記帳の原始記録となるべき一般ダンプ業者に対する外注費内訳計算書により、外注工事費から預りとなるべき燃料費が控除されていることが明らかであり、又燃料費の請求書及び領収証等の総ての原始記録が保存されており、且つ、税務調査でこれ等の記録を提示したこと等から決して故意による不正行為を犯したものでないことを主張する。

補促説明

<イ>ダンプ業者の外注工事費は單に支払計算の上で燃料費を引去つた後の金銭のみが手渡し金額として支払われているから、その時点では引去金は未だ燃料費として支払われない状態で被告会社の予金又は現金として実際には存在し、その後当該引去金に対応する預金又は現金を以つて、ダンプ業者の依頼先に燃料費が支払われることになる。

そうであるから、起訴の冒頭陳述書第三犯行の方法で言われるように「………公表帳簿に架空経費を計上して損金の水増計上をし、会社から抜き取つた現金を仮名預金にする等して隠匿し………」の会社から抜き取つた現金など実際には在り得よう筈が無い。換言すれば被告人千甲童は、会社から預り燃料費に相当する金銭を抜き取つていない。

<ロ>被告人千甲童は、簿記の知識が無いため、結果ダンプ業者の燃料費を誤つて、被告会社の燃料費に算入し、ために損益計算上の利益(所得)の減少が発生した。

然しながら計算誤りは、何人にでもあることであり、早い話しが告発人や檢察官ですら、本件燃料費の計算について四四・九期は正確には四、四二七、一六七円が正当であるのに、起訴状金額(告発及び起訴金額)は、七、三三三、四四二円であると記載し、二、九〇六、二七五円の過大告発及び起訴がなされており、四五・九期は、正確には三、七四四、八三〇円が正当であるのに、起訴状金額は三、九三九、三二六円であると記載し、一九四、四九六円の過大告発及び起訴がなされている。

告発及び起訴の趣旨からすれば、右過大額についても被告人を罪人とするための基礎とされているのである。

又、本件犯則所得は、損益計算書に拠り立証すると言われる檢察官の損益計算についても誤りがある。即ち当該損益計算を正当になすためには山土仕入れのたな卸をなすことが、簿記上必要である。

分り易く説明すると、期首の山土在高は、当期山土仕入高に加算し、期末山土の在高を控除し、宅地造成原価(或は埋立原価)を計算し、初めて正当な計算がなされるものであることは、初心者程度の簿記知識のある者であれば誰でも知つていることであるのに、山土のたな卸計算もなさず、その損益計算で犯則所得が立証出来るなど甚しい所得計算上の誤りを犯していることに徴しても、人は誤計算を容易になすものであることがはつきり判る。

被告人千甲童に預り燃料費の抜き取り等の犯罪も無く、又その他の犯意も無く計理者の單なる計算誤りがあつたと言うことだけでは犯罪は成立しないと主張するのである。

例え被告人らに対する心理的圧迫により、罪となるのに都合のよい供述を作成したとしても犯罪行為に対する物証も無く単純な誤計算に因る所得減少の事実のみを以つては、脱税のための犯則と言うことにはなり得ないのである。

(5) 架空の修繕費について

架空の修繕費については、冒頭陳述書の「第三犯行の方法、五架空修繕費」について見ると

「右同様ダンプ運転手分の立替した自動車の修繕費を会社が負担した如く処理して架空計上したもの

四四・九期 四、八六七、五四六円

四五・九期 三、一六〇、九〇二円」

との記載がある

(a)誤記帳について

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (外注工事費) ××× (現金) ×××

右仕訳けは前月分の二〇日締めの支払外注工事費を支払つた場合の仕訳けである。

ところで実際にはダンプ業者の預りとすべき修繕費を前月分の支払外注工事費から控除し、残額の外注工事費を支払つているのであるから

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (現金) ××× (預り金) ×××

右仕訳けを、さらに追加起票をすべきであつたのに、この仕訳けがなされていない。

そして修繕費を支払つた時は、被告会社の支払修繕費とダンプ業者の預り修繕費を区分し

年月日 借方 金額 貸方 金額 摘要

××× (修繕費) ×××(現金又は当座予金) ××× 被告会社分の修繕費

××× (預り金) ×××(現金又は当座予金) ××× ダンプ業者の預り修繕費

の仕訳けをなすべきであつた。そうであるのに、その仕訳けをなさず、被告会社の支払修繕費とダンプ業者の預り修繕費の合計額で、修繕先が請求して来ることと、又当初預り修繕費の仕訳けをしていないため、誤つてそのまま修繕費の合計額で次の仕訳けをしていた。

年月日 借方 金額 貸方 金額

××× (修繕費) ×××(現金又は当座予金) ×××

そのため修繕費とした金額の内に、ダンプ業者の預り修繕費が混入しその分右の次第であるが

<1>誤計算即ち預り修繕費の仕訳けをなさなかつた原因動機はダンプ業者の修繕費であるから、その金銭を預つて支払つたとしても被告会社には関係が無いと錯誤していた。

<2>被告会社はダンプ業者に対する「外注費内訳計算書」を作成し、預り支払をなすべき修繕費を支払外注工事費の控除科目とし控除すべき金額を記入し保存していた。

そして調査に当つては、被告会社は右原始記録を呈示し調査を受けている。

従つて調査者が修繕費の過大計上額を計算することは容易であり、調査に対し原始記録及び過大計上に対する隠ぺい消滅等の事実も無いし、詐偽又は不正の故意的事実も無い。

<3>告発人らは預り修繕費の仕訳けが無いので、そのため帳簿上は預り修繕費が支払外注工事費から控除されていないから、その部分の金銭が支払外注工事費に含まれ、社外流出したようになつているため、預り修繕費として、支払外注工事費から控除した金銭を被告人千甲童が抜き取つたと主張している。

然し実際には預り修繕費を控除した残額の支払外注工事費の金額のみをダンプ業者に支払つておるため、預り修繕費に相当する金銭は社外に流出していない。

又、外注工事費の支払に当つての資金手当ては、支払外注工事費から控除科目(例えば預り修繕費)の金額を控除した総額を基とし、予金引出しをしている。

以上の通りであるから、実際には支払外注工事費からの控除科目となつているダンプ業者の支払修繕費は預り金として社内に留保され、その後支払修繕先に社内留保された業者の支払修繕費を支払つたとしても被告会社の貸借上の純資産には変動を生じないのである。

要するに預り修繕費の支払に伴い被告人千甲童が当該金銭を抜き取るなどの犯則行為はあり得ないのである。

(6) ダンプ業者の預り修繕費

<1>倉敷市水島南幸町三-四六、(有)共栄自動車整備工場が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<2>倉敷市水島南亀島町一四-三、(有)平井電機工業所が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<3>倉敷市中畝四丁目一六番三三号、丸善タイヤ工業所が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<4>岡山市久米六番地東洋重機工業(株)が請求した修繕費

車番及び業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

六〇 S 小早川 五七八、六二七円 六九四、四〇六円

<5>倉敷市水島神田町東光自動車整備工場が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<6>倉敷市福田町東塚四三七、中尾自動車工業(株)が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<7>倉敷市水島南瑞穂町一-一長門自動車整備工場が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<8>倉敷市連島町連島一六四、野瀬ゴム工業所が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<9>倉敷市水島海岸通り、水島重機整備工場が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

<10>倉敷市水島北亀島、中村解体が請求した修繕費

車番及びダンプ業者 四四・九期支払修繕費 四五・九期支払修繕費

<省略>

(7) 結論

(6)の「ダンプ業者の預り修繕費」で檢討したように四四・九期八八九、六九一円、四五・九期九六四、七五五円については被告会社の支払修繕費であるから、被告会社の預り支払修繕費に該当しない。

四四・九期四、八六四、四七一円四五・九期二、七七一、〇七一円については、実際には被告会社が預り支払修繕費として、社内留保していた金銭を支払修繕先に支払つたに過ぎないから、貸借上の純資産には結果的に変動を生じないが、損益計算上は右預り支払修繕費を、被告会社の負担となる支払修繕費と合せ修繕費として、損金計上しているから計算上は当該金額は、修繕費の過大計上となつていることを認める。

一般にダンプ業者の修繕費を被告会社が支払うことは被告会社の負担に属さない單なる預り金の支払であり、当該金額は既に預り修繕費として支払外注工事費から控除されているのであるから、その預り支払修繕費を損金計上の修繕費としたことは誤りであつた。

右誤りを犯した大きな原因は会社負担の修繕費と預り支払修繕費を同時に小切手で支払つていたこと、又外注工事費の金額性(預り修繕費を控除しない金額が損金となる外注工事費であること)と決済のための預り金の性質(預り修繕費は他人の決済の金額を意味するから、決して損金となるべき修繕費にはなり得ないこと)等についての簿記の知識が無かつた為等に因るものであり、当初から脱税の意識を以つて、右預り修繕費を損金計上の修繕費に算入したものでないことは、記帳の原始記録となるべき一般ダンプ業者に対する外注費内訳計算書により、外注工事費から預りとなるべき修繕費が控除されていることが明らかであり、又修繕費の請求書及び支払領収証等総て原始記録が保存されており且つ税務調査でこれ等の記録を提示したこと等から決して故意による不正行為を犯したものでないことを主張する。

補助説明

<イ>ダンプ業者の外注工事費は單に支払計算の上で預り修繕費等を引去つた後の金銭のみが手渡し金額として支払われるから、その時点では引去金は未だ修繕費として支払われない状態で被告会社の預金又は現金として実際には存在し、その後当該引去金に対応する預金又は現金を以つてダンプ業者の依頼先に修繕費が支払われることになる。

そうであるから、起訴の冒頭陳述書第三犯行の方法で言われるように「………公表帳簿に架空経費を計上して損金の水増計上をし、会社から抜き取つた現金を仮名預金にする等して隠匿し………」の会社から抜き取つた現金など実際には在り得よう筈が無い換言すれば被告人千甲童は、会社から預り修繕費に相当する金銭を抜き取つていない。

<ロ>被告人千甲童は、簿記の知識がないため、結果ダンプ業者の預り修繕費を誤つて、被告会社の修繕費に算入し、ために損益計算上の利益(所得)の減少が発生した。

然しながら計算誤りは、何人にでもあることであり、早い話しが告発人や檢察官ですら、本件修繕費の計算について四四・九期は正確には四、八六四、四七一円が正当であるのに、起訴状金額(告発及び起訴額)は、四、八六七、五四六円であると記載し、三、〇七五円の過大告発及び起訴がなされており、四五・九期は、正確には二、七七一、〇七一円であるのに、起訴状金額は三、一六〇、九〇二円であると記載し、三八九、八三一円の過大告発及び起訴となつている。

告発及び起訴の趣旨からすれば過大額についても、被告人を罪人とするための基礎とされているのである。被告人千甲童に預り修繕費の抜き取り等の犯罪も無く、又その他の犯意も無く、計理者の単なる計算誤りがあつたと言うことだけでは、犯罪は成立しないと主張するのである。

例え被告人らに対する心理的圧迫により罪となるのに都合のよい供述を作成したとしても犯罪行為に対する物証も無く、單純な誤計算に因る所得減少の事実のみを以つては脱税のための犯則と言うことにはなり得ないのである。

(ハ)認否書第四回、四四・九期野瀬ゴム関係架空修繕費について

告発人は次の如く主張する

支払月 支払金額

「車番 五六-一三 吉村松男 一〇月 一、六五〇円

〃 五〇-三一 岩津喜八 二 三一〇

〃 六五-七五 上原義男 六 六五〇

〃 〃 〃 八 七五〇

檢討結果は別紙のとおりで当局の調査のとおり不正が行われたものと認められる。当局に現在証拠がないので確答はできないが、けん疑者は、証第二五号車両集計表により確定した額を是認し、それ以外の証拠によつたものは否認したものと認められる」

右主張によると告発人は、証拠物がないので確答はできないと言う荀も被告人を罪人とするための告発は、証拠により確答の出来るものによりなすべきである。

<1>吉村松男の一〇月分の支払は、四三年九月分の支払であるから告発年度(四四・九期)から除かれるものである。

<2>岩津喜八、上原義男の告発人の主張月についての脱ろう額は、被告が岡山檢察庁にお願し、告発人が引継いだ当該証拠物について調べるも該当するものが無い。

<3>告発人が檢討した別紙について

a 岩津喜八の控除額として告発人が記載している取引について

藤原石油 二月 七、〇〇〇円 認否書計上ずみ

野瀬ゴム 〃 三一〇 檢察庁の証拠資料になし

b 上原義男の控除額として告発人が記載している取引について

藤原石油 六月 二二、一四四 被告会社の負担

〃 八 四〇、五五四 〃

丸善タイヤ 八 七〇〇 檢察庁の証拠資料になし

野瀬ゴム 六 六五〇 〃

〃 八 七五〇 〃

東光自動車 六 四、六〇〇 〃

〃 八 一、三〇〇 〃

金辺商店 六 八、九六〇 〃

c 吉村松男の控除額として、告発人が記載している取引について

藤原石油 一〇月 五、三七六円 檢察庁の証拠資料になし

野瀬ゴム 一〇 一、六五〇 檢察庁の証拠資料によると四三年九月支払となつている従つて告発年度に該当しない

水島タイヤ 一〇 五〇〇 檢察庁の証拠資料になし

d 修繕費の場合は、ダンプ業者が総て被告会社に支払を依頼するとは限らない。例え集計表に記載していても、ダンプ業者自身が支払うことを申し出た場合は、被告会社の支払とならない。

一般的に檢察庁の証拠資料にない場合は、ダンプ業者の直接支払と推定される。

e 告発人は「支払方法が現金払と、小切手払の抱合せとなつている場合、現金支払について不正が行なわれた」と、岡本裕二郎が供述したと主張しているが、岡本裕二郎は、その様なことを供述したことはないと言つている。

<ニ>認否書第四回、四四・九期平井電機関係架空修繕費について

<省略>

a支払依頼修繕費については、ダンプ業者の依頼があつた場合に限り、支払外注工事費から計算の上で引去り、引去後の金銭のみについて支出し、ダンプ業者に残代金を手渡しすることになるから、支払依頼修繕費があつたとしても、それに見合う金銭は、支払依頼先に支払いされる迄は当然会社の現金或いは予金であるから、稱する架空修繕費に該当する金銭等は何人も会社から抜き取ることは出来ないし、又、抜き取つた者もいない。

以下省略

別紙 書面(三)

補充認否書(一)

被告人 株式会社水島土木工業

同 千甲童

右の者に対する法人税法違反被告事件において、検察官は、その冒頭陳述書(第三犯行の方法一〇受取利息の項)において「被告人水島土木工業は、架空経費の計上によつて抜き取つた現金を仮名等で裏預金していて、その利息を左の通り利得している。」としています。

昭和四四、九期 一、三六七、四〇二円

昭和四五、九期 二、一一一、五七四円

然し、右受取利息は、昭和四一年一二月二四日被告人会社水島土木工業設立以前に千甲童が預金していた個人預金から発生した利息であり、検察官が云うように被告人会社設立後に架空経費の計上により抜き取つた現金を仮名等で裏預金した元本から発生したものではありません。その詳細は被告人らが認否書(第七回分)で申上げているとおりであります。

そして、それは私らが、特に集めた諸証拠と私の記憶に基いて積密作成したものであります。

然し、右認否書には、その証拠の記載が脱漏していたので、別紙の通りこれに証拠の番号を附記して提出致します。

右陳述致します。

昭和五八年一月二五日

岡山地方裁判所 御中

(一)四四、九期一、三六七、四〇二円の預金利息について説明します。

1.四一、一二、二四新規契約中銀/水島鳥越基吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六五四)

右に対する四三、一二、二五の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

被告法人は、四一、一二、二四が設立登記の日であり株式払込金総額の五、〇〇〇、〇〇〇円は、中銀/水島の当座預金に四一、一二、二六に入金し、当該金額が被告法人開始後の初回入金でありますから四一、一二、二四設立日に、鳥越基吉として定期預金された一、〇〇〇、〇〇〇円の金銭は被告会社に当日存在しませんから会社予金には該当しません。

右予金は、赤沢次郎の個人予金です。

証拠 <イ> 符第九八号の一枚目の新口欄(五〇〇万円入金の分)

<ロ> 符第九九号の一枚目の九欄(鳥越基吉名分)

2.四一、一二、二八新規契約中銀/水島藤田喜美夫名義定期預金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六六二)

右に対する四三、一二、二八の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

広相/倉敷竹内明子名義四〇、一二、二一新約四一、一二、二一解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

〃 三宅洋子〃 〃 〃 〃 〃 五〇〇、〇〇〇円( 〃 〃 )

計一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した定期予金の解約金により四一、一二、二八に藤田喜美夫名義(赤沢次郎)で一、〇〇〇、〇〇〇円の定期をした。

証拠 <イ> 符第一〇〇号の二六欄目(竹内明子名分)

<ロ> 同号の二七欄目(三宅洋子名分)

3.四二、一、二八新規契約中銀/水島中野義一名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三七二一)

右に対する四四、一、二九の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

中銀/水島中村次郎名義当座予金四一、一〇、二〇引出金(一、五〇〇、〇〇〇円)(赤沢次郎個人当座)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した金銭を赤沢次郎個人当座から引出し四二、一、二八に中野義一名義(赤沢次郎)で、一、〇〇〇、〇〇〇円の定期をした。

証拠 符第九七号の九枚目中(四一、一〇、一七。一五〇万円引出分)

4.四二、二、二三新規契約中銀/水島古家野茂名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三八二九)

右に対する四四、二、二六の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

中銀/水島中村次郎名義当座予金四一、一〇、二〇引出金(一、五〇〇、〇〇〇円)(赤沢次郎個人当座)

右の内 五〇〇、〇〇〇円

広相/倉敷千原昌子名義四〇、一二、二一新約四一、一二、二九解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した五〇〇、〇〇〇円を赤沢次郎の個人当座から引出し同様に設立前に発生した定期予金の解約金五〇〇、〇〇〇円と合せ一、〇〇〇、〇〇〇円とし四二、二、二三に古家野茂名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ>符第九七号の九枚目(四一、一〇、一七。一五〇万円引出分)

<ロ>符第一〇〇号の二五欄目(千原昌子名分)

5.四二、二、二七新規契約中銀/水島岡部尚二名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三八五一)

右に対する四四、二、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

中銀/水島小野澄治名義四一、一、二七新約四二、一、二七解約一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、二、二七に岡部尚二名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九六号の一欄目(小野澄治名分)

6.四二、三、二七新規契約広相/倉敷竹内とも子名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四二-六四一)

右に対する四四、五、九の受取利息(源泉扣除後)四七、八九八円について

中銀/水島中村次郎名義当座予金四一、一二、一〇引出金一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人当座)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した金銭を赤沢次郎個人当座から引出し、四二、三、二七に竹内とも子名義(赤沢次郎)で、一、〇〇〇、〇〇〇円の定期をした。

証拠 符第九七号の一二枚目(竹内とも子名分)

7.四二、三、二八新規契約中銀/水島安原春吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三九三一)

右に対する四四、三、二八の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

中銀/水島川村豊次名義四一、二、二八新約四二、二、二八解約一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、三、二八に安原春吉名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九六号の二欄目(川村豊次名分)

8.四二、四、六新規契約広相/倉敷大野一恵名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四一一-五一一)

右に対する四四、四、八の受取利息(源泉扣除後)四七、〇〇五円について

中銀/水島赤木光江名義四一、二、二八新約四二、二、二八解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

中銀/水島 大野一恵名義四一、四、四新約四二、四、六 解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、四、六に大野一恵名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ>符第九六号の三欄目(赤木光江名分)

<ロ> 同号の四欄目(大野一恵名分)

9.四二、四、二八新規契約中銀/水島山本一行名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四〇二一)

右に対する四四、四、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、二契約により赤沢次郎所有の倉敷市福田町松江五六二外一筆二反一三歩の山土を、三、四五四、〇〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、四、一四に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

水島/信金 四二、四、一八 取立 小切手 HO七六四〇 四八〇、〇〇〇円

中銀/水島 四二、四、一七 〃 〃 D三三七五七 二四四、〇〇〇円

小計 七二四、〇〇〇円

個人赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、予金したもの

中銀/水島 赤木義勝名義 四〇、八、三〇新約四一、九、三 解約一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 四九、五〇〇円

〃 高谷安男 〃 四〇、九、二四 〃 四一、九、二四解約一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 四九、五〇〇円

広銀/倉敷 千原次郎 〃 四〇、一、二五 〃 四一、一、二五継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 竹内明美 〃 四〇、一、二六 〃 四一、一、二六 〃一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 杉田洋子 〃 四〇、一二、二一継続四一、一二、二一〃一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 (四九、五〇〇円)

右の内 二八、五〇〇円

小計 二七六、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の受取利息二七六、〇〇〇円と赤沢次郎が所有していた山土の売却代金の内から、七二四、〇〇〇円、計一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、四、二八に山本一行名義で定期した。

証拠 <イ> 弁一九号の五枚目の一欄(四八万円分)と二欄(二四万四、〇〇〇円分)

<ロ> 符第九九号の一枚目の七欄(赤木義勝名分)

<ハ> 同右の八欄(高谷安男名分)

<ニ> 符第一〇一号の左欄の一欄(千原次郎名分)

<ホ> 同号の左欄の四欄(竹内明夫名分)

<ヘ> 符第一〇〇号の一九欄(赤沢とも子名分)

<ト> 同号の五欄(杉田洋子名分)

10.四二、五、二六新規契約中銀/水島吉田誠一名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四〇六五)

右に対する四四、五、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、一契約により赤沢次郎所有の倉敷市福田町松江王島山五六四、一反一八歩同所五六一の二外一筆四畝一六歩の山土を、二、五八一、一〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、五、八に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

広銀/倉敷 四二、五、九 取立 小切手 BWO八二三六 六八一、一〇〇円

中銀/水島 四二、五、九 〃 〃 D三三七六八 二〇〇、〇〇〇円

小計 八八一、一〇〇円

個人赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、預金したもの

商銀/岡山 赤沢芳子名義(証書番号二二九九)四〇、八、五継続四一、一一、二四継続 三〇〇、〇〇〇円

同上利息 二〇、六〇九円

〃 〃 〃 ( 〃 二三〇〇)四〇、八、五〃 四一、一一、二四継続 三〇〇、〇〇〇円

〃 二〇、六〇九円

広相/倉敷 杉田洋子〃 四〇、一二、二一〃四一、一二、二一継続一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息(四九、五〇〇円)

右の内 二一、〇〇〇円

〃 中原次郎〃 四〇、一〇、二二新約四一、一一、一六〃 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 五二、一三三円

広相/倉敷 千原昌子名義 四〇、一二、二一新約四一、一二、二九解約五〇〇、〇〇〇円

〃 (二五、二九〇円)

右の内 四、五四九円

小計 一一八、九〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の受取利息一一八、九〇〇円と赤沢次郎が所有していた山土の売却代金の内から、八八一、一〇〇円、計一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、五、二六に吉田誠一名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁一九号の四枚目の一欄(六八万一、一〇〇円分)と二欄(二〇万円分)

<ロ> 符第一〇二号の一欄(赤沢芳子名分)

<ハ> 同号の二欄(赤沢芳子名分)

<ニ> 符第一〇〇号の五欄(杉田洋子名分)

<ホ> 同号の一四欄(中原次郎名分)

<ヘ> 同号の二五欄(千原昌子名分)

11.四二、五、三一新規契約広相/倉敷松山弘名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四一一-八三三)

右に対する四四、六、二六の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

中銀/水島太田章一名義四一、五、三一新約四二、五、三一解約一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、五、三一に松山弘名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九六号の五欄目(太田章一名分)

12.四二、五、三一新規契約広相/倉敷杉山義夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四二-八三九)

右に対する四四、六、二六の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、三契約により赤沢次郎所有の倉敷市福田町松江五六一の一、三畝二九歩同所二六九、九畝二六歩の山土を、二、三九四、五〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、五、八に受取つた小切手を現金化し預金としたもの。

水島/信金 四二、五、一〇取立 小切手 HO七六四八 八九四、五〇〇円

個人赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、預金したもの

広相/倉敷 千原昌子名義 四〇、一二、二一新約四一、一二、二九解約五〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (二五、二九〇円)

右の内 二〇、七四一円

〃 竹内明子名義 四〇、一二、二一〃 四一、一二、二一解約五〇〇、〇〇〇円

〃 二四、七五〇円

〃 三宅洋子〃 四〇、一二、二一〃 四一、一二、二七〃 五〇〇、〇〇〇円

〃 二五、五六〇円

〃 千原次郎〃 四〇、一、二五 〃(四一、一、二五継続-四二、一、三一継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (五〇、〇四〇円)

右の内 三四、四四九円

小計 一〇五、五〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の受取利息一〇五、五〇〇円と赤沢次郎が所有していた山土の売却代金の内から、八九四、五〇〇円、計一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、五、三一に杉山義夫名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁第一九号の八枚目の一欄(八九万四、五〇〇円分)

<ロ> 符第一〇〇号の二五欄(千原昌子名分)

<ハ> 同号の二六欄(竹内明子名分)

<ニ> 同号の二七欄(三宅洋子名分)

<ホ> 同号の一欄(千原次郎名分)

13.四二、六、五新規契約中銀/水島田辺春吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四〇八七)

右に対する四四、六、三の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、二契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江五六二外一筆二反一三歩の山土を、三、四五四、〇〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、四、一四に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

住友/岡山 小切手 TO七五九五 二四〇、〇〇〇円

三菱/岡山 〃 AGO六六六六 四九〇、〇〇〇円

小計 七三〇、〇〇〇円

個人赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、預金したもの

広相/倉敷 千原次郎名義 四〇、一、二五新約-(四一、一、二五継続-四二、一、三一継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (五〇、〇四〇円)

右の内 一五、五九一円

広相/倉敷 竹内明夫名義 四〇、一、二六新約-(四一、一、二六経続-四二、一、三一経続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 五〇、〇四〇円

〃 杉田芳子〃 四一、一、一八〃 四二、二、一〇経続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 二六、三〇三円

〃 〃 〃 四一、四、二三〃 四二、四、二六〃 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 二四、九五三円

〃 赤沢とも子〃 四〇、四、二七〃 -(四一、四、二七経続-四二、四、二七経続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 二四、七五〇円

中銀/水島 小野澄治〃 四一、一、二七〃 四二、一、二七解約一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 川村豊次〃 四一、二、二八〃 四二、二、二八〃 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 赤木光江〃 四一、二、二八〃 四二、二、二八〃 五〇〇、〇〇〇円

〃 二四、七五〇円

〃 大野一恵〃 四一、二、二八〃 四二、二、二八〃 五〇〇、〇〇〇円

〃 (二四、七五〇円)

右の内 四、六一三円

小計 二七〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期預金の受取利息二七〇、〇〇〇円と赤沢次郎が所有していた山土の売却代金の内から、七三〇、〇〇〇円、計一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、六、五に田辺春吉名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁第一九号の五枚目の三欄(二四万円分)

同右の四欄(四九万円分)

<ロ> 符第一〇〇号の一欄(千原次郎名分)

<ハ> 符第一〇一号の左欄の四欄(竹内明夫名分)

<ニ> 同右の二欄(杉田芳子名分)

<ホ> 同右の三欄( 同右 )

<ヘ> 同号の右欄の五欄(赤沢とも子名分)

<ト> 符第九六号の一欄(小野澄治名分)

<チ> 同号の二欄(川村豊次名分)

<リ> 同号の三欄(赤木光江名分)

<ヌ> 同号の四欄(大野一恵名分)

14.四二、七、三新規契約中銀/水島田中義元名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四一八一)

右に対する四四、七、三の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、二契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江五六二外一筆二反一三歩の山土を、三、四五四、〇〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、六、一五に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

水島/信金 四二、六、一七 取立小切手 JO五四六七 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が所有していた、山土の売却代金の内から一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、七、三に、田中義元名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 弁第一九号の五枚目の第五欄(一〇〇万円分)

15.四二、七、二六新規契約中銀/水島吉田宗吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四三二六)

右に対する四四、九、四の受取利息(源泉扣除後)四八、四〇八円について

中銀/水島若狭利一名義四一、五、三一新約四二、六、七解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

〃 吉本邦雄〃 四一、七、九 〃 四二、七、一〇〃五〇〇、〇〇〇円( 〃 〃 )

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、七、二六に吉田宗吉名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第九六号の六欄(若狭利一名分)

<ロ> 同号の七欄(吉本邦雄名分)

16.四二、八、一九新規契約中銀/水島山下美智男名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四二八八)

右に対する四四、八、一九の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、三契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江五六一の一、三畝二九歩、同所二六九、九畝二六歩の山土を、二、三九四、五〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、六、一五に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

水島/信金 四二、六、一七 取立小切手 JO五四六九 (七五〇、〇〇〇円)

右の内 五〇〇、〇〇〇円

広相/倉敷 岡本靖子名義四一、八、一二新約四二、八、一七解約 五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期解約金五〇〇、〇〇〇円と、赤沢次郎が所有していた山土の売却代金の内から五〇〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を、四二、八、一九に山下美智男名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁第一九号の八枚目の二欄(七五万円分)

<ロ> 符第一〇〇号の一七欄(岡本靖子名分)

17.四二、九、三〇新規契約中銀/水島吉田源一郎名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四二九六)

右に対する四四、九、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

商銀/岡山無記名(記番号三二一二)四一、一一、二二新約四二、一、三〇解約(二、〇〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期預金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、九、三〇に吉田源一郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇七号の四欄(赤沢次郎名二〇〇万円分)

18.四二、一〇、二一新規契約中銀/水島鴨井節夫名義定期預金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三五二二)

右に対する四三、一〇、二二の受取利息(源泉扣除後)四六、八七八円について

商銀/岡山無記名(記番号三二一二)四一、一一、二二新約四二、一、三〇解約(二、〇〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、一〇、二一に鴨井節夫名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇七号の四欄(赤沢次郎名二〇〇万円分)

19.四二、一一、二八新規契約中銀/水島野山喜久名義定期預金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六〇一)

右に対する四三、一一、二八の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

中銀/水島吉原信行名義四一、八、二四新約四二、八、二五解約一、〇〇〇、〇〇〇円

(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、一一、二八に野山喜久名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九六号の八欄(吉原信行名分)

20.四二、一二、三〇新規契約中銀/水島石川貞夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六七九)

右に対する四三、一二、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、二契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江五六二外、一筆二反一三歩の山土を、三、四五四、〇〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、九、二三に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

水島/信金 四二、九、二七 取立小切手 NO五九一二 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が所有していた山土の売却代金の内から一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、一二、三〇に石川貞夫名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 弁第一九号の五枚目の六欄(一〇〇万円分)

21.四二、一二、三〇新規契約中銀/水島白神澄治名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六六九)

右に対する四三、一二、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

商銀/岡山無記名(記番号二九九七)四一、八、一一新約四二、八、一八解約(四、〇〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、一二、三〇に白神澄治名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇三号(無記名定期予金四〇〇万円分)

22.四三、三、二一新規契約中銀/水島村田啓策名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号二九一八)

右に対する四四、三、二五の受取利息(源泉扣除後)四七、二六〇円について

商銀/岡山無記名(記番号二九九七)四一、八、一一新約四二、八、一八解約(四、〇〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、三、二一に村田啓策名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇三号(無記名定期予金四〇〇万円分)

23.四三、三、三〇新規契約広相/倉敷山田二郎名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四六七七)

右に対する四四、三、三一の受取利息(源泉扣除後)四六、八七八円について

広相/倉敷笠井達太郎名義四一、八、一〇新約四二、八、一七解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

個人赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、予金したもの

広相/倉敷 笠井達太郎名義四一、八、一〇新約 四二、八、一七解約 五〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 二四、七七三円

〃 赤沢とも子〃 四一、一二、一九新約四二、一二、二九解約(記番号一八九五八)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四八、一三〇円

〃 〃 〃 四一、一二、一六〃 四二、一二、一六解約(記番号一八七八二)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四八、二二八円

〃 杉田洋子 〃 三九、一二、二一〃 -(四一、一二、二七継続-四二、一一、二七継続)

(記番号一八九一二)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四九、五〇〇円

〃 竹内洋志 〃 四一、八、一二 〃 四二、八、一七継続 五〇〇、〇〇〇円

〃 二四、九〇三円

〃 岡本靖子 〃 四一、八、一二 〃 四二、八、一七解約 五〇〇、〇〇〇円

〃 二四、七二一円

〃 前原由孝 〃 四一、九、二〇 〃 四二、九、二〇継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四八、八八〇円

〃 中原次郎 〃 四〇、一〇、二二〃 -(四一、一一、一六継続-四二、一一、一六継続)

(記番号一八五二五)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四八、四五三円

〃 杉田芳子 〃 四一、一、一八 〃 -(四二、二、一〇継続-四三、二、一〇継続)

(記番号一八三四九)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四七、八〇八円

〃 竹内明夫 〃 四〇、一、二六 〃 -(四二、一、二一継続-四三、一、三一継続)

(記番号一九二五四)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四七、八八三円

〃 千原次郎 〃 四〇、一、二五 〃 -(四二、一、二一継続-四三、一、三一継続)

(記番号一九二二五)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四七、八八三円

〃 杉田好子 〃 四一、六、二七 〃 四二、六、二九継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 (四九、七七〇円)

右の内 三八、八三六円

小計 五〇〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した、赤沢次郎の定期予金の解約金五〇〇、〇〇〇円と赤沢次郎の定期利息をプールした、五〇〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、三、三〇に山田二郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第一〇〇号の一八欄(笠井達太郎名分)

<ロ> 同号の二一欄(赤沢とも子名分)

<ハ> 同号の二〇欄( 同右 )

<ニ> 同号の五欄(杉田洋子名分)

<ホ> 同号の一五欄(竹内洋志名分)

<ヘ> 同号の一七欄(岡本靖子名分)

<ト> 同号の一六欄(前原由孝名分)

<チ> 同号の一四欄(中原次郎名分)

<リ> 同号の二欄(杉田芳子名分)

<ヌ> 同号の四欄(竹内明夫名分)

<ル> 同号の一欄(千原次郎名分)

<ヲ> 同号の一三欄(杉田好子名分)

24.四三、七、六新規契約商銀/岡山竹内 弘名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四六二二)

右に対する四四、七、九の受取利息(源泉扣除後)四七、九九一円について

商銀/岡山無記名(記番号二九九七)四一、八、一一新約四二、八、一一解約(四、〇〇〇、〇〇〇円

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、七、六に竹内 弘名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇三号(無記名定期予金四〇〇万円分)

25.四三、七、六新規契約商銀/岡山千原一夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四六二三)

右に対する四四、七、九の受取利息(源泉扣除後)四七、九九一円について

商銀/岡山無記名(記番号二九九七)四一、八、一一新約四二、八、一一解約(四、〇〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、七、六に千原一夫名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇三号(無記名定期予金四〇〇万円分)

26.四三、九、一四新規契約商銀/岡山坂 三郎名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号一〇六八〇)

右に対する四四、九、一六の受取利息(源泉扣除後)四七、六〇〇円について

四二、三、三契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江五六一の一三畝二九歩同所二六九、九畝二六歩の山土を、二、三九四、五〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、六、一五に受取つた小切手を現金化し予金としたもの。

水島/信金 四二、六、一七 取立小切手 JO五四六九 (七五〇、〇〇〇円)

右の内 二五〇、〇〇〇円

個人赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、予金したもの

中銀/水島 大野一恵 名義四一、二、二八新約 四二、二、二八解約 五〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (二四、七五〇円)

右の内 二〇、一三七円

〃 太田章一 〃 四一、五、三一新約四二、五、三一解約 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 赤木義勝 〃 四〇、八、三〇〃 -(四一、八、三〇継続-四二、八、三〇継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四九、五〇〇円

〃 高谷安男 〃 四〇、九、二四〃 -(四一、九、二四継続-四二、九、二四継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四九、五〇〇円

〃 中原保 〃 四一、八、九 〃 四二、八、九 継続 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 鳥越基吉 〃 四一、一二、二四 〃 四二、一二、二四継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 若狭利一 〃 四一、五、三一 〃 四二、六、七 解約 三〇〇、〇〇〇円

〃 二四、七五〇円

〃 吉本邦雄 〃 四一、七、九 〃 四二、七、一〇解約 五〇〇、〇〇〇円

〃 二四、七五〇円

〃 吉原信行 〃 四一、八、二四 〃 四二、八、二五解約一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 森美恵子 〃 四一、九、一九 〃 四二、一〇、二八解約 五〇〇、〇〇〇円

〃 二四、七五〇円

〃 山室正美 〃 四一、一一、三〇 〃 四二、一一、三〇解約一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 三島一馬 〃 四一、一一、二八 〃 四二、一一、二九継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 藤田喜美夫〃 四一、一二、二八 〃 四二、一二、二八継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

〃 中野義一 〃 四二、一、二八 〃 四三、一、二九継続一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 四九、五〇〇円

商銀/岡山 赤沢ひろ子〃 四一、一一、二四 〃 四二、一二、九解約(記番号三二一四)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 五一、二一九円

〃 赤沢まさ子〃 四一、一二、一三 〃 四二、一二、一二解約(記番号三二六〇)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 五六、〇〇〇円

〃 中村次郎 〃 四一、二、一〇 〃 四二、二、一〇継続(記番号二五九二)

一、五〇〇、〇〇〇円 〃 八七、二一三円

〃 赤沢芳子 〃 三九、八、五 〃 (記番号二二九九)

〃 〃 三九、八、五 〃 ( 〃 二三〇〇)

(四一、一一、二四継続-四二、一二、八継続)(記番号三二一七)六〇〇、〇〇〇円

〃 (三〇、六五四円)

右の内 一五、六八一円

小計 七五〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が所有していた、山土の売却代金の内から二五〇、〇〇〇円と、赤沢次郎の定期予金の受取利息七五〇、〇〇〇円、計一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、九、一四に坂 三郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁第一九号の八枚目の二欄(七五万円分)

<ロ> 符第九六号の四欄(大野一恵名分)

<ハ> 同号の五欄(太田章一名分)

<ニ> 符第九九号の一枚目の七欄(赤木義勝名分)

<ホ> 同右の八欄(高谷安男名分)

<ヘ> 同右の五欄(中原 保名分)

<ト> 同右の九欄(鳥越基吉名分)

<チ> 符第九六号の六欄(若狭利一名分)

<リ> 同号の七欄(吉本邦雄名分)

<ヌ> 同号の八欄(吉原信行名分)

<ル> 同号の九欄(森美恵子名分)

<ヲ> 同号の一〇欄(山室正美名分)

<ワ> 同号の一一欄(三島一馬名分)

<カ> 符第九九号の一枚目の一〇欄(藤田喜美夫名分)

<ヨ> 同右の一一欄(中野義一名分)

<タ> 符第一〇二号の三欄(赤沢ひろ子名分)

<レ> 同号の四欄(赤沢まさ子名分)

<ソ> 同号の一六欄(中村次郎名分)

<ツ> 同号の一欄と二欄(共に赤沢芳子名分)

27.四三、九、一四新規契約商銀/岡山三好一郎名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号一〇六七九)

右に対する四四、九、一六の受取利息(源泉扣除後)四七、六〇〇円について

四二、三、一契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江王島山五六四、一反一八歩同所五六一の二外一筆四畝一六歩の山土を、二、五八一、一〇〇円で鹿島建設株式会社に売却し、四二、六、一五に受取つた小切手を現金化し預金としたもの。

水島/信金 四二、六、一五 取立小切手 JO五四六八 八五〇、〇〇〇円

赤沢次郎の定期予金をプールし、予金したもの

商銀/岡山無記名(記番号三二一二)四一、一一、二二新約四二、一、三〇解約二、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 八、六九四円

手持金 九六六

〃 〃 ( 〃 二九九七)四一、八、一一 〃 四二、八、一一〃 四、〇〇〇、〇〇〇円

〃 (二〇一、九五一円)

右の内 一四〇、三四〇円

小計 一五〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎の所有する、山土の売却金の内から八五〇、〇〇〇円と赤沢次郎が自己の定期利息をプールしていたもの一五〇、〇〇〇円、計一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、九、一四に三好一郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁第一九号の四枚目の三欄(八五万円分)

<ロ> 符第一〇七号の四欄(二〇〇万円分)

<ハ> 同号の一欄(四〇〇万円分)

28.四三、一一、三〇新規契約商銀/岡山 西川名義通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三五五)

右に対する四四、一、九の受取利息(源泉扣除後)二、七二〇円について

商銀/岡山無記名(記番号三一一七)四一、九、二六新約四二、一〇、二解約(二、五〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内一、〇〇〇、〇〇〇円を赤沢まさ子名義で定期し、次の通り該当定期を解約して西川名義の通知にした。

商銀/岡山赤沢まさ子名義四二、一〇、一四新約四三、一〇、一四解約(記番号三七五四)

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した、赤沢次郎の定期予金を解約し赤沢まさ子名義の定期とし、

さらにこの定期を解約して一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、一一、三〇に西川名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第一〇七号の三欄(二五〇万円分)

<ロ> 符第一〇二号の六欄(赤沢まさ子名分)

(二)四五、九期二、一一一、五七四円の預金利息について説明します。

1.四一、一二、二四新規契約中銀/水島鳥越基吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四五五八)

右に対する四四、一二、二五の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)1の通り右予金は、会社の予金ではなく、個人赤沢次郎の予金です。

証拠 符第九九号の一枚目の九欄(鳥越基吉名分)

2.四一、一二、二八新規契約中銀/水島藤田喜美夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四五六九)

(一)2の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一〇欄(藤田喜美夫名分)

3.四二、一、二八新規契約中銀/水島中野義一名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四六三九)

右に対する四五、一、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、八七八円について

(一)3の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一一欄(中野義一名分)

4.四二、二、二三新規契約中銀/水島古家野茂名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四七〇三)

右に対する四五、二、二六の受取利息(源泉扣除後)四六、三二九円について

(一)4の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一二欄(古家野茂名分)

5.四二、二、二七新規契約中銀/水島岡部尚二名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四七〇五)

右に対する四五、二、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

(一)5の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一三欄(岡部尚二名分)

6.四二、三、二七新規契約広相/倉敷竹内とも子名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五一一-三七五

右に対する四五、五、九の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

(一)6の通りです。

証拠 符第一〇〇号の六欄(竹内とも子名分)

7.四二、三、二八新規契約中銀/水島安原春吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四七八三)

右に対する四五、三、二八の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)7の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一四欄(安原春吉名分)

8.四二、四、六新規契約広相/倉敷大野一恵名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五一一-二八九)

右に対する四五、四、二〇の受取利息(源泉扣除後)四八、二八六円について、

(一)8の通りです。

証拠 符第九六号の四欄(大野一恵名分)

9.四二、四、二八新規契約中銀/水島山本一行名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四八六九)

右に対する四五、四、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)9の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一五欄(山本一行名分)

10.四二、五、二六新規契約中銀/水島吉田誠一名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九三三)

右に対する四五、五、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)10の通りです。

証拠 符第九九号の一枚目の一六欄(吉田誠一名分)

11.四二、五、三一新規契約広相/倉敷松山 弘名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五一一-四九五)

右に対する四五、六、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、八八四円について、

(一)11の通りです。

証拠 符第一〇〇号の一〇欄(松山 弘名分)

12.四二、五、三一新規契約広相/倉敷杉山義夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五一一-四九四)

右に対する四五、六、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、八八四円について、

(一)12の通りです。

証拠 符第一〇〇号の一一欄(杉山義夫名分)

13.四二、六、五新規契約中銀/水島田辺春吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九六一)

右に対する四五、六、三の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)13の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の一欄(田辺春吉名分)

14.四二、七、三新規契約中銀/水島田中義元名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五〇三二)

右に対する四五、七、三の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)14の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の二欄(田中義元名分)

15.四二、七、二六新規契約中銀/水島吉田宗吉名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五二三九)

右に対する四五、九、二六の受取利息(源泉扣除後)四九、六九六円について、

(一)15の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の三欄(吉田宗吉名分)

16.四二、八、一九新規契約中銀/水島山下美智男名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五一五二)

右に対する四五、八、一九の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)16の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の四欄(山下美智男名分)

17.四二、一〇、二一新規契約中銀/水島鴨井節夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四四三〇)

右に対する四四、一〇、二二の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)18の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の六欄(鴨井節夫名分)

18.四二、一一、二八新規契約中銀/水島野山喜久名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四五〇五)

右に対する四四、一一、二八の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)19の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の七欄(野山喜久名分)

19.四二、一二、三〇新規契約中銀/水島石川貞夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四五七五)

右に対する四四、一二、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)20の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の八欄(石川貞夫名分)

20.四二、一二、三〇新規契約中銀/水島白神澄治名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四五七八)

右に対する四四、一二、三〇の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

(一)21の通りです。

証拠 符第九九号の二枚目の九欄(白神澄治名分)

21.四三、三、二一新規契約商銀/岡山竹内 弘名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九八六)

右に対する四五、七、一三の受取利息(源泉扣除後)四七、八七二円について、

(一)24の通りです。

証拠 符第一〇三号(無記名定期予金四〇〇万円分)

22.四三、七、六新規契約商銀/岡山千原一夫名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九八五)

右に対する四五、七、一三の受取利息(源泉扣除後)四七、八七二円について、

(一)25の通りです。

証拠 符第一〇三号(無記名定期予金四〇〇万円分)

23.四三、九、一四新規契約商銀/岡山坂 三郎名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号一六六八〇)

右に対する四五、九、二六の受取利息(源泉扣除後)四七、六〇〇円について、

(一)26の通りです。

24.四三、九、一四新規契約商銀/岡山三好一郎名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号一〇六七九)

右に対する四五、九、二五の受取利息(源泉扣除後)四七、六〇〇円について、

(一)27の通りです。

25.四三、一〇、二新規契約中銀/水島福本万喜太名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三四八八)

右に対する四四、一〇、二の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

四二、三、三契約により、赤沢次郎が、所有する倉敷市福田町松江五六一の一、三畝二九歩、同所二六九、九畝二六歩の山土を二、三九四、五〇〇円で、鹿島建設株式会社に売却し、四二、九、二三に受取つた小切手を現金化し、予金としたもの。

水島/信金 四二、九、二六 取立 小切手 NO五九一一 七五〇、〇〇〇円

赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、予金したもの。

商銀/岡山 無記名(記番号二九九七)四一、八、一一新約四二、八、一一解約四、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (二〇一、九五一円)

右の内 六一、六一一円

〃 〃 ( 〃 三一一三)四一、九、二四〃 四二、一〇、二解約二、五〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 一二六、九三八円

〃 〃 ( 〃 三一一七)四一、九、二六〃 四二、一〇、二解約二、五〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (一二六、二四九円)

右の内 六一、四五一円

小計 二五〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎の所有する山土の売却金の内から、七五〇、〇〇〇円と、赤沢次郎が自己の定期利息をプールしていたもの、二五〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一〇、二福本万喜太名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第九九号の二枚目の一一欄(福本万喜太名分)

<ロ> 弁第一九号の八枚目の三欄(七五万円分)

<ハ> 符第一〇七号の一欄(四〇〇万円分)

<ニ> 同号の二欄(二五〇万円分)

<ホ> 同号の三欄(二五〇万円分)

26.四三、一〇、七新規契約中銀/水島池上義弘名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三五〇四)

右に対する四四、一〇、八の受取利息(源泉扣除後)四六、八七八円について

四二、三、一契約により赤沢次郎が所有する倉敷市福田町松江王島山五六四、一反一八歩、同所五六一の二外一筆四畝一六歩の山土を、二、五八一、一〇〇円で、鹿島建設株式会社に売却し、四二、九、二三に、受取つた小切手を、現金化し、予金としたもの

水島/信金四二、九、二七 取立 小切手 NO五九一〇 八五〇、〇〇〇円

赤沢次郎が自己の自己の定期予金を、プールし、予金したもの

商銀/岡山 無記名(記番号三一一七)四一、九、二六新約四二、一〇、二解約二、五〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (一二六、二四九円)

右の内 六四、七九八円

〃 〃 ( 〃 三二六一)四一、一二、一四新約四二、一二、二六解約一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 五〇、六七六円

商銀/岡山 〃 ( 〃 三二六二)四一、一二、一四新約四二、一二、二六解約一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (五〇、六七六円)

右の内 三四、五二六円

小計 一五〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎の所有する山土の売却金の内から、八五〇、〇〇〇円と、赤沢次郎が自己の定期利息をプールしていたもの、一五〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一〇、七に池上義弘名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 弁第一九号の四枚目の三欄(八五万円分)

<ロ> 符第一〇七号の三欄(予金二五〇万円分)

<ハ> 同号の五欄(予金一〇〇万円分)

<ニ> 同号の六欄(予金一〇〇万円分)

27.四三、一一、五新規契約中銀/水島丸川等名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三五五四)

右に対する四四、一一、五の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

商銀/岡山 無記名(記番号三一一三)四一、九、二四新約四二、一〇、二解約(二、五〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し、その内から一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一一、五に丸川等名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇七号の二欄(予金二五〇万円分)

28.四三、一一、二六新規契約中銀/水島楠木洋一名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三五九五)

右に対する四四、一一、二七の受取利息(源泉扣除後)四六、八七八円について

商銀/岡山 無記名(記番号三一一三)四一、九、二四新約四二、一〇、二解約(二、五〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し、その内から一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一一、二六に楠木洋一名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇七号の二欄(予金二五〇万円分)

29.四三、一一、一一新規契約広相/倉敷岩井啓二名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号六三三四)

右に対する四四、一一、一一の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

商銀/岡山 無記名(記番号三一一三)四一、九、二四新約四二、一〇、二解約(二、五〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内 五〇〇、〇〇〇円

〃 〃 ( 〃 三一一七)四一、九、二六新約四二、一〇、二解約二、五〇〇、〇〇〇円

(赤沢次郎個人定期)

右の内 五〇〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

右一、〇〇〇、〇〇〇円を赤沢ひろ子名義で定期し、次の通り、定期を解約して、岩井啓二の定期とした。

商銀/岡山赤沢ひろ子名義四二、一〇、一四新約四三、一〇、一四解約(記番号三七五五)

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し、赤沢ひろ子名義の定期とし、さらにこの定期を解約して、一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一一、一一に岩井啓二名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第一〇七号の二欄(予金二五〇万円分)

<ロ> 同号の三欄(予金二五〇万円分)

<ハ> 符第一〇二号の五欄(赤沢ひろ子の予金一〇〇万円分)

30.四三、一一、三〇新規契約商銀/岡山坂照美名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四三六四)

右に対する四五、一、九の受取利息(源泉扣除後)五二、六七二円について

商銀/岡山 無記名(記番号三一一七)四一、九、二六新約四二、一〇、二解約(二、五〇〇、〇〇〇円)

(赤沢次郎個人定期)

右の内一、〇〇〇、〇〇〇円を、赤沢芳夫名義で定期し、次の通り当該定期を解約して、坂照美の定期とした。

商銀/岡山赤沢芳夫名義四二、一一、二新約四三、一一、二九解約(記番号三七七)一、〇〇〇、〇〇〇円

(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金を解約し、赤沢芳夫の定期とし、さらにこの定期を解約して、一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一一、三〇に坂照美名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第一〇七号の三欄(予金二五〇万円分)

<ロ> 符第一〇二号の七欄(赤沢芳夫の予金一〇〇万円分)

31.四三、一二、三新規契約広相/倉敷北川俊二名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号六四八七)

右に対する四四、一二、六の受取利息(源泉扣除後)四七、一三三円について

中銀/水島森美恵子名義四一、九、一九新約四二、一〇、二八解約五〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

赤沢次郎が、自己の定期利息をプールし予金したもの

商銀/岡山 無記名(記番号三二六二)四一、一二、一四新約四二、一二、二六解約一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 (五〇、六七六円)

右の内 一六、一五〇円

〃 赤沢芳子名義三九、八、五新約(記番号二二九九)-(四一、一一、二四経続-四二、一二、八経続)

〃 〃 三九、八、五新約( 〃 三三〇〇)

(記番号三二一七) 六〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (三〇、六五四円)

右の内 一四、九七三円

商銀/岡山赤沢ひろ子名義四二、一〇、一四新約四三、一〇、一四解約(記番号三七五五)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、六〇〇円

〃 赤沢まさ子名義四二、一〇、一四新約四三、一〇、一四解約(記番号三七五四)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、六〇〇円

〃 赤沢芳夫名義四二、一一、二新約四三、一一、二九解約(記番号三七七七)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四九、二〇七円

中銀/水島三島一馬〃 四一、一一、二八新約-(四二、一一、二九経続-四三、一一、二九解約)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

中銀/水島菅真一名義四一、三、二五新約四二、三、二五経続 一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 四九、五〇〇円

〃 菅真一 〃 四一、三、二五新約-(四二、三、二五経続-四三、三、二五経続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 藤原孝三〃 四一、五、一六新約四二、五、一六経続

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四九、五〇〇円

〃 藤原孝三〃 四一、五、一六新約-(四二、五、一六経続-四三、五、一六経続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 浅原広志〃 四一、六、二五新約四二、六、二五継続

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四九、五〇〇円

〃 福永照美〃 四一、七、二五新約四二、七、二五継続

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (四九、五〇〇円)

右の内 三五、七二〇円

小計 三〇〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した、赤沢次郎の定期予金を解約した、五〇〇、〇〇〇円と、赤沢次郎の、個人定期利息を、プールしていたもの、五〇〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を四三、一二、三に、北川俊二名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第九六号の九欄(森美恵子名分)

<ロ> 符第一〇七号の五欄(予金一〇〇万円分)

<ハ> 符第一〇二号の一欄と二欄(赤沢芳子名予金分)

<ニ> 同号の五欄(赤沢ひろ子名予金分)

<ホ> 同号の六欄(赤沢まさ子名予金分)

<ヘ> 同号の七欄(赤沢芳夫名予金分)

<ト> 符第九六号の一一欄(三島一馬名分)

<チ> 符第九九号の一枚目の一欄(菅真一名分)

<リ> 同右の二欄(藤原孝平名分)

<ヌ> 同右の三欄(浅原広志名分)

<ル> 同右の四欄(福永照美名分)

32.四三、一二、三一新規契約中銀/水島沢田一子名義、定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六七六)

右に対する四四、一二、三一の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

中銀/水島山室正美名義四一、一一、三〇新約四二、一一、三〇解約

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四の以前に発生した、赤沢次郎の定期予金の解約し、一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一二、三一に、沢田一子名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九六の一〇欄(山室正美名予金分)

33.四三、一二、三一、新規契約中銀/水島大橋保雄名義定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六八〇)

右に対する四四、一二、三一の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について、

中銀/水島三島一馬名義四一、一一、二八新約-(四二、一一、二九経続-四三、一一、二九解約)

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した、赤沢次郎の定期予金の、解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一二、三一に、大橋保雄名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九六号の一一欄(三島一馬名予金分)

34.四三、一二、三一新規契約商銀/岡山和田次郎名義、定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四四一〇)

右に対する四五、一、九の受取利息(源泉扣除後)四八、六四一円について、

中銀/水島四一、一二、一六中村次郎名義当座引出金三、九〇〇、〇〇〇円の内から

中銀/水島四一、一二、一六中村次郎名義当座引出金三、九〇〇、〇〇〇円の内から

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人当座)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した、赤沢次郎の個人当座引出金から一、〇〇〇、〇〇〇円を、四三、一二、三一に、和田次郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇七号の六欄(予金一〇〇万円分)

35.四四、一、二八新規契約 富士/倉敷 千原太郎名義 定期預金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号三六五二)

右に対する四五、六、二七の受取利息(源泉扣除後)六六、八三六円について

商銀/岡山 赤沢芳子名義三九、八、五新約(記番号二二九九)-(四二、一二、八継続-四三、一二、八継続)

赤沢芳子〃 三九、八、五 〃 (記番号二三〇〇)

六〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 二八、五六〇円

〃 赤沢ひろ子名義(記番号三二一四)四一、一一、二四新約四二、一二、九解約

一、〇〇〇、〇〇〇円

赤沢とも子 (〃 三八一四)四二、一二、九 〃四三、一二、九〃

一、〇〇〇、〇〇〇円同上

源泉扣除後の利息 四七、七一九円

〃 赤沢まさ子名義(記番号三二六〇)四一、一二、一三、新約四二、一二、一二解約

一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 赤沢正男 〃 四二、一二、一二新約四四、一、二八解約 一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 五〇、三三七円

〃 中村次郎 〃 四一、二、一〇新約(四二、二、二四継続-四四、一、一七継続)

(記番号三四三七)一、五〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 一三六、八四三円

広相/倉敷 杉田芳子名義四一、四、二三新約(四二、四、二六継続-四三、四、三〇継続)

(記番号一九九二二)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、七五五円

〃 杉田洋子 〃 三九、一二、二一〃 (四二、一二、二七継続-四三、一二、二七継続)

(記番号三八六一)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四八、一四五円

〃 竹内とも子〃 (記番号一九六三〇)四二、三、二七新約四三、四、三〇継続

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 五一、八〇五円

〃 大野一恵 〃 (記番号四一一-五一一)四二、四、六 〃 四三、四、六 〃

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四六、七五〇円

〃 松山弘 〃 (〃 二一三八)四二、五、三一 〃 四三、六、二六 〃

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 五〇、二九八円

〃 杉山義夫 〃 (〃 二一三七)四二、五、三一 〃 四三、六、二六 〃

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 五〇、二九八円

〃 杉田芳子 〃四一、六、二七新約(四二、六、二九継続-四三、七、一継続)(記番号二三四九)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、〇二〇円

〃 中原二郎 〃四〇、一〇、二二 〃 (四二、一一、一六 〃-四三、一一、二九解約)

(記番号三三八五) 一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、四一三円

広相/倉敷 竹内洋志名義四一、八、一二新約(四二、八、一七継続-四三、八、二一継続)

(記番号二七四三)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、二六〇円

〃 前原由孝 〃四一、九、二〇〃 (四二、九、二〇〃 -四三、九、二〇〃 )

(記番号二九八三)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 赤沢とも子〃四〇、四、二七 〃 (四二、四、二七 〃-四三、四、二七〃 )

(記番号一九九一七)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、二三八円

中銀/水島 福永照美〃 四一、七、二五〃 四二、七、二五継続 一、〇〇〇、〇〇〇円〃 (四九、五〇〇円)

中銀/水島 浅原広志〃 四一、六、二五新約(四二、六、二五継続-四三、六、二五継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四六、七五〇円

〃 福永照美〃 四一、七、二五〃 (四二、七、二五〃 -四三、七、二五継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四六、七五〇円

〃 中原保〃 四一、八、九〃 (四二、八、九 〃 -四三、八、九 継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四六、七五〇円

〃 藤井 務名義四一、八、一三新約四二、八、一三継続 一、〇〇〇、〇〇〇円

同上源泉扣除後の利息 四九、五〇〇円

〃 藤井 務名義四一、八、一三新約(四二、八、一三継続-四三、八、一三継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

右の内 二、二七九円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、一、二八に千原太郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 <イ> 符第九七号の一三枚目の三行目(中村次郎の当座予金から三九〇万円引出し、内一〇〇万円は和田次郎名とした旨の記載あり)

<ロ> 符第一〇二号の三欄(赤沢ひろ子名の予金異動)

<ハ> 同号の九欄(赤沢とも子名の予金異動)

<ニ> 同号の一〇欄(赤沢正男名の予金異動)

<ホ> 同号の一六欄(中村次郎子名の予金異動)

<ヘ> 符第一〇〇号の三欄(杉田芳子名の予金異動)

<ト> 同号の五欄(杉田洋子名の予金異動)

<チ> 同号の六欄(竹内とも子名の予金異動)

<リ> 符第九六号の四欄(大野一恵名の予金分)

<ヌ> 符第一〇〇号の一〇欄(松山 弘名の予金分)

<ル> 同号の一一欄(杉山義夫名の予金分)

<ヲ> 同号の一三欄(杉田好子名の予金分)

<ワ> 同号の一四欄(中原次郎名の予金分)

<カ> 同号の一五欄(竹内洋志名の予金分)

<ヨ> 同号の一六欄(前原由孝名の予金分)

<タ> 同号の一九欄(赤沢とも子名の予金分)

<レ> 符第九九号の一枚目の四欄(福永照美名の予金分)

<ソ> 同右の三欄(浅原広志名の予金分)

<ツ> 同右の五欄(中原保名の予金分)

<ネ> 同右の六欄(藤井務名の予金分)

36.四四、一、三〇新規契約 商銀/岡山 千原一郎名義 定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四四四一)

右に対する四五、三、二の受取利息(源泉扣除後)五一、六三二円について

中銀/水島 中村次郎名義当座引出金四一、一一、一二、七六九、五〇〇円、四一、一二、一六、

三、九〇〇、〇〇〇円の内から二五〇、三〇〇円、一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人当座)

(註)法人設立四一、一二、二四日以前に発生した赤沢次郎の個人当座引出金から一、〇〇〇、〇〇〇円を、四四、一、三〇に千原一郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第九七号の一〇枚目及び一三枚目(中村次郎名の当座予金の異動)

37.四四、一、三一新規契約商銀/岡 山河口浩名義、定期預金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四四四四)

右に対する四五、三、二の受取利息(源泉扣除後)五一、五〇二円について

広相/倉敷 中原次郎名義四〇、一〇、二二、新約-(四二、一一、一六継続-四三、一一、二九解約)

(記番号三三八五)、一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期預金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を、四四、一、三一に河口浩名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇〇号の一四欄(中村次郎名の定期予金の異動)

38.四四、三、三一新規契約広相/倉敷 高井省三名義、定期予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四二-四八三)

右に対する四五、三、三一の受取利息(源泉扣除後)四六、七五〇円について

広相/倉敷 山田二郎名義四三、三、三〇、新約四四、三、三一解約(記番号四六一七)

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)赤沢次郎の定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、三、三一に高井省三名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇〇号の九欄(山田二郎名の定期予金の異動)

39.四四、一、一一新規契約商銀/岡山 西川三郎名義、定期預金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四四二〇)

右に対する四五、三、三の受取利息(源泉扣除後)五四、一〇三円について

商銀/岡山 西川名義通知予金(記番号三五五)四三、一一、三〇新約、四四、一九解約

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎通知予金)

(註) 個人赤沢次郎の通知予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を西川三郎名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇七号の三欄(定期予金二五〇万円分)

40.四四、九、二九新規契約商銀/岡山 熊本名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九三)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一六、九〇七円について

商銀/岡山 赤沢まさ子名義(記番号三二六〇)四一、一二、一三新約四二、一二、一二解約

一、〇〇〇、〇〇〇円――、

赤沢正男名義四二、一二、一二新約四四、一、二八解約(記番号三八三〇)一、〇〇〇、〇〇〇円

(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の個人定期(赤沢まき子名義)を解約し、赤沢正男名義とし、定期を継続していたが、これを解約し、解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、九、二九日熊本名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第一〇二号の四欄(赤沢まさ子名の定期予金の異動)

<ロ> 同号の一〇欄(赤沢正男名の定期予金の異動)

41.四四、九、二九新規契約商銀/岡山 小野名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九四)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉控除後)一六、九〇七円について

商銀/岡山 赤沢ひろ子名義(記番号三二一四)四一、一一、二四新約四二、一二、九解約

一、〇〇〇、〇〇〇円――

赤沢とも子名義四二、一二、九新約四三、一二、九解約(記番号三八一四)

一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)赤沢次郎の個人定期(赤沢ひろ子名義)を解約し、赤沢とも子名義とし定期を継続していたがこれを解約し、解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、九、二九日小野名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第一〇二号の三欄(赤沢ひろ子名の定期予金の異動)

<ロ> 同号の九欄(赤沢とも子名の定期予金の異動)

42.四四、九、二九新規契約商銀/岡山 若山名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九五)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一六、九〇七円について

広相/倉敷 竹内洋志名義四一、八、一二新約(四三、八、三継続-四四、八、二一解約)

(記番号五七〇九)一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、九、二九日岩山名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 符第一〇〇号の一五欄(竹内洋志名の定期予金の異動)

43.四四、九、二九新規契約商銀/岡山 小西名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九六)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一六、九〇七円について

広相/倉敷 前原由孝名義四一、九、二〇新約(四二、九、二〇継続-四三、九、二〇継続)

(記番号五九七八)一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、九、二九日小西名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 符第一〇〇号の一六欄(前原由孝名の定期予金の異動)

44.四四、九、二九新規契約商銀/岡山 河本名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号四九七)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一六、九〇七円について

商銀/岡山 中村次郎名義四一、二、一〇新約-(四四、一、一七継続-四四、九、八解約)

(記番号一〇八五五)(一、五〇〇、〇〇〇円)(赤沢次郎個人定期)

右の内一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約し一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、九、二九に河本名義(赤沢次郎)で定期した。

証拠 符第一〇二号の一六欄(中村次郎名の定期予金の異動)

45.四四、一〇、二一新規契約商銀/岡山 中村次郎名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五三六)

右に対する四五、六、一六の受取利息(源泉扣除後)二九、二〇三円について

商銀/岡山 中村次郎名義四一、一二、一〇新約-(四四、一、一七継続-四四、九、八解約)

(記番号一〇八五五)(一、五〇〇、〇〇〇円)(赤沢次郎個人定期)

右の内五〇〇、〇〇〇円

赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、予金したもの

中銀/水島 藤井務名義四一、八、一三新約-(四二、八、一三継続-四三、八、一三継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (四六、七五〇円)

右の内 四四、四七一円

〃 藤井務 〃 四一、八、一二新約-(四三、八、一三継続-四四、八、一三継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 赤木義勝 〃 四〇、八、三〇新約-(四二、八、三〇継続-四三、八、三〇継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 赤木義勝 〃 四〇、八、三〇新約-(四三、八、三〇継続-四四、八、三〇継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 高谷安男 〃 四〇、九、二四新約-(四二、九、二四継続-四三、九、二四継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 高谷安男 〃 四〇、九、二四新約-(四三、九、二四継続-四四、九、二四継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

中銀/水島 鳥越基吉名義四一、一二、二四新約-(四二、一二、二四継続-四三、一二、二四継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 中原保 〃 四一、八、九新約-(四三、八、九継続-四四、八、九継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 菅真一 〃 四一、三、二五新約-(四三、三、二五継続-四四、三、二五継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 藤原孝幸 〃 四一、五、一六新約-(四三、五、一六継続-四四、五、一六継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 浅原広志 〃 四一、六、二五新約-(四三、六、二五継続-四四、六、二五継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (四六、七五〇円)

右の内 三四、七七九円

小計 五〇〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)法人設立四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期予金の解約金五〇〇、〇〇〇円と赤沢次郎が自己の定期利息をプールしていたもの五〇〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、一〇、二一に中村次郎名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第一〇二号の一六欄(中村次郎名の定期予金の異動)

<ロ> 符第九九号の一枚目の六欄(藤井 務名の定期予金の分)

<ハ> 同右の七欄(赤木義勝名の定期予金の分)

<ニ> 同右の八欄(高谷安男名の定期予金の分)

<ホ> 同右の九欄(鳥越基吉名の定期予金の分)

<ヘ> 同右の五欄(中原保名の定期予金の分)

<ト> 同右の一欄(菅真一名の定期予金の分)

<チ> 同右の二欄(藤原孝平名の定期予金の分)

<リ> 同右の三欄(浅原広志名の定期予金の分)

46.四四、一二、一新規契約商銀/岡山 大倉一郎名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五六五)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一一、六五六円について

中銀/水島 浅原広志名義四一、六、二五新約-(四三、六、二五継続-四四、六、二五継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (四六、七五〇円)

右の内 一一、九七一円

〃 福永照美 〃 四一、七、二五〃 -(四三、七、二五 〃-四四、七、二五 〃)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 豪野茂 〃 四二、二、二二〃 四三、二、二三継続(記番号三八二九)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 豪野茂 〃 四二、二、二三〃 -(四三、二、二三 〃-四四、二、二六 〃)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 中野義一 〃 四二、一、二八〃 -(四三、一、二八 〃-四四、一、二九 〃)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 藤田喜美夫〃 四一、一二、二八〃 -(四二、一二、二八 〃-四三、一二、二八 〃)

(記番号三六六二)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 岡部尚二 〃 四二、二、二七〃 四三、二、二七継続(記番号三八五一)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

中銀/水島 岡部尚二名義四二、二、二七新規-(四三、二、二七継続-四四、二、二七継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 安原春吉 〃 四二、三、二八〃 四三、三、二八継続 (記番号三九三一)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 安原春吉 〃 四二、三、二八〃 -(四三、三、二八継続-四四、三、二八継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 山本一行 〃 四二、四、二八〃 四三、四、二八継続 (記番号、四〇二一)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 山本一行 〃 四二、四、二八〃 -(四三、四、二八継続-四四、四、三〇継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 吉田誠一 〃 四二、五、二六〃 四三、五、二六継続 (記番号、四〇六五)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 吉田誠一 〃 四二、五、二六〃 -(四三、五、二六継続-四四、五、二七継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 田辺春吉 〃 四二、六、五〃 四三、六、五継続 (記番号、四〇八七)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 田辺春吉 〃 四二、六、五〃 -(四三、六、五継続-四四、六、三継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 田中義元 〃 四二、七、三〃 四三、七、三継続 (記番号、四一八一)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 田中義元 〃 四二、七、三〃 -(四三、七、三継続-四四、七、三継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 吉田宗吉 〃 四二、七、二六〃 四三、七、二六継続 (記番号、四三二六)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 吉田宗吉 〃 四二、七、二六〃 -(四三、七、二六継続-四四、九、四継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四八、四〇八円

中銀/水島 山下美智男名義四二、八、一九新規 四三、八、一九継続 (記番号、四二八八)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

夫名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第一〇〇号の一欄(千原次郎名の定期予金の異動)

<ロ> 同号の二欄(杉田芳子名の定期予金の異動)

<ハ> 同号の三欄(前同)

<ニ> 同号の四欄(竹内明夫名の定期予金の異動)

<ホ> 同号の五欄(杉田洋子名の定期予金の異動)

<ヘ> 同号の六欄(竹内とも子名の定期予金の異動)

<ト> 符第九六号の四欄(大野一恵名の定期予金の分)

<チ> 符第一〇〇号の一〇欄(松山弘名の定期予金の異動)

<リ> 同号の一一欄(杉山義夫名の定期予金の異動)

<ヌ> 同号の九欄(山田二郎名の定期予金の異動)

<ル> 符第九九号の二枚目の七欄(野山喜久名の定期予金の分)

<ヲ> 符第一〇〇号の一三欄(杉田好子名の定期予金の異動)

<ワ> 同号の一五欄(竹内洋志名の定期予金の異動)

<カ> 同号の一六欄(前原由孝名の定期予金の異動)

<ヨ> 同号の一九欄(赤沢とも子名の定期予金の異動)

<タ> 同号の二二欄(赤沢次郎名の定期予金の異動)

<レ> 同号の二〇欄(赤沢とも子名の定期予金の異動)

<ソ> 同号の二三欄(赤沢次郎名の定期予金の異動)

<ツ> 同号の二一欄(赤沢とも子名の定期予金の異動)

<ネ> 同号の二四欄(赤沢次郎名の定期予金の異動)

<ナ> 同号の一六欄(中村次郎名の定期予金の異動)

<ラ> 同号の五欄(吉田源一郎名の定期予金の異動)

<ム> 符第九九号の二枚目の五欄(吉田源一郎名の定期予金の分)

<ウ> 同右の六欄(鴨井節夫名の定期予金の分)

<ヰ> 同右の七欄(野山喜久名の定期予金の分)

〃 竹内明夫 〃 四〇、一、二六〃 -(四三、一、三一継続-四四、二、一継続)(〃四四二八)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、八七八円

広相/倉敷 杉田洋子名義三九、一二、二一新約-(四三、一二、三継続-四四、一二、三一継続)

(記番号六八六三) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四七、二六〇円

〃 竹内とも子名義四二、三、二七〃 -(四三、四、三〇 〃-四四、五、九 〃)

(記番号四九〇八) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四七、八九八円

〃 大野一恵名義四二、四、六〃 -(四三、四、六 〃-四四、四、八 〃)

(記番号四一一-五一一) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四七、〇〇五円

〃 松山弘名義四二、五、三一〃 -(四三、五、三一〃-四四、六、二六 〃)

(記番号四一一-八三九) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 杉本義夫名義四三、五、三一〃 -(四三、五、三一 〃-四四、六、二六〃)

(記番号四一一-八三九) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 山田二郎名義四三、三、三〇〃 四四、三、三一解約 (記番号四六七七)

一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、八七八円

中銀/水島 野山喜久名義四二、一一、二八 〃 -(四三、一一、二八継続-四四、一一、二八継続)

(記番号四五〇五) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

広相/倉敷 杉田好子名義四一、六、二七〃 -(四三、七、一〃 -四四、七、三 〃)

(記番号五三一一) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四七、〇〇五円

〃 竹内洋志名義四一、八、一二〃 -(四三、八、三〃 -四四、八、二一解約)

(記番号五七〇九) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 前原由孝名義四一、九、二〇〃 -(四三、九、二〇〃 -四四、九、二〇〃)

(記番号五九七八) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 赤沢とも子名義四〇、四、二七〃 四三、四、二七解約

(記番号四八九三) 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 赤沢次郎四三、五、一〇〃 四四、五、一〇継続

(記番号四九六八) 一、〇一六、九五八円 源泉扣除後の利息 四七、六二〇円

〃 赤沢とも子名義四一、一二、一六新約 四二、一二、一六解約

(記番号二三六八四) 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 赤沢次郎四三、五、一〇新約 四四、五、一〇継続

(記番号二四九六六) 一、〇一八、六一五円 源泉扣除後の利息 四六、八二五円

広相/倉敷 赤沢とも子名義四一、一二、一九 新約 四二、一二、二九解約

(記番号三八九一) 一、〇〇〇、〇〇〇円

〃 赤沢次郎四三、五、一〇新約 四四、五、一〇継続

(記番号四九六七) 一、〇〇一、六五八円 源泉扣除後の利息 四七、五四〇円

商銀/岡山 中村次郎名義四一、二、一〇 新約-(四四、一、一七継続-四四、九、八解約)

(記番号一〇八五五) 一、五〇〇、〇〇〇円 〃 二〇、八八五円

中銀/水島 吉田源一郎名義四二、九、三〇 継続 四三、九、三〇継続

(記番号四三九六) 一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 (四六、七五〇円)

右の内 四二、一二九円

〃 吉田源一郎名義四二、九、三〇新約-(四三、九、三〇継続-四四、九、三〇継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 鴨井節夫 〃 四二、一〇、二一〃 四三、一〇、二二継続

(記番号三五二二) 一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四六、八七八円

〃 野山喜久 〃 四二、一一、二八〃 四三、一一、二八 〃

(記番号三六〇一) 一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 (四六、七五〇円)

右の内 四一、四〇八円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が自己の定期利息をプールし一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、一二、一に三宅俊

〃 山下美智男〃 四二、八、一九〃-(四三、八、一九-四四、八、一九継続)

一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四六、七五〇円

〃 吉田源一郎〃 四二、九、三〇〃 四三、九、三〇 継続

(記番号四三九六) 一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 (四六、七五〇円)

右の内 四、六二一円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が自己の定期利息をプールし一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、一二、一に大倉一郎名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第九九号の一枚目の三欄(浅原広志の定期予金の分)

<ロ> 同右の四欄(福永照美名の定期予金の分)

<ハ> 同右の一二欄(古家野茂名の定期予金の分)

<ニ> 同右の一一欄(中野義一名の定期予金の分)

<ホ> 同右の一〇欄(藤田喜美夫名の定期予金の分)

<ヘ> 同右の一三欄(岡部尚二名の定期予金の分)

<ト> 同右の一四欄(安原春吉名の定期予金の分)

<チ> 同右の一五欄(山本一行名の定期予金の分)

<リ> 同右の一六欄(吉田誠一名の定期予金の分)

<ヌ> 同号の二枚目の一欄(田辺春吉名の定期予金の分)

<ル> 同右の二欄(田中義元名の定期予金の分)

<ヲ> 同右の三欄(吉田宗吉名の定期予金の分)

<ワ> 同右の四欄(山下美智男名の定期予金の分)

<カ> 同右の五欄(吉田源一郎名の定期予金の分)

47.四四、一二、一新規契約商銀/岡山 三宅俊夫名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五六七)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一一、六五六円について

広相/倉敷 千原次郎名義四〇、一、二五新約-(四三、一、三一継続-四四、二、一継続)

(記番号四二二九)一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉控除後の利息 四六、八七八円

〃 杉田芳子 〃 四一、一、一八〃 (四三、二、一〇継続-四四、二、一八 〃)

( 〃 四三二一)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四七、七七〇円

〃 杉田芳子 〃 四一、四、二三〃 (四三、四、三〇継続-四四、五、七 〃)

( 〃 四九〇九)一、〇〇〇、〇〇〇円 〃 四七、六四三円

48.四四、一二、一新規契約商銀/岡山 吉岡名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五五三)

右に対する四五、六、二三の受取利息(源泉扣除後)一二、八七二円について

中銀/水島 中村次郎名義(赤沢次郎)の当座予金から四一、一二、一六に三、九〇〇、〇〇〇円を引出し

その中から一、〇〇〇、〇〇〇円を四二、一、一一に、商銀/岡山 赤沢明子名義で予金した

商銀/岡山 赤沢明子名義四二、一、一一新約(四三、一、二六継続-四四、一、二九解約)

(記番号三九一八)一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎個人定期)

(註)赤沢次郎の定期予金を解約し、解約金一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、一二、一に吉岡名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 <イ> 符第九七号の一三枚目の三行目(四一、一二、一六。中村次郎名の当座予金から三九〇万円を引出し、内一〇〇万円を商銀に赤沢明子名で定期予金した旨の記載)

<ロ> 符第一〇二号の八欄(岡山商銀における赤沢明子名の定期預金の発生及びその異動)

49.四四、一二、二七新規契約商銀/岡山 藤本名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五七四)

右に対する四五、六、一六の受取利息(源泉扣除後)二五、八七三円について

四四、五、三一の契約により、赤沢次郎が所有する倉敷市連島町矢柄山七一坪六合を一、四四〇、〇〇〇円で倉敷市水島潮通り三丁目佐多五月に売却し、四四、一二、一五に受取った現金を予金としたもの

現金 (一、四四〇、〇〇〇円)

右の内 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が所有していた山林の売却代金の内から、一、〇〇〇、〇〇〇円を四四、一二、二七に、藤本名義(赤沢次郎)で通知予金した。

証拠 弁第二〇号(赤沢次郎と佐多五月間の土地売買け契約書)

50.四五、一、二九新規契約商銀/岡山 三沢名義、通知予金一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号五九九)

右に対する四五、六、一六の受取利息(源泉扣除後)八、八三八円について

四四、五、三一の契約により、赤沢次郎が所有する倉敷市連島町矢柄山林七一坪六合を一、四四〇、〇〇〇円で倉敷市水島潮通り三丁目佐多五月に売却し、四四、一二、一五に受取った現金を予金としたもの

現金 (一、四四〇、〇〇〇円)

右の内 四四〇、〇〇〇円

赤沢次郎が自己の定期利息をプールし予金したもの

中銀/水島 野山喜久名義四二、一一、二八 新約 四三、一一、二八継続

(記番号三六〇一) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

右の内 (五、三四二円)

中銀/水島 大橋保雄名義四三、一二、三一 新約 四四、一二、三一継続

(記番号四五八八) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 鴨井節夫〃 四二、一〇、二一 〃 -(四三、一〇、二二継続-四四、一〇、二二継続)

( 〃 四四三〇) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 石川貞夫〃 四二、一二、三〇 〃 四三、一二、三〇継続

( 〃 三六七九) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 白神澄治〃 四二、一二、三〇 〃 四三、一二、三〇〃

( 〃 三六六九) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 村田啓策〃 四三、三、二一 〃 四四、三、二五〃

( 〃 三九一八) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四七、二六〇円

〃 福本万喜太〃四三、一〇、 二 〃 四四、一〇、 二〃

( 〃 三四八八) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 池上義弘 〃四三、一〇、 七 〃 四四、一〇、 八〃

( 〃 三五〇四) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、八七八円

〃 丸川等 〃 四三、一一、五 〃 四四、一一、 五〃

( 〃 三五三四) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 楠木洋一〃 四三、一一、二六 〃 四四、一一、二七〃

( 〃 三五九五) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、八七八円

〃 石川貞夫〃 四二、一二、三〇 〃 -(四三、一二、三〇継続-四四、一二、三〇継続)

(記番号四五七五) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 白神澄治〃 四二、一二、三〇、〃 -(四三、一二、三〇〃-四四、一二、三〇 〃 )

( 〃 四五七八) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 沢田一子〃 四二、一二、三一、〃 四四、一二、三一継続

(記番号四五八三) 一、〇〇〇、〇〇〇円 源泉扣除後の利息 (四六、七五〇円)

右の内 三九、六四二円

小計 三六〇、〇〇〇円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が所有していた山林の売買代金の内から四四〇、〇〇〇円と赤沢次郎が自己の定期利息をプールしていたもの五六〇、〇〇〇円計一、〇〇〇、〇〇〇円を四五、一、二九に三沢名義(赤沢次郎)で通知預金した。

証拠 <イ> 弁第二〇号(前四九番の項参照)

<ロ> 符第九九号の二枚目の七欄(野山喜久名の定期予金の分)

<ハ> 符第九九号の二枚目の一六欄(大橋保雄名の定期予金の分)

<ニ> 同右の六欄 (鴨井節夫名の定期予金の分)

<ホ> 同右の八欄 (石井貞夫名の定期予金の分)

<ヘ> 同右の九欄 (白神澄治名の定期予金の分)

<ト> 同右の一〇欄(村田啓策名の定期予金の分)

<チ> 同右の一一欄(福本万喜太名の定期預金の分)

<リ> 同右の一二欄(池上義弘名の定期予金の分)

<ヌ> 同右の一三欄(丸川等名の定期予金の分)

<ル> 同右の一四欄(楠木洋一の定期予金の分)

<ヲ> 同右の八欄(石川貞夫名の定期予金の分)

<ワ> 同右の九欄(白神澄治名の定期予金の分)

<カ> 同右の一五欄(沢田一子名の定期予金の分)

51.四五、三、二〇新規契約 商銀/岡山 西山名義、通知予金 一、〇〇〇、〇〇〇円(証書番号六三二)

右に対する四五、六、一〇の受取利息(源泉扣除後)二、六二〇円について

中銀/水島 沢田一子名義四三、一二、三一新約四四、一二、三一継続

(記番号四五八五)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 (四六、七五〇円)

右の内 七、一〇八円

〃 鳥越基吉〃四一、一二、二四〃-(四三、一二、二五継続-四四、一二、二五継続)

(記番号四五五八)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

〃 藤田喜美夫〃 四一、一二、二八(四三、一二、二八〃- 四四、一二、二九〃)

( 〃 四五六九)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、八七八円

〃 中野義一〃 四二、一、二八〃-(四四、一、二九〃- 四五、一、三〇〃)

( 〃 四六三九)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、八七八円

中銀/水島 古家野茂名義四二、二、二三新約-(四四、二、二六継続-四五、二、二六継続)

(記番号四七〇三)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、三二九円

〃 岡部尚二〃 四二、二、二七〃-(四四、二、二七〃- 四五、二、二七〃)

( 〃 四七〇五)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四六、七五〇円

商銀/岡山 竹内弘〃四三、七、六〃四四、七、九継続

(記番号四六二二)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、九九一円

〃 千原一矢〃 四三、七、六〃四四、七、九〃

( 〃 四六二三)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、九九一円

〃 坂三郎 〃 四三、九、一四〃四四、九、一六

( 〃 一〇六八〇)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 四七、六〇〇円

〃 三好一郎〃 四三、九、一四〃四四、九、一六〃

( 〃 一〇六七九)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 四七、六〇〇円

〃 西川 〃 四三、一一、三〇〃四四、一、九解約

( 〃 三五五通知予金)一、〇〇〇、〇〇〇同上源泉扣除後の利息 二、七二〇円

〃 赤沢明子〃 四二、一、一一〃四三、一、二六継続

( 〃 三三二三)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 五〇、八五二円

〃 赤沢明子〃 四二、一、一一〃-(四三、一、二六継続-四四、一、二九解約)

( 〃 三九一八)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、七七九円

〃 西川三郎〃 四四、一、一一〃四五、三、三継続

( 〃 四四二〇)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 五四、一〇三円

〃 千原一郎〃 四四、一、三〇〃四五、三、三〃

( 〃 四四四一)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 五一、六三二円

〃 和田次郎〃 四三、一二、三一〃四五、一、八〃

( 〃 四四一〇)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 四八、六四一円

〃 河口浩 〃 四四、一、三一〃四五、三、二〃

( 〃 四四四四)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 五一、五〇二円

商銀/岡山 坂照美名義 四三、一一、三〇新約四五、一、九継続

(記番号四三六四)一、〇〇〇、〇〇〇円同上源泉扣除後の利息 五二、六七二円

〃 赤沢芳子〃 三九、八、五新約-(四三、一二、八継続-四四、一二、八継続)

( 〃 一〇三三〇)六〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 二九、九一七円

広相/倉敷 北川俊二〃四三、一二、三〃 四四、一二、六継続

(記番号六四八七)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、一三三円

〃 千原次郎〃 四〇、一、二五〃-(四四、二、一継続-四五、二、五継続)

( 〃 四一一-一七六)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、二六〇円

〃 竹内明夫〃 四〇、一、二六〃(四四、二、一〃-四五、二、四〃)

( 〃 四一一-一七五)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息 四七、一二三円

〃 杉田芳子〃 四一、一、一八〃(四四、二、一八〃-四五、二、二〇〃)

( 〃 四一一-二九七)一、〇〇〇、〇〇〇円 同上源泉扣除後の利息(四六、八五二円)

右の内 三六、七八一円

計 一、〇〇〇、〇〇〇円

(註)赤沢次郎が自己の定期利息をプールし、一、〇〇〇、〇〇〇円を四五、三、二〇に西山名義(赤沢次郎)で通知予金した。

四四、九月

利息の対象となつた元金(円) 計算利息(円)

中銀/水島 定期一八口 一八、〇〇〇、〇〇〇 八四三、七九六

商銀/岡山 〃 四 四、〇〇〇、〇〇〇 一九一、一八二

〃 通知 一 一、〇〇〇、〇〇〇 二、七二〇

広相/倉敷 定期 五 五、〇〇〇、〇〇〇 二三五、二八一

計 二八 二八、〇〇〇、〇〇〇 一、二七二、九七九

起訴額 一、三六七、四〇二

計算上の過大額 九四、四二三

四五、九期

中銀/水島 定期二三口 二三、〇〇〇、〇〇〇 一、〇七八、二八七

商銀/岡山 〃 九 九、〇〇〇、〇〇〇 四四九、四九四

〃 通知一二 一二、〇〇〇、〇〇〇 一八七、二五三

広相/倉敷 定期 七 七、〇〇〇、〇〇〇 三二九、四三七

富士/倉敷 〃 一 一、〇〇〇、〇〇〇 六六、八三六

計 五二 五二、〇〇〇、〇〇〇 二、一一一、三〇七

起訴額 二、一一一、五七四

計算上の過大額 二六七

以上により、架空経費の計上により、抜き取った現金を仮名等で裏預金していた預金の利息であるとされた金額は、総て、赤沢次郎が所有していた定期(法人設立の四一、一二、二四以前に発生した赤沢次郎の定期)或は当座予金の引出し金(法人設立の四一、一二、二四以前に中村次郎名義で当座予金していた金銭)又赤沢次郎が所有していた山土或は山林(法人設立の四一、一二、二四以前に購入していた)の売却、代金等から、法人設立後、定期され、又その定期予金利息からさらに、定期されたものの、利息であつて、その原因経過は、前述した通りでありますから、赤沢次郎個人の所有に帰属する預金利息であります。従つて、被告会社から個人赤沢次郎が、抜き取った現金を仮名等で裏予金していた預金の利息ではありません。

証拠 <イ> 符第九九号の二枚目の一五欄(沢田一子名の定期予金の分)

<ロ> 符第九九号の一枚目の九欄(鳥越基吉名の定期予金の分)

<ハ> 同右の一〇欄(藤田喜美夫名の定期予金の分)

<ニ> 同右の一一欄(中野義一名の定期予金の分)

<ホ> 同右の一二欄(古家野茂名の定期予金の分)

<ヘ> 同右の一三欄(岡部尚二名の定期予金の分)

<ト> 符第一〇三号(四〇〇万円の無記名予金)

<チ> 符第一〇七号の三欄(二五〇万円の無記名予金)

<リ> 符第一〇二号の八欄(赤沢明子名の定期予金の異動)

<ヌ> 符第一〇七号の三欄(二五〇万円の無記名予金)

<ル> 符第九七号の一三枚目の三行目(三九〇万円を引出し、内金一〇〇万円を千原一郎名の定期予金二廻した旨の記載)

<ヲ> 符第一〇七号の六欄(一〇〇万円の無記名定期予金の分)

<ワ> 符第一〇〇号の一四欄(中原次郎名の定期予金の異動)

<カ> 符第一〇七号の三欄(二五〇万円の無記名定期予金の分)

<ヨ> 符第一〇二号の一、二欄(赤沢芳子の合計六〇万円の定期予金の異動)

<タ> 符第一〇〇号の八欄(北川俊二名の定期予金の異動)

<レ> 同右の一欄(千原次郎名の定期予金の異動)

<ソ> 同右の四欄(竹内照夫名の定期予金の異動)

<ツ> 同右の二欄(杉田芳子名の定期予金の異動)

<ネ> (一)の26、27の末尾記載の全書証(特に弁第一九号の八枚目の二欄と同号の四枚目の三欄)

追記

一、起訴に対する冒頭陳述書「第三犯行の方法一〇、受取利息」について、

<1> (一)13の広相/倉敷杉田芳子名義四二、二、一〇(記番号一九三四九)一、〇〇〇、〇〇〇円の元金は、同日五〇〇、〇〇〇円が追加され、一、〇〇〇、〇〇〇円となつた。追加金は、四一、一二、一六、中村次郎名義の当座から三、九〇〇、〇〇〇円を引出し、その内の五〇〇、〇〇〇円をこれにあてた。

<2> (一)13の広相/倉敷杉田芳子名義四二、四、二六(記番号一九九二二)一、〇〇〇、〇〇〇円の元金は、同日五〇〇、〇〇〇円が追加され、一、〇〇〇、〇〇〇円となつた。追加金は、四一、一二、一六、中村次郎名義の当座から三、九〇〇、〇〇〇円を引出し、その内の五〇〇、〇〇〇円をこれにあてた。

<3> (一)23の広相/倉敷竹内洋志名義四二、八、一七継続元金一、〇〇〇、〇〇〇円となつたが、(当初の元金は、五〇〇、〇〇〇円)その追加金五〇〇、〇〇〇円は、四一、一二、一六中村次郎名義の当座から三、九〇〇、〇〇〇円を引出し、その内五〇〇、〇〇〇円をこれにあてた。

別紙書面(四)

供述書

被告人 株式会社水島土木工業

外一名

右両名に対する法人税法違反被告事件について左記の通り供述致します。

昭和六〇年一〇月二四日

右被告人 株式会社水島土木工業

代表取締役 赤沢次郎

被告人 赤沢次郎

岡山地方裁判所 御中

一、国税局の捜査は初めから私や妻芳子がしている仮名預金は全部私が会社の金をごまかして、架空外註費や材料等として抜取つて、こしらえたものであるとの誤つた勝手な予断のもとで強行されたものであります。その結果「事実でないことが事実である」とされ、検察庁に告発され、ここでは、退院してなお、病気治療中であつたのに、突然、逮捕勾留され、而もきびしい取調べを受け、その結果、心ならずも虚偽の供述をせざるを得ない羽目になったのであります。

そして、以来一三年余の間裁判を戦いつづけなければならなかつたのでありまして、正に思うだに痛恨のきわみであります。然し、私は、公正な裁判を通して、どこまでも真実を明らかにして行く決意は微動だもしていません。

二、国税局や検察官は利益金額を決定するのに損益計算法(総収入額から総支出額を控除した額を利益額とする方法)のみを用いたと云われていますが、然し、これは原則的に正しいやり方でないことは従来から反論しているとおりでありますが、それは暫くおき、たとえ、損益計算法のみにより計算することが許されるとしても、それは「証拠に基き、間違なく、正確に行われること」が絶対の条件であるべきだと思います。

ところがこの事件では、私が過去一三年間の長きに亘つて主張し、反証を提出していることによつて認められる通り、決して、その計算は、証拠に基き、間違なく、正確には行われていないのであります。

三、一例を挙げますと、国税局は会社が鹿島建設から下請負したA工事を自ら又は、他の第三者に孫請けさせて工事を施工して工事金を支出しているのに、同じ工事を小柴建設に孫請けさせたように装つて二重に工事金を支払つているものであると認定したのに、当該工事につき小柴建設を調べただけで、もう一人の施工者の氏名及びその者に対する工事金支払の有無については全然取調べをされていないのであります。

その結果、このもう一人の実際施工した者にその工事代金を支払つている事実が確かめられたならば、それこそ、小柴建設への支払金が架空工事代金を支払つたものとして認められて然るべきものであると存する次第であります。

それだのに、国税局は、全くこの調査をしていないのであります。

遠藤登芽夫証人は、法廷ではその調査をしたような証言をしましたが、それは、全くの虚偽で偽証以外の何物でもありません。実際調査をしたと云われるのならそのデーターを出すべきです。

この一事をとつても、本件は、国税局や検察庁が前記の予断に捉われすぎた結果、証拠に基き正確な調査を為すことを怠つていることが、証明せられると思います。

国税局が、上記の如く、合理的、合法的、証拠を調査しないで、独断的に作成した正しくない損益計算書によつて算出された金額を以て私を処罰することは絶対に承服できないのであります。

四、だからこそ、このような誤りを正すためにこそもう一つの財産増減法の方法による検算が必要となつて来るのだと思います。

それだのに国税局は故意に資産と負債の増減を見る財産増減法を避けたのでありますが、岡山税務署が所得更生決定を為すについては、法人税法に基いて、財産増減法も併用しています。

そのことは岡山税務署の(1)更生決定通知書(差戻前の弁第一〇号、弁第一六号)、(2)同審査請求をすることができる旨の教示について(通知)(前同弁第一二号、弁第一八号)、(3)法人税の異議申立書(前同弁第一一号、弁第一七号)、(4)倉敷税務署長の答弁書(当審で提出)の記載及び存在によつて証明されるのであります。

然し、岡山税務署と倉敷税務署は、右の更正決定や教示の通知をするについては、両署は全然独自の調査をすることなく、国税局の捜査記録のみを資料として、損益計算法と財産増減法の両方法によつて数額を算出認定して来ているのであります。

従って、税務署がした更正決定や教示の数額と国税局が為した数額とは殆ど一致しているのであります。

そこで国税局は敢て、財産増減法による数額を公表することを避けているのでありますが、税務署は、不服審判事件の審判に際し、最近になつて、漱く、答弁書(前示参照)を提出して「社内留保金」の内訳明細を明示されたのであります。

勿論、その明細は、国税局の捜査記録のみを資料として作成されたものであることは明白でありますので、右の「社内留保金」の明細書に書かれている貸付金や仮受金等がその摘要欄に記載されているとおり社内留保されたものであるか否かを検討調査することは、本件の起訴が適正であるか否かを決定するについて最も重要なことだと存じます。

そこで念の為め、上記の答弁書の記載の社内留保金の明細につき順次供述致し度いと思います。

五、先づ、昭和四四年九月期分の答弁書について述べます。

この答弁書には、「貸付金」として金五八、六六二、六二八円、仮受金三六、〇七五、〇〇〇円と記載し、その内訳として、この供述書の末尾添付の表と同じものが記載されていますので、この表に基いて左記の通り順次説明します。

(一) 貸付金について

<1>着物代 一〇〇万円

このようなことはあり得ないことです。

<2>土地代 七、七四九、〇〇〇円

土地代 一五、八一四、〇〇〇円

これは私の昭和四六年八月七日付質問顛末書で云つている通り、妻赤沢芳子が買つたものであり、私が買つたものでありません。(不動産登記簿参照)而もその金は妻が会社に、昭和四四年六月三〇日に会社に山土を四〇〇万円、同年九月二八日に代金四七〇万円で売却した金(山土概算検討表と会社の総勘定元帳に記載あり)と同人が同年九月二九日金一、〇〇〇万円昭和四四年一一月二七日に金六〇〇万円、昭和四五年一月一〇日に金二〇〇万円合計一、八〇〇万円(商銀の証明書あり)その他家賃や地代収入等を合せた金で、妻自身が支払つたのであり、私ではありません。そして妻は、商銀への支払も自分で長年かかつて支払つています。

<3>土地代 一三、一一〇、〇〇〇円

これも妻芳子が購入したもの(不動産登記簿参照)でありますが、その金は、その頃妻が、中銀水島支店から一六〇万円、三四〇万円、二〇〇万円を借入れた金と、同様岡山商銀から借入れた六〇〇万円合計一、三〇〇万円の金をもつて支払つたものであります。而も妻は、上記借入金は長く昭和五七年頃までもかかつて銀行に払つています。

以上の次第ですので、私は表にある土地を買つたこともなく、その為にその買う金を会社から持ち出し及至は借入したりしたことは一切ありません。

会社の帳簿を見てもらつても判る筈です。

<4>岡山商銀への出資金 一、〇〇〇、〇〇〇円

このようなことは全くありません。

<5>預金増加 一〇、五七二、一二八円

この額が出た根拠は全く判りませんが、私は会社の金を抜取つてまでして預金したことは全くありません。

<6>西山柳に対する貸付金 五、〇〇〇、〇〇〇円

西山柳というのは、西山某と柳某との意味のようですが、検察官が「他人に貸した金もあろうが云へと云うので強制されるので、その場のがれで無責任なことを云つたのでして、実際は、これに貸してはいません。そのことは二人を調べてもらえば判ります。

<7>結婚費用 一、五〇〇、〇〇〇円

私と妻の過去の蓄積からして一五〇万円位の金を会社から抜取るようなことをしなくても出せます。

<8>生活費 七二〇、〇〇〇円

<9>学資 三〇〇、〇〇〇円

この表によると私が一家の生活費として月々六万円宛会社から借入れしていたとか、娘の学資三〇万円を借入れしたとか云つていますが、このようなことは事実でないし、常識にも合わないことです。税務署はどうしてこんなことを云うのかすつかり意味が判りません。

<10>旅行費用 一、八四五、〇〇〇円

旅行の事実はありますが、その金額は判りませんが、どこからその額を認められたのかも判りませんが、この旅行の金は私と妻とにとつて一生一代のことであつたので、自分の持金で行つたことは間違いありません。

<11>税金 五二、〇〇〇円

私は全く思いあたりません。

会社の帳簿にも書いてありません。

(三) 仮受金について

<1>給料 三、一三五、〇〇〇円

税務署は前項の<8>にあるように、私が会社から毎月生活費として金六万円宛を借入れしていたと云いながら、その一方では毎月の給料やその他を合わせて年間合計三、一三五、〇〇〇円もの金を貸付けていたと云われるのでありますが、こんな馬鹿なことは全く致しておりません。そんなことをする者は世界にないでしよう。

<2>山土代 四、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢芳子分)

山土代四、七〇〇、〇〇〇円(同上)

これは総勘定元帳にもその通り載つていますが、この金は前項の<2>で述べたように妻芳子が土師敏正、土師繁木から土地を買つた際の土地代の足しに使用済であり、妻又は私がこれを会社に貸付けたりすることは出来ず、勿論そのようなことをしたことは全くありません。そして、この山土代の収入につき妻芳子は検事さんが出された同人の確定申告書にも同人の収入として確定申告しているのであります。

<3>山土代 一、〇〇〇、〇〇〇円(赤沢次郎分)

私が会社から山土代一、〇〇〇万円の支払を受けたのは、実際であり、証拠もありますが、これは翌期に近藤章雄から玉野市所在の土地を買受けたときの代金一、〇〇〇万円の支払に用いたのであつて、この金を私が会社に貸付けた事実は全然ありません。

<4>借入金 一四、〇〇〇、〇〇〇円

私は会社に対して一、四〇〇万円もの現金を貸したことは全然ありません。

そんな会社に貸すような余分の金は持ち合わせてはいません。これは恐らく、私個人所有の山土を会社が買受けたのにその代金の決済をしないで、これを会社の仮受金に振替えたと云う意味ではないかとも思われないでもありませんが、税務署に聞いてみないと判りません。或はこれは税務署が金額合わせをするために、こしらえた架空の数字かもしれないとも思われます。

<5>交際費 二四〇、〇〇〇円

私が会社の為、支出している交際費は二四万円どころではありません。

六、次に、昭和四五年九月期の分の答弁書について述べます。

この答弁書には、前同様「社内留保金」の明細が記載されているので、その抄本を本供述書の末尾に添付して、それに基いて順次説明致します。

(一) 貸付金 六 五、七五七、七四九円について

<1>三宅仲次からの土地買入代金 一〇、四〇六、二〇〇円

この土地は私が質問顛末書でも述べているとおり、(株)三共観光開発が購入したものであつて、私個人が買つたものではありません。従つてその購入資金を私が水島土木から借入れてまで調達する必要は毛頭ありません。

この購入資金を私が水島土木から借入れしたものでないことは国税局の捜査時点でも明白にされていると確信しています。

<2>近藤幸雄(章雄の誤記)からの土地買入代金 一〇、〇〇〇、〇〇〇円

この土地は、私が買つたものでありますが、その買入代金は前期(昭和四四年九月期)末に私が会社から支払を受けた山土代一、〇〇〇万円を以て支払つたのであります。従つて私が近藤章雄さんに支払うために会社から一、〇〇〇万円を借受けたことは絶対ありません。

会社の総勘定元帳を検しても確認出来ることだと思います。

<3>三共観光開発への出資金 四、〇〇〇、〇〇〇円

私が同会社に同額の出資をしたことは事実ですが、その金は私個人の手持金から出したのであつて、会社の金を持出して支払うようなことは絶対に致しておりません。

<4>増額した預金 二四、三八一、九四九円

増額しているのかどうかは何も私には判りませんが、私が、既に当審でくわしく供述している通り預金はすべて、私や妻の個人当時の蓄積金や山土売却代金等を預金及至は期間満了による書換をしていたのであつて、それは会社から借入或は抜取つて預金したものではありません。

因に、税務署がなした、右預金増加額は何等の証拠なくして任意に認定した額であり、これを認定するにつき何等の合理的根拠を有していない。

そして、却つて私の方にこそ、これを否定する根拠と証拠を持つている次第であります。

<5>三共観光開発に対する貸付金一五、〇〇〇、〇〇〇円

私は水島土木の金を抜取つたり及至は借入れてまで三共観光に金一、五〇〇万円も貸付けなければならない義務はありません。

三共観光の払込資本金は一、六〇〇万円であるのに私と妻や私の娘の分を合わせても四〇〇万円で全資本の四分の一に過ぎないのです。その私がこのような一、五〇〇万円もの大金を三共観光に貸すことは常識に合わないことが判つていただけると思います。

<6>学資 六〇〇、〇〇〇円

<7>生活費 七二〇、〇〇〇円

<8>税金 六四九、六〇〇円

この三口のことについては、前項の供述を参考にして下さい。

こんな金を会社から出させたなど絶対にありません。

(二) 仮受金 五〇、二二〇、〇〇〇円について

<1>給料 三、三六〇、〇〇〇円

先にも述べたように、私や妻は会社から貰うべき給料は毎月貰つていたので、税務署が云うようにその金を会社に貸し、別にまた私が会社から生活費を借りるなど、そんなことは常識で考えられないことであつて絶対致しておりません。

<2>山土代 二〇、〇〇〇、〇〇〇円 赤沢次郎分

私はこの山土売却代金は、私個人の預金にするなどしたのであつて決して会社に貸付けてはいません。

<3>土地 一八〇万円 中国電力への売却代

この土地も私個人の所有です。その代金は私が使用し、会社には貸していません。

<4>配当金 八五万円 商銀の分

私は前述の通り岡山商銀への出資額は僅かに一〇〇万円ですので、八五万円もの配当金はあり得ません。

<5>配当金 一五〇万円 水島土木分

配当金額は一一七万円ですが、会社に貸していません。

<6>土地 一四四万円 佐多五月への売却

この土地は私の個人所有です。

この金は私が商銀に預金したことが本当で会社には貸していません。

<7>交際費 一二万円

前項と同じです。

<8>借入金 二一、九一五、〇〇〇円

私はこの年度中にこのような大金を会社に貸したことはありません。

七、以上の他のことは、口頭で陳述します。(以上)