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広島高等裁判所 昭和30年(ナ)2号 判決 1956年5月29日

原告 高山和一

被告 広島県選挙管理委員会

補助参加人 本川光利

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「昭和三十年四月三十日執行の広島県世羅郡甲山町町議会議員の一般選挙につき、被告が同年七月二十六日為した甲山町選挙管理委員会のなした決定を取消し、当選人原告高山和一の当選を無効とする旨の裁決は、これを取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として次の通り述べた。

(一)  原告は昭和三十年四月三十日執行せられた広島県世羅郡甲山町町議会議員の一般選挙(以下本件選挙と略称する)において立候補をし、得票数百四十票で当選し、現に甲山町町議会議員として在任するものである。

(二)  補助参加人本川光利は本件選挙に立候補した者であるが、昭和三十年五月五日甲山町選挙管理委員会に対し原告の当選を無効とすべき旨異議申立をなし、同月二十四日同委員会において右異議申立を棄却する旨の決定を受け、更に同年六月二日被告委員会に対し訴願を提起したところ、被告は同年七月二十六日附で「昭和三十年五月二十四日世羅郡甲山町選挙管理委員会のなした決定は取消す、当選人原告高山和一の当選を無効とする」との裁決(以下本件裁決と略称する)をなし、本件裁決は同日告示せられた。そして、本件裁決によれば原告の当選を無効とする理由は、原告の得票中に「カタヤマ」と記載されたもの一票「かたやま」と記載されたもの三票合計四票(以下本件四票と略称する)が混入されているが、本件四票は本件選挙の立候補者片山昭二の得票とすべく、これを原告に対する投票とすることはできないとして、原告の得票数を百三十六票であるとなし、各候補者の得票数を計算した結果、最下位の当選者たる補助参加人本川光利の得票数が百三十九票であつて、得票数百三十六票である原告の当選は無効であるというのである。

(三)  しかしながら本件裁決は次に述べるような理由で違法である。

(イ)  本件選挙において投票の調査については、開票、投票の効力の決定、投票の整理、異議申立による検票等多数回にわたりまた多数人の精密な検票にさらされたのであるから、被告が本件四票を発見するまで、本件四票の存在について何人も気が付かなかつたとすることは、明らかに実験法則に反する。すなわち、本件選挙における全投票数は僅かに千三百三十五票に過ぎなかつたのであるが、この投票は、先ず開票事務に従事する者少くとも二人の検票を経、次いで選挙長、及び開票立会人七名が全投票を点検してその間違いのないことを確認している。もしも本件四票が開票当時存在していたならば右の如き多数の検票者の内何人かによつて必ず発見せられたはずである。しかるに、右投票をなした者等はいずれも開票当時本件四票の存在した事実を認識していないのである。従つて、現に本件四票が存在するという事実から直ちに開票当時本件四票の存在が見のがされていたものであると推論することは許されない。更に補助参加人の本件選挙に対する異議申立により、甲山町選挙管理委員会は、あらためて全投票を検票した。右異議の理由中に「ミシン」「多加山」等と記載された投票の存在が指摘されており、単に「穂運加輸美津戸志」と記載された投票の効力についてのみ異議が申立てられたわけではないので、同委員会の各委員は、精密に全投票を調査したのであるが、本件四票は発見せられなかつたのである。

(ロ)  本件選挙の投票その他関係書類は、甲山町役場の倉庫に保管せられていたのであるが、その倉庫は何人でも自由に近付き得る位置にあり且その戸締りは不完全であつた。しかも投票を封入した袋には封印が施してあつたが、その方法は封じ目を糊づけにしその封じ目に印を押したものに過ぎなかつたから適当な時間をかけ人目を避けて入念に作為するときは、封じ目を破つた形跡を残さずに投票を抜きさしすることが可能であつた。従つて同町選挙管理委員会の前記検票後被告委員会の検票前に、何人かが本件選挙の投票をひそかに取り出し、その中の原告の得票中より有効投票四枚を廃棄し、その代りに使用残りの投票用紙を利用して偽造した本件四票を差入ておくことも不可能ではない状態であつた。

(ハ)  本件選挙に使用せられた残りの投票用紙及びその精算に関する書類が、本件裁決前にほしいままに焼却せられている。しかも甲山町選挙管理委員会が昭和三十年五月までに管掌した本件以外の各選挙の投票用紙残票及び選挙関係書類はすべて保管せられているのに、本件選挙の残りの投票用紙及びその精算書のみが焼却せられているのである。この事実は、本件四票が事後において不正に作成せられたということを推定せしめる有力な一資料となる。

(ニ)  本件四票を比較対照するときは、それが同一人の筆跡であることを明らかに看取し得る。本件四票は、漢字を書き得る能力を有する者が、ことさら「紛らわしい投票」を作るために仮名文字を書いたものであつてその筆勢も同一と認められるから、本件四票は事後に作成せられた偽造票であると認めねばならぬ。

(ホ)  以上の諸事実を綜合して考えれば、本件四票は甲山町選挙管理委員会の前示異議棄却決定のなされた以後において、何人かによつて偽造せられ、原告の有効得票四通と差し替えられたものであつて、開票当時に存在しなかつたものであると認めねばならぬ。従つて、本件四票が開票当時より存在していたことを前提としてなされた本件裁決は違法であるといわねばならぬ。

(四)  およそ、投票の効力は開票管理者において決定し、各候補者の得票数は選挙会において決定し、それぞれ一定の手続のもとに選挙の結果が認証せられ当選が決定せられるのである。選挙録の作成は単なる事実行為ではなく、投票の効力、得票の数等候補者の当落に関する事項についてこれを明らかにして、そして当落を決定するところの行政行為を表示するものである。そして行政行為は公定力を有し、適正を推定せられるものであるから、甲山町選挙管理委員会が原告の当選を決定した後に至つて本件四票が発見せられたとしても、本件四票自体によつてはそれが開票当時に存在したことを判定できない以上更に証拠によつて本件四票が開票当時存在した事実が立証せられない限り、原告の当選決定の効力を左右することはできないものといわねばならぬ。そしてこのような解釈は正確性と迅速性との両原則の調和を目的とする公職選挙法の法構造からも、是認せらるべきものである。本件選挙においては前示(三)の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の各事実の存在により本件四票が、開票当時存在しなかつたことが推認し得るのにかかわらず、本件四票が開票当時存在した事実を明らかにしないままに被告が原告に対する当選決定の公定力をくつがえし本件裁決に及んだのは原告の当選決定の適正の推定を無視したものであつて、違法である。

よつて、本件裁決の取消を求めるため、本訴請求に及んだのである。

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として次の通り述べた。

原告主張事実中(一)(二)は認めるが、その他の点は否認する。

(一)  本件選挙においては、甲山町役場の書記が兼ねて臨時に選挙事務の補助者に任せられ、連日選挙事務に忙殺された後、開票当日には午前六時頃から投票場につめ、終日事務に携わり引続いて午後七時から開票をなしうす暗い電燈の下で見難い鉛筆書きの投票千八百七十七枚をより分けたのであるから、開票事務従事者は疲労こんぱいして視力の衰えた状態で投票を整理したことは明らかである。元来「かたやま」と「たかやま」とは観念的に混同し易く、心理的に錯誤に陥りやすい語音である。従つて、精神的にも肉体的にも疲労こんぱいしていた本件選挙の補助者が投票の整理に際して錯覚により本件四票を原告の投票中に混入整理することは、容易に起り得べき過誤であつて、特に奇異なこととは思われない。そして、このような整理された得票は、その票数と候補者の氏名を記載した表紙をつけて綴込まれ、一見して誰の得票であるかが判明する状態において選挙長及び開票立会人のもとに廻され点検されるのであるが、立会人等は選挙事務に経験のない農業者や商業者であつて、多数の観覧者が押しかけて結果の発表を待つておる会場において時間に迫られているのであるから、右立会人等が同様の視覚、観念の錯誤に陥り、本件四票の混入を発見しなかつたとしても、当然のことである。また、補助参加人は昭和三十年五月五日本件選挙につき甲山町選挙管理委員会に異議の申立をしたのであるがその主な理由は、開票に際し無効とせられた「穂運加輸美津戸志」と記載された投票が有効票であるという点にあつたので、同委員会は右投票を中心として調査したものであつて、全投票を精密に調査する必要もなく、かかる調査をしたとは考えられない。従つて同委員会が、右調査に当り、異議の理由となつていなかつた本件四票の存在に気付かなかつたとしても不思議ではない。

(二)  原告の得票中には、本件四票の外に原告の姓高山のみを片仮名で記載したもの六票、平仮名で記載したもの七票があり、片山昭二候補者の得票中に片山の姓のみを片仮名で記載したものが一票ある。本件四票の文字を比較検討すれば、それぞれ相違していて同一人の筆跡とは認め難く、本件四票が同一人により事後に偽造せられたものであるとの、原告の主張には何等の根拠もない。

(三)  本件選挙終了後、前記委員会の書記迫田秀雄は、使い残りの投票用紙が後日悪用されてはいけないと考えて同年五月七日頃投票用紙の残票を全部焼却しその際誤つて投票用紙の精算書も一緒に焼却してしまつたものである。しかし、この焼却の事実から、本件四票が偽造せられ、原告の有効得票と差し替えられたものであると推論することは許されない。本件選挙の投票は、包装せられて糊づけられた上厳重に封印して保管せられており、同年五月二十一日、同月二十四日及び同年七月十三日にそれぞれ開封せられた際いずれも封印に異状がなかつたのであるから、原告の得票を差し替えるというような不正行為の行われ得る余地はなかつたのである。

(四)  行政行為が公定力を有することは原告の主張する通りである。従つて、被告委員会のなしたに本件裁決は行政行為として公定力を有し、一応適法になされたものであるとの推定を受けるのであるから、本件裁決の取消を求める原告において、本件裁決の違法であることすなわちその主張の如く本件四票が不正行為により混入せしめられたものであることを立証すべき責任がある。

(立証省略)

理由

原告が昭和三十年四月三十日執行せられた広島県世羅郡甲山町町議会議員の一般選挙(以下本件選挙と略称する)について立候補をし、得票数百四十票で当選し、現に甲山町町議会議員として在任していること、本件選挙における立候補者たる補助参加人本川光利が同年五月五日甲山町選挙管理委員会に対し原告の当選を無効とすべき旨異議申立をなし、同月二十四日同委員会において右異議申立を棄却する旨の決定を受けるや、更に同年六月二日被告委員会に対し訴願を提起したところ、被告委員会が同年七月二十六日附で「昭和三十年五月二十四日世羅郡甲山町選挙管理委員会のなした決定は取消す、当選人原告高山和一の当選を無効とする」旨の本件裁決をなし、それが同日告示せられたこと、並びに本件裁決によれば、原告の当選を無効とする理由が、原告の得票中に「カタヤマ」と記載せられたもの一票、「かたやま」と記載されたもの三票合計四票(以下本件四票と略称する)が混入しているところ、本件四票は本件選挙の立候補者片山昭二の得票とすべきものであつて、これを原告に対する投票とすることはできないから、原告の得票数は百三十六票となり、最下位の当選者たる補助参加人本川光利の得票数は百三十九票であつて、原告の当選は無効であるというにあることは、当事者間に争がない。

原告は、本件四票は開票当時存在しなかつたものである旨主張するのでこの点について判断する。

検証の結果(第一、二回)によれば、原告の得票百四十票中に本件四票が現に存在することは明らかである。成立に争のない甲第八号証、乙第一号証の一から八まで、乙第二、第三号証、証人福田学、三谷満雄、和泉谷秀夫、橋本卓治、米田幸寿、重藤角雄、二反田訓二、坂本貫治の各証言によれば、本件選挙に際し甲山町第一選挙区選挙会は甲山町甲山小学校講堂において午後七時より開かれ、開票事務従事者約十二名の手によつて開票及び投票の計算が行われ、選挙長坂本貫治及び選挙立会人和泉谷秀夫外六名により千八百七十七票の投票の点検がなされ、原告外六名の当選が決定され、同日午後九時十分頃閉会せられたこと並びに右開票及び点検に際し何人も本件四票の存在を認識していなかつたことを認めることができる。しかしながら、成立に争のない乙第一号証の二、証人が橋本卓治、米田幸寿、二反田訓二、迫田秀雄、土井寿人、本川光利の各証言、検証の結果(第一、二回)並びに弁論の全趣旨を綜合すれば、右開票事務従事者等は本件選挙当日午前七時前より投票事務に従事し、引続き午後七時より開票事務に従事したものであつて、開票当時には心身共に疲労していたこと、選挙立会人等は主として自己を立会人として屈出でた候補者の投票を特に注意して点検したが、他の候補者の投票については開票事務従事者或は他の立会人のなした検票を信頼して十分の注意を払つて点検をしなかつたこと、原告の得票中には「タカヤマ」と記載したもの六票、「たかやま」と記載したもの七票、「たかやまわいち」と記載したもの一票、「タカ山わ一」と記載したもの一票、「タカ山」と記載したもの一票が存在していることを認め得る。右の事実と「かたやま」「カタヤマ」と「たかやま」「タカヤマ」とは視覚的に混同し易く、また心理的に錯誤に陥りやすい類似の語音であることとをあわせて考えれば、開票当時開票事務従事者が誤まつて本件四票を原告の得票中に混入せしめ、選挙長及び立会人等がその混入に気付かなかつたということが、経験則上不可能な事実であるとは認められない。甲第一、第二、第三号証、甲第七号証の一から八までの各記載及び証人福田学、三谷満雄、和泉谷秀夫、重藤角雄、坂本貫治の各証言中前記認定に反する部分は容易に信用できない。

次に、証人森寿雄、坂本貫治、秦武吉、迫田秀雄の各証言によれば、補助参加人本川光利より同年五月五日甲山町選挙管理委員会に対し本件選挙につき異議の申立があつたので、同委員会委員長森寿穂及び委員坂本貫治、秦武吉の三名は同月二十一日及び二十四日の二回に亘り甲山町第一選挙区の投票全部を調査したことを認め得る。しかしながら、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認め得る乙第四号証、成立に争のない乙第五号証、証人坂本貫治、秦武吉、迫田秀雄、野利本義雄、吉岡福馬の各証言を綜合すれば本件選挙において訴外京光覚一及び原告は各得票百四十票で当選し、補助参加人は得票数百三十九票で次点となり落選したので、補助参加人はその異議申立の理由として(一)「多加山」と記載された投票を原告の有効得票と認めながら「穂運加輸美津戸志」と記載された投票を無効としたのは違法であること、(二)「ミシ」と記載された投票を三次精一の有効投票として決定せられているが、それは補助参加人本川光利の得票とも考え得ること、(三)他の候補者の得票中にも多数の不明瞭な投票及び他事記入の無効票が存在すること、(四)開票に際し公正に反する行為の行われたこと等を主張したのであるが、右異議の主たる争点は開票に際し無効とせられた「穂運加輸美津戸志」票の効力に在つたので、同委員会の調査の主眼は右投票の効力を如何に判定するかに置かれていたものでありこれと併行して「多可屋満」と記載された投票、「ミシ」と記載された投票及び「ナヨ」という他事記載のある補助参加人の得票の各効力等について審理せられたこと、従つて、本件四票の存在は右調査に際し注意力の盲点となり看過せられる可能性のあつたこと並びに同年五月二十四日の調査の際には単に投票の枚数をあらためて調査したのに止まることを認めることができ証人森寿穂、坂本貫治、秦武吉の各証言中右認定に反する部分は右各証人が甲山町選挙管理委員会委員としての自己の職責を忠実に果したことを誇張せんとしてなされたものと推測せられ、弁論の全趣旨に照して容易に信用し難い。しからば、甲山町選挙管理委員会が前記二回の調査に際し、本件四票の存在に気付かなかつたことが経験則に反する不可能事であると断定することはできない。

次に、成立に争のない甲第四、第八号証、証人森寿穂、信実叔二、信実正夫の各証言並びに検証の結果(第一回)によれば、本件選挙の投票及び関係書類は、甲山町役場の倉庫内の木製金庫に保管せられていたが、その倉庫は何人でも自由に近付き得る位置にあり且つその戸締りも不完全であり、しかも右金庫の鍵の保管も必ずしも十全になされていなかつたこと並びに投票は袋に入れ、その封じ目を糊づけにしそこに印を押されていたものであることを認め得る。しかし、証人森寿穂、木谷良臣、迫田秀雄の各証言によれば、同年五月二十一日甲山町選挙管理委員会が投票を検査するために、投票を封入した袋を開いた際、同年七月十一日投票を封入した袋を同委員会より被告委員会に交付した際、並びに同年七月十三日被告委員会において検票した際、いずれも投票を封入した袋の封印に異状の存しなかつた事実を認め得るのみならず、被告委員会における検票以上に、何人かが本件選挙の投票を封入した袋を勝手に持出し、それを破つたという事実を認めしめるに足る何等の証拠も存在しない。

次に、成立に争のない乙第三号証、証人迫田秀雄の証言によれば甲山町役場の書記として専ら同町選挙管理委員会の事務を担当していた迫田秀雄は、本件選挙後同年五月二、三日頃独断でひそかに本件選挙に使用せられた残りの投票用紙及びその精算に関する書類を焼却したことを認めることができ、証人小島敏之、土井寿人の各証言によつても、右認定を左右し難い、その結果、本件選挙後に使用残りの投票用紙が不正に使用せられたか否かの事実を使用残りの投票用紙及び精算書類によつて証明することが不可能となつたことは明らかであるが、迫田秀雄が果して如何なる意図を以てこれを焼却したかを窮明し得る何等の資料も存在しないのであるから、右焼却の事実から直ちに本件四票が事後に偽造せられた事実を推測することは許されない。また検証の結果(第一、二回)によつても、本件四票が同一人の筆跡であることを確認し難く、他に本件四票が偽造にかかるものであることを認めるに足る証拠は存在しない。

しからば、以上に認定した諸事情の存在にかかわらず、なお本件四票が不正に偽造せられたものであつて開票当時存在しなかつた事実を確認することができないのであるから、現に存在する本件四票は、開票当時から原告の得票中に混入していたものと認めざるを得ない。

原告を当選人と決定した甲山町第一選挙区選挙会の決定は広義の行政行為であつて、公定力を有し適法性の推定を受けることは明らかである。しかし、右決定に対し適法な異議が申立てられ、或はその異議に対する決定に対し訴願のなされた場合にその異議或は訴願を審査する甲山町選挙管理委員会或は被告広島県選挙管理委員会に対する関係に於ては、右選挙会の決定は適法性の推定を受けるものとは解し難い。いわんや、原告に対し如何なる投票が何票存在したかということは客観的な事実であるから、選挙会において原告の当選の決定がなされたからといつて、選挙会の決定通りに原告の得票が存在したとの事実上の推定がなされるものではない。従つて現に原告の得票中に本件四票が存在する以上、反対の事実の証明のない限り、開票当時においても本件四票が原告の得票中に存在していたものと推定するのが当然の事理であるから、被告のなした本件裁決には原告が請求原因(四)において主張する如き違法は認められない。原告は、現に存在する本件四票が開票当時存在しなかつた事実を理由として、本件裁決を争うのであるから、右事実につき原告が立証責任を負担することは明らかであるといわねばならぬ。しかるに、右の事実が証明できないことは、以上に認定した通りであるから、被告委員会のした本件裁決は相当であつて、これが取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却すべきものである。

よつて訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 植山日二 佐伯欽治 松本冬樹)

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