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広島高等裁判所 平成7年(行コ)3号 判決 1997年9月12日

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、昭和六三年一月二三日付でした三宅一郎にかかる昭和五九年分以降の所得税の青色申告の承認の取消処分を取り消す。

3  被控訴人が、昭和六三年二月一五日付でした三宅一郎にかかる原判決別紙処分目録記載の各処分を取り消す。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、、訂正、削除するほかは、原判決事実摘示に記載するとおりであるから、これを引用する。

一  原判決三枚目裏二行目、三行目の「請求の趣旨に記載のとおり、」を削る。

二  同五枚目表二行目の「同月六日」の後に読点を加え、同五行目の「同石本ら」を「右石本ら」と改める。

三  同六枚目裏六行目の「同係官は」の後に「隆に対し」を加え、同行目の「石本らに退席を」を「石本らを退席させるように」と改める。

四  同八枚目表九行目の「青色申告承認申請の却下事由及び」を、同一〇行目、一一行目(編往・同六行目)の「及び右各規定」をそれぞれ削る。

五  同九枚目裏六行目の「同月一一日、同年一二月一四日」を「同年一二月一一日、同月一四日」と改める。

六  同一〇枚目裏八行目の「類似同業者は、」の後に「広島県の各税務所管内の個人・法人で、」を加える。

七  同一一枚目表六行目の「継続」を「係属」と改める。

八  同一二枚目表三行目の「同様である。」の後に「ただし、類似同業者の売上原価率及び所得率の平均値は、原判決別表三記載のものである。」を、同裏二行目の「同様である。」の後に「ただし、類似同業者の売上原価率及び所得率の平均値は、原判決別表四記載のものである。」をそれぞれ加える。

九  同一三枚目表一〇行目の末尾に「同(二)、(三)の事実は争う。」を加え、同裏七行目の「求めたのである」を「求めたのであり、一郎は、右調査を拒否したのでもなければ、帳簿提示の意思がないことを表明したのでもない。また、係官の訪問時間は、いずれもニ、三分の短時間であった」と改める。

一〇  同一五枚目表六行目の「争う。」の後に「推計が許されるとしても、最適の推計方法を選択しなければならないのであり、本件の場合には、一郎の係争年分に先立つ数年間の平均所得率を用いて調査時の総収入額を乗じて課税所得金額を算出する本人比率法が選択されなければならない。また、」を加える。

一一  同一六枚目裏一行目の次に行を改めて次のとおり加える。

また、法一五〇条一項一号に定める取消事由は、帳簿書類の備付け等の不存在であるところ、異議申立て又は審査請求時に初めて課税庁に提示された帳簿書類であっても、すでにこれが処分時に存在していたとみなされる場合には、青色申告承認取消処分は違法となる。そして、本件においては、本件青色承認取消処分時に帳簿書類が存在していたから、右取消事由には該当せず、右処分は違法である。

一二  同一七枚目表二行目の次に行を改めて次のとおり加える。

また、本件において、被控訴人の係官が、民商事務局員らの立会を拒否したのは、税務当局の民商に対する敵視政策によるものであり、本件税務調査手続には、結社の自由、思想信条の自由を侵害した違法があり、これによりされた本件青色承認取消処分と、これに基づく本件課税処分等は違法である。

一三  同一八枚目表七行目の「場合には」の後に「、当該事実が」を、同裏一行目の末尾に「厳格な守秘義務を課せられている税務職員としては、納税者等の秘密が外部に漏れないようにするための措置を施さなければならず、納税者等の秘密保護の見地から、社会通念上相当な限度において第三者の立会いを拒否する等の措置をとることができるのである。」を、同二行目の「本件青色申告承認取消通知書」の後に「の「取り消しの起因となった事実」欄」を、同七行目の「了知し得る」の後に「から、右処分の理由附記に不備はない」を、同一一行目の「主張は」の後に「、本件青色承認取消処分の理由である注一五〇条一項一号の要件とは関連がないものであり、」をそれぞれ加える。

第三証拠

本件記録中の原審及び当審証拠関係目録記載のとおりである。

理由

一  理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判注の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一九枚目表六行目の「広島南税務署長」を「被控訴人」と改め、同裏九行目の「この」から同一〇行目の「そして」までを削り、同一〇行目の「法一五〇条一項一号は、」の後に「納税義務者の帳簿書類の備付け、記録又は保存が正しく行われているとともに、」を加え、同一一行目の「法二三四条」から同二〇枚目表一行目の「記録等」までを「、帳簿書類の備付け等」と改める。

2  同二〇枚目表一行目、二行目の「確認出来ることを当然の前提としている」を「確認できることがその前提とされている」と改め、同三行目の「納税義務者が」の後に「、帳簿書類の備付け、記録又は保存を正しく行っていたとしても、税務当局においてこの点の確認ができない場合にまで青色申告承認の特典を与えることは、青色申告承認制度の趣旨に反するものというべきである。してみると、法一四八条一項の定める帳簿書類の備付け、記録又は保存の義務は、税務職員の税務調査に応じて帳簿書類を提示する義務をも含んでいるものと解すべきであり、右納税義務者が、」を加え、同行目、四行目の「提示して右確認のための調査に応じること」を「提示すること」と、同五行目の「保存が正しく行われていた」を「保存を正しく行っていた」と、同六行目の「税務当局が」から同七行目の「適当ではなく」までを「その者には、注一四八条一項所定の義務の違反があることになり」と、同一〇行目の「ものではない」を「ものではなく、帳簿書類の不提示を取消事由とすることが租税注律主義に反するものではない」と、同裏二行目この「なお」を「ところで」と、同三行目の「べきである」を「べきであり、質問検査に応じないことと右取消事由とは無関係である」と、同四行目の「同確認は」から同六行目の終わりまでを「当該納税義務者が税務当局の質問検査に応ぜず、帳簿書類を提示しないため、税務当局が帳簿書類の備付け等を確認できないときには、右青色申告承認の取消事由に該当することになるのであり、控訴人らの右主張は理由がない。また、控訴人らは、本件青色承認取消処分時に帳簿書類が存在していたから、右取消事由には該当しないと主張するが、帳簿書類の不提示が右取消事由となることは、前記のとおりであり、控訴人らの右主張もまた理由がない。」とそれぞれ改める。

3  同二一枚目表二行目の冒頭に項目の「1」を加え、同一一行目の次に行を改めて次のとおり加える。

2 ところで、法一五〇条二項は、税務署長が青色申告承認の取消処分をする場合には、その処分通知書に、その取消しの処分の基因となった事実が同条一項各号のいずれに該当するかを附記しなければならないと規定しているが、その趣旨は、青色申告承認の取消しが、納税上の特典を剥奪する不利益処分であることから、処分庁の判断の慎重と公正妥当性を担保してその恣意を抑制するとともに、取消理由を相手方に知らせることにより不服申立に便宜を与えることを目的とするものと解される。

そうであれば、附記の内容及びその程度は、どのような事実関係に基づいて、どの法規を適用して処分がされたのかを、処分の相手方においてその記載自体から了知し得る程度に特定して記載しなければならず、また、税務署長は、青色申告承認取消処分の取消訴訟において、処分通知書に附記された取消理由と実質的に同一性のある限度において、その取消理由を主張することができると解するのが相当である。

4  同二一枚目裏一行目の「右事実によれば」の前に「本件についてこれをみるに、」を加え、同二行目の「一連の同一の調査であり」を「同一の目的の下にされた一連の調査であり、その調査方法も係争年分の帳簿の提示を求めるという同一の態様によるものであるから」と、同三行目、四行目の「同一の事実」を「、同一の調査の下における一連の事実」とそれぞれ改め、同四行目の「ものである。」の後に「そうすると、」を、同七行目の「帳簿」の後に「書類」をそれぞれ加える。

5  同二二枚目表二行目の「したがって、」の後に「右の観点に照らし、右三日間の日における帳簿書類の不提示の事実と、右のそれ以外の日における右帳簿書類の不提示の事実とは、同一の調査の下における一連の事実として一体的に評価されるべきものであるから、」を加え、同行目、三行目の「べきであり」から同四行目の終わりまでを「べきである。」と改め、同七行目の<証拠略>の前に<証拠略>を加える。

6  同二三枚目表一行目の「考えて」の後に「、本店を兼ねた」を、同八行目、九行目の「右係官らは」の後に「係争年分の」をそれぞれ加え、同裏一行目の「述べたが」を「述べ、隆に対し、右石本ら第三者を退席させるように求めたが、隆はこれに応せず」と、同三行目の「提示されない以上」を「提示されず、また、これ以上引き続いて説得をすることは困難であると判断し」とそれぞれ改める。

7  同二四枚目表三行目、四行目の「杉田係官は中原統括官から」を「中原統括官は杉田係官に対し、」と、同五行目の「受けていたが」から同七行目の終わりまでを「していた。」と、同裏三行目の「聞き」から同四行目の「承諾した」までを「伝えられた。そして、由美子が隆に電話をして、隆を呼び寄せた。長谷川係官は、右電話連絡で一郎宅を訪れた隆に対し、隆が帳簿の記載内容についてわかるのであれば、隆が一郎の代わりとして調査に協力するように求めたところ、隆は、これを承諾する旨を答えた」とそれぞれ改め、同五行目の「右9記載」から同六行目の「座卓のある」までを削り、同七行目の「案内した。」の後に「右居間には、予め帳簿が一冊置かれていた。」を加え、同行目の「右9記載の」を削り、同八行目の「甲田らに対し同席しない」を「隆に対し、守秘義務に触れることが考えられるとして、甲田らを退席させる」と改める。

8  同二五枚目表一行目の「内容について」を「内容が不明であり、右記載内容を理解するためには、」と、同二行目の「として」から同三行目の「同様に」までを「などとして」とそれぞれ改め、同裏三行目の「なったので、」の後に「同係官は、これ以上調査を続けることは困難であると判断し、」を、同五行目の<証拠略>の後に<証拠略>をそれぞれ加える。

9  同二六枚目表二行目の「右認定事実」から同四行目の「いえるか」までを「そこで、本件青色承認取消処分に被控訴人の主張にかかる法一五〇条一項一号の取消事由が存するか」と改め、同五行目の初めから同二八枚目表一行目の終わりまでを次のとおり改める。

1 右認定事実によれば、被控訴人所部係官らは、昭和六二年九月二四日から同年一二月一六日までの臨場調査の際に、一郎及びその対応を任されていた隆らに対し、係争年分の帳簿書類の提示を求めたが、一郎及び隆らは、帳簿書類は民商に預けてあるから民商で見て欲しいと述べるなどして、これを提示せず、また、このうち同年一〇月六日の臨場調査の際には、右係官らは、隆らからの調査理由の開示の求めに対して、係争年分の所得税の申告内容の確認であるとの回答をしたにもかかわらず、隆らは、さらに具体的な理由が示されなければ帳簿書類は見せないなどと述べて帳簿書類の提示を拒み、また、隆らは、第三者の立会いがなければ見せないと述べるなとし、右係官らが隆に民商会員ら第三者を退席させるように求めたのに対しても、隆は、これを拒むなどして、右調査に応じなかったのである。さらに、同年一二月二三日の臨場調査の際には、一郎宅の二階には、帳簿一冊が置かれていたが、これに立ち会った民商事務局員らが、帳簿を調査する時間を三〇分という短時間に限ったりし、また、右係官が隆に帳簿の内容等についての確認等を求めたのに対し、右質問等を遮るなどして、これを妨害し、隆もまた右妨害を放置し、このため、右係官は、右帳簿の調査を行うことができなかったのである。

そうすると、被控訴人所部係官らは、昭和六二年九月二四日から同年一二月二三日までの臨場調査の際に、一郎の本件係争年分の帳簿書類を調査すべく、社会通念上相当な程度の努力を払ったにもかかわらず、一郎側は、右帳簿書類を提示しなかったものというべきである。

10  同二八枚目表二行目の項目の「六」を「2」と改め、同行目の「原告らは」の前に「これに対し、」を加え、同三行目の「であったと主張するが」を「であり、一郎は、かかる違法な調査に対しては、帳簿等を提示する義務はないと主張するが、そもそも、税務職員は、所得税の調査について必要があるときは、納税者に対し、質問し、その事業に関する帳簿書類を検査することができ、右調査の範囲、程度、方法等実定法上特段の定めのない実施の細目については、社会通念上相当な限度にとどまる限り、税務職員の合理的な選択に委ねられていると解すべきところ、」と、同六行目、七行目の「実施時期等は、法律上一律の要件とされているものではなく、」を「実施時期等についても、右のとおり」と、同七行目、八行目の「委ねられており」を「委ねられているのである(なお、第三者の立会いを認めるか否かについては、税務職員には、守秘義務が課されている(法二四三条)ところ、税務職員の把握した納税者等の秘密が容易に外部に漏れるような状況下では、税務職員の正当な職務行為の遂行ができないことからすれば、税務職員が、税務調査において第三者の立会いを認めるか否かについても、当該税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解すべきである。)。そして」とそれぞれ改め、同一〇行目の次に行を改めて次のとおり加える。

また、控訴人らは、本件において、被控訴人所部係官らが、民商事務局員らの立会を拒否したのは、税務当局の民商に対する敵視政策によるものであると主張するが、<証拠略>をもってしても右主張事実を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。したがって、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。

11  同二八枚目表一一行目の項目の「七」を「3」と改め、同裏七行目の末尾に「したがって、これらの点に関する控訴人らの主張はいずれも理由がない。」を加え、同八行目の項目の「八」を「4」と、同行目の「提示して」から同九行目の「応じる」までを「提示する」と、同一〇行目の「右確認」を「被控訴人において右帳簿書類が正しく記録等されているかの確認」とそれぞれ改め、同一一行目の「問うまでもなく、」の後に「法一五〇条一項一号による」を加える。

12  同二九枚目表二行目の項目の「九」を「六」と改め、同四行目の「前記税務調査」の前に「法一五六条の推計の方法による課税が許されるのは、納税者が信頼できる帳簿その他の資料を備え付けておらず、課税庁の調査に対して資料の提供を拒むなどの非協力的な態度をとる等のため、課税庁において、その所得の実額を把握することができない場合に限られるものと解すぺきであるところ、」を加え、同五行目の「提示して」を「提示せず、」と改め、同六行目の「ため、」の後に「被控訴人は、」を、同一一行目の<証拠略>の後に<証拠略>を、同行目の<証拠略>の後に<証拠略>をそれぞれ加え、同裏一行目の「認められ、」を「認められる。」と改め、同行目の「原告らも」から同三行目の「いないので、」までを削る。

13  同三一枚目表四行目の「守秘義務」の後に「(法二四三条)」を、同九行目の「類似同業者C」の後に「(原処分庁の選定した類似同業者Aと対応する。)」を、同一〇行目の「所得金額」の前に「算出」を、同一一行目の「類似同業者D」の後に「(原処分庁の選定した類似同業者Bと対応する。)」を、同裏一行目の「所得金額」の前に「算出」を、同二行目の「差異がある」の後に「(右別表記載の類似同業者Dの算出所得金額の方が少ない。)」をそれぞれ加え、同行目、三行目の「右Dの所得金額」から同八行目の終わりまでを「前記広島国税局長の通達によれば、「算出所得金額」欄には、「売上金額」欄の金額から「売上原価の額」欄の金額及び「一般経費」欄の金額を差し引いた残額を記載することとされているところ、原処分庁が類似同業者を選定するにあたり、一般経費としてどのような金額を計上したのか明らかではないものの、右算出の過程において何らかの相違があったであろうことが推認でき、また、双方の算出所得金額の差異も、さほど大きいものではないことからすると、右金額に差異があることをもって、右類似同業者の実在を疑わせるものとまでは認められない。したがって、控訴人らの右主張は理由がない。」と改め、同裏一〇行目の「ならない」の後に「スーパー内の」を、同一一行目の「四業者は」の後に「スーパー内の」をそれぞれ加える。

14  同三二枚目表一行目の「主張するが、」の後に「類似同業者の平均値により納税者の所得金額を推計する場合には、業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は無視し得るのであるから、右同業者が業種、業態及び事業規模等において納税者である一郎の営業と類似しており、これを推計の基礎とすべき要件に欠けるところがない以上、納税者の個別的営業条件のいかんは、それが当該平均値による推計自体を全く不合理ならしめる程度の顕著なものでない限り、これを斟酌することを要しないものと解すべきである。そして、本件においてこれをみるに、」を加え、同三行目の「当該」を「控訴人らの主張にかかる」と改め、同六行目の「仮に」の後に「スーパー内に」を加え、同七行目の「類似同業者」から同一〇行目の終わりまでを削り、同一一行目の次に行を改めて次のとおり加える。

さらに、控訴人らは、推計が許されるとしても、最適の推計方法を選択しなければならないのであり、本件の場合には、一郎の係争年分に先立つ数年間の平均所得率を用いて調査時の総収入額を乗じて課税所得金額を算出する本人比率法が選択されるべきであると主張する。

しかしながら、そもそも推計課税は、課税標準を実額で把握することが困難な場合に、税負担の公平の観点から、実額課税に代わるものとして、合理的な推計の方法で課税標準を算定できることとしたものであり、右推計の結果が真実の所得と合致している必要はなく、その推計方法も一応の合理性があれば足り、真実の所得を算定し得る最も合理的なものである必要はないものと解すべきである。したがって、控訴人らの右主張は、主張自体が失当というべきである。

しかも、被控訴人のした類似同業者の平均売上原価率及び平均算出所得率による一郎の係争年分の所得金額の推計方法に合理性があることは、前記認定のとおりである。これに対し、本人比率に関し、控訴人三宅隆は<証拠略>で、一郎本人の確定申告にかかる所得金額を基にした原価率(売上金額に対する原価の割合)は、昭和五六年度から平成元年度まで減少傾向にあるものの、その平均原価率は七一・一パーセントであるのに、前記広島国税局長の通達による類似同業者の平均原価率は六六・八パーセントとなるから不当であると供述する。しかしながら、本人比率は、その納税者本人の一定期間の実績による比率等を用いるものであるから、右比率の算定の基礎となる各年分の所得金額は客観的な取引事実に照らして正確に算定されたものでなければならないところ、本件全証拠によるも、右各年分の所得金額の算定が正確なものであると認めるに足りない。そうすると、被控訴人の行った類似同業者の平均売上原価率等による推計方法よりも、控訴人らの主張する本人比率法の方が、より合理的なものであると認めることはできない。したがって、いずれにせよ、控訴人らの右主張は理由がない。

15  同三二枚目裏一〇行目の「右事業所得金額に」の後に「被控訴人主張の」を加える。

16  同三三枚目表八行目の「存在しない」を「存在するとは認められない」と改める。

二  以上によれば、控訴人らの本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきであって、これと同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、九三条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 寺本榮一 金子順一 亀田廣美)

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