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広島地方裁判所呉支部 昭和59年(む)70号 決定 1984年10月17日

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

一  本件準抗告の申立の趣旨及び理由は、要するに前記被疑事件について勾留の理由又は勾留の必要性がなく、前記勾留取消請求却下の裁判には不服であるので、その取消を求めるというにある。

二  よつて案ずるに、本件記録によれば、被疑者は昭和五九年一〇月六日頭書被疑事件により勾留され、以後右勾留が継続しているところ、被疑者よりなされた勾留取消請求に対し、同月一二日原裁判官が右勾留取消請求却下の裁判をしたことが認められ、被疑者が本件罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることは、一件記録により明らかである。

三  そこで、さらに進んで現時点における被疑者の罪証隠滅のおそれの点について判断するに、関係記録によれば、本件事案の概要は、被疑者において日本国有鉄道(以下国鉄という)の所有、管理にかかる呉線吉浦、天応駅間の旧落走トンネルの一部を自らあるいはその依頼した工事関係者に命じて掘削損壊し、右掘削工事を制止しようとした国鉄職員の公務の執行を妨害し、同職員に暴行を加えて加療約一か月間を要する傷害を負わせたというものであるところ、右各所為間相互に密接な関連性があるうえ、その背景事情及びその所為態様について複雑な点の存することが窺われるし、右に関する被疑者の弁明と国鉄関係者の供述にもかなりのくい違いのあることが認められ、被疑者がその依頼した工事関係者等と接触すれば、容易に工事過程における被疑者の言動等について通謀することが可能であり、本件事案の経緯及び罪質に加えて、被疑者が本件に関する行為の一部や犯意等について否認していることをも考慮すると、被疑者には罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるものといわざるをえず、勾留の必要性も十分に肯認しうるところである。

四  そうすると、その余について判断するまでもなく、本件勾留取消請求を却下した原裁判は相当であり、本件準抗告の申立は理由がないから、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

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