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岡山地方裁判所倉敷支部 昭和57年(ワ)212号 判決 1986年8月25日

原告

花本延子

ほか一名

被告

福田繁豊

ほか三名

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、各自、原告花本延子に対し、一八一二万八二一二円及びこれに対する昭和五九年一一月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を、原告花本基志に対し、九六八万四〇五七円及びこれに対する昭和五九年一一月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告ら共通)

1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

(被告福田)

3 仮執行免脱の宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

花本宏(以下「宏」という)は次の事故によつて死亡した(以下「本件事故」という)。

(一) 日時 昭和五六年三月三日午後五時一〇分ころ

(二) 場所 岡山県倉敷市玉島一七一四番地の一先市道

(三) 車両

(1) 甲車 普通乗用自動車(岡三三な五六四八号)

運転者 被告福田繁豊(以下「被告福田」という)

(2) 乙車 足踏自転車

運転者 宏

(四) 事故の態様 右市道の西側歩道上を北進中の乙車に南進中の甲車が運転を誤り歩道に乗りあげて衝突

(五) 結果 乙車運転の宏が右大腿骨開放骨折、骨盤骨折、右仙腸関節脱臼、右膝内側側副靱帯損傷、頭部打撲傷、出血性シヨツクの傷害を負い、同月一三日入院先の救急病院で死亡

2  被告らの責任

(一) 被告福田 民法七〇九条

同被告は本件事故時安全運転義務違反の過失によつて本件事故を発生させた。

(二) 被告橋本俊夫 自賠法三条

同被告は甲車を所有し、被告福田をして、同車を自己のため運行の用に供していた。

(三) 被告株式会社岡本モータース(以下「被告岡本モータース」という) 自賠法三条

同被告は甲車を所有し、被告福田をして同車を自己のため運行の用に供していた。

(四) 被告中桐茂 自賠法三条

同被告は甲車を所有し、被告福田をして、同車を自己のため運行の用に供していた。

3  損害

(一) 宏分

(1) 入院期間中の慰藉料 一三万二〇〇〇円

宏は死亡までの一一日間極度の重傷として入院したのでその間の精神的苦痛を慰藉するのは一か月三六万円の割合による一一日分が相当である。

(2) 逸失利益

イ 宏は死亡当時満五二歳であつた。

ロ 収入

宏は、本件事故当時東海メンテナンス株式会社に電気機器技術工として勤務し、給料賞与等の総所得一か月平均一六万九八二一円を得ていた者であるが、同人の右所得は同人の年齢と技術の割合に反し著しく低額であり、同年齢の一般産業勤労所得者の平均賃金に比し甚だしく少額であり、著しく権衡を失するので、昭和五六年賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者平均賃金(五〇ないし五四歳)三七万三〇〇〇円をもつてその得るべき月収とすべきである。

ハ 稼働年数 満五二歳から満六七歳まで一五年間

ニ 控除すべき生活費 宏は生計を支える一家の世帯主であるから三〇パーセント

ホ したがつて宏の逸失利益の現価を新ホフマン式(係数一〇・九八〇八)により算出すると三四四〇万五六六九円となる。(円未満切捨)

(3) 原告らの相続

原告延子は宏の妻、原告基志は宏の子であるから宏に生じた損害三四五三万七六六九円について二分の一の一七二六万八八三四円ずつを相続した。

(二) 原告延子分

(1) 治療関係費

<1> 治療費 一〇万四〇九五円

<2> 付添費 三万三〇〇〇円

一日三〇〇〇円の割合による一一日分

<3> 入院中雑費 七七〇〇円

一日七〇〇円の割合による一一日分

(2) 葬儀費用 一一七万五六〇〇円

葬式費用一〇九万五六〇〇円、位牌代八万円の合計一一七万五六〇〇円を支出した。

(3) 文書料 二万三七六〇円

診断書、事故証明書、戸籍謄本等本件事故に関し提出を必要とする文書の作成交付料として合計二万三七六〇円を支出した。

(4) 慰藉料 一〇〇〇万円

原告延子は、宏と昭和三六年一一月一日婚姻し、昭和三九年に原告基志をもうけ、二〇年間宏と生活の苦労をともにしてきたが、宏に何らの過失のない本件事故により、一家の生活の支柱を失つたもので、これがため同原告の蒙る精神的苦痛は極めて大きく、これを慰藉するには一〇〇〇万円が相当である。

(5) 弁護士費用 二一〇万円

原告延子は、被告らが原告らの請求に対し任意に支払おうとしないので止むなく弁護士に依頼して本訴提起に至ったが本訴提起に際し原告ら訴訟代理人に対し手数料として損害額の約一割に当たる二一〇万円を支払うことを約した。

(三) 原告基志分

慰藉料 五〇〇万円

原告基志は、宏の唯一人の子であり、本件事故当時いまだ未成年であつたから、父親の愛情に満ちた保護や将来の設計等を必要としたところ、本件事故によりその全てを失うに至つたもので、これがため同原告が蒙る精神的苦痛は甚大であり、これを慰藉するには五〇〇万円が相当である。

4  損害の填補

原告らは自賠責保険から二〇一六万九五五五円及び被告福田から五〇〇万円を受領し、各二分の一ずつ(一二五八万四七七七円)各自の損害に填補した。

5  よつて、本件損害賠償金として被告ら各自に対し、

(一) 原告延子は、3の(一)、(二)の損害金合計三〇七一万二九八九円から既に支払を受けた一二五八万四七七七円を控除した一八一二万八二一二円及びこれに対する各被告に対し本件訴状が送達された日の後である昭和五九年一一月六日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払

(二) 原告基志は3の(一)、(三)の損害金合計二二二六万八八三四円から既に支払を受けた一二五八万四七七七円を控除した九六八万四〇五七円及びこれに対する各被告に対し本件訴状が送達された日の後である昭和五九年一一月六日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払

をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

(被告福田)

1 請求原因1、2(一)の各事実は認める。

2 同3のうち(一)(2)の点は否認する。逸失利益は宏が現に得ていた収入を基礎に算定されるべきである。その余の点は不知。

(被告橋本及び同被告補助参加人)

1 請求原因2(二)の事実は否認する。

被告橋本は、本件事故前の昭和五六年二月一五日、甲車を中古車の販売業者である被告岡本モータースに売却して引き渡していた。それ以降、同被告は甲車の運行についての支配力を失つていて運行供用者でないから、本件事故による自賠法三条の責任を負わない。

2 同1、3の各事実は不知。

(被告岡本モータース)

1 請求原因2(三)の事実は否認する。

被告岡本モータースは、昭和五六年二月二四日ころ被告中桐に対し、甲車を売却し、同年三月一日に納車引渡を行い、車の鍵を渡した。それ以降は、被告中桐が甲車を自己の所有管理車両として支配使用していた。そして被告中桐は、友人の被告福田に黙示にしろ貸与までしているのであるから試乗の段階程度を超えているものである。

したがつて、被告岡本モータースは本件事故当時甲車の運行支配、運行利益がないので、本件事故による自賠法三条の責任を負わない。

2 同1、3の各事実は不知。

(被告中桐)

1 請求原因2(四)の事実は否認する。

甲車は本件事故当時、被告岡本モータースの所有及び運行の用に供されていたものである。被告中桐は被告岡本モータースから一時試乗のため甲車を借り受けていたにすぎない。しかも、被告福田は被告中桐に無断で、被告岡本モータース営業所に置いてあつたエンジン・キーのついた甲車を乗り去つたものである。

したがつて、被告中桐は本件事故当時、甲車の運行供用者ではないので、本件事故による自賠法三条の責任を負わない。

2 同1の事実は不知。

3 同3の事実は否認する。

三  抗弁(被告福田)

原告らに対し、本件事故の損害賠償の填補として次のとおり合計三一六六万〇三二三円が支払われた。

1  自賠責保険 二〇一七万二四九五円

2  被告福田支払金 五一二万九〇九五円

(一) 死亡見舞金 五〇〇万円

(二) 入院中の諸雑費等 一二万九〇九五円

3  労災保険(昭和六一年四月分まで) 六三五万八七三三円

(一) 遺族特別支給金 三〇〇万円

(二) 遺族年金 一六一万七〇八四円

(三) 遺族特別年金 八八万九六四九円

(四) 遺族就学援護費 八五万二〇〇〇円

四  抗弁に対する認否

抗弁事実のうち1、2(一)、3の各事実は認め、2(二)の点は不知。

第三証拠

本件記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  事故の発生

請求原因1の事実は、原告らと被告福田との間では争いがなく、被告橋本、被告岡本モータース、被告中桐との間においても、原告らと被告橋本、被告岡本モータースとの間で成立に争いがなく、被告中桐との間では弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一ないし第四号証、原告花本延子本人尋問の結果によればこれを認めることができる。

二  責任

1  被告福田

被告福田が安全運転義務違反の過失によつて本件事故を惹起したことは、原告らと被告福田間で争いがない。

したがつて、被告福田は民法七〇九条によつて、原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

2  被告橋本、被告岡本モータース、被告中桐

原告らは本件事故について、被告橋本、被告岡本モータース、被告中桐のいずれもが事故を起こした被告福田運転の甲車を所有しているから、本件事故に対する自賠法三条の運行供用者責任があると主張するので、検討する。

(一)  成立に争いのない丙第二号証、丁第一号証、証人岡本繁の証言により成立が認められる丙第一号証、証人岡本繁の証言、被告橋本俊夫、同中桐茂各被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、<1>被告橋本は甲車を所有していたが、昭和五六年二月一五日ごろ、友人を介して自動車販売業者たる被告岡本モータースに代金一一四万円で売却して、同社の従業員である大塚規矩司に甲車を引き渡し、同時に名義書替に必要な書類一式も引き渡したこと、そしてそれ以降は被告橋本が甲車を使用することはなかつたこと、<2>次いで被告岡本モータースは同年三月一日ごろ、被告中桐に代金一二八万円(その他名義書替費用等の諸経費一二万円)、同月一七日に支払うとの約束で売却し、同月一日、被告岡本モータースの営業所で、被告中桐に引き渡したこと、それ以降は被告中桐が専ら自己のために利用支配していたこと、しかしながら登録名義は変更されないまま被告橋本名義で放置されていたこと、<3>そして、被告中桐は、被告福田とかねてから親交があつて、本件甲車を貸借する間柄にあつたものであるが、本件事故当日の午後五時ころ、一時的に使用する目的で貸与を申し込まれたので、自己の勤務先近くの空地に鍵を付けて置いていた甲車を被告福田に貸与したところ、被告福田が運転開始後間もなく本件事故を惹起したものであること、以上の各事実が認められ右認定に反する証拠はない。

(二)  右認定した事実からすれば、被告橋本の甲車の所有名義は形式的なものであつて、被告橋本、被告岡本モータースはいずれも本件事故当時甲車を所有していたものではなく、甲車の運行利益、運行支配は既に被告中桐に移つていたのであるから甲車の運行供用者とは認められない。

しかし、前記経緯からすれば被告中桐は甲車の所有者であり、甲車を友人の被告福田に貸与しているが、貸与していてもなお、その運行に対する支配を失わず、かつ、その運行による利益を有していたものと認めるべきであつて、甲車の運行供用者と認められる。

(三)  したがつて、被告中桐は、自賠法三条に基づき、原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

三  損害

そこで、次に、被告福田、被告中桐との関係でのみ損害の点について判断する。

1  宏分について 一五六六万四一〇二円

(一)  入院期間中の慰藉料

前記一で認定したように宏は、本件事故で入院し一一日後に死亡するに至つたものであり、本件では原告ら近親者において宏の死亡による慰藉料を請求しているのであるから、右入院治療の経過は死亡により受けた精神的苦痛(近親者の固有の慰藉料であるか相続したそれであるかは問わない)を算定する際の一事情として考慮すれば足りるものというべきである。

よつて、宏の入院期間中の慰藉料請求は理由がない。

(二)  逸失利益

(1) 稼働可能期間

前掲甲第四号証、原告花本延子本人尋問の結果成立の認められる甲第五号証及び同本人尋問の結果によれば、宏は本件事故当時満五二歳(昭和三年一一月一七日生)の健康体の男子であり、東海メンテナンス株式会社に電気器械の修理保全工として勤務していたことが認められる。

このことに厚生省発表の生命表を勘案すれば、宏は本件事故に遭わないとすれば、少なくとも満六七歳までの一五年間に亘り稼働可能であると認めるのが相当である。

(2) 収入

本件事故当時宏の得ていた給与は前掲甲第五号証によれば月額一六万九八二一円(年額二〇三万七八五六円)であることが認められる。

ところで、原告は、昭和五六年の賃金センサスによる第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者平均賃金(五〇ないし五四歳)の月額三七万三〇〇〇円をもつて宏の得べき収入である旨主張する。

しかしながら、証人難波一彦の証言によれば、宏は昭和九年ころ、勤務先の倒産により東海電機株式会社(後に合併により東海メンテナンス株式会社と商号変更)に電気器械の修理保全工として再就職したものであるから、その年齢及び技術面を考慮してもなお低い賃金額にならざるを得なかつたこと、将来、同人に対して、昇給等による収入の増加が予想されるものの、なおその増額、昇給の実現時期、回数及び率については基準がなく未だ具体的確実な見通しが立てられていないことが認められ、右認定事実からすると宏が確実に前記平均賃金額程度の収入の増加を得たであろうことを推認することはできないというべきである。そして、その他に宏が賃金センサスによる平均賃金額を得られる蓋然性を認めるに足りる証拠は本件にはない。

そうすると、原告らの平均賃金額を基準とする主張は理由がなく、宏の得べき収入は、その全稼働期間を通じて前記認定の本件事故前に現に得ていた収入年額二〇三万七八五六円を下回らないものを得られたと認めるのが相当である。

(3) 生活費の控除

逸失利益算定に際し控除すべき宏の生活費は、同人が事故当時一家の生計を支える世帯主であることからすれば、その得べき収入額の三〇パーセントとするのが相当である。

(4) 中間利息控除

宏の得べかりし収入の現価を求めるための中間利息の控除の算式としては年五分の割合による年別ホフマン方式によるのが相当であり、同人の稼働期間は一五年であるからその係数は一〇・九八〇八である。

(5) 以上によれば、宏の本件事故当時の逸失利益は、次式のとおり一五六六万四一〇二円(円未満切捨、以下同様とする)となる。

2,037,856×(1-0.3)×10,9808=15,664,102

(三) 相続

原告花本延子本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告延子が宏の妻、原告基志が宏の子であることが認められるので、原告らは、宏の死亡によつてその取得した損害賠償請求権を決定相続分にしたがつて、各二分の一に当る七八三万二〇五一円を相続したものということができる。

2  原告延子分について 一〇九六万八五五五円

(一)  治療関係費 一四万四七九五円

(1) 治療費

成立に争いのない乙第一号証、原告花本延子本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、宏は本件事故直後玉島第一病院へ救急車で搬送され翌三月四日まで手当を受け、次いで同日から同月一三日まで川崎医科大学附属病院で手当を受けたので、同原告において右各病院に対しその費用として合計一〇万四〇九五円を出捐したことが認められる。

(2) 付添費

前掲甲第二、第三号証及び原告花本延子本人尋問の結果によれば、宏の入院期間中、重傷で医師の指示により付添看護を必要とし、原告延子が付添つたことが認められる。

このことからすると、原告延子は付添費として右入院期間一一日間につき一日当り三〇〇〇円の割合による合計三万三〇〇〇円の損害を受けたものと認めるのが相当である。

(3) 入院雑費

前記認定したとおり、宏は一一日間入院したが、その間の入院雑費としては一日当り七〇〇円を要したものと認めるのが相当である。

したがつて、原告延子が出捐した入院雑費は合計七七〇〇円である。

(二)  葬儀関係費等 八〇万円

原告花本延子本人尋問の結果成立の認められる甲第六ないし第二三号証及び同本人尋問の結果によれば、原告花本延子は宏の葬儀をなし、仏具を購入して少なくともその主張する一一七万五六〇〇円を出捐したことが認められ、宏の年齢、家族構成の事情を併せれば、葬儀費用(仏具購入費用を含む)としては八〇万円が相当な損害と認められる。

(三)  文書料 二万三七六〇円

原告花本延子本人尋問の結果成立の認められる甲第二四ないし第三五号証(なお原告らと被告福田との間ではその成立に争いがない)及び同本人尋問の結果によれば、原告延子は本件事故に関し診断書等文書の作成交付料として少なくともその主張する二万三七六〇円を下らない支出をしたことが認められる。

(四)  慰藉料 一〇〇〇万円

原告花本延子本人尋問の結果に弁論の全趣旨を併せれば、原告延子は二〇年余に亘つて婚姻生活を送つてきた夫である宏を失つたことが認められ、これに本件事故の態様その他本件諸般の事情を勘案すると同原告の精神的苦痛に対する慰藉料は一〇〇〇万円と認めるのが相当である。

3  原告基志分について 五〇〇万円

原告花本延子本人尋問の結果に弁論の全趣旨を併せれば、原告基志は父である宏を未だ未成年の時に失い、父親の愛情に満ちた保護や将来の生活設計の支援を全て失うに至つたことが認められ、これに本件事故の態様その他諸般の事情を勘案すると、同原告の精神的苦痛に対する慰藉料は五〇〇万円と認めるのが相当である。

4  以上によれば、本件事故によつて損害賠償請求し得べき金額は、原告延子が右1、2の合計一八八〇万〇六〇六円であり、原告基志が、1、3の合計一二八三万二〇五一円である。

四  賠償額の有無

1  損害の填補

(一)  抗弁1、2(一)、3の各事実は当事者間で争いがなく、同2(二)の事実は当事者間で成立に争いのない乙第二号証の一、二、第三号証並びに弁論の全趣旨によればこれを認めることができる。

(二)  したがつて、本件事故による損害に対して合計三一六六万〇三二三円が支払われたことになるので、前記三で認定した損害(合計三一六三万二六五七円)はすべて填補されているものということになる。

2  弁護士費用

前記のとおり、被告福田、被告中桐が原告らに対し賠償すべき三認定の損害はすべて填補されており、原告らは本訴においてこれを請求することは許されないのであるから、本訴追行のための弁護士費用は本件事故と相当因果関係ある損害と認めることはできない。

五  結論

以上のとおりであるから、原告らの被告らに対する請求は理由がないのでこれをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 安藤裕子)

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