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岡山地方裁判所 平成7年(ワ)1314号 判決 1998年10月20日

原告

甲野太郎

右訴訟代理人弁護士

村本道夫

東松文雄

奈良輝久

被告

とまた農業協同組合

右代表者代表理事

田口哲郎

被告

岡山県農業共済組合連合会

右代表者理事

山崎公民

被告

日動火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

江頭郁生

相原隆

被告三名訴訟代理人弁護士

和田朝治

被告日動火災海上保険株式会社訴訟代理人弁護士

高崎尚志

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

本件は、原告が、平成七年二月八日発生した火災(以下「本件火災」という。)による原告所有の別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)及び原告所有の家財(以下「本件家財」という。)の焼失及び損壊に関し、被告らとの間でそれぞれ締結ないし成立した建物更生共済契約若しくは建物火災共済関係又は住宅総合保険契約に基づき、

1  被告とまた農業協同組合(以下「被告とまた農協」という。)に対し、共済金二一四九万九五一六円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年一〇月八日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を、

2  被告岡山県農業共済組合連合会(以下「被告県農業共済」という。)に対し、共済金一九〇八万五一〇三円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年一〇月一〇日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を、

3  被告日動火災海上保険株式会社(以下「被告日動火災」という。)に対し、保険金二七〇〇万〇〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年一〇月一〇日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を

それぞれ支払うことを求めるものである。

第二  事案の概要

一  争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実

Ⅰ  請求原因関係

1 (当事者)

(一) 原告は、平成七年二月八日本件火災が発生した当時、本件建物を所有し、これに居住していた者である。

(二) 被告とまた農協は、農業協同組合法(昭和二二年法律第一三二号)に基づき共済に関する施設及びこれに附帯する事業等を行うことを目的とする法人であり、平成七年四月三日鏡野町農業協同組合、富村農業協同組合、奥津町農業協同組合、上斎原村農業協同組合及び美作加茂農業協同組合(以下「旧美作加茂農協」という。)の合併により設立されたものである。

(三) 被告県農業共済は、農業災害補償法(昭和二二年法律第一八五号)に基づき組合員である農業共済組合及び同組合に代わって共済事業を行う市町村がその行う共済事業によって組合員又は共済事業を行う市町村との間に当該共済事業に係る共済関係の存する者に対して負う共済責任を相互に保険する事業を行うことを目的とする都道府県区域単位の法人である。

(四) 被告日動火災は、火災等の保険及びその再保険を対象とする事業を営むこと等を目的とする株式会社である。

2 (原告と被告ら間の共済契約の締結、共済関係の成立及び保険契約の締結)

(一) 原告は、旧美作加茂農協との間に、①平成三年九月五日に被共済者原告、共済の目的本件建物、共済期間同年九月五日から三〇年間、火災共済金の額二五〇〇万〇〇〇〇円、共済掛金年額一六万七五〇〇円とする建物更生共済契約を、②平成五年七月二六日に被共済者原告、共済の目的本件家財、共済期間同年七月二六日から三〇年間、火災共済金の額一〇〇〇万〇〇〇〇円、共済掛金月額六三〇〇円とする建物更生共済契約をそれぞれ締結した(以下、右の各建物更生共済契約を「本件(一)の各共済契約)という。)。ただし、後者は、前者の締結時に併せて締結した建物更生共済契約における火災共済金の額五〇〇万〇〇〇〇円を増額した内容により新規契約の形式で締結したものである。

(乙第一及び第二号証)

(二) 原告が、平成六年三月二二日、岡山県苫田郡加茂町(以下「加茂町」という。)の行う建物火災共済事業に加入したことにより、原告と被告県農業共済との間に、被共済者原告、共済の目的本件建物及び本件家財、共済期間平成六年三月三一日から一二か月間、火災共済金の額本件建物につき二二〇〇万〇〇〇〇円、本件家財につき五〇〇万〇〇〇〇円、共済掛金三万〇五一〇円を内容とする建物火災共済関係(以下「本件(二)の共済関係)という。)が成立した。

なお、本件(二)の共済関係は、平成三年九月三〇日に成立した共済関係を年度末毎に更新したものである。

(乙第四号証の一及び二)

(三) 原告は、被告日動火災との間に、平成六年一二月二六日、被保険者原告、保険の目的本件建物及び本件家財、保険期間平成六年一二月二六日から平成七年一二月二六日まで、火災保険金額本件建物につき二〇〇〇万円、本件家財につき五〇〇万円、保険料四万八五〇〇円、価額協定保険特約建物新価二〇〇〇万円一〇〇パーセント、家財新価五〇〇万円一〇〇パーセントを内容とする住宅総合保険(以下「本件(三)の保険契約)という。)を締結した。

(乙第六号証)

3 (共済金及び保険金の支払額に関する約款の内容)

(一) 本件(一)の各共済契約に適用される建物更生共済契約約款では、共済期間に火災によって共済の目的である建物に損害が生じた場合に支払われる火災共済金の額は、火災共済金額が共済価額の八〇パーセント以上であるときは、損害の額(ただし、火災共済金額を限度とする。)とされ、火災共済金額が共済価額の八〇パーセント未満であるときは、損害の額に火災共済金額を共済価額の八〇パーセントに相当する額で除して得た比率を乗じて得た額(ただし、火災共済金額を限度とする。)とされている。この場合、損害の額は、共済契約の区分に応じ、新価共済契約(共済の目的が住宅用建物であって、その建物のその時における残存価額の割合(時価額の再取得価額に対する割合をいう。)が五〇パーセント以上である共済契約をいう。)にあっては、建物を復旧するために要する額をいい、時価共済契約(共済の目的が住宅用建物であって、その建物のその時における残存価額の割合(時価額の再取得価額に対する割合をいう。)が五〇パーセント未満であるもの、住宅用以外の建物、及び動産である共済契約をいう。)にあっては、建物につき建物を復旧するために要する額に残存価額の割合を乗じて得た額、動産のうち償却固定資産につき修繕費の額(共済の目的が滅失したとき又は修繕費の額が共済価額を超えるときは、共済価額)、及び動産のうち家財につき損害を受けた物の修繕費の額(その物が滅失したとき又はその物の修繕費の額がその物の時価額を超えるときは時価額)であるとされている。なお、復旧するために要する額とは、共済の目的である建物を損害発生前におけるその建物と同一建物に復旧するために要する費用(その額が再取得価額を超えるときは、再取得価額とする。)をいい、共済価額とは、共済契約の区分に応じ、新価共済契約にあっては再取得価額をいい、時価共済契約にあっては時価額をいうとされている。また、火災共済金が支払われる場合に共済の目的の残存物の取片付けに要する費用(取壊し費用、取片付け清掃費用及び搬出費用をいう。)を填補するために支払われる残存物取片付け費用共済金の額は、その費用額(ただし、火災共済金の額の一〇パーセントを限度とする。)であるとされている。

そして、火災共済金の額は、火災による損害を填補する他の共済契約又は保険契約がある場合にあっては、この共済契約と重複する共済契約における火災共済金の額及び保険契約における火災保険金の額との合計額が損害の額(重複する共済契約又は保険契約にこの共済契約の損害の額を算出する基準と異なるものがあるときはそれぞれの基準により算出した損害の額のうち最も高い額)を超えるときは、この共済契約によって支払う火災共済金の額は、損害の額にこの共済契約における火災共済金の額と重複する共済契約における火災共済金の額及び保険契約における火災保険金の額の合計額に対するこの共済契約における火災共済金の額の割合を乗じて得た金額とするとされている。残存物取片付け費用共済金の額についても、同様である。

(甲第二一号証、乙第三号証)

(二) 本件(二)の共済関係の共済関係に適用される建物火災共済約款では、共済期間中に火災によって共済の目的に損害が生じた場合、この共済関係によって支払う火災共済金の額は、火災共済金額が共済価額の八〇パーセント以上であるときは、損害の額(ただし、火災共済金額を限度とする。)とされ、火災共済金額が共済価額の八〇パーセント未満であるときは、損害の額に火災共済金額を共済価額の八〇パーセントに相当する額で除して得た比率を乗じて得た額(ただし、火災共済金額を限度とする。)とされている。この場合、損害の額は、共済の目的のうち、居住の用に供されている建物であって、その減価割合(再取得価額から共済価額を差し引いて得た額の再取得価額に対する割合)が一〇〇分の五〇以下であるものについては、その損害が生じた地及び時における再取得価額によって、家財については、共済価額によって、それぞれ定めるものとされている。なお、共済価額とは、その損害が生じた地及び時における共済の目的の価額をいうとされている。また、火災共済金が支払われる場合に併せて支払われる残存物取片付け費用共済金の額は、その費用額(ただし、火災共済金の額の一〇パーセントを限度とする。)であるとされている。

火災による損害を填補する他の共済契約又は保険契約がある場合に支払われる火災共済金の額は、前記(一)と同じ方式に従い算出した額とされている。

(乙第五号証)

(三) 本件(三)の保険契約に適用される住宅総合保険普通保険約款では、保険期間中に火災によって保険の目的に損害が生じたときに損害保険金として支払われる損害の額は、保険価額(その損害が生じた地及び時における保険契約の目的の価額をいう。)によって定まるが、価額協定保険特約のある保険契約の場合は、保険金額を限度とし、新価額である再調達価額(保険の目的と同一の構造、質、用途、規模、型、能力のものを再築又は再取得するために要する額である。)によって定まるとされている。また、損害保険金が支払われる場合に併せて支払われる残存物取片付け費用保険金の額は、その費用額(ただし、損害保険金の額の一〇パーセントを限度とする。)であるとされる。

(乙第七号証)

4 (共済事故・保険事故の発生)

平成七年二月八日午後一〇時四五分ころ覚知された本件建物からの出火により本件建物が全焼し、本件家財が損壊(焼損及び水損)した。

(乙第二九号証)

Ⅱ  抗弁関係

1 (故意又は重大な過失による共済事故・保険事故発生の場合における免責に関する約款の内容)

本件(一)の各共済契約に適用される建物更生契約約款では、共済契約者又は被共済者の故意又は重大な過失によって生じた損害については共済金を支払わない旨規定されている。本件(二)の共済関係に適用される建物火災共済約款にも同趣旨の条項がある。本件(三)の保険契約に適用される住宅総合保険普通保険約款にも同趣旨の条項がある。

2 (告知義務及び通知義務と義務違反の場合の解除に関する約款の内容)

(一) 本件(一)の各共済契約に適用される建物更生約款では、共済契約者が共済契約申込書の記載事項で共済事業を行う者の危険の測定に関係のあるものについて故意又は重大な過失によって重要な事実を告げなかったとき又はその事項について事実でないことを告げたときは、共済事業を行う者は、共済契約を解除することができる旨規定され、また、共済契約者又は被共済者は、共済契約成立後、共済の目的についてさらに火災等又は自然災害による損害を填補する共済契約又は保険契約を締結するときは、共済事業を行う者に対しあらかじめ書面で通知し、又は事後直ちに書面で通知することを要し、これに違反した場合は、共済事業を行う者は、将来に向かって共済契約を解除することができる旨規定されている。

(二) 同様に、本件(二)の共済関係に適用される建物火災共済約款でも、共済関係成立の当時、建物共済申込書の記載事項について加入者が故意若しくは重大な過失によって事実を告げず又は不実のことを告げたときは、共済事業を行う者は、共済関係を解除することができる旨規定され、また、共済関係の成立後、共済の目的について他の保険者又は共済事業を行う者と契約を締結した場合には、加入者はその事実の発生がその責めに帰すべき事由によるときはあらかじめ、この責めに帰することができない事由によるときはその発生を知った後遅滞なく、その旨を共済事業を行う者に通知することを要し、これに違反した場合は、共済事業を行う者は、共済関係を解除することができる旨規定されている。

(三) 同様に、本件(三)の保険契約に適用される住宅総合保険普通保険約款でも、保険契約締結の当時、保険契約者又はその代理人が故意又は重大な過失によって、保険契約申込書の記載事項について、知っている事実を告げず又は不実のことを告げたときは、保険者は、保険証券記載の保険契約者の住所にあてて発する書面による通知をもって保険契約を解除することができる旨規定されている。

3 (被告らによる解除の意思表示)

被告らは、原告に対し、本件(一)の各共済契約の締結、本件(二)の共済関係の加入及び本件(三)の保険契約の締結に関し、原告の故意又は重過失による告知義務違反又は通知義務違反があったとして、平成七年三月二日付け内容証明郵便をもってそれぞれ共済契約、共済関係及び保険契約を解除する旨の意思表示をなし、同内容証明郵便は、同月四日原告に到達した。

(甲第一号証)

二  争点

本件の争点は、

Ⅰ[請求原因関係]

原告が本件火災によって受けた損害及びこれに対して支払われるべき共済金及び保険金の額が以下のとおりであるか否か、

(一)  建物及び家財の時価及び再調達額等

ア 建物

時価額 四八七二万〇〇〇〇円

再取得価額・再調達価額

五〇七五万〇〇〇〇円

残存物取片付け費用

一五〇万〇〇〇〇円

イ 家財

時価額 五四〇万四八〇〇円

再調達価額 六〇〇万〇〇〇〇円

残存物取片付け費用

五〇万〇〇〇〇円

(二)  共済金及び保険金の額

(1) 被告とまた農協が支払うべき共済金の額

ア 火災共済金

本件建物 一八九三万六五六七円

本件家財 一八九万六二八三円

イ 残存物取片付け費用共済金

本件建物 五〇万〇〇〇〇円

本件家財 一六万六六六六円

ウ 合計 二一四九万九五一六円

(2) 被告県農業共済が支払うべき共済金の額

ア 火災共済金

本件建物 一六六六万四一七九円

本件家財 一七五万四二五八円

イ 残存物取片付け費用共済金

本件建物 五〇万〇〇〇〇円

本件家財 一六万六六六六円

ウ 合計 一九〇八万五一〇三円

(3) 被告日動火災が支払うべき保険金の額

ア 損害保険金

本件建物 二〇〇〇万〇〇〇〇円

本件家財 五〇〇万〇〇〇〇円

イ 残存物取片付け費用保険金

本件建物 一五〇万〇〇〇〇円

本件家財 五〇万〇〇〇〇円

ウ 合計 二七〇〇万〇〇〇〇円

Ⅱ[抗弁関係]

1 本件火災が原告の故意又は重過失によって発生したものであるため、被告らには共済金及び保険金の支払義務がないか否か(すなわち、被告らは、火災の発生状況、原告の火災歴、生活状況及び負債等の状況、さらには共済及び保険の加入の経緯などを総合すると、原告が共済金及び保険金の取得を目的に故意に火災を生じさせたものであり、そうでないとしても、重大な過失によって火災を生じさせたものであると認められるから、約款の免責条項に従い共済金及び保険金の支払義務がないと主張し、これに対し、原告は、右主張を裏付けるものはないとして、これを争うものである。)、

2 共済及び保険の加入に際して原告に告知義務違反及び通知義務違反があったことにより被告らには共済金及び保険金の支払義務がないか否か(すなわち、被告らは、被告とまた農協との関係では、被告県農業共済、住友海上火災保険株式会社(以下「住友海上」という。)及び被告日動火災との間の共済及び保険の加入について通知義務違反があったこと、被告県農業共済との関係では、被告とまた農協との間の共済の加入について告知義務違反があったこと及び住友海上及び被告日動火災との間の保険の加入について通知義務違反があったこと、被告日動火災との関係では、被告とまた農協、被告県農業共済及び住友海上との間の共済及び保険の加入について告知義務違反があったことを主張し、これに対し、原告は、被告とまた農協の関係では、約款の規定上解除に遡及効がないため共済金の支払いを拒絶する理由に当たらないとして解除の効力を争い、被告県農業共済の関係では、平成三年二月一三日に発生した火災の際にも共済契約に加入していたが、そのときから告知義務や通知義務について全く知らされておらず、原告に不告知及び不通知につき悪意がないから、告知義務及び通知義務違反を理由に解除するのは権利濫用に当たるとして解除の効力を争い、被告日動火災の関係では、被告とまた農協及び被告県農業共済については原告において告知しているし、住友海上については原告が保険契約締結に関与しておらず、告知しようにも告知しえないものであるため、告知義務違反に当たらないとして解除の効力を争うものである。)、

の各点である。

第三  争点に対する判断

一  本件事案の内容にかんがみ、抗弁関係における主要な争点(原告の故意又は重過失による火災の発生を理由とする免責)から、以下判断する。

1  本件火災発生に至る状況について、甲第七号証の一(採用しない部分を除く。)及び二(いずれも原告本人の尋問結果により成立を認める。)、第九号証、第一〇号証(採用しない部分を除く。)、第一八号証、乙第二二ないし第二四号証、第二六号証(弁論の全趣旨により成立を認める。)、第二九号証(証人守河正人の証言により成立を認める。)、第四五号証、第四八号証、証人岸部弘行及び同神﨑高司の各証言、原告本人の尋問結果(採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告は、平成五年半ばころから徳島県阿南市福井町内に産業廃棄物処理施設の設置を計画していた安東寿雄の依頼を受けてその手伝い仕事をしており、平成七年二月当時も、一〇日か一週間に一回くらいの割合で徳島県下へ出かけて二、三日同人と行動をともにし、手伝い仕事が終われば岡山県苫田郡加茂町にある自宅に帰るけれども、ほとんどは津山市内の麻雀店に出掛け、終日麻雀をするという生活を繰り返しており、本人火災が発生した同月八日の直前も、徳島から自宅に帰ると、同月五日から同月八日まで同市内にある麻雀店「チョンボ塾」へ行っては麻雀仲間と麻雀をして遊び、前夜である同月七日夜には徹夜で麻雀をした。原告は、前記安東から同月八日午前八時ころ同麻雀店に掛けられた電話で産業廃棄物処理施設の設置のために行っていた事前協議がようやく終了する運びとなったのに伴い翌九日地権者に祝い物を配る手伝いをしてほしい旨依頼されたことから、同日午後九時ころ自宅を出て翌日午前〇時三〇分ころまでに徳島に入り、睡眠をとった上、当日の地権者回りに備えるべく予定したが、同月八日は夕刻まで同麻雀店で麻雀を続けた。

(2) そして、原告は、午後七時半過ぎころになって着替えをするために自宅に帰ることにしたが、このとき一緒に麻雀をしていた麻雀仲間の一人である岸部弘行(以下「岸部」という。)に原告宅まで同行するように依頼し、同人に原告宅まで原告所有の自動車を運転してもらった。両名が原告宅に着いたのは午後八時ころであったが、原告は、帰宅すると、早速、一階北東角の台所から一階北西角の和室六畳間へ椅子を持って行き、反射板式開放型の石油ストーブの間近に置いて洗濯物を椅子に掛けて(原告は、背もたれに作業ズボンを、座面に下着を、脚部に靴下をそれぞれ掛けたと述べる。)、同石油ストーブに点火し、その燃焼熱で洗濯物を乾燥させるとともに、石油ストーブ横に敷いてあった布団の中で三〇分程度仮眠をとった。他方、岸部も、玄関に近い一階南東角の和室八畳間に入り、一時間程度仮眠をとった(その際、同人は、原告にファンヒーターかこたつかに火を点けてもらったと述べる。)。原告は、洗濯物の乾燥に当たって、原告が本人尋問で述べるところによると(甲第一〇号証も同じ。)、最も近いところで石油ストーブの前面から二、三〇センチメートルの至近距離に椅子を置いてこれに衣類を掛ける方法を採った(なお、乙第二九号証によると、原告は、保険調査員に対して石油ストーブの前面から五、六〇センチメートル離して椅子を置いたと述べているが、証人神﨑高司の証言によれば、右の距離であるとすると火災発生までの時間が本件において要したとみられる時間よりもさらに多く要するはずであるというのであり、乙第四五号証に記載された燃焼中の石油ストーブによる着火実験データを併せて考慮するならば、椅子と石油ストーブの距離関係は、右のとおりであったと認めるのが相当である。)。仮眠後、両名は、遅くとも午後九時前には原告宅を出て自動車で前記麻雀店に向かったが、原告は、出掛けるに当たって和室六畳間で燃焼中の石油ストーブの消火をしなかった。その後同日午後一〇時四五分ころになって原告宅の隣人が自動車で帰宅途中に通行車両の運転手から知らされて本件建物の火災に気づき、直ちに一一九番通報をしたが、数分後に消防車両が到着した時点で、既に屋根部分が焼け落ちる状況にあり、その後全焼し、同日午後一一時二五分ころ鎮火した。

(3) 原告と岸部は、前記麻雀店に到着すると、同所で別れ、同人は、その夜同麻雀店に泊まったが、原告は、当初はそのまま徳島に向かう予定であったところ、同夜岡山市内で宿泊した。原告は、翌九日の午前八時ころ岡山市から徳島へ向かったが、その途中の午前一〇時三〇分ころ徳島県下の小松島の辺りで岡山県内に放送局のある山陽放送のラジオニュースで自宅が火災に遭ったことを知って、岡山県下に引き返し、津山警察署に出頭した。警察では、本件火災の捜査を行っているが、進捗を見ないまま今日に至っている。

右の認定事実に関し、原告は、その本人尋問において、岸部に麻雀店から自宅まで同行してもらい、約一時間後に同人を自宅から麻雀店に送ることになった経緯について、原告自身疲れていて自動車の運転をするのがしんどかったため同行してもらったものであり、併せて同人にはこれまでに何度か徳島まで自動車を運転してもらったことがあったので、場合によっては今回も徳島まで車を運転してもらえるかもしれないと考えたためであると述べ、また、原告が石油ストーブの火を消さないまま自宅を出た理由について、和室六畳間で二、三〇分程度石油ストーブの傍らに敷いてあった布団で仮眠をとっていたとき、トイレに立ったが、やはり目覚めた同人から「ここでうとうとしとったら寝てしまうから、送ってもらえんか」と声を掛けられ、同人が仮眠をとっていた和室八畳間に入ったとき、同人から重ねて「早う返るかなあ」と言われ、自分も徳島へ行かなければならないこともあって、同人が仕事道具を積んだ自動車を置いてある麻雀店まで同人を送ることにし、自動車は自分で運転した、自宅を出るとき、同人からせかされたので、すぐ出かけなければと慌ててしまい、石油ストーブの燃焼熱で洗濯物を乾燥中であることを失念して出かけてしまったと述べる。これに対し、証人岸部弘行は、その証言において、原告から麻雀店で「ちょっと出ようや」と声を掛けられ、麻雀店外に出たが、体がしんどいから運転してほしいと依頼されたため、自動車を運転して原告を原告宅まで送ることになったものであり、原告宅に向かう途中原告から徳島へ同行するように求められたが、翌日は仕事があるため断った、同人は、原告宅に着くとすぐに和室八畳間に入って約一時間くらい仮眠をとったところで目覚め、奥の部屋にいたらしい原告に向かって「このままじゃったら寝てしまうけえ、ちょっと送ってくれや」と声を掛けたところ、同室に入って来た原告が「そんなら、いぬるか」と応じてくれたため、原告よりも先に屋外に出て自動車のエンジンを始動させて待ち、原告が乗ると、自動車を運転して麻雀店に戻った、原告宅では原告の行動を一切見ていないと述べる一方で、原告の述べるように同人が早く送ってもらいたいと原告をせかしたか否かについて何ら述べるところがない。

2  原告の火災歴と共済及び保険の加入の経緯について、争いのない事実に加え、甲第六号証(弁論の全趣旨により成立を認める。)、第一〇号証(採用しない部分を除く。)、乙第一号証、第二号証、第四号証の一及び二、第六号証、第一〇号証、第一一号証の一及び二、第一七号証、第一八号証、第一九号証の一及び二(いずれも弁論の全趣旨により成立を認める。)、第二〇号証、第二七号証(証人森数弘行の証言により成立を認める。)、第二九号証、第三三号証の一ないし六、第五〇号証、第五一号証、第五二ないし第五五号証(いずれも弁論の全趣旨により成立を認める。)、証人森数弘行の証言、原告本人の尋問結果(採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告が本件建物を建築する以前に所有していた建物(苫田郡加茂町大字公郷字下森一七二一番地四所在、木造瓦葺二階建居宅、一階124.61平方メートル、二階34.18平方メートル)(昭和五五年四月二三日新築)は、平成三年二月一三日、火災により全焼した。この火災は、当時、原告の妻であった花子(現氏森岡)が右建物の一室で鴨居に吊るした洗濯物をその下に置いた反射板式石油ストーブの燃焼熱で乾燥中に家人全員がそのことを忘れて出かけてしまった留守中に発生したものであり、本件火災と極めて類似した出火態様による火災であった。原告は、右火災により当時旧美作加茂農協から共済金三二〇〇万〇〇〇〇円、被告県農業共済連から共済金二七五四万五〇〇〇円、安田火災海上保険株式会社から保険金二二九〇万〇〇〇〇円、合計八二四四万五〇〇〇円を取得した。その結果、原告は、家財の標準損害金額一〇〇〇万〇〇〇〇円(夫婦及び子一人の家庭の場合)を差し引くと、建物につき七二四四万五〇〇〇円の共済金及び保険金を取得したものであるが、建物の床面積が合計158.79平方メートルであるからすると、坪当たりの建築費の額に換算して約一五〇万円の共済金及び保険金を取得したこととなり、その共済及び保険は、当時の一般住宅の場合における平均建築費を大幅に上回る超過共済・保険関係にあった。

(2) 原告は、右の共済金及び保険金を受け取った後、同じ敷地に平成三年一二月ころまでに本件建物の建築を完了した。そして、本件(一)の各共済契約については、本件建物の場合、先の火災の際に旧美作加茂農協の建物更生共済に加入していた関係上、原告の妻花子が同農協の岡田至弘から平成三年六月ころ勧誘を受けて同年九月五日に締結したものであり、本件家財の場合、その後平成五年七月に入って共済加入推進期間中に原告が同農協の仁木美鈴から勧誘を受けて同年七月二六日に締結したものであった。また、本件(二)の共済関係についても、同じく本件建物の建築が進められていた時期が被告県農業共済連による共済加入推進期間中であったことから、原告が加茂町役場の共済業務を担当していた岡田実千代から勧誘を受け、同年九月三〇日に加入したものであり、以後毎年更新がなされてきたものである。

(3) ところが、本件(三)の保険契約については、原告から被告日動火災に進んで申し込み、締結されたものであった。すなわち、原告は、平成六年一二月二六日午前九時から九時三〇分ころ、被告日動火災の岡山支店津山支社に電話をして、応対した森数弘行に建物の火災保険に加入したい旨申し入れ、同支社へ出向く旨述べたのに対し、同人から出向く旨知らされると、待ち合わせ時間を同日午前一〇時三〇分、待ち合わせ場所を東津山にあるカー用品店「オートバックス」前の電話ボックス付近と指定し、同人と待ち合わせた上、隣のスーパーマーケット「イーストランド」二階にある喫茶店で話を進めた。原告は、森数弘行に対し、建物の築年数、床面積を説明した後、他に共済及び保険に加入していないことを前提とする価額協定保険に建物二〇〇〇万円くらいなら加入できるかと尋ね、家財についても五〇〇万円で加入できるかと尋ね、同人から原告の述べた建物の築年数、床面積や年齢、家族構成からみていずれも可能である旨及び保険料は年払いで四万八五〇〇円である旨告げられると、「安い」と言って、即座に保険料全額を支払い、保険契約申込書に署名押捺して契約締結を済ませた。当時、森数弘行は、本件(三)の保険契約締結がいわゆる飛び込みによるものであり、その態様も、パンチパーマを掛けた原告が昼前の午前一〇時三〇分ころにカー用品店二階にある麻雀店から出てきて保険加入を申し込んだ上、通常は明らかでないことが多い建物の床面積といった事項をすらすら説明するとともに、現金及び印鑑もあらかじめ用意してあるという手際の良いものであることに不安に駆られ、直ちに現地に赴いたが、本件建物を見て二〇〇〇万円ならば超過保険にならないことが判明して安心するということがあった。

(4) 原告が本件火災の発生までに加入した共済及び保険の共済金額及び保険金額は、建物で合計六七〇〇万〇〇〇〇円、家財で合計二〇〇〇万〇〇〇〇円、総計八七〇〇万〇〇〇〇円もの多額に上るものであり、とりわけ、本件(三)の保険に加入したことにより、本件建物の場合、原告がその時価額であると主張する四八七二万〇〇〇〇円をもって時価額とみたとしてもなお一八二八万円上回る結果となり、また、本件家財の場合、同様に原告がその時価額であると主張する五四〇万四八〇〇円をもって時価額とみたとしてもなお一四五九万五二〇〇円上回る結果となり、著しい超過共済及び保険関係にあった。

なお、原告は、その存在を知らなかったと述べるけれども、本件建物には、本件共済及び保険のほかにも、ハヤセ株式会社が平成六年四月四日に住友海上との間で締結した保険金一〇〇〇万〇〇〇〇円の保険契約が存在した。

3  本件火災当時の原告の生活状況特に収入及び負債の状況について、甲第一〇号証、第一九号証の三、乙第八号証、第一〇号証、第一一号証、第一四号証、第二九号証、原告本人の尋問結果(採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告は、昭和五五年五月七日森岡花子と婚姻し、昭和六〇年一二月五日長女春子が出生したが、平成四年七月一五日右花子と協議離婚し、以来、本件建物に単身で居住するようになった。原告は、従前は家業の林業に従事していたが、不況になったこともあり、平成五年半ばから徳島で前記安東が計画してた産業廃棄物処理施設設置関連の手伝い仕事をするようになり、本件火災当時、徳島と岡山を往復するが、岡山にいるときは、終日麻雀に明け暮れるという生活を繰り返していた。このため、原告は、当時定まった収入がなかったのに、徳島への度重なる出張と現地での仕事での出費がかさみ、債務が増えるのに対し、当時見込まれた収入としては、徳島で手がけていた産業廃棄物処理施設設置計画が成功した暁に前記安東から支払いを約束されていた現実味に乏しい億単位の報酬だけであって、経済的に窮迫した状況にあった(原告は、徳島の産業廃棄物処理施設設置に漕ぎ着ければ億単位の収入が見込まれたので、経済的に苦しい状況にはなかった旨主張するが、右事業が順調に進捗していたとは認め難い。)。

(2) 原告は、平成三年二月一三日発生した火災によって、合計金八二四四万五〇〇〇円の共済金及び保険金を取得したが、このうち、五〇〇〇万円程度は本件建物の建築費用に使い、一七〇〇万円くらいは妻花子と協議離婚した際に長女の親権者を同女に定めたこともあって、同女に渡し、残額分もほとんど家財の購入と借財への返済に当てた為(焼失建物に設定されていた抵当権者加茂町、債権額金五五〇万円の抵当権設定登記が火災直後の同年二月二八日付け弁済を原因として抹消されていることからして、原告は共済金及び保険金の一部をもって右の弁済に充てたものと推認される。)、結局前回の火災で取得した共済金及び保険金は、ほとんど原告の手元に資産として残らなかった。本件火災当時、登記簿上の記載から明らかな負債だけで、父甲野一郎所有の苫田郡加茂町<番地略>の山林に同人と原告を共同債務者として設定された極度額一三六〇万〇〇〇〇円の根抵当権(根抵当権者加茂農業協同組合)、原告所有の前記焼失建物に対してなされた津山簡易裁判所仮差押(債権者国民金融公庫)及び岡山地方裁判所仮差押(債権者岡山県信用保証協会)に係る各登記があり、これらは平成五年一二月一九日に焼失を原因として閉鎖登記がなされるまで存在していた。そして、右に加えて、本件火災当時における原告の負債として、本件建物には債務者を原告とする極度額一〇〇〇万〇〇〇〇円の根抵当権(根抵当権者ハヤセ株式会社)が設定され、その被担保債務額が六〇〇万〇〇〇〇円(第三者の手形保証分二〇〇万〇〇〇〇円を含む。)であったほか、岡山県信用保証協会に対する求償金債務五七六万八八一九円(有限会社万代建設の借入債務につき昭和五八年一月二五日付けで代位弁済がなされたことによるものである。なお、原告は、右求償金債務が保証による債務であって、原告固有の債務ではないことを主張するが、当時、同債務につき催告を受けており、支払義務は現実化していたものである。)、島田英二に対する保証債務四九九万四〇〇〇円(原告は、同人と示談になっていると主張するが、岡山地方裁判所津山支部仮差押決定の日付によれば本件火災の時点で債務として存在していたことが明らかである。)、旧美作加茂農協に対する平成七年一月時点における手形金・貸付金債務二三七万二三九六円、株式会社武富士に対する借入金債務七一万四六七六円、株式会社マルフクに対する借入金債務三三万六三四〇円などが存在し、原告は、総額二〇〇〇万円に上る多額の負債を抱え、右の債権者らのほか、プロミス株式会社からも支払いの催告を受けていた。原告は、平成六年一一月には旧美作加茂農協の預金口座の残高不足のため国民健康保険料すら支払えない状況にあった。

4  以上認定した事実に即して、まず、本件火災の出火場所及び出火原因から検討するに、原告は、本件家屋一階北西部分に位置する和室六畳間で、燃焼中の石油ストーブ(反射板式開放型)の前面近くに椅子を置いて、これに洗濯物をかけたまま外出したものであり、後記5で指摘する本件火災を巡る諸事情のほか、火災発生後に現場を検証して事故原因を調査した消防士神﨑高司において本件建物の焼燬の状況、特に屋根部分の落ち方及び発見者の目撃証言等を総合して出火場所が本件建物の一階北西部分に位置する和室六畳間であると推定していることを総合すると、出火場所は、本件家屋一階北西角の和室六畳間であり、出火原因は、洗濯物である衣類が燃焼中の石油ストーブから出る高温の輻射熱にさらされて着火して炎上し、その火が石油ストーブの傍らに敷いていた布団に燃え移るなどして本件火災に至ったことにあると推認するのが相当である。

なお、本件火災が発生した当時、本件建物では原告が一人暮らしをしていたものであり、原告が徳島へ向けて出発した時点で本件建物内には誰一人として家人がおらず、原告の述べるところによれば、外出の際にして玄関に施錠しなかったというのであるが、加茂町一帯では住居の戸締りをしなくても盗難その他の被害に遭わない土地柄であり、原告が外出した午後九時前から火災発生が覚知された午後一〇時四五分まではおおむね二時間足らずであるが、本件における証拠関係上、その間に第三者が原告宅に進入して放火し、あるいは失火した形跡は認められないところである。また、漏電による火災であることを疑わせる状況も認められないものである。

5 そして、本件火災は、先に認定したとおり、建物及び家財の価額を大幅に超える共済金及び保険金の総額八二四五万五〇〇〇円が支払われた前回の火災事故からほぼ四年後に起こった、偶然というには不可思議な、家人外出中の自宅における石油ストーブによる衣類乾燥中の出火という同じ態様によるものであるところ、今回の火災にあっては、①原告は、ほぼ四年前同じ出火態様による自宅の全焼を経験していたにもかかわらず、間もなく県外へ赴く外出を予定しており、格別急いで洗濯物を乾燥させる必要がなかったとみられるのに、再び、燃焼中の石油ストーブ(反射板式・開放型)に極めて接近して置いた椅子に洗濯物を掛けて乾燥させるという、そのまま放置するときは出火の可能性の極めて高い行為に及んでいること(原告は、出掛けるまでの時間に少しでも乾燥させようとしたと述べるが、県外に出てしばらく帰宅しないのであるから、屋内における自然乾燥による措置を採ることで十分であったはずであるのに、あえて燃焼中の石油ストーブで洗濯物を乾燥させようとしたものであり、その方法も、本件火災が覚知された午後一〇時四五分ころの時点における本件建物の燃焼状況からして原告が洗濯物の乾燥を始めてから最大でも二時間半以内に衣類に着火して炎上したとみられることから明らかなように、比較的短時間に着火して炎上するほど石油ストーブに近接して置いた椅子に洗濯物を掛けるという危険なものであり、その行動には出火を期待していたとみられてもやむを得ないといえる不自然さがある。)、②原告が前回の火災から本件火災までの四年間に自ら加入した共済金及び保険金の額は総額八七〇〇万〇〇〇〇円に上り、焼失した建物及び家財の価額を大きく超える超過共済及び保険であるが、このうち、本件火災の一か月半前に自ら進んで加入した被告日動火災との間の保険契約については、その加入の動機及び態様に極めて曖昧・不自然なものがあること(原告は、保険加入の前月には農協貯金口座の残高不足のため国民健康保険料すら支払えない経済的状況にありながら、本件建物について既に建築費用からみて十分な共済金額であるといえる総額四七〇〇万〇〇〇〇円の共済に加入していたのに、さらに保険金額二〇〇〇万〇〇〇〇円の保険に加入し、家財についてもその時価からして明らかに不要であるといえる保険金額五〇〇万〇〇〇〇円の保険に加入した。)、③原告は、当時、多数の債権者に対して総額二〇〇〇万円に上る多額の負債を抱え、債権者らから支払い催告を受けている状況にあったのに、徳島での産業廃棄物処理関連で知人の手伝い仕事をするほか、ほとんど毎日のように麻雀に明け暮れる生活を送っていたため、定額の収入がなく、債務の返済もままならない、窮迫した経済的状況下にあったこと(原告は、産業廃棄物処理施設関連の仕事が成功すれば、知人から億単位の金銭を入手できる予定であったというが、その実現は極めて疑わしい状況にあった。)、④原告は、本件火災発生の当夜徳島県下に出掛けるに当たり着替えを必要としたため岸部に自動車を運転してもらって帰宅したのに、一時間程度自宅にいた間に燃焼中の石油ストーブで洗濯物を乾燥させようとしたものであり、このこと自体疑問の残る行動である上、同人から麻雀店まで送るように依頼されて外出を急いだことから、石油ストーブの火を消し忘れたと述べるけれども、原告及び同人が外出前の状況につきそれぞれが説明するところによれば、緊急に外出する必要に迫られたために気が動転している状況の下で外出するといった特別の事情があったものではもちろんなく、同人から麻雀店に送ってほしいとの依頼を受けたというだけのことからすると、格別急ぐ状況にあったものではなく、そうであれば、原告は、同人を送った後引き続き県外に出掛けることを予定していたのであるから、自ら仮眠していた部屋を含む全室の照明を消し、かつ、石油ストーブを含む暖房器具の使用を停止するといった後始末をした上で外出すべきところ、(岸部は、原告が部屋のファンヒーターかこたつかに点火・通電してくれたと述べており、当夜の気象状況からすれば、原告が仮眠をとった部屋だけでなく、同人が仮眠をとった部屋でも暖房器具を使用していたものと認められる。)、原告においていずれの部屋の消灯も暖房器具使用停止もしないまま外出したというのであれば、それ自体極めて不自然であるといえるし、そうではなく、原告が仮眠をとった部屋の石油ストーブの消火だけしなかったというのであれば、消灯した際に燃焼中の石油ストーブから出る明かりによってそれが燃焼中であることに気づかなかった点でこれまた極めて不自然であるといえること(なお、同人が外出に当たって原告をせかした事実は、同人において述べないところである。)、⑤原告は、翌日午前一〇時前になって徳島県下で聴いていた岡山県内の民間放送局のラジオニュースで自宅の全焼を知ったというのであるが、外出してからラジオニュースで知るまで約一四時間にわたって石油ストーブの燃焼熱で洗濯物を乾燥させている事実を思い出さなかった点で不自然さを否定できないこと、といった事実があり、これらの事情を総合するならば、本件火災の発生については、原告がほとんど同じ出火態様による自宅の火災を経験していながら再び燃焼中の石油ストーブ間近に置いた椅子に洗濯物を掛けて乾燥中に外出するという火災に至る可能性の極めて高い危険な行為に及んだ点で重大な過失があるといえるにとどまらず、当時多額の負債を抱えて経済的に窮迫していた原告が高額の共済金及び保険金を騙取するため自らの徳島出張の機会に岸部の帰宅同行を利用して巧妙に仕組んだ放火行為である疑いが極めて濃厚であるといって差し支えないところである。そうであれば、原告としては、先に指摘した①ないし⑤の各点にわたる疑いを払拭し、本件火災が第三者による放火、失火あるいは漏電による火災といった、前述の出火原因以外の原因によって発生したものであることを認定するに足りる立証をする必要があるところ、本件で顕出された証拠関係に照らすとき、その立証がなされているとは到底認め難いところであり、このような事情の下では、結局のところ、本件火災が原告の故意によって発生したものと推認するのが相当であり、被告らの免責の抗弁はいずれも理由がある。

二  そうすると、請求原因関係における争点や抗弁関係におけるその余の争点について判断をするまでもなく、原告の被告らに対する請求はいずれも理由がない。

第四  結論

よって、原告の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官渡邉温 裁判官酒井良介 裁判官石村智)

別紙物件目録<省略>

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