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山口地方裁判所 昭和53年(行ウ)6号 判決 1980年11月13日

原告 中山敏夫

被告 山口県知事 ほか一名

代理人 山口英雄 浜田孝 ほか六名

主文

原告の訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実<省略>

理由

一  (本件許可処分及び本件裁決・決定の各取消し及び無効確認の訴えについて)

被告山口県知事が本件許可処分をなしたこと及び被告農林水産大臣が本件裁決・決定をなしたことについては被告らにおいてそれぞれ明らかに争わないから、これを自白したものとみなすべきである。

ところで、処分及び裁決の取消しないし無効確認の訴えが適法であるためには、まず、訴えを提起する者が、当該処分及び裁決の無効確認もしくは取消を求めるにつき法律上の利益を有することが必要である(行政事件訴訟法第九条、第三六条)。

しかるに、原告がその取消しないし無効確認を求める本件許可処分は、被告山口県知事が、農地法五条一項の規定に基づき、本件土地の譲渡人西岡充及び譲受人稲田一生に対し、同人らが本件土地を農地から宅地に転用する目的で所有権を移転することにつき許可を与えたものに過ぎず、これによつて原告の法律上の地位を何ら変動させるものではない。仮に譲受人稲田一生が右許可にもとづき、本件土地を宅地に転用した結果、近隣に居住する原告のうえに何らかの利害・影響が及ぶことがあつたとしても、それは本件許可処分によつて生ずる法的効果ではなく、単なる事実上の結果に過ぎないものであつて、これをもつて、原告に本件許可処分の取消しないし無効確認を求めるにつき法律上の利益があるとはいえない。

また、同じく原告がその取消しないし無効確認を求める本件裁決・決定は、被告農林水産大臣が、原告のなした本件許可処分に対する審査請求及び執行停止の申立に対してなしたものであるから、原告が、前判示のように本件許可処分の取消しないし無効確認を求めるにつき法律上の利益を有しないものである以上、本件裁決・決定についても、これが取消しないし無効確認を求める法律上の利益を有しないものというべきである。

従つて、原告の本件許可処分及び本件裁決・決定の各取消しないし無効確認の訴えは、いずれも不適法といわざるを得ない。

二  (原形回復の訴えについて)

原告は、被告山口県知事に対し、本件土地を本件許可処分前の原形に回復することを求めているが、右は被告知事が、本件許可処分の当事者に対し本件土地を原形回復する処分をなすことを求めるものというべきところ、かかる訴えは、行政庁の第一次的判断権を侵害して裁判所が行政処分を行うことを求めるものであつて、現行法上許されていないので不適法な訴えであるといわざるを得ない。

三  (結論)

以上の次第で、本件訴えはいずれも不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 西岡宜兄 紙浦健二 大谷辰雄)

別紙目録 <略>

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