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奈良地方裁判所 昭和58年(ワ)377号 判決 1986年12月12日

主文

一  被告らは原告に対し、各自金一三四万五二二〇円および内金一一四万五二二〇円に対する昭和五五年七月二五日から、内金二〇万円に対する昭和六一年七月一二日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告らに対するその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は一〇分し、内九を原告の、その余を被告らの負担とする。

四  この判決の一項は仮に執行することができる。

事実

(請求の趣旨)

一  被告らは原告に対し、各自金一二四八万五四〇二円および内金一一四八万五四〇二円に対する昭和五五年七月二五日から、内金一〇〇万円に対する本件口頭弁論終結の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  仮執行宣言。

(請求の趣旨に対する答弁)

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

(請求原因)

一  事故の発生

昭和五五年七月二五日午前八時一五分ころ、奈良県大和郡山市今国府一一七番地の一所在の交差点(以下本件交差点という)において、原告運転の普通貨物自動車(以下原告車という)と被告田辺浩之運転の普通乗用車(以下被告車という)とが衝突した(以下本件事故という)。

二  帰責事由

1  被告田辺浩之は被告車を自己のために運行の用に供していたものである。

2  被告田辺寛は被告車を所有し、自己のために運行の用に供していたものである。

三  損害

1  本件事故により、(原告は左肋軟骨々折、頸椎捻挫、左肩・胸部・腰部打撲傷等の傷害を受け、田北病院に昭和五五年七月二五日から同年九月一八日、昭和五七年四月三日から同年七月三日まで入院し、昭和五五年七月二五日から昭和六一年四月三〇日までの間に、実通院一三六五日を要し、本件事故後昭和六一年四月末日まで休業を余儀なくされた。

原告は未だ治療継続中であり、症状固定にはない。すなわち、原告は、本件事故前二年間は、無遅刻無欠勤であり、過去二四年間にわたり無事故の経歴をもつことに見られるように生真面目な性格である。なるべく早期に職場復帰しようと昭和六〇年一一月から一二月にかけて午後に出勤して働いてみたが、はれや耳鳴り等の症状が悪化し、到底正常な勤務は不可能な状態にある。現在でも毎日通院して、牽引、ハドマー、電気治療等を受けている。日曜は休診のため、月曜の朝は文字どおり首が回らないという状態に陥るのであつて、問題点の少なくない立松鑑定においても「症状固定の見通しは現時点では不明である」と断定しているところである。本件の場合、原告車に同乗していた京谷が死亡しており、もう一人の同乗者坂本も負傷していること、原告車が約一〇メートルもとばされ、甲第一四号証の写真にみられるように原告車の左側ドア付近は極度に破壊され、天井まで破損していることからしても、被告車の衝突は実に強烈なものであつたことは明らかである。

2  右による損害は次のとおりである。

(一) 治療費 一二〇万円

(二) 通院費 一八万九四六四円

昭和五五年七月二五日から昭和六一年四月三〇日までの実通院日数一三六五日分の自家用自動車による通院ガソリン代

(三) 入院付添費 四四万四〇〇〇円

昭和五五年七月二五日から同年九月一八日、昭和五七年四月三日から同年七月三日までの合計一四八日間を一日三〇〇〇円として計算。

(四) 入院雑費 一四万八〇〇〇円

一日一〇〇〇円として計算。

(五) 休業損害 一九九七万六七六七円

(1) 本件事故によつて失つた本件事故後昭和五八年九月末日までの給与および賞与として一二〇六万一八〇〇円。

(2) 昭和五八年一〇月一日から昭和六一年四月末日までの間毎月少くとも本件事故当時の賃金である二一万八八四七円と年二カ月分の賞与の合計七九一万四九六七円。

(六) 入通院慰謝料 二九〇万円

(七) 弁護士費用 一〇〇万円

四  よつて原告は被告らに対し、本件事故による原告の損害金合計二五八五万八二三一円から抗弁二項の1ないし3の金員を差引いた残一二四八万五四〇二円および内弁護士費用を除く一一四八万五四〇二円に対しては本件事故の日である昭和五五年七月二五日から、内一〇〇万円(弁護士費用)については本件口頭弁論終結の日の翌日から支払済に至る

まで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(請求原因に対する答弁)

一  請求原因一項の事実は認める。

二  同二項の1の事実は認め、同2の事実は杏認する。

三  同三項の事実は否認する。原告の症状は遅くとも本件事故から一年半以上を経過した昭和五七年五月一日には後遺症として固定していた。

右症状固定時期の判断については、左記の諸事情を総合的に勘案すべきである。

(1)  原告の治療にあたつてきた田北医師は、その症状固定時期を、昭和五九年ころであるとするが、田北医師による治療は、血管造影、CTスキヤン撮影など原告の身体の状態を十分に検査することなく漫然と行われた疑いがあり、効果的な治療が施されないまま日時が経過した可能性があること。

(2)  原告には本件受傷前から、第四、第五頸椎間および第五、第六頸椎間に骨軟骨症性変化がある他、頸椎後縦靭帯骨化症も認められ、これらが、本件事故後の症状に大きな影響を与えていること。

右の変性変化は加令的変化であるだけに、症状は頑迷であり治療による根治が難しく、治療は遷延化し易いものと考えられる。

(3)  昭和一九年、原告は戦傷により右大腿骨骨髄炎に罹患した。その後、右の炎症は鎮静化していたが、これが昭和五七年四月に再発し、このため、原告は昭和五七年四月三日から同年七月三日まで入院治療を受けている。

右炎症の再発は、本件事故とは関係のないものであり、従つて、その治療のための右入院も本件とは無関係である。

しかし、骨膸炎の再発が本件受傷後の原告の症状を一層複雑かつ深刻なものにしており、これが一因となり本件事故の受傷に対する治療自体も遷延化したものと考えられる。

(抗弁)

一  本件事故については原告にも過失がある。すなわち、本件事故現場の道路は中央分離帯のある片側二車線の道路であるところ、原告車は南行車線から右折し中央分離帯の切れ目を通り北行車線を横断中、折から北進中の被告車が原告車左側面に衝突したものであるが、原告は右折して北行車線に進入する際一旦停止を怠り、被告車を左前方八四メートルの地点に認めたにもかかわらず、原告車の速度と被告車の速度との相関々係について慎重に配慮することなく、原告車が先に通過することができるものと軽信して進行したため、本件事故が発生したものである。

二  原告は本件事故に関し次のとおり支払を受けている。

1  自賠責保険から治療費として一二〇万円

2  労災保険から本件事故以来昭和六一年三月までの休業給付金として一〇六七万二八二九円。

3  被告田辺寛から一五〇万円。

4  高田建設株式会社から三八九万六六九五円。

(抗弁に対する答弁)

一  抗弁一項の事実は否認する。本件事故は、被告田辺浩之が前方注意義務を怠り、本件事故現場の制限速度が時速五〇キロメートルであるのに時速八〇ないし九〇キロメートルで暴走して被告車を原告車に衝突させたもので、被告田辺浩之の過失に起因するものである。

二  同二項の事実について

1  1ないし3の事実は認める。

2  4の事実は否認する。高田建設株式会社からの支給は原告に対する貸付金である。

証拠(省略)

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