大判例

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大阪高等裁判所 昭和61年(ネ)2401号 判決 1987年4月01日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の申立て

控訴代理人は、「原判決を取り消す。亡松本二郎が昭和三三年二月二二日付で大阪府東大阪市長に対する届出によりなした控訴人に対する認知は無効であることを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも国庫の負担とする。」との判決を求めた。

第二  当事者双方の主張

次のとおり控訴代理人の主張を付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  わが国の法例一八条一項は、親と子の本国法の配分的適用主義を採用している。配分的適用主義を貫くならば、一方の本国法で無効な認知は、後にいかなる事態が発生したところで、その本国法で無効であるとされる以上、相手方の本国法で認知が有効となる事態が生じても無効でなければならない。したがって、日本法によって無効な認知(事実に反する認知)である以上、いかに大韓民国民法によって出訴期間を徒過していようと、法例の定めによって、日本法を適用する結果、無効を主張しうることとなる。

二  控訴人は、認知無効の判決が得られれば、実の父である政夫の認知を得たうえ、認知準正により嫡出子たる身分を取得しうるのである。控訴人が日本人としての身分を有しているにもかかわらず、たまたま、違法な認知をした父が外国籍を有していたことから、真実の親子関係が認められないとすると、同じ日本人であるのに、真実の親子関係の認められる日本人と、真実の親子関係の認められない日本人の存在を許すことになり、この結果は、明らかに憲法一四条一項の法の下の平等の規定に反することになる。

第三  証拠(省略)

理由

一  当裁判所も控訴人の本件訴えは不適法であって却下を免れないと判断するものであり、その理由は次のとおり付加するほか、原判決の説示するところと同一であるから、これを引用する。

二  わが国法例一八条一項が配分的適用主義を採用していることは控訴人主張のとおりであるが、認知者たる亡松本に適用される大韓民国民法八六二条及び八六四条の認知に対する異議の訴えの出訴期間はことがらの性質上、認知者、被認知者の双方的要件であることが明らかであり、したがって同法の適用が公序に反しない以上、被認知者たる控訴人も右出訴期間の制限に服することになることが明らかであって、控訴人の主張は採用できない。

三  わが国の法例一八条一項が親と子の本国法の配分的適用主義を採用しているのは、認知の要件が認知者と被認知者の両者の身分に重大な利害があり、かつ、それぞれの本国の公益に密接な関係があるからであり、そのこと自体が不合理なものとはいえず、また、同条により認知者が大韓民国々民である認知につき適用される大韓民国民法八六二条、八六四条の認知に対する異議の訴えの提起期間の制限が一つの立法政策として一応の合理性を有することは前記説示のとおりであるから、その結果所論のように真実の親子関係の認められる日本人とそれが認められない日本人が生ずるとしてもその差別は不合理なものとはいえないというべきである。憲法一四条一項は国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、前記のとおり合理性を有すると認められる所論の差別が生ずること自体は同法条の禁止するところではなく、この点に関する控訴人の主張は採用することができない。

四  以上のとおりであって、控訴人の本件訴えは不適法であるからこれを却下すべく、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

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