大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和51年(ネ)2151号 判決 1977年6月28日

控訴人

永延勝利

右訴訟代理人

仲森久司

被控訴人

竹本省三

右訴訟代理人

服部俊明

外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所の判断は次に訂正するほか原判決理由記載と同一であるからこれを引用する。

原判決九枚目裏四、五行目の「被告永延本人尋問の結果」を「証人松本菊之助、控訴人、被控訴人の原審各供述により本件建物乃至工作物の写真であると認めうる検甲第一乃至第四号証と右各供述」と八、九行目の「右各建物の敷地として利用することにより」を「修理、解体、自動車等の置場として利用することにより」と、一三枚目裏六行目の「そこで」から一四枚目裏二行目までを次のとおり各改める。

控訴人の損害賠償責任について

控訴人の原審供述によれば、控訴人は本件仮換地の不法占有問題をめぐつて検察庁で取調を受け、昭和四七年一月頃から第三建物の賃料の支払を止めた事実を認めうる。

本件のように、A建物(軽量鉄骨造二階建、床面積一、二階各40.72平米)の所有者乙がその敷地(甲が使用収益権を有する仮換地、二四五平米)を占有する権限のない場合、乙からA建物全部を賃借した丙が、(1)右仮換地の不法占有問題をめぐつて検察庁の取調を受け、A建物の賃料の支払を止めた後、(2)右仮換地上にB建物(軽量鉄骨平家建、床面積59.50平米)を乙にも無断で建築所有して右両建物及び右仮換地全部を一体として自動車解体修理業のため使用占有するとき、右(2)のときから丙の過失による右仮換地全部の使用収益権侵害の不法行為が成立すると認めるのが相当であり、丙は甲に対し賃料相当の損害賠償義務を負う。(最高裁昭和三一年一〇月二三日判決、民集一〇巻一〇号一二七五頁は、その判旨の意味が不明確であるが、「甲が使用収益権を有する土地に無権限で建物を所有する乙から、右建物を賃借して占有使用する丙が、乙の右土地占有無権限を知りうべきときでも、丙が、右建物を占有使用し、それに附随して右土地を占有することだけから、丙の過失による右土地使用収益権侵害行為ありと認めえない。」との趣旨を判示したものと解するのが相当である。最高裁昭和三四年六月二五日判決、民集一三巻六号七七九頁及び最高裁昭和四三年九月三日判決、民集二二巻九号一八一七頁参照。)

二よつて原判決は相当であるから本件控訴を棄却し、控訴費用負担については民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文の通り判決する。

(小西勝 松浦豊久 志水義文)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例