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大阪高等裁判所 昭和42年(ネ)1458号 判決 1970年2月25日

控訴人(原告)

山田寿男

代理人

新貝康男

被控訴人(被告)

大京砂糖株式会社

被控訴人(被告)

田中信子

外三名

右五名代理人

奥村文輔

金井塚修

井上治郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も控訴人の本訴請求は理由なしとして棄却すべきものと認めるもので、その理由は、左記のとおり訂正、附加するほか、原判決理由に示すところと同一であるからこれを引用する。

(一)ないし(三)(省略>

(四)、同(<原判決理由=編註>)第三の三の(二)の(2)の部分全文を「そこで前記競売の申立により本件砂糖残代金債権の消滅時効の進行が中断せられたかどうかについて考えるに、担保権にもとづく任意競売手続もまた民法一四七条二号にいわゆる「差押」として時効中断の効力を有するが、その効力を生ずるのは、競売の原因とされた被担保債権(申立債権)についてのみであつて、その他の債権はたとえそれが同一担保権により担保せられる申立債権の原因債権または元本債権であつても、これについてまで当然時効中断の効力は及ばないものと解すべきである(もつともこれらの債権についても、当該競売手続において売掛金の交付請求があれば民法一四七条一号にいわゆる「請求」として中断力を有するものと解せられるがこれは別個の問題である)。蓋し競売手続をとおして公に行使せられ、確証せられるのは、申立債権のみであつて、そのうちに申立債権の原因債権または元本債権も当然包含されているものとは認められないからである(この点基本的法律関係の確認がそれから派生する債権に中断力が及び、利息債務の承認が元本債務の承認と認められるのと同視することはできない)。今これを本件についてみるに、<証拠>によると、本件競売申立の原因とされた被担保債権は金二、二〇八、五一九円の約束手形金債権と砂糖売渡残金および貸付残金の合計額に対する金六二、六五六円の損害金債権のみであつて、本件砂糖残代金債権は単に右約束手形金債権の原因債権、右損害金債権の元本債権の一部として表示せられているにとどまることが明らかで、競売開始決定にも右申立債権金額につき根抵当権の実行として競売手続を開始する旨記載されているにすぎないことが認められるから、本件競売手続により本件砂糖残代金債権につき「差押」としての時効中断の効力が生じたものはといえない。

本件根抵当権実行の目的が結局において本件砂糖残代金等の回収をはかるにあり、かつ前記手形債権は本件砂糖残代金等支払のため被控訴会社により振出された約束手形にもとづくもので、原因関係の債務者が右手形上の唯一の義務者であり、また前記損害金債権は本件砂糖残代金等に対する遅延損害金債権であるとしても、右結論に変りはない。なお控訴人は、本件競売申立は、本件砂糖代金債権につき「請求」としての時効中断力がある旨主張するけれども、物上保証人に対する競売の申立は債務者に対する請求とは認め難いのみならず、前示のように本件砂糖代金債権は本件競売の原因たる被担保債権となつていないから右主張も理由がない。従つて本件競売手続によつて本件砂糖残代金債権の消滅時効が中断されたとなす控訴人の再抗弁は採用しえない。」と改める。

(五)、(六)<省略>

二よつて、原判決は相当で、本件控訴は理由がないから、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。(岡垣久晃 島崎三郎 藪田康雄)

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