大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和40年(ラ)80号 決定 1965年6月15日

抗告人 尼崎交通株式会社

主文

原決定を取消す。

抗告人を処罰しない。

理由

抗告人は主文一項同旨の裁判を求め、その理由として、神戸地方裁判所尼崎支部は昭和四〇年三月二二日抗告人を過料金一〇万円に処する旨の決定をなしたが、抗告人がその従業員であつた佐野幸三郎に対してなした解雇処分については、兵庫県地方労働委員会において昭和四〇年三月二〇日労資双方間において円満に協定成立し、佐野幸三郎は同年三月二一日から職場に復帰しているので、原決定の取消を求めると主張した。

よつて按ずるに抗告人に対して発せられた救済命令の日時、内容、右命令の確定した事実はいずれも原決定に認定するとおりであるからこれを引用する。そして抗告人提出の協定書並びに抗告会社代表者本人の当審審尋の結果によると、抗告人と総評全国一般労働組合阪神地方本部(以下組合と略称する)との間に、昭和三九年三月七日付佐野幸三郎解雇事件につき、原決定前である昭和四〇年三月二〇日、

一、抗告人は兵庫地労委昭和三九年(不)第四号事件について昭和三九年一二月一七日になされた救済命令を遵守し、佐野幸三郎に対する同年三月七日付解雇処分を取消すこと

二、抗告人は佐野幸三郎に対し同年三月二一日付をもつて原職に復帰せしめること

三、抗告人は組合に対し佐野幸三郎の同年二月二七日以降原職に復帰するまでの賃金相当額一五万円の支払義務を認め

(イ)  昭和四〇年三月末日金八万円

(ロ)  同年四月末日及び同年五月末日各金三五、〇〇〇円宛

を各抗告人事務所において支払うこと。

四、抗告人は今後不当労働行為及びこれに類似することをなさないこと

なる内容の協定が成立し、抗告人は右協定中、三の(ロ)の昭和四〇年五月末日に支払うべき金三五、〇〇〇円を除き、すべての協定事項の履行を完了し、本年五月末日に支払うべき金三五、〇〇〇円も支払あることが確実であることが認められる。

右事実に徴すると、抗告人は兵庫県地方労働委員会が発した救済命令を実質上履行したものと同視すべく、抗告人に対しては過料を科する必要がないと解せられるから、原決定を取消し、抗告人を処罰しないものとして主文のとおり決定する。

(裁判官 岩口守夫 長瀬清澄 安井章)

〔参考資料〕

労働組合法違反事件

(神戸地方尼崎支部昭和四〇年(ホ)第一五号 昭和四〇年三月二二日決定)

違反者 尼崎交通株式会社

主文

違反者を過料金一〇万円に処する。

手続費用は違反者の負担とする。

理由

違反者は総評全国一般労働組合阪神地方本部と違反者との間の兵庫県地労委昭和三十九年(不)第四号尼崎交通不当労働行為申立事件について兵庫県地方労働委員会より昭和三九年一一月二四日付書面でもつて違反者の従業員であつた「佐野幸三郎に対してなした解雇処分を取消し原職に復帰させるとともに昭和三十九年二月二七日就労拒否以降原職に復職するまでの間に同人が受けるはずであつた諸給与相当額を支払わなければならない」との命令を受け該命令は昭和三九年一二月一八日違反者に送達されたのであるが違反者はその后労働組合法第二七条第五項による再審査の申立及び同条第六項による取消の訴を提起しなかつたので前記命令は確定した。

しかるに違反者はいぜんとして前記命令で命ぜられている前記佐野幸三郎の原職復帰、同人に対する賃金相当額の支払を為すことなく右命令に違背したまゝ、本件通知の日たる昭和四十年三月一日に至つているものである。以上の事実は本件記録添付の兵庫県地方労働委員会の昭和四〇年三月一日付不当労働行為救済命令不履行通知書及び当裁判所における昭和四〇年三月五日の違反者会社代表者代表取締役足立定雄の陳述の結果によつて認められる。

よつて労働組合法第三二条非訟事件手続法第二〇七条により主文のとおり決定する。

(裁判官 百村五郎左衛門)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例