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大阪高等裁判所 平成9年(う)473号 判決 1997年7月31日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役九月に処する。

原審における未決勾留日数中一九日を右刑に算入する。

理由

本件各控訴の趣意は、大津地方検察庁検察官東厳及び弁護人谷口光雄作成の各控訴趣意書記載のとおりであるから、それぞれこれを引用する。

検察官の論旨は、要するに、原判決は、公訴事実と同旨の犯罪事実を認定したうえ、被告人を懲役一〇月に処し、未決勾留日数中二〇日を右刑に算入するとの判決を言い渡したが、右判決は、本来算入することができない未決勾留日数を本刑に算入した点で、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある、というものであり、弁護人の論旨は、原判決言渡し後、被告人と原判示第一の業務上過失傷害の被害者との間で損害賠償の示談が成立して履行されており、その点を考慮すると原判決の刑は重すぎるので、職権により原判決を破棄すべきである、というのである。

そこで、検察官の右主張について、記録を調査し、当審における事実調べの結果を併せて検討すると、被告人は、原判示の業務上過失傷害及び道路交通法違反の各事実を被疑事実として平成八年八月八日勾留状の執行を受け、同月二七日釈放された後、同年一二月二〇日、在宅のまま起訴され、同九年四月九日「被告人を懲役一〇月に処する。未決勾留日数中二〇日を右刑に算入する。」との判決の言渡しを受けたが、他方、同六年一二月二六日に、大津地方裁判所において、業務上過失傷害及び道路交通法違反の各事実により「被告人を懲役一年に処する。この裁判の確定した日から五年間右刑の執行を猶予し、右猶予の期間中被告人を保護観察に付する。」との判決を受け、これが同七年一月一〇日確定していたので、本件で逮捕勾留されたことを契機として、執行猶予者保護観察法一〇条二項二号に該当する者として、大津保護観察所長の請求により大津地方裁判所裁判官が発付した引致状により、同八年八月二七日大津保護観察所に引致され、同日同法一一条一項に基づく同保護観察所長の審理開始決定があったことから、同条二項により滋賀刑務所に留置され、同月三〇日検察官から大津地方裁判所に対する刑事訴訟法三四九条一項に基づく刑の執行猶予の言渡しの取消請求が、同年九月一七日同裁判所裁判官による執行猶予の言渡しの取消決定が、同月二五日にこれに対する即時抗告の棄却決定があって、同年九月二七日右棄却決定の謄本が被告人に送達され、同年一〇月三日右取消決定が確定するまで、執行猶予者保護観察法一一条三項ないし五項により留置を継続されたものであるところ、同法一一条六項によれば、同条二項ないし五項までの規定による留置の日数は、刑の執行猶予が取り消された場合には刑期に算入するとされている。

そうすると、本件につき原審において算入し得る未決勾留日数は、勾留状執行の日である平成八年八月八日から右留置の開始日の前日である同年八月二六日までの一九日間であることが明らかである。原判決が右日数を超えて二〇日を本刑に算入する旨言渡したことは、刑法二一条の適用を誤ったものであって、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。

よって、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書により更に判決することとし、原判決が認定した罪となるべき事実にその掲げる各法条を適用し、なお、量刑の理由としては、原判決が説示する諸事情のほか、原判決言渡し後、前記示談が成立し、これが履行された事実をも考慮して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青木暢茂 裁判官 梶田英雄 裁判官 佐の哲生)

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