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大阪高等裁判所 平成5年(ラ)648号 決定 1993年12月28日

抗告人 丁桜子 外1名

主文

本件各抗告を却下する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  本件各抗告の趣旨及び理由は、別紙(抗告状写し)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

就籍は、日本国籍を有しながら戸籍に記載されていない者について、出生の届出義務者がいない場合に、それに代わる当該本人の届出により本籍を設ける手続であり、その届出の前提として家庭裁判所の許可を要するものとした制度であるから、就籍許可申立事件の審判手続中に当該本人であるその申立人が死亡すれば、同人について本籍が存在しない状態は消滅し、同事件は目的を失って当然に終了するというべきである。そうであれば、同事件について家事審判規則15条に定める手続受継の余地はないといわなければならない。

一件記録によれば、本件就籍許可申立事件の申立人丁太郎は平成5年10月15日に死亡したことが認められるので、これによって右事件は当然に終了したものであり、原決定は、その趣旨を表示したにすぎないと解するのが相当である。そうすると、原決定は抗告の対象となる裁判にはあたらないといわなければならず、その点において本件各抗告は不適法というべきである。

よって、本件各抗告を却下することとし、抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤原弘道 裁判官 野村利夫 楠本新)

別紙 抗告状<省略>

〔参考〕 受継申立書

申立の趣旨

家事審判規則第15条により申立人丁太郎にかかる御庁平成5年(家)第×××号就籍許可審判申立事件の申立手続の受継を申し立てる。

申立の理由

1.申立人丁桜子は丁太郎の妻、丁二郎は丁太郎の二男である。

丁太郎(1938年10月8日生)は、日本人夫婦を父母として日本で出生したものであるが、幼少時、両親とともに旧満州に移住したところ、敗戦によって孤児となり、中国人である養父らに養育され、また中国で働き生活してきた。同人は、中国政府の承認の下に、本年4月、日本に永住する目的で申立人らとともに来日し、暫くの期間、○○○○センターに入所していたが、本年8月1日より申立人らとともに表記の住所に生活していたものである。しかるところ同人は、本年10月12日、○○病院で胃ガンの手術をうけたが、同月15日死亡した。

ところで同人は、本年×月×日、御庁に対し、就籍許可の申立をなし、平成5年(家)第×××号として係属しているところであり、前記手術の当日である10月12日午前に前記病院において貴庁○○調査官の聴取り調査を受けている。

よって申立人らは家事審判規則第15条により、同人の相続人たる資格において、同人の申立人たる地位を受継するため、本件申立に及んだものである。

2.申立人らは、丁太郎の就籍申立の手続を受継する法律上の利益がある。

すなわち、中国残留日本人孤児の帰国問題は、深刻な人道問題であり、日本政府として極力その解決に尽力すべき義務を有していると考えられるところであるが、就籍は単に日本人である当該孤児の問題であるだけでなく、日本に就籍を希望する家族の問題でもある。

申立人丁二郎は丁太郎の子として、同人が就籍を許可されたときは、これに続いて自動的に日本への就籍が可能となるものであるが、丁太郎の就籍許可申立手続が、当該本人の死亡により終了することになると、同人に対する就籍許可はなされないこととなり、したがって申立人丁二郎の就籍もなされないことになる。これは申立人の就籍を不可能とするものではないとしても、著しく不利益を課するものである。

既に死亡している者については就籍の申立は許されるべきではないとする取扱い(昭和25・8・19最高裁家庭局長回答)は、生存者本人が就籍申立てをなし、その許可が下される以前に死亡した本件の場合には適用されないものと解すべきであり、申立人らは本件受継申立につき、法律上の利益を有するものであるので、本件の受継申立は認容されるべきものと思料する。

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