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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)1860号 判決 1993年10月26日

大阪府守口市南寺方東通五丁目八八番地の二

控訴人

株式会社ザ鈴木

(旧商号 株式会社鈴木鉄工所)

右代表者代表取締役

鈴木允

右訴訟代理人弁護士

小林勤武

服部素明

三上孝孜

國本敏子

梅田章二

右梅田章二輔佐人弁理士

丸山敏之

広島市安芸区中野東七丁目二六番一九号

被控訴人

株式会社トーワテクノ

右代表者代表取締役

杉山肇

右訴訟代理人弁護士

林弘

中野建

松岡隆雄

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  申立

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  事案の概要

事案の概要は、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決一五頁一行目の「原告」を「控訴人」と改め、同五行目と六行目との間に「また、本件発明一と本件発明二とは実質的に同一である。」を加える。)。

第三  争点に対する判断

一  争点1(分割出願の要件欠如の主張)について

次のとおり付加訂正のうえ、原判決二四頁三行目から同四四頁三行目までを引用する。

1  原判決二五頁六行目の「すぎないから、」を「すぎないし、また、少なくとも、原出願2項発明が特許出願された昭和三九年七月二七日の時点においては、被控訴人は、誘導樋が放射状に延長設置された構造を有する『2号機』なる海苔自動包装機を開発して販売し、誘導樋の延長設置の態様を『放射状に』なすとの技術を公然実施していたから、原出願2項発明の構成要件Bは出願前公知の、周知技術であったもので、原出願2項発明は、本件発明一に周知ないし自明の右構成を付加したにすぎないから、」と、同七行目の「相異」を「相違」と、同一一行目の「勿論であるので、右構成を有する点でも」を「勿論であり、然らずとしても、誘導樋(移送路)は少なくとも搬送終端は同高位であるとの構成(原出願2項発明の構成要件F)は、前記誘導樋の延長設置の態様を放射状になすとの構成と同様『2号機』の海苔自動包装機において開示され、出願前公知のものであったのであり、原出願2項発明は、本件発明一に公知ないし自明の右構成を付加したにすぎないから、この点でも」と、各改める。

2  同二八頁末行の末尾の次に「もっとも、後記認定(争点2についての判断)のとおり、被控訴人は、昭和三八年暮れ頃に、原判決別紙『2号機送り装置図』記載の如く、送り爪及び仕切板を放射状に延長設置して隣接する積層海苔片の間隔を徐々に広げつつ移送する構造に改良した海苔自動包装機(2号機)を製造し、これを昭和三九年春頃から販売していたというのであり(証人藤井)、また、食品新聞昭和三九年六月二二日号の記事中に掲載の写真(乙一四)からしても、被控訴人は、誘導樋(移送路)の延長設置の態様を放射状になすとの技術を、原出願の時(昭和三九年七月二七日)より前に公然実施していたものといえ、そうすると右技術は出願前既に公然実施された公知の技術であったと認められるが、原出願2項発明において、右構成(構成要件B)は、それ自体が独立した発明とされているわけではなく、原出願2項発明を構成する要素の一として、他の構成要素と相まって全体として一つの新たな発明を構成するものとされている(その結果後記〔原判決三〇頁二行目から七行目〕のとおり本件発明一にない作用効果を有している)ことが明らかであるから、右構成が公知技術であるとの点のみから原出願2項発明の構成要素からこれを除外すべきではないし、原出願2項発明の構成が、単に本件発明一に右公知技術を付加したに過ぎないものでないことも明らかであり、この点に関する控訴人の主張も理由がない。」を、同三〇頁一行目末尾の次に「なお、控訴人は、この点に関しても、誘導樋(移送路)は少なくとも搬送終端は同高位であるとの構成(原出願2項発明の構成要件F)は、前記誘導樋の延長設置の態様を放射状になすとの構成と同様、被控訴人がその出願前に開発、販売していた『2号機』の海苔自動包装機において開示されており、出願前公知であったもので、原出願2項発明は、本件発明一に公知ないし自明の右構成を付加したにすぎない旨の主張をするが、右構成(原出願2項発明の構成要件F)については、後記争点2に対する判断において判示のとおり、出願前公然実施されていた公知技術とは認められないから、控訴人の右主張はその余につき判断するまでもなく採用の限りでない。」を、各加える。

3  同三三頁七行目の「構成であるから、」を「構成である、然らずとしても、前述のとおり、誘導樋は少なくとも搬送終端は同高位であるとの構成(原出願2項発明の構成要件F)は、被控訴人が原出願2項発明出願前に開発、販売していた海苔自動包装機『2号機』において既に開示されており、出願前公知の技術であったもので、原出願2項発明は、本件発明二に公知ないし自明の右構成を付加したにすぎず、両発明を比較するにあたってはまったく意味をなさないものであるから、」と改める。

4  同三七頁三行目末尾に「また、右構成は、被控訴人が原出願2項発明出願前に開発、販売していた海苔自動包装機『2号機』において既に開示されており、出願前公知の技術であったとの控訴人主張が認められないことは、後記争点2に対する判断において判示のとおりである。」を加える。

5  同三九頁一行目と二行目との間に次のとおり加える。

「3 本件発明一と本件発明二とは実質的に同一であるか。

前記検討したところを総合すれば、本件発明一の構成要件(1)と本件発明二の構成要件(1)、前者の構成要件(2)(3)と後者の構成要件(2)(3)及び前者の構成要件(4)と後者の構成要件(4)は、それぞれその表現は異なるものの技術的な意味は同一と認められるが、他方、<1>本件発明二では、『誘導樋を放射線状に延長設置させたこと』との限定を有する(構成要件(5))のに、本件発明一はこれを有しない、<2>本件発明一は『海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構』についての発明であり(構成要件(5))、海苔の切断送り込み機構(切断-切断直後の移送-それに続く搬送終端までの移送-包装機械への送り込み)のうちの『切断-切断直後の移送』のみを発明の対象としているのに対し、本件発明二は『海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構』についての発明であり(構成要件(6))、『切断-切断直後の移送』だけでなく、『それに続く搬送終端までの移送』までを発明の対象としているとの差異がある。なお、本件発明二の構成中、『誘導樋を放射線状に延長設置させたこと』(構成要件(5))については、前記のとおり、被控訴人は、原出願の時(昭和三九年七月二七日)より前に公然実施していたものであり、右構成は出願前既に公然実施された公知の技術であったと認められるが、本件発明二においても、右構成は、それ自体が独立した発明とされているわけではなく、本件発明二を構成する要素の一として、他の構成要素と相まって全体として一つの新たな『海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構』についての発明を構成するものとされていることが明らかであるから、これと本件発明一との異同を比較するうえで、その構成要件の一部に公知技術が含まれているからといって、直ちにこれを本件発明二の構成要素から除外して考察すべきではない。そして、右構成及び発明対象を異にすることから、本件発明二は、本件発明一の作用効果の外に、『誘導樋を放射状に延長設置させたから、各誘導樋の終端を全て同高位置に揃えることができ、この誘導樋に交叉する一本の搬送機構上に各海苔片を等間隔をもたせて移し換えることができる』との本件発明一にはない作用効果を合わせ有しており、その作用効果も異なっている。

したがって、本件発明一と本件発明二とが同一ないし実質的に同一であると認めることはできない。」

6  同三九頁二行目冒頭の「3」を「4」と、同四一頁二行目の「海苔受容器」を「海苔受用器」と、同九行目冒頭の「4」を「5」と、同四四頁一行目冒頭の「5」を「6」と、それぞれ改める。

二  争点2ないし5について

争点2ないし5についての当裁判所の判断は、次に付加訂正するほかは、原判決の認定判断(原判決四四頁四行目から同七二頁三行目まで)と同一であるから、これを引用する。

1  原判決六〇頁一行目、同六二頁七行目、一二行目(二箇所)及び同六四頁四行目の各「被告物件」をいずれも「ハ号物件」と改める。

2  同六八頁九、一〇行目の「(1、4及び8は争いがなく、2は、乙三九及び証人中村)」を「(いずれも争いがない)」と、同七一頁四行目の「(証人中村)」を「(証人中村、弁論の全趣旨)」と、それぞれ改める。

第四  まとめ

以上の次第で、結局、被控訴人の請求は、二六九万円及びこれに対する不法行為の後であることが明らかな昭和五九年二月五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右限度でこれを認容すべきである。

そうすると、これと同旨の原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 山﨑杲 裁判官 上田昭典)

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