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大阪家庭裁判所 昭和33年(家ロ)39号 審判 1958年8月07日

申立人 大川弘子(仮名)

相手方 大川とし(仮名)

主文

相手方は申立人に対し別紙調停条項第一項の(四)の相続税減額による差額返還債務金八万八二九〇円の内五万円を本年八月三一日限り申立人方に持参又は送金して支払うことを命ずる。

理由

本件申立理由の要旨は「申立人と相手方間の大阪家庭裁判所昭和三二年(家イ)第三九八号遺産分割調停事件において同年一一月二七日別紙記載のとおりの調停が成立し、その第一項の(四)において、申立人の支払うべき相続税金一〇万八二九〇円を相手方が同日申立人から預つたところ、その後上記相続税額は金二万円に減額されたので同調停条項に基いてその差額金八万八二九〇円は直ちに申立人に返還すべきに拘らず未だ履行しないから、相手方に対する履行命令を求める」という。

本件調停条項は別紙記載のとおりであつて、通常の金銭支払義務と異り、申立人の支払うべき相続税見込額を相手方が調停成立の際に預り、申立人に代つて納付することを約したもので、税金減額の場合は差額は直ちに申立人に返還すべきものであつて性質上他に流用を許さないものであり、相手方も金八万八二九〇円の返還義務を認めながら単に本件調停成立の際の金銭支払のために無理をしたので、上記の差額の支払を実行できないというにすぎないから、かかる主張は採用できない。

かような次第であるから上記の差額の内少くとも金五万円を本月中に支払うのが相当と認め、本申立をいれ、此の審判をする。

(家事審判官 沢井種雄)

相手方が正当の事由がなくこの審判に違反したときは金五、〇〇〇円以下の過料に処せられる。

此の審判は調停により定められた義務に何等の変更を及ぼすものではない。

(別紙)

調停条項

(4) 申立人が支払うべき相続税金一〇万八二九〇円は相手方において、本日申立人から同額の金員を預り申立人に代つて支払うこと。但し後日申立人の納付すべき税金が減額されたときは相手方は申立人にその差額を返還すること。

(第一項(1)(2)(3)および第二、三、四項 略)

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