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大阪地方裁判所 昭和58年(わ)6379号 判決 1984年5月29日

裁判所書記官

東森隆一

本店所在地

大阪府富田林市若松町一丁目一番一五号

有限会社富

(右代表者代表取締役濱屋久美子)

本籍

大阪府羽曳野市はびきの三丁目三一五番地

住居

同府藤井寺市小山藤の里町三番二二号

会社役員

濱屋久美子

昭和一一年一〇月五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官鞍元健伸出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一、被告人有限会社富を罰金五〇〇万円に、被告人濱屋久美子を懲役一〇月に各処する。

一、被告人濱屋久美子に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

一、訴訟費用は、被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社富(以下「被告会社」という。)は、大阪府富田林市若松町一丁目一番一五号に本店を置き、理美容業を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人濱屋久美子は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人濱屋久美子は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、公表経理上、売上げの一部を除外し、よって得た資金を仮名の定期預金等として留保するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和五四年一一月一日から同五五年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二、一七〇万六、八二一円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年一二月二七日、大阪府富田林市若松町西二丁目一六九七番地の一所在の所轄富田林税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四七五万八、〇三一円でこれに対する法人税額が一三〇万五、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七八一万五、一〇〇円と右申告税額との差額六五一万一〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)を免れ、

第二、昭和五五年一一月一日から同五六年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一、八二一万二、一三二円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年一二月二四日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二三六万二二八円でこれに対する法人税額が六六万五、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六六四万六、五〇〇円と右申告税額との差額五九八万一、一〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ、

第三、昭和五六年一一月一日から同五七年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一、六七九万二、五六〇円(別紙(五)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年一二月二七日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇九万九、九七二円の欠損で納付すべき法人税額は存しない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六〇八万四六、〇〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人濱屋久美子の当公判廷における供述

一、同被告人の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の同被告人に対する質問てん末書七通

一、管尾均、田方正一、石原サチ、市川一彦の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏の管尾均、田方正一(二通)、石原サチ(二通)、浜屋勉(謄本)に対する各質問てん末書

一、田中一郎作成の「確認書」と題する書面一〇通

一、収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高確認書

一、収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、収税官吏作成の査察官調査書一〇通

一、被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通

一、大阪法務局富田林出張所登記官作成の法人登記簿謄本

(弁護人の主張に対する判断)

検察官は、被告会社がその従業員に支給した簿外給料はいわゆる税込給であると主張するのに対し、弁護人は、いわゆる手取給であって源泉徴収洩れ分はいずれも被告会社の損金として計上すべきであると主張する。

そこで検討するに、被告人濱屋久美子の当公判廷における供述、収税官吏の田方正一、石原サチ、同被告人に対する各質問てん末書によれば、被告会社はその従業員に対して支給した給料のうち二分の一を公表計上し、残りの二分の一を簿外としていたが、公表分に対応する所得税額を従業員から源泉徴収することなく、各人に食事手当月額四、〇〇〇円を支給した形をとり、実際は、右食事手当を被告会社においてプールして従業員の所得税額の支払に充てており、結局従業員の所得税額は被告会社において負担していたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠は存しない。従って、右給料はいずれも手取給と解するのが相当であり、弁護人の主張は理由がある。

収税官吏内野恭介作成の査察官調査書によれば、源泉徴収もれ分は、一期二二二万八、〇一三円、二期二九四万八九五円、三期三〇五万九、八九五円と認められる。

(法令の適用)

被告人濱屋久美子の判示第一の所為は、行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二、第三の各所為は、いずれも改正後の法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人濱屋久美子を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人濱屋久美子の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示第一の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に、判示第二、第三の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に、各処すべきところ、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金五〇〇万円に処する。

訴訟費用については、刑事訴訟法一八二条、一八一条一項本文により被告人両名の連帯負担とすることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金山薫)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和54年11月1日

至 昭和55年10月31日

<省略>

別紙(二)

税額計算書

<省略>

別紙(三) 修正損益計算書

自 昭和55年11月1日

至 昭和56年10月31日

<省略>

別紙(四)

税額計算書

<省略>

別紙(五) 修正損益計算書

自 昭和56年11月1日

至 昭和57年10月31日

<省略>

別紙(六)

税額計算書

<省略>

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