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大阪地方裁判所 昭和55年(わ)5823号 判決 1981年7月10日

本店所在地

大阪府豊中市庄内西町五丁目一七番六号

田中産業株式会社

代表者

同所同番号

田中功

本籍

京都市北区柴野西野町二六番地

住居

大阪府豊中市庄内西町五丁目一七番六号

会社役員

田中功

大正五年三月三日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官加藤友朗出席の上審理を終り次のとおり判決する。

主文

被告人田中産業株式会社を罰金一、四〇〇万円に処する。

被告人田中功を懲役一年に処する。

被告人田中功につきこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人田中産業株式会社は、豊中市庄内西町五丁目一七番六号に本店を置き、穀物収納袋などの製造販売業を営むもの、被告人田中功は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人田中功は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、同会社の昭和五二年四月一日から同五三年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が二七、五八七、九〇二円で、これに対する法人税額が九、八九五、二〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、仕入金額を水増し計上するほか、期末たな卸商品製品の一部を除外するなどの行為により右所得の一部を秘匿したうえ、同五三年五月三一日、池田市城南二丁目一番八号所在豊能税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二、五八六、一五〇円、これに対する法人税額が四九四、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税九、四〇一、〇〇〇円を免れ

第二、同会社の同五三年四月一日から同五四年三月三一日までの事業年度において、その所得金額が一三〇、六二三、六五七円で、これに対する法人税額が五〇、九九五、四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、同五四年五月三一日前示豊能税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三、〇七九、七九一円、これに対する法人税額が五七五、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税五〇、四一九、八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一、被告人田中功(以下被告人という)の公判廷の供述

一、被告人の検察官に対する各供述調書(請求番号一四六一四七)

一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(同一二九ないし一四五)

一、被告人作成の各確認書(同一五〇ないし一五二)

一、登記官作成の法人登記簿謄本(同六)

一、被告人作成の証明書(同七)

一、大蔵事務官作成の各査察官調査書(同八ないし一八、二一ないし四五、五四ないし五六)

一、木家康光、田中裕、河上利博、木村隆雄、島田眞郎、長尾隆、平麻照子、長田真和、中嶋伸夫、吉木幹、丸茂寧、各作成の確認書(同五七ないし六三、七九、八一、八三ないし八八、九二、九三)

一、清水久夫、豊能税務署長、豊中市納税課長、小原和夫、牧順四郎、藤井保男、佐藤改司、池田忠道各作成の照会回答書(同六四ないし六八、七二ないし七四、八二)

一、谷口満範、田中晴美、田中チサ子、斉藤暁、川端昇、紙谷俊雄、高木秀光、辻定男、市原友春、山本宗幸、三好靖太郎、二見一啓、坪倉重信、津田正雄、古川執二、吉田孝美、森井純子、谷口馨の各大蔵事務官に対する質問てん末書(同九八ないし一〇八、一一〇ないし一一三、一一五ないし一二八)

一、川端昇の検察官に対する供述調書(同一一四)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(同一)

一、豊能税務署長作成の証明書(同三)

一、大蔵事務官作成の査察官調査書(同一九)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(同二)

一、豊能税務署長作成の各証明書(同四、五)

一、大蔵事務官作成の各査察官調査書(同二〇、四六ないし五三)

一、佐伯隆夫、中野都弘、松田勲、原尚孝、吉岡淳子、二見一啓、沢田章司、西原義昌、菊村哲治、田中晴美各作成の確認書(同六九ないし七一、七五ないし七八、八〇、八九ないし九一、九四ないし九七)

一、斉藤暁の大蔵事務官に対する質問てん末書(同一〇九)

(法令の適用)

被告人田中功の判示第一、第二の各所為は、昭和五六年法律第五四号附則五条により同法三条による改正前の法人税法一五九条に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項一号を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、被告人田中産業株式会社につき、その代表者が法人の業務に関し前示改正前の法人税法一五九条の違反行為をしたときに当るから、同法一六四条一項により同被告人に対し判示第一、第二の各罪につき同法一五九条の罰金刑を科すべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により第一、第二の各罪の所定罰金の合算数の範囲内で同被告人を罰金一、四〇〇万円に処する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤光康)

○控訴趣意書(昭57・2・24取下げ)

法人税法違反 田中産業株式会社

御庁頭書事件(昭和五六年(う)第一四六八号)について左記のとおり控訴の理由を申述します。

昭和五六年一一月二七日

右被告人 田中産業株式会社

代表者 田中功

右弁護人

弁護士 河田日出男

大阪高等裁判所

第三刑事部 御中

原審判決は被告人に対する罰金科刑につき可成りその情状を考慮されてはいるものの、結局一、四〇〇万円の罰金を科したことは重きに過ぎ量刑不当であります。

以下諸般の情状を十分斟酌すると原審判決を破棄しさらに軽い罰金刑を言渡されるのが相当であると信じます。すなわち

一、本件ほ脱事件にかかる公訴二事業年度のほ脱税額は合計五、九八〇万円余というものでほ脱の数量的規模が此の種事犯のなかでは比較的小さいところに位置づけられること。

二、動機について情状とくに憫諒すべきものがあること。

被告会社は米麦など穀物の特殊な収納袋を開発製造し(網状コンバイン収納袋等)、これが販売を主体とするものですが、いずれも始めて開発した商品であります関係から予期せざる不良品が混在するおそれがあります。現に昭和五二年夏には着色不良の収納袋が大量にでて返品されました。

かように取扱う商品の特殊性から将来いつ何時クレームが発生するかわからないという損害発生の危険性に対しその不安を除くためと、新製品の研究開発に当っては専門関係者らとの間における必要な出費で帳簿に記載しにくいものがあるためと、さらには社員従業者にも給料とは別に相応の臨時手当や決算手当を支給してやるため等の理由が本件ほ脱の動機であります。被告会社の代表者田中功において私利私欲のために費消する等一切濫費したようなことは全くありません。

三、ほ脱の手段方法はいわゆるつまみ申告であって、所得秘匿の主科目は商品の簿外経理とそれにともなう簿外債権の存在だけであり、きわめて単純であること。

複雑巧妙な手段を弄したこともなくまた外部関係者らと事前に通謀する等の証憑隠滅を計った事実も全然ありません。

四、法人所得(秘匿所得)の性質についてみますと、被告人における本件ほ脱所得は決していわゆる不労所得とかあぶく銭といったものではないこと。

代表者田中を中心に全社員従業員が文字どおり年中無休で寝食を忘れ満足に家庭をかえりみることもなく日本各地の農家や農協を忙しく飛び廻り、かつ、新製品の開発研究に専念し、多くの艱難を乗り越え大変な苦労と努力をして得た真に尊い所得であります。被告人の事業は我が国の稲作農業生産の近代化と合理化のために大いに貢献している事業であって、まさに立派な正業であります。常に現代農家の多様なニーズに沿うべく創意工夫を怠らず独創的な農業用資材を取扱うことに終始専念し、不断の努力の積み重ねがようやく実を結びこれが所得を挙げることにつながったものであります。

此の種事犯のなかでも、麻雀パチンコ風俗営業等いわば消極的業種の所得とは大いにおもむきを異にするものであります。

五、追加本税重加算税等の完納

被告人は本件査察調査がほぼ終った段階の昭和五五年六月三日査察の数字にしたがい直ちに自主的に修正申告をするとともに、既に追加納税のすべてを完納済であって、誠意をもって後始末を綺麗にすましていること。

六、起訴年度後の決算申告状況と経理改善の努力

被告人は本件査察を受けて以後はガラス張りの正しい経理を実施することに改めるとともに、必死の企業努力をなし、起訴年度後の決算申告数字は決して遜色のない立派な金額となっており、かつ、再犯のおそれもないこと。

七、犯則調査に対する協力と公判での態度

被告人は査察着手の当初から改悛の情がまことに顕著で自主的に修正申告をなし誠意をもって後始末をしたうえ、公判でも公訴事実を卒直に認め短期間に結審できるように終始心掛けてきたこと。

ことに無用な否認抗争など一切していないこと、罪は罪としていさぎよく受け早く綺麗にしたいと念願してきた真面目な会社であること。

八、被告人の代表者田中功はいかに「努力の人」であるかは原審記録にあらわれているとおりで、それも単にまじめな努力家であるというのではなく、難しい農業用資材につき新製品の開発研究を怠らず多数の実用新案登録や意匠登録及び出願中の特許を保有し、この業界においては高く評価されている人物であること。

以上諸般の情状について十分に斟酌されますと、被告人に対する罰金刑はほ脱税額の二〇パーセント位の一、二〇〇万円位までに軽減されるのが相当であろうと存じ本申立に及んだ次第であります。

以上

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