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大阪地方裁判所 昭和48年(ワ)5384号 判決 1974年10月16日

原告 相互信用金庫

右訴訟代理人弁護士 西垣剛

右訴訟復代理人弁護士 岡島重能

同 八重沢総治

被告 尾野正治

右訴訟代理人弁護士 酒井圭次

主文

一、被告は原告に対し、金四三一万二五二七円と、内金一八万三四〇〇円に対する昭和四七年一〇月二六日から支払ずみまで年六分の割合による金員を、内金四一二万九一二七円に対する同年五月二日から支払ずみまで日歩三銭の割合による金員をそれぞれ支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、この判決は仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

主文同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二、請求の趣旨に対する答弁

1、原告の請求を棄却する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、請求原因

(一)  昭和四四年一一月一八日原告は訴外横山春郎との間で左記約定を含む手形貸付、手形割引等に関する継続的信用金庫取引契約を締結した。

(1) 同訴外人が原告より割引を受けた手形が不渡となったときは、訴外人において直ちに右手形を額面金額にて買戻す。

(2) 遅延損害金を日歩三銭とする。

(二)  右同日被告は原告に対し右契約により同訴外人が原告に対し負担する一切の債務について連帯保証をした。

(三)  原告は訴外人より別紙手形目録記載の手形一九通(額面合計四三二万一五六〇円)を割引き、裏書譲渡を受け所持人となったところ、右各手形の支払期日に支払場所に右各手形を呈示したがいずれも支払を拒絶された。

原告はその後(ハ)の手形金の内金として金九〇三三円の弁済をうけた。

(四)  原告は主債務者である前記訴外人に対し、右各手形買戻債務の支払を求めたが、同訴外人は右債務を履行しない。

(五)  よって原告は連帯保証人である被告に対し別紙手形目録記載の手形残金四三一万二五二七円とこれに対する手形番号(一九)の額面一八万三四〇〇円については訴状送達の日の翌日である昭和四七年一〇月二六日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による、手形番号(一)~(一八)の手形残金四一二万九一二七円については最終支払期日の翌日である同年五月二日から支払ずみまで約定による日歩三銭の割合による各遅延損害金の支払を求める。

二、請求原因に対する認否

(一)  請求原因(一)の事実は不知。

(二)  同(二)の事実は否認する。

(三)  同(三)(四)の事実は不知。

(四)  同(五)の主張は争う。

三、被告の主張と抗弁

(一)  被告は原告主張の連帯保証をしたことはない。もっとも被告は友人である訴外横山春郎と過去において国民金融公庫から融資をうけるに当って相互に保証しあったことがある。昭和四四年一一月一〇日頃、横山が国民金融公庫から融資をうけるので頼むというので、被告において印鑑証明をとり印鑑とともに、同訴外人に交付したことがあった。原告主張の連帯保証は右印鑑等を同訴外人が悪用した結果としか考えられない。

(二)  仮に原告主張のとおり連帯保証の事実が認められるとしても、本件の如き継続的金融取引契約を担保すべき信用保証について、責任限度額や保証期間の定めが全くなく、かつ手形振出人の信用調査もしないでずさんな手形の割引をするなど取引の慣行と信義則に反して主たる債務が不当に拡大されたような場合においては、かかる貸付債務については、保証人に解約権を与え、または保証責任の限度が定められるべきであるところ、本件は解約権の行使が可能である事態であるのに、原告が故意にかくして告知しなかったためその行使ができなかった事例であるから保証人は全く責任を負わないといわなければならない。

第三、証拠<省略>。

理由

一、<証拠>を総合すると、原告主張の日に、原告と訴外横山春郎間に主張のような内容の継続的信用金庫取引契約が成立した事実、被告は横山から予め右契約につき保証人となることを依頼されこれを承諾して、同日横山とともに原告の営業所を訪れる予定であったが、出発直前被告に急用が生じ、横山において被告の印鑑や委任状を預り、被告を代理して右取引により横山の負担すべき債務につき連帯保証をした事実、および原告は横山から主張のような手形一九通(額面合計四三二万一五六〇円)を割引き、内金九〇三三円の弁済をうけたが、手形残金四三一万二五二七円の手形買戻請求権を有する事実を認めるに十分であり、被告本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠と比較してたやすく措信しがたく他に右認定を左右するような証拠はない。

二、被告は本件信用保証契約が無期限、無限定であること等を理由として免責の抗弁を主張し、前掲甲第一号証の一の信用金庫取引約定書によれば、本件信用保証契約に主張のとおり、期限および極度額の定めがないことが窺われ、かかる種類の信用保証はその性質および機能においていわゆる身元保証契約と異なるものではないから、身元保証ニ関スル法律三条以下の規定を類推して、債権者の通知義務、保証人の解約権および裁判所の保証責任限度額認定権を認めるのが相当である。しかしながらこれを本件についてみるのに、証人横山春郎の証言および被告本人尋問の結果の一部によれば、被告は主たる債務者横山との間でこれまで相互に保証人となったことがあり、本件の保証もその一環であるにすぎないこと、被告は横山の近親者の仲人をつとめるなど親密な間柄にあったこと、横山は当時廃油加工販売業を営み、被告は三鳩衣料株式会社に勤務し給与月額一五万円を得ていたが、その以前は商業を営んでいたこと、横山は不動産等の資産を有していたが倒産後債権者の手に渡っていることなどの事実が認められ、以上の事実に原告のような信用金庫には信用金庫法五四条の二により貸付限度額の制限がある事情なども加味して考察すると、本件のような金融機関の取引の信用保証において無期限、無限定で担保の責に任ぜしめる契約は好ましいものではなく、改善の必要が否定できないけれども、本訴で原告の請求する程度の金額は現今における経済状況に照らしかつ主債務者の営業関係に徴して、被告において予想できない程の多額ではなく、原告が何らの通知をせず被告の注意を喚起しなかったような事情があるとしても、原告の通知義務違背ないし保証人の解約権を認めもしくは裁判所において責任限度の圧縮をすべき特段の事由があったということはできない。したがって被告の右抗弁は採用しない。

三、そうすると被告に対し保証債務の履行として、前示手形残金および手形番号(一九)の手形金に対する訴状送達の日の翌日であること記録上明白な昭和四七年一〇月二六日以降支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による、同(一)ないし(一八)の手形残金に対する最終満期の翌日である同年五月二日以降完済まで約定利率日歩三銭の割合による各遅延損害金の支払を求める原告の本訴請求は全部正当として認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲江利政)

<以下省略>

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