大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)4043号 判決 1972年2月02日

原告

上村誠治

被告

辻中一美

ほか二名

主文

一  原告に対し、被告辻中一美は二九、二九五円を、被告辻中一美、同辻中俊太郎は連帯して六一六、六四一円、及びこれらに対する、被告辻中一美は昭和四五年八月一六日より、被告辻中俊太郎は同年一〇月一一日より各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告辻中一美及び同辻中俊太郎に対するその余の請求並びに被告株式会社大阪銀行に対する請求はこれを棄却する。

三  訴訟費用は、原告と被告株式会社大阪銀行との間で生じた分は原告の負担とし、原告と被告辻中一美被告辻中俊太郎との間で生じた分についてはこれを五分し、その四を原告のその余を右両被告らの負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告)

一  被告らは、各自原告に対し、金二、五九五、六六七円およびこれに対する本訴状送達の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決および仮執行の宣言

(被告ら)

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決

第二請求の原因

一  事故

原告は次の交通事故により傷害および物損を受けた。

(一)  日時 昭和四五年三月二六日午前七時二五分ごろ

(二)  場所 守口市八雲東町二の二五三番地先道路上

(三)  加害車 普通乗用自動車(大阪五れ三六四六号)

右運転者 被告辻中一美(東→西)

(四)  被害車 足踏自転車

右運転者 原告 当時四八才

(五)  態様 原告が前記道路を南から北に横断中、被告一美が自車前部を自転車後部附近に衝突させた。

(六)  傷害、物損の内容

(1) 傷害 頭部挫創頸髄損傷、右八、九、一〇肋骨骨折両上肢不全麻痺頭部外傷Ⅱ型後遺症

(2) 物損 自転車、ズボン(着衣)眼鏡、万年筆、弁当箱の各損傷

二  責任原因

(一)  被告辻中一美、運行供用者責任、一般不法行為責任、同人は加害車を所有し、自己のため運行の用に供していたもので、前方不注視、速度違反の過失により本件事故を発生させたものである。

(二)  被告辻中俊太郎、運行供用者責任

同人は加害車を所有し、自己のため運行の用に供していたものである。

(三)  被告会社、使用者責任

本件事故は被告一美が銀行業務である預金勧誘のための早期訪問をするためには、通常の通勤方法では時間的に不都合であるため、自家用車を運転して通勤中発生したもので、右運転は、被告会社の業務の執行中にあたり、同被告は右運行による利益を得、支配していると云うべきである。

三  損害

原告は、本件事故により、次の損害を蒙つた。

(一)  治療費 三五、五五〇円

(二)  入院中雑費 一〇一、七二二円

(三)  退院後雑費 五三、一五〇円

(四)  見舞返し 一四、二一五円

(五)  休業損害

1 昭和四五年三月二六日から同月三一日までの六日間 九一、五九九円の三〇分の六 一八、三二一円

2 同年四月一日から同年一〇月三一日までの七日間 基本給七六、三八〇円に時間外手当四〇時間分(一時間五五二円)を加えて七を乗じた額 六八九、二二〇円

3 同年一一月一日から同月八日までの八日間

2の計算による八日分 二六、二五六円

4 賞与

昭和四五年末一時金 一七五、二八〇円

(六)  慰藉料 一、八〇〇、〇〇〇円

(七)  物損 四一、八五〇円

(八)  弁護士費用 一〇〇、〇〇〇円

(九)  損益相殺

新神戸電機健康保険組合から傷病手当として四七一、〇三四円を受領した。

四  よつて原告は、被告らに対し、前記三(一)ないし(八)の合計から前記三(九)を控除した金二、六〇一、五四二円のうち金二、五九五、六六七円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三被告らの答弁、主張

(被告辻中一美、同辻中俊太郎)

一  請求原因一項中、(一)乃至(四)は認めるが、事故の態様傷害、物損の程度は争う。同二項中(一)は認める。(二)は争う。即ち、事故車の所有名義は被告俊太郎になつているが、これは息子の被告一美が事故車を購入した当時、印鑑登録をしていなかつたため、車の登録の関係上、被告俊太郎の印鑑を使用したものに過ぎず、被告俊太郎は所有者でもなく、運行者でもない。

同三項は争う。但し、(九)は認める。

二  過失相殺

原告は、道路左側の四車線のうち中央寄りの第三通行帯を進行し、横断歩道の手前約三〇米の地点に至つたとき、後方から事故車が約三〇~四〇米の地点に接近しているのを看過して横断できるものと速断し、合図することなしにそのまま右斜前方に向きを変えて横断し始め、事故車の進路を妨害するような形で第四通行帯を斜めに直進した過失により中央分離帯付近で事故車と衝突したものである。若し原告において、横断歩道に至つてから横断するか、或は後方の通行状況を確認して右折の合図をして横断しておれば本件事故は発生しなかつたものである。

三  被告一美は、次のとおり支弁している。

1  入院雑費として 二〇、〇〇〇円

2  生井病院治療費として 一、二〇〇円

3  右病院入院予納金として 三〇、〇〇〇円

4  同治療費として 四四四、二一〇円

5  付添費 一一三、二〇〇円

過失相殺にあたつては右支払分も含めて斟酌さるべきである。

(被告会社)

一  請求原因第一項は不知、第二項は否認する。被告一美が被告会社城東支店の行員であることは認めるが、本件事故は同人が個人所有車により通勤する途上に発生した事故であつて、被告会社の業務の執行とは全く関係がない。被告会社は行員に対し、交通費を実費支給している。

被告一美は本件事故日偶々自己の都合でマイカー出勤したに過ぎない。被告会社は行員のマイカーを営業に使用させたことはないしその必要もない。又マイカー出勤者に対し維持費を支弁することはないのは勿論、銀行の駐車場を利用することすら禁止し、何らの便宜もはかつていない。

同第三項は不知、

第四原告の答弁

被告一美が治療費、付添費、入院雑費として主張の金額を支出したことは認める。

第五証拠〔略〕

理由

一  原告と被告一美との間において、請求原因第一項(一)乃至(四)、同第二項(一)の事実は当事者間に争いない。

二  事故の態様受傷の部位程度、物損の内容

本件事故現場を南から北に斜横断していた原告運転の自転車の左ペタル附近に被告一美運転の事故車左前部が衝突し原告は頭部挫傷、右八、九、一〇、肋骨骨折頸髄損傷両上肢不全麻痺、腰部挫傷の傷害を受け昭和四五年三月二六日から同年七月一五日まで生井世光病院に入院し、同年七月一六日から翌四六年一〇月五日まで三一三日間同病院に通院した(この間昭和四五年六月二九日から同年九月二八日までの間七回国立大阪病院に通院)、が、頸椎運動痛、後頭部痛、項部痛があり、レントゲン所見上第五頸椎、椎体に骨棘形成が認められ(この程度は、自賠法施行令二条の後遺障害等級一二級一二号相当)症状固定した事実、本件事故により自転車ズボン、眼鏡万年筆、弁当箱を損傷したことが認められる。〔証拠略〕

三  被告一美は昭和四四年二月頃本件事故車を購入したが、車庫がなかつたため車庫証明を得るためと、実印を用意していなかつたので養父被告俊太郎の名義を借りたが、保険契約も同人の名義で締結していたところ、本件事故当時は被告一美、同俊太郎は同居していたことが認められる。〔証拠略〕してみると、被告俊太郎は本件事故車の運行供用者であるものと云うべきである。同人は被告一美と連帯して原告が蒙むつた人損につき賠償する義務がある。

四  被告一美は被告会社城東支店に為替係、貸付係として勤務しているが、同支店には乗用車一台軽自動車五台単車二台があり、営業時間中業務で外出する際は担当係専属の車を使用出来るようになつており、被告会社としてはマイカーを業務のため使用することを禁じておりガソリン代、駐車場使用等の便宜を与えておらず、行員には勤務手当として六ケ月定期代実費を支給している事実、被告会社城東支店では毎月二六日には午前七時五〇分に出勤して同支店を中心に五〇〇米の範囲を徒歩で訪問し予貯金の勧誘をする制度があるところ、被告一美は、この日は本件事故車を利用して出勤していた事実が認められる。〔証拠略〕

してみると、被告一美の本件事故車利用行為をもつて直ちに使用者たる被告会社の業務執行と云うことは認められない。

原告の被告会社に対する本訴請求も失当である。

五  原告の蒙つた損害

1  治療費〔証拠略〕 五一〇、九六〇円

2  入院雑費 三三、六〇〇円

右金額が原告入院中要した雑費のうち本件事故と相当因果関係ある損害と認める。

3  付添費〔証拠略〕 一一三、二〇〇円

4  退院後の雑費 二五、〇〇〇円

右金額をもつて本件事故と相当因果関係ある通院交通費、雑費、通信費と認める。(生井病院は往復七〇円国立大阪病院は同様一八〇円と認定して交通費を算出し、これを基礎として更に雑費等を算出した。〔証拠略〕

5  原告主張の見舞返しの費用は本件事故と相当因果関係ある損害とは認められない。

6  休業損

休業期間昭和四五年三月二六日より同年一一月八日まで

イ  昭和四五年三月二六日より同月末まで六日間

九一五九九円の三〇分の六 一八、三二〇円

〔証拠略〕

ロ  昭和四五年四月一日より同年一一月八日まで 八日間

基本給を七六、三八〇円とする。原告は時間外手当として一ケ月五五二円×四〇時間、二二、〇八〇円の付加給を請求するところ甲六号証に比し高額とは認められないのでこれを認容する。 七一五、四七六円

ハ  昭和四五年冬期賞与減少分 一七五、二八〇円

〔証拠略〕

7  慰藉料 七六〇、〇〇〇円

本件事故の態様、受傷の部位程度、治療経過後遺症その他諸般の事情(但し後述の過失の点は除く)を総合して慰藉料は右金額が相当と認める。

8  物損(自転車、ズボン、眼鏡、万年筆、弁当箱)

計 四一、八五〇円

〔証拠略〕

以上の物品はいずれも中古品であり、殆んど価値は認められないが原状に回復するには新調の外方法がないと認められ、更に右金額が過大であるとも認められないのでこれを損害額と認める。

六  過失相殺

〔証拠略〕によれば被告ら主張の事実が認められる。

してみると本件事故は被告一美の前方不注視、徐行違反が主要な原因であるが、原告の斜横断、後方不注視にも原因があつたものと認められる。

その割合は原告一〇分の三と認めるのが相当である。

七  被告一美が被告の損害につき六〇八、六一〇円を支払い、原告が健康保険から四七一、〇三四円の給付を受けていることは当事者間に争いがない。いずれも人損に充当する。

八  弁護士費用 五〇、〇〇〇円

右金額をもつて、本件事故と相当因果関係ある損害と認める。

九  してみると、原告に対し、被告一美は単独で二九、二九五円を、被告らは連帯して六一六、六四一円及びこれらに対する本件訴状送達の翌日であること記録上明かな被告一美は昭和四五年八月一六日より、被告俊太郎は同年一〇月一日より各支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があると云うべく、原告の本訴請求は右の限度で理由があり、その余は理由がないから、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 菅納一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例