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大阪地方裁判所 昭和42年(ホ)2854号 決定 1967年10月24日

被審人 大阪証券取引所

右代表者理事長 高橋要

主文

被審人を過料金二〇万円に処する。

手続費用は被審人の負担とする。

理由

被審人は、大阪府地方労働委員会の申立にかかる当裁判所昭和四二年行(ク)第一二号労働組合法第二七条第八項に基く命令の申立事件につき、その被申立人として、当裁判所から昭和四二年八月二日緊急命令が発せられ、右命令は同年同月五日被審人に送達された。

右命令によれば、被審人は、被審人を原告、前記労働委員会を被告とする当庁昭和四二年行(ウ)第七二号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで、右労働委員会が同委員会昭和四一年(不)第三八号事件について昭和四二年五月四日づけを以てした命令のうち第一項に従わなければならない旨命ぜられ、右労働委員会の命令第一項は、被審人が、嶋吉一郎に対する昭和四一年一月二〇日づけ解雇を取り消し、原職に復帰させるとともに、解雇の翌日から原職復帰の日までの間に同人が受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならないことを命じている。

ところで、右命令は解雇された嶋吉一郎を事実として救済するものであるから、原職復帰の命令は労働慣行の正常な状態を可能な限り事実として回復せしめることを命じているものであり、賃金遡及払については不利益を受けていた期間にうべかりし収入を受けさせようとするものであって、特に賃金の支払限度を限定せず、解雇の翌日から原職復帰の日までの間に受けるはずであった賃金相当額と明示している本件命令にあっては、その支払限度は、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうものと解するのが相当である(労働基準法第一一条参照)。

しかるに、被審人は、右労働委員会の命令が違法であると主張し、これが取消の行政訴訟において勝訴の判決を受けた場合に備え、緊急命令の履行についても、嶋吉一郎に対し、その労働力に期待しないとして、単に同人の任意の就労を妨害しない限度で同人の職場への出入を認容し、同人に対する事務机、更衣用ロッカー等を与えているに過ぎず、嶋吉一郎が解雇される前に所属していた被審人の市場第三課市場第五係における業務分担については、定期的に業務分担表に労働者の氏名を記載して業務分担を指示するのが通常の取扱であるにもかかわらず、嶋吉一郎については殊更同人の氏名の記載をしないことにより明確な業務の指示をなさず、又解雇後の賃金については、昭和四〇年度平均賃金及び昭和四一年度本給増額分を加算した金額により計算した金員を支払ったのみで、昭和四一年夏期、同年冬期及び昭和四二年夏期に同人に支給すべき一時金(賞与)に相当する金員の支払をなさず、緊急命令により命ぜられた義務のうち一部の履行をしない。

右事実は、本件記録により明らかであるから、労働組合法第三二条前段、非訟事件手続法第二〇七条第四項により主文のとおり決定する。

(裁判官 志水義文)

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